[571]「東電の背広たち」と「避難所を出るということ」

川端優美子 投稿日:2011/06/10 22:12

群馬のゆみこ(川端優美子)です。

知り合いの避難民から、さっき電話で聞いた話です。

ひとつめは、避難している旅館から赤紙が来て([535]参照)、原発に働きに行っている作業員の人の話。4日間仕事に行って、3日間休みで帰ってくるんだって。仕事に行くときは、本当にみんなで毎回送り出してやってるんだって。
上等の背広を着た東京電力の社員が東京からJヴィレッジまで来るそうです。その作業員の人が同じ部屋に入っていくと、その東電の社員は「お前らはここに来ないで、さっさと仕事に行け!」と言われたそうです。そして、「こんな放射能濃度の高い、危ないところに来るのは嫌だ」とか言うのだそうです。
あるときは、東電の背広たちがひとつのパソコンの前に群がっていたので、その作業員の人がなんだろうと思って覗(のぞ)くと、ゲームをして遊んでいたんだそうです。
また、あるときは、その作業員の人が、仕事が終わって、あの暑い防護服を脱いでシャワーでちょっと汗を流してから帰ろうと思い、東電の社員にシャワーを使っていいか聞くと、「お前らはダメだ。社員専用って書いてあるのが見えないんか」と言われたんだって。

もうひとつは、避難している旅館に東京電力の社員が3人、説明に来た話です。なんの権限もないその東電の社員は、型どおりの説明をして、あとはこちら(避難民)の話を聞いて頭を下げるだけ。お話を聞いて上に伝えます、という係り。わたしの知り合いの避難民の人は、作業員から聞いた上記の話をして、泣きながら文句を言ってやったって。「東京のど真ん中に原発を持って行け!」と言ってやったってさ。

その人は、原発避難民です。津波の被害はなかったけど、20km圏内に家があるので帰れません。でも、このたび避難している旅館(むなしい三食昼寝つき)を出ることを計画しているそうです。なぜなら、以前の仕事に戻れそうだからです。それには職場(お店)に通えるところに家を借りなくてはなりません。「通えるところに家を借りられたら連絡してくれ」と店長に言われたそうです。仕事をしたいけど、そのためには住むところが要る。住むところを借りるには、仕事(お金)が要る。なかなか大変な状況です。よく旅館を出る決心をしたなあと感心します。実際にやるのは大変なことです。そういう気力が出てきて、よかったなあと思います。 以上です。