[559]5月8日に文科省が発表した放射能汚染図について

ジョー 投稿日:2011/06/05 21:38

最近、「福島はチェルノブイリを越えた!!」とかセンセーショナルなタイトルをつけた記事が見られます。これは、5月8日に文科省が発表したひとつの図によるものです。朝日新聞がのせたものを下に貼り付けます。

実際フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)がこのデータにもとづいた報告書を出しています。この報告書を見て「フランスも福島原発事故はチェルノブイリ級だと指摘している!」といっている人たちがいますが、IRSNが引用しているのも上のデーターです。だから、このデータによって「福島はチェルノブイリを越えた!!」という情報が世界をかけまわっているわけです。

実際、この図でいちばんひどいところでは、3000万ベクレル/m2ですので、確かにすごい値だと思います。

さて、この図がどうやってつくられたのかを調べてみましたがよくわかりません。そこでどうやってつくったのかを推測してみました。

どうやら、これは、放射線線量を土壌放射線汚染量へ変換したもののようです。つまり換算係数を1μSv/時当たり約30万Bq/m2として変換したものです。アメリカエネルギー省は何度も上空から空間の放射線線量(0.053μSなどの量)を測定しています。その値に、文科省の土壌のモニタリングデータを参考に、この「30万」(正確には28万2千らしい)をかけたわけです。なぜ、文科省が自分たちのデータをつかわないで、こんな米軍のあやしいデータをつかうのかが、おかしなところです。

さて、それは別にしても、実はこのやり方では問題がいくつかあります。

ひとつは、上空からモニターしているので放射線線量そのものが高めにでることです。アメリカエネルギー省のデータはちょっと比べると地上に対して倍に近いところがあります。

さらに、不確かなのは土壌のモニタリングデータは平均値なのか?ということです。つまり、ランダムに選んでこの値がでたのか、それともガイガーカウンターで見ながら高いところを選んだのかということです。

さらによくわからないのは、土壌のモニタリングデータ測定はkgあたりで測定するので、これを平方メートルあたりに変換しなければなりません。通常は20をかけ算するようです(京都大今中氏の方式)。ところがなぜか65をかけ算して算出してあります。サンプリング方法によるものなのか、なんなのかはわかりません。

実際のデータと比べてみましょう。

下の朝日新聞の図に出ているのは文科省の4月5日頃のデータですが、平均の値は、浪江町赤宇木(最も放射線が強い地域)で平均6万6200ベクレル/kg 飯舘村八木沢で平均3万3288ベクレル/kg、平方メートルあたりにする時は20倍程度ですと、それぞれ約130万ベクレル/平方メートル、70万ベクレル/平方メートル程度にしかなりません。


朝日新聞の記事より

確かに65倍で430万ベクレル/平方メートル、216万ベクレル/平方メートルですので、上の図にあいますが、赤宇木は現在でも20μシーベルト/時でているところですから、600万なければつじつまがあいません。65倍して、さらに高めに見積もっているようです。

また、アクロという団体が同じようにいろいろな場所の土壌に含まれる放射能(セシウム)の量を量っています。

それによると、セシウム134と137の合計は、飯舘村関根で68万ベクレル/m2、飯舘村前田で96万ベクレル/m2と185万ベクレル/m2、福島市大波で73万ベクレル/m2、川俣町飯坂で16万ベクレル/m2となっています。

http://www.acro.eu.org/OCJ_jp

かなり高い値ですが、一番上の図にくらべれば低い値です。

こう考えると、一番上の図は、最大値の平均に近いのではないでしょうか?もともと放射能の土壌汚染というのはまだら模様で、水が溜まるようなところはまわりの放射線物質をすべて集めたようになるので、非常に高くでます。皆さんも雨樋では非常に高い放射線量がでるのをご存じだと想います。

