[56]以下に載せるFT(英フィナンシャル・タイムズ紙)の最新の記事が、重要です。私の本と同じ考えです。

副島隆彦 投稿日:2010/08/04 07:38

副島隆彦です。 今日は、2010年8月3日です。 

 私は、中国の 新疆ウイグル自治区への調査旅行から帰りまして、その成果の整理の作業などをしています。 新疆ウイグルは、日本人から見れば、中国の内陸部の、さらに奥地です。が、あそこに居ると、 日本の方が、東のはずれの、太平洋という大きな海の中の 小さな島か何かにしか見えない。 ポロポロと石が並んでいるような。大きなユーラシア大陸のはじっこの、本当に、ガラパゴス諸島並みだね。

 今は、もう夏休みなのですから、会社員奴隷をやっている人たちを含めて、できるだけのんびりしましょう。あくせく 考え込んでもどうにもならない。 世界中の 金融トレーダーたちや大金持ちたちも、皆、夏休みに入っているに決まっている。 「金持ち、喧嘩(けんか)せず」 です。

 今は、私が先週、書いて出版した「新たなる金融危機に向かう世界」(徳間書店)を買って、家で静かに読んでいてください。書店に山積みになっているはずですから。 そして、その山がどんどん減って、私の本だけが、ぼこっと凹(へこ)んでいるはずです。 私、副島隆彦は、頑強ですから、どんなものにも負けない。 この夏は、体を鍛(きた)えます。

 私たちの学問道場に、盗む読みに来て、ヒヒヒヒヒで、けち臭く、情報泥棒だけしていれば、「それで、おいらは賢いのだ」とチンケな人間たちが、今も、あくせくと、ここを読みに来ています。 それで、聞きかじりの知識だものだから慌(あわ)てふためいている。   

 私たちの会員たちなら、ここで、しっかりと勉強しているから、どっしりと落ち着いています。私たちは、何ものにも動揺しません。  根性の曲がった人間たちも、早く、ここの会員になって、自分の歪(ゆが)んだ背骨を、しゃきっとまっすぐにしなさい。

 私が、金融・経済のことや、政治の動きのことで、あれこれ、ここに今、書いてもつまらない。今は、私の「新たなる金融危機に向かう世界」を買って、家で、じっくりと読みなさい。それがなによりだ。

 以下に載せる新聞記事は、すばらしい。 「経済学は宗教であることが判明した」 そして、「ケインズ経済学をようやく再発見した(もとに、戻った。金融政策=マネタリズムは、ずべて滅んだ)」という重要なことで、私、副島隆彦と全(まった)く同じ考えを書いています。 

 以下の記事の中に、はっきりと、 「経済学は宗教に基づく学問であることが露呈した。長年、合理的期待や効率的市場理論の奴隷だった経済学者たちは、原点に立ち返ってケインズを再発見した 」と書いてある。 痛快です。

 この英国のFT(エフ・ティー)、英フィナンシャル・タイムズ紙 さえ 定期的に読んでいれば、世界のことは、全部わかります。
アルル君は、毎日、FTばかり、英文の束(プリントアウトしたもの)抱えて、ずっと読んでいます。楽しそうです。私は、時々しか読みません。アルル君が、秋には、「ヨーロッパ超財界人(あるいは超富豪、スーパークラス)たち」を出すでしょう。

 FTの以下の記事は、ものすごくおもしろいです。 じっくりと読んでください。 皆さんの便宜のために、記事の 途中途中に、私、副島隆彦の 「注記」を ( ) を表示して 入れました。  副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

「あれから3年、(金融)市場が再び支配者になった」

2010年08月02日(Mon)  Financial Times   
By Philip Stephens

2010年7月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙

 屋根が崩れ始めてから丸3年経った。また、金融危機は景気下降が大混乱に転じる前兆ではないかと恐れ、心配性の人が地下室にボトル入りの水 や缶詰の食品を蓄えてから1年余り経つ。 では、この間に何が変わったのか? 答えは簡単だ。ほとんど何も変わっていない。市場(そしてバンカー(たち))が今も支配しているのだ。 威勢のいい発言が相次いだが・・・

 グローバルな金融システムが自滅の危機に瀕していた時に、政治指導者(たち)が口にした壮大な宣言を振り返ってみよう。いくつもの約束や誓いの言葉が左から右から、真ん中から 発せられた。 ゴードン・ブラウン英首相(当時)やバラク・オバマ米大統領、アンゲラ・メルケル独首相やニコラ・サルコジ仏大統領、各国中央銀行や国際通貨基金(IMF)が皆、(副島隆彦注記。もう二度と金融危機は起こさせない、という) 誓いを口にした。

<http://www.afpbb.com/article/politics/2568165/3755169?ref=jbpress>

金融危機の直後に散々叩かれたバンカー(たち)だが、払った代償は小さくて済んだ(写真はウォール街)〔AFPBB News <http://www.afpbb.com/> 〕

