[596]日本では甲状腺への影響は出にくい。

会員番号5980番それでも・・ 投稿日:2011/06/23 21:10

壮快 2011年8月号の一部分

日本では甲状腺への影響は出にくい。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故が、日本全体に深刻な被害をもたらしています。日々放出され続けている放射性物質が健康に与える影響を、懸念されているかたも多いでしょう。
 放射性物質を含む飲食物を摂取する場合、放射性物質の吸収をおさえて、放射線による影響を軽減することができます。その工夫の一つが、食生活です。
旧ソ連(現在のウクライナ) で起こった、チェルノブイリ原発事故を例に考えてみましょう。
 チェルノブイリ原発事故では、近郊のキエフなどで、子供たちに甲状腺ガンが多発しま
した。
一方、ポーランドでも大量の放射能を感知しましたが、ポーランドの子供は、ほとんど甲状腺ガンを発症していません。
これはなぜでしょうか。
 甲状腺には、ヨウ素が多く存在します。このヨウ素が不足していると、体内に入った放射性ヨウ素が甲状腺にたまって、ガンを引き起こすのです。
 海から離れたキエフでは、ヨウ素が豊富な海藻などを摂取する習慣がなく、慢性的にヨウ素が不足していました。しかし、北部が海に面したポーランドでは、ヨウ素を摂取する機会に恵まれていました。この食習慣の違いが、ガンの発症率に影響した可能性があるのです。
 このほか、旧ソ連は事故の情報をしばらく公にしなかったため、放射性物質によって汚染された牛乳を、住民が数年間飲み続けていました。
 また、ポーランド政府は、原発事故後にヨウ素剤をすぐ住民に配布したのに対し、旧ソ連ではそうした配慮がなかった点も、明暗を大きく分けたと考えられます。
 日本でも、コンプなどの海藻は非常に身近な食材です。また、厚生労働省の定めた暫定基準値を超えて放射性物質が検出された食材は、出荷が制限されるため、市場で流通していません。
 このため私は、食品による内部被曝(呼吸や食事によって体内に入った放射性物質から放射線を浴びること) に限っていえば、日本ではキエフのような甲状腺への影響は出にくいのではないか、と考えています。
 
前川和彦先生
 昭和42年、東京大学卒業。
(独)放射線医学総合研究所緊急被ばくネットワーク会議委員長。
放射線事故医療研究会代表幹事。
1999年9月に起こった茨城県東海村でのJCO臨界事故の際、救急医学の専門家として
被曝した作業員の救急治療に当たった。