確かめることはできないのですが、それぐらい大きな土壌線量です。

ちなみにこれらの値が本当だとしてもチェルノブイリは越えません。下に上の図をチェルノブイリの汚染図に貼り付けた図を示します。


チェルノブイリとの比較

チェルノブイリの最大値は8億4000万ベクレル/平方メートルといいますから、本当に我々の想像を絶する放射性物質が放出されたのだと思います。

最後に簡単に、では、なぜ文科省や米軍が高く見積もるのかというのを書いておきます。すでに松尾さんが核廃棄物の中間処理施設が福島原発の周辺地にできそうだという新聞記事を貼り付けてくれています。

同じ内容の別の記事を下にはり付けますが、書き方がちがって、タイトルは「Japan eyes Fukushima plant as nuclear fuel graveyard」。意訳すれば「日本は福島原発を核廃棄物最終処分場としてみている」です。storage siteがnuclear fuel graveyardに変わっているわけです。

この文の中には「世界には27万トンの核廃棄物のうち90%はプールに格納してある(90 percent of the world’s 270,000 tons of used nuclear fuel is kept at reactor sites buried in 7-meter (23-foot) pools similar to those at Fukushima)」とか「福島県の高官はこのことについて何も知らない(Local Fukushima authorities said they are not aware of the Atomic Energy Society of Japan’s proposal to convert the damaged plant into a nuclear fuel graveyard)」との文章があります。

現在、世界のどこにも核廃棄物最終処分場はありません。放射線量が高ければ高いほど、福島原発跡地がその最有力候補になる。とんでもないことが、福島原発付近では起きているということです。

<引用開始>
Japan eyes Fukushima plant as nuclear fuel graveyard

Source: (AHN) Reporter: Vittorio Hernandez
Location: Tokyo, Japan Published: May 27, 2011 06:12 am EDT

The Atomic Energy Society of Japan plans to make the Fukushima Daiichi nuclear plant a storage site for radioactive waste.

The crippled plant would be an ideal nuclear fuel graveyard because building a new one would cost several million yen, according to Muneo Morokuzu, professor of energy and environmental public policy at the University of Tokyo.

Morokuzu is one of 50 people on a cleanup panel involved with discussions on the Fukushima plant cleanup and construction of a nuclear waste facility. He said the building of a nuclear waste storage facility at the Fukushima site is one option, although it could take at least 10 years to construct one.

Tokyo Electric Power, operator of the Fukushima Daiichi plant, would need about five years to complete decontamination work at the reactors, including the removal of hydrogen to prevent explosions.

Japan has three storage facilities for highly radioactive waste. These are at the northern tip of Honshu at Rokkasho and Sekinahama at the Aomori Prefecture, and at Tokai in Ibaraki Prefecture. These facilities, however, are for intermediary use. Japan still needs to find a deep underground storage site for its nuclear fuel waste.

According to the World Nuclear Association, 90 percent of the world’s 270,000 tons of used nuclear fuel is kept at reactor sites buried in 7-meter (23-foot) pools similar to those at Fukushima.

Local Fukushima authorities said they are not aware of the Atomic Energy Society of Japan’s proposal to convert the damaged plant into a nuclear fuel graveyard.

Japan’s nuclear crisis has led the nation to rewrite its nuclear policy. Japanese Prime Minister Naoto Kan said on Wednesday that Tokyo will veer away from nuclear energy and rely more on natural sources of electricity. ‘

Although Japanese officials are still reviewing from zero the country’s basic energy plan, this early Kan has set a target of sourcing 20 percent of the nation’s electricity from renewable sources in the 2020s from its current 1 percent contribution. Prior to the March 11 earthquake, which triggered the Fukushima nuclear accident, Japan relied on nuclear power for 30 percent of its electricity and planned to hike it to 50 percent by 2030.

To achieve the energy mix shift, Kan said Japan will try to cut the cost of generating solar power to one-third of current levels by 2020 and one-sixth by 2030.
<引用終了>

下條竜夫拝