 金融を金ぴかの台座から引きずり下ろす、と彼ら(政治家たち)は言った。 メインストリート(実業界や一般社会)が、ウォールストリート(金融界)に対する優位を取り戻す。ワシントン・コンセンサスによる自由放任の資本主義の時代は終わった。世界の主要先進国は、金融工学ではなく、本物の工学の育成に注力する――。

 確かに、1つか2つ、変わったことはある。 経済学は宗教に基づく学問である ことが露呈した。長年、合理的期待や効率的市場理論の奴隷だった経済学者たちは、原点に立ち返ってケインズを再発見した。

 ゴールドマン・サックスの上層部はかつて、プライベートジェットだけでなく一定の名声も得ていた。神の仕事をするバンカーたちは 今、輝かしい社会的地位を失った。 だが、このためにその他すべての人に降りかかった苦難を考えると、世間的な不名誉など、小さな代償のように思える。 筆者が昔から知るあるバンカーは、スーツケースに詰め込んで家に持ち帰る現金は減ったにせよ、それでも今年の稼ぎは過去最高になりそうだと話している。

バンカーのツケを払う一般家庭

 言うまでもなく、1つ、本当に大きな変化もあった。かつて銀行の帳簿上にあった何千億ドル(副島隆彦注記。8千億ドルだとすれば、70兆円ぐらい。イギリスだとそれぐらい。) もの不良資産が、危機が引き起こした景気後退が生んだ財政赤字の山の上に、さらに積み上がった。 一般の家庭が増税やお粗末になった公共サービス、失業者の増加を通じて、バンカーたちのツケを払っているのである。政治的な決意は、恐怖に取って代わられている。 自由市場の不公正についてサルコジ大統領ほど雄弁に語った人はいない。「今こそ資本主義が欧州の社会市場のイメージに沿って作り直される時だ」と 大統領は言った。

格付け機関に怯(おび)える政治家(たち)

  だが、こうした発言はどれも、ギリシャのソブリン債の危機を受けて、ユーロ圏(副島隆彦注記。EU加盟27か国のうちのユーロ通貨の導入国のことを指す) が 攻撃を浴びる前の話だ。 サルコジ大統領は 今、フランス(副島隆彦注記。フランスの国債の信用度が調査される。債券、国家の場合は国債の信用度しか格付けは行われない) がトリプルAの信用格付けを失うのではないかと心配し、毎晩、眠れぬ夜を過ごしている。 心配しているのは、大統領独りではない。ほぼすべての西側諸国の政治家が巨額の財政赤字の削減と奮闘しており、グローバルな資本市場の奴隷になっている。

<http://www.afpbb.com/article/politics/2735216/5864765?ref=jbpress>

キャメロン英首相はイングランド銀行から、「大幅な歳出削減をしないと格付け機関が納得しない」と聞かされていた〔AFPBB News <http://www.afpbb.com/> 〕

 デビッド・キャメロン英首相は、そう公言して憚らない。 同首相が 「(自分が) 福祉国家の歳出を大幅にカットし、英国の国際的な役割を小さくするのは、そこまでしないと格付け機関が満足しない と イングランド銀行に言われたからだ」という。格付け機関(レイティング・カンパニー) のことを読者は覚えておいでだろうか?  無価値の債務証券(副島隆彦注記。MBSや、CDOや、CDSなどのこと) が 最高級の金融証券に組み換えられたごまかしに 、こうした格付け機関が深く共謀していたことを思い出す人もいるだろう。 政治家(たち)が 「格付け機関の規模を縮小する」 と言ったことを、筆者ははっきりと覚えている。

 実際、そんなことは起きなかった。 格付け機関は悔い改めることはなかった。 そして今再び、支配者の座に就いている。今回の危機は当初から、皮肉に満ちていた。 (副島隆彦注記。ムーディーズとS&Pのふたつの格付け会社の幹部たちを、逮捕して処罰すべきなのだ。そのようにこの3年間、叫ばれた。

 ところが、今度の米金融規制法でも、格付け会社への規制や、処罰は全く議論に出なかった。法規制も科されない)  そもそも、あれほど巨額の資金が金融システムに溢(あふ)れ返り、ローンを返済できない米国の住宅購入者に、いつでも貸し出せる状態となっていた大きな理由の1つは、世界中の多くの新興国が西側の言葉を額面通りに受け止めたからだった。

皮肉に満ちた危機

 アジアは1990年代後半の金融危機(副島隆彦注記。1997年7月からのアジア通貨危機のこと。アジア諸国は計画的に叩きのめされて、ひどい目にあった。日本は、金融強制開国させられて、金融強姦された) の後、慎重な財政運営(をしなさい)というIMFの教えを丸のみした。 

 その後アジア諸国が貯めこんだお金 (副島隆彦注記。主に中国と日本の対外金融資産のことで、米国債を買う形で流出させられている) は、浪費癖のある西側諸国に再び還流して低利融資を支え(副島隆彦注記。これが、円キャリー・トレイド。ほとんどゼロ金利の日本円を借り出して、貧乏な国々での、バクチ金融商品や、高い金利の住宅ローンに投入した)。 それが今度は 世界にサブプライムローンと債務担保証券(CDO)をばら撒くことになった。

