[580]福島復興活動事務所開き 報告3: 副島先生と高野亮さんの講演

川端優美子 投稿日:2011/06/18 17:51

群馬のゆみこ(川端優美子)です。

事務所開きで副島先生とSNSI研究員の高野亮さん(地元では東大よりも信頼の厚い福島県立安積(あさか)高校の物理の先生)の公演が6月4日、5日の両日行われました。わたしは4日の公演を聞きました。そのときのことを書きます。場所は学問道場・福島復興活動事務所で、会員と地元の人たち総勢50人ほどが集まりました。
当たり前ですが、わたしが聞いて理解できたことだけしか書けません。また、わたし自身が「原発事故が起こってしまった日本で生きていく」上で知りたいことは、次の二点ですので、主にそれに偏(かたよ)って書きます。

●福島第1原発は、今後、核爆発する危険があるのか
●どのくらいの放射線量まで、だいたい大丈夫なのか

◆副島先生のご挨拶

○このあたりの放射線量はもう0.5μSv/時にまで下がっている(一瞬でバッと6Sv浴びたら20日後くらいに死ぬ)。放射線量の高い飯舘村でも10μSv/時。これを8760倍(年間総量)すると87.6mSvだが、この8760倍すること、すなわち単純積算すること自体に意味がない。花粉のように、風が吹けば空中の放射線量は変わってしまうのだ。

《ゆみこ: 「・人はふつう24時間戸外に居ない ・放射線を多少浴びても、体から排泄される ・今後も放射線量は減っていくはず  といったことから単純積算では体への影響を計れない」という意味かと思います。つまり、飯舘村で生活しても年間87.6mSvよりもずっと低い値しか浴びないということです。 この「単純積算には意味がない」というのはとても大事な話だと思います。今もみんなせっせと8760倍しているはずです。そういう人たちに教えてあげなくちゃね。》

○避難民を下のように区別しなくてはいけない。
「被災者」: 津波で家を流されたり、地震で家が倒壊したりした人
「避難民」: 家は無事だけど、原発からの放射能のせいで逃げた人

○原発避難民である地元の人たちも悪い。20km封鎖される前に、地震後、放射線量が下がった頃から、地元の人たちはどんどん20km圏に入るべきだった。

○福島県民が、日本中、世界中から憐(あわ)れまれて、優しくされて、それで(楽だから)いいという風になりつつある。こういう根性になるのが非常に危ない。

《ゆみこ: 根尾知史さんの〔[566]福島で見聞きしたこと。【第三部】〕に書いてある下の文章がそれの一例でしょう。
(はりつけ始め)
避難所生活では、朝昼晩の三食がただで食べられて、皆でいられて楽しい、と思ってしまって、おじいちゃん、おばあちゃんや、あるいは、もらえる物をできるだけもらおうとして居続けて、家も壊れてないし、放射能汚染ももう問題ない数値になっているのに、避難所からいつまでも離れない避難者たちもいます。
(はりつけ終わり)
わたしはこれを読んで、ついにいいのが出た、と思いました。これこそ人間だぃね。そうだんべ。生々しいやね。「みんなでいられて楽しい」という年寄りについては、わたしはこんな想像をします。こういう年寄りは地震の前は、さみしかったんじゃないかな。嫁さんは恐(こえ)ぇし、息子は相手にしてくれねぇし、孫は小せぇうちはかわいかったけど、すぐ生意気になって、中学生になりゃ部活、部活で家にいねぇし。野良仕事ができりゃ、まだ楽しいけど、野菜作りすぎてまた嫁に怒られるし。「まぁた、ばあちゃん、こんなに作って。食べ切れないがね!」
「楽しい」というのは、前より状況が良いから楽しいと感じるんだよね。しょうがないやね、そう感じるんだから。人間はほかの人から認められたい、「あなたは大事な人だ」と扱われたい。世界中から憐れまれて、ボランティアに優しくされて、今それが叶(かな)えられているから嬉しいという、素朴な気持ちというものが人間にはあらぃね。・・・違うかね。やっぱり、ずっと東電から原発手当をたくさんもらい続けて、慣れきってしまったのかな。
この状態からどうするか、真剣に考えなくちゃ。でも、要(よう)は本人たち(福島の人たち、原発避難民たち)がどうしたいか、ということが大事さね。でもでも、本当のことを知らされなけりゃ、考えようにも考えられない。みんなで本当のことを発信していきましょう。》

◆高野 亮さんのお話 「福島県原子力災害のキーワード」

○もう核爆発は、科学的に起き得ない。理由は、格納容器の底に溶けて(メルトダウンして)たまった核燃料は溶けた制御棒と混ざり合っている。その制御棒の成分が、核分裂反応のときに出る中性子を吸収するので、再臨界は起き得ない。

《ゆみこ: よかった。 公演後に男の人たちから教えてもらったのは、そもそも再臨界なんて、核爆弾の技術で、イランや北朝鮮が核爆弾を作りたくて作りたくてしょうがないけど作れない、とても難しい技術だそうです。いろんな条件を整えて、やっとこさできる(再臨界を起こせる)そうです。原発は、そもそも再臨界を目指して作っていない、ゆるい核爆発が起こり続けるように、安全に作ってある。だから、再臨界なんてできない。》

○ 水素爆発の危険性もほとんどない。理由は、ホウ素をいれたり、なんだり、いろいろと手当をしているから。

◆副島先生のお話 「政府と県は安全宣言を出すべきだ」

○ 天皇陛下までが、福島第一原発の正門前で国民に安全宣言を出すべきだ。

○ 再臨界(criticality)というのは核爆発とおなじこと。 チェルノブイリは分厚い圧力容器がなかったから、核爆発が起きて外に大量の放射性物質が出てしまって、たぶん1Svくらいの雨が降った。福島第一原発は、分厚い圧力容器があるので、メルトダウンした核燃料と制御棒の混ざったものが、その圧力容器の底に溜まっているだけ。

○乳がん治療では1回につき2Svをバシッと当てる、それを週5回、休みを入れながら2ヶ月の間に60Svを浴びる。それでも死なない。

ここで、会場にいた、乳がん治療を受けた阿部 真由美さん(【[556][557]放射能の影響について】を書いた方)が「それ、わたしです」と声を上げました。振り向いて見ると、とても健康的で、たっぷりとした髪の毛が黒くつやつやで、とてもきれいな方でした。わたしはもっと弱々しい人を想像していたので、びっくりしました。

公演が終わってから、わたしは事務所の出入り口でイスに座ってお弟子さんたちと話していました。帰ろうとする地元の人らしき年配のご夫婦がいたので、奥さんに「どこから来たんですか」と聞くと、福島市だと言いました。わたしは奥さんの手を握って「もう核爆発はしないって、良かったね」と言いながら、どさくさに紛れてちょうどわたしの目の高さにあった奥さんのおっぱいに顔を寄せました。やっぱりお母さんのおっぱいは、いいなぁ。あのとき、わたし免疫力上がったと思います。 以上です。