[616]福島県弁護士会「原発事故損害賠償支援講演会」

川原 浩 投稿日:2011/06/30 11:40

福島県弁護士会説明会報告

会員番号6619福島県在住 川原と申します。

はじめて投稿しますので、乱文お許しください。
6月25日(土)福島県弁護士会主催「原発事故損害賠償支援講演会」に行ってきましたので、ご報告します。
120名の座席しかない会場には、50名以上の人が会場外にあふれていました。会場からあふれた若い女性が「ちゃんと段取りよくやれよ。」など怒号が飛んでいました。

 講師は渡辺淑彦弁護士でした。
まずは、「原賠法の説明で高度成長期の昭和36年成立した法律であること。 他の関連業者は無責任で集中責任主義である。」旨説明がありました。
その次に「前例として茨城県東海村 JCO のケースについて説明がありました。その際には、訴訟になったケースは10件のみ 調停が2件 6000件以上は茨城県が対応して収束。JCOは1500億を出した。」旨説明がありました。
今後の賠償について 「東電は2400億を準備した。それ以上については政府が必要な措置を取る。7月中には中間指針が示される予定。また、ADR(紛争解決調停機関)が設けられる予定。賠償額については全く判らない。秋から風評被害による損害賠償も受け付ける予定。」との説明がありました。

その後今までの支払い状況の説明がありました。詳細は下記の通りです。
4月26日 30キロ圏内の方には、1世帯100万円 単身世帯75万円      を仮払い
5月31日 農林業漁業の従事者には、過去5年の粗利の83%の半分を仮      払い
6月10日 30キロ圏内の中小企業は過去2年の粗利の半分で上限250      万円
      証明ができない場合には20万円を仮払い。
6月20日 避難者の慰謝料 月10万円の半年分 避難所暮らしの場合は      +2万円/月
     を仮払い。
 弁護士から参加者への今後のアドバイスは以下の通りでした。
「訴訟を提起する場合には、立証責任が生じるので、今回弁護士会で配る「福島原子力災害被災者・記録ノート」に詳細を記録して欲しい。但し、これが全て事実認定される保証はありません。また、原賠法3条1項には免責規定があり、この規定により賠償を受けられない可能性もある。東電は訴訟になれば、この規定を持ち出して免責を主張してくる可能性がある。」
参考までに3条を掲載します。
第3条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。

最後には以下の説明がありました。
「弁護士会としては、ADRと政府の対応を待ちます。それに不服の場合には集団訴訟も検討している。政府が福島県民をだまし討ちしないことを願う。東京の弁護士の一部はビジネスチャンスとして活動しているが、こうした連中には煽られないよう対応してください。」

私の総評 弁護士会は東電 政府の対応を待つしかなく、賠償額についても全く判らない。
 訴訟になっても、東電は原賠法3条免責条項により争ってくる。弁護士会としては「被災者記録ノート」の記載を奨励するくらいしかできない。法律は国家権力のために使われるので、その前には弁護士も無力であることを公言した。

最後に参加者からの質問と回答のやりとりです。以下
浪江町で家が20キロ圏内の男性
「家と土地の賠償について、額や時期はどうなのか?」
弁護士「全く判りません」
女性「ADRという機関は、被災者を丸めこむ機関ではないのか?個別で   訴訟をすべきではないのか?」
弁護士「大変重要なことですが、コメントできない」