 もちろん、欧州の大半の人は、抑制の利かない英米流資本主義に危機の責任があると考えた。 だが結局、自国の(政府)機関も完全に共謀していたことに気づかされる羽目になる。 メルケル首相は盛んにヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド (副島隆彦注記。乗っ取りファンド、あるいはハゲタカ外資のこと) を非難した。 が(実際には、こうしたファンドには危機の責任があまりなかった)、 ふたを開けてみれば、ドイツの政府系地方銀行が カジノで最も熱心にプレーしていたのである。

<http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2659488/4849928?ref=jbpress>

シティが税収を生む限り、労働党政権は見て見ぬふりをした〔AFPBB News
<http://www.afpbb.com/> 〕

 だからと言って、政府と規制当局が危機の責任を免れるわけではない。 英国の当時の労働党政権は、シティ(ロンドン金融街)が 社会政策の原資となる税収 を生み出し続けてくる限り、見て見ぬふりをした。 ギリシャは、大方の人がアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の名前を知るずっと前から 財政報告を粉飾(ドレッシング)していた。

 米連邦準備理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン前議長とベン・バーナンキ現議長は、自分たちのプロパガンダを信じるというミスを犯した(副島隆彦注記。このふたりの責任者は、自分たちが、立場上、ウソだと知っていて公言しているのだという自覚をなくして、自分で自分の言ったウソを信じ込んでしまった、の意味)。  今、政策立案者(ポリシー・メイカー)たちは、こうしたミスを正すために対策を講じたと言うだろう。 

 一部の政府は大手銀行に超過利潤税を課した(副島隆彦注記。特にドイツのメルケル首相が、率先して即座に実施した)。  米国は規制体系を厳格化する法律を制定した(副島隆彦注記。この7月から実施される米金融規制法のこと)。(副島隆彦注記。金融業界人への)度を越えたボーナスの支払いには、わずかながらも成果連動部分が盛り込まれるようになった。

 バーゼル(副島隆彦注記BIS、ビー・アイ・エスという奇怪な国際金融機関が、スイスのバーセルにある) 銀行監督委員会は今より厳しい自己資本要件 を課す予定だ。 もっとも、実施は2018年だということを我々は理解しておかなければならない。

経済を破滅させる資本市場の威力

 こうした対策は恐らく有意義なのだろう。 が、資本市場が(副島隆彦注記。これからさらに) 経済を破滅させる威力と比べると、間に合わせの修繕のように見える。 金融機関は今も、英金融サービス機構(FSA) の アデア・ターナー長官が 「本質的に無益」と断じたトレーディング業務(副島隆彦注記。 銀行本体で行う自己勘定取引 approprietary dealings アプロプライエタリー・ディーリングズ のこと) で多額の利益を稼いでいる。 だが、ターナー長官は、抜本的な見直しを求めるほぼ唯一の存在だった(副島隆彦注記。ほかの人たちは押し黙って何も言わない、の意味)。

 ユーロ圏の危機は、資本市場の群集心理が一大陸全体(副島隆彦注記。この一大陸が、ヨーロッパ全体のことを指しているのか、もっと広くユーラシア大陸を指しているのかは、不明。おそらくヨーロッパ・コンティネントだろう) を不安定にし得ることを示している。 その結果、欧州諸国の政府は、景気回復が確かなものになる前に、早計で危険な財政赤字削減レースに乗り出すことになった。 

 大手銀行は今、規制当局に助けられて、きちんとストレステスト(健全性審査)を受けたと宣言できる(副島隆彦注記。この7月23日?に発表した、ヨーロッパ全部で91行の主要な大銀行への身体検査。貸付先への安全度の審査。日本では、2002年から、竹中プランで、残酷に実施したもの)。 が、システム全体の不安定さは残っている。 

 国際市場はどんどん先へ進み、政治指導者が市場を適切に監視する能力(副島隆彦注記。能力を超えている) は言うまでもなく、それ(副島隆彦注記。現状の金融市場の危機) を(彼らが)理解する能力のはるか先を行っている。 グローバルな経済統合に政治的な統治が後れを取っている状況は、今も(3年前の)2007年当時と変わらないくらい明白だ。

 各国の政治家が相互依存のリスクや、特定の機関や金融商品の脆(あやう)さについて(彼らが)理解を深めたとしても、グローバルな監視体制の責任をどう共有するかについては、コンセンサスに至るにはほど遠い状況にある。 というわけで、3年の月日が経っても、 状況は当時とほとんど何も変わっていない ―― 我々の大部分が3年前より貧しくなったという点を除けば。(金融)市場が(今も)すべてを支配している。(副島隆彦注記。このことの危険さを、皆さんは) お分かりだろうか? 

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