[589] T.D.Luckey博士のメッセージ 日本に贈る-視点
Journal of American Physicians and Surgeons Volume16 Number2 Summer 2011
放射線の生物学的効果 日本に贈る-視点
(以下抜粋 ※印は当方が追記)
世界のメディアの大半が放射線は全て有害であると思いこんでいる。もし日本政府が2011年3月の地震と津波がもたらした福島原発事故への対応にあたって、こうした思いこみに支配されるのならば、すでに苦況に喘ぐ日本経済が途方もない無用の出費に打ちのめされることになるであろう。ミハイル・ゴルバチョフが遅くに失して思い知った次の教訓を日本も学ばなければならない。
「20年前にチェルノブイリで起った原子炉のメルトダウンが、おそらく5年後のソビエト連邦崩壊の真の要因であった」
放射線にはホルミシスの性質がある。ホルミシスという概念はメディアにも政府にも一般的に理解されていない。少量なら有益である一方大量では有害というものである。このような効果は約40種の必須栄養素、全ての薬品および大多数の物質において生じることが知られている。(※産業では放射線は積極的に利用されている。自動車タイヤやプラスチック成形では放射線を照射して組成を強化したり、静電気予防に実用化されている。食品への照射は日本ではじゃがいもの発芽予防のみ許可されている)
慢性、急性いずれの放射線被曝にもホルミシスが見られる。核降下物の影響を理解するには、有益から有害までの全域にわたる放射線の考察を欠かすことはできない。
1.放射線は生命にとって不可欠である
小エビ、原生動物、マウスおよびラットに放射線の全くない環境を人工的に創り出したところ、放射線が生命に不可欠であることを示す説得力のある証拠が得られた。
低線量放射線が実験動物にも人間にも健康によい刺激を与えることは2000を超える科学論文により裏付けられている。(※T.D Lucky、Muckerheide Jら国内外の研究)
これらの論文では世界中で高い自然レベルあたり(3ミリシーベルト/年(mSv/y))でも真の健康には不十分であることを示唆している。
2.最適な慢性(継続的)被曝の場合
最低発ガン死亡率と最長寿命へと繋がる最適な放射線量は年間約100mSv(mSv/y)(※1時間あたり11μSv)である。健康によい効果が現れる境界は年10mSvであり、悪影響は年間10Svである。(※1千倍の幅に注目:本文中ではGyグレイであるが等価と見なしてSvとしている)
この事象の裏付けは台北のマンションである。1982年からコバルトが含まれた鋼材により20年間約1万人が高線量の環境で生活をした。平均被曝線量は年間50mSvである。この結果住民の癌による死亡率は台北の平均を下回る10万人あたり3.5人に過ぎなかった。同様に米国内での屋内ラドン濃度と肺ガンによる死亡率の相関も見付けられていない。(※米国の建築基準法で地下室などにラドン濃度の上限基準が設けられている。ラドンが肺ガンの原因という理由で制定されたいきさつがある。)
3.急性(一時)被曝の場合
急性被曝は日本のデータに基づいている。広島放射線影響研究所(RERF)では広島・長崎のガン死亡率を爆心地から3-10km(市内)の人々とそれ以上離れた人々の比較をしている。
(検証1)
3-10kmの人々はある程度の放射線を原爆から直接浴び、さらに残留放射線からも被曝している。原爆生存者120,321名の総死亡率は490mSv未満では増加していない。
(検証2)
広島・長崎ともに10-19mSv被曝した生存者7,430名のガン死亡率は、1000人あたり68.5人である。全生存者の70%を占める被曝線量200mSv未満の生存者28,423名のガン死亡率は1000人あたり76.6人であり、広島郊外の村落と変わらない。
RERFは市内のガン死亡者が市外よりも少なかったという比較結果をなぜか発表していない。
(検証3)
1954年3月ビキニ環礁での水爆実験で放射性降下物で被曝した23名の漁師の事例からも窺える。全員の全身被曝量は1.7-5.9Svで急性疾患に罹った。最大線量の被曝者を除き癌を患うことなく20年以上生存した。
4.放射線に被曝したとしても
これらの経験から、慢性または急性被曝の重要な指針となるはずである。核事故や核爆発時には心理的ケア、怪我による負傷、食料・水・住居の支援が必要であることは言うまでもない。
慢性的被爆者についての指針は簡単である。年10Sv未満(1mSv/h)は救援・救護側に廻るべきなのである。
T.D.ラッキー博士
ミズーリ大学生化学教授(1054-1968)退職後名誉教授。NASAアポロ計画にて宇宙放射線環境の安全性を研究する過程で、適度の放射線被曝は「人体に恩恵をもたらす」ことを発見し「放射線ホルミシス効果」と命名して世界へ発表した。
※全文の入手先 茂木弘道氏 http://hassin.org/まで