[551]フフホト通信番外編

石井裕之 投稿日:2011/06/01 04:37

中国は内蒙古の石井です。
このところ震災と原発に関する投稿が続いております。被害の状況を鑑みると当然のことですが、東電を巡る(或いは原発利権を巡る)政・官・財の癒着問題ことも紛糾しております。
少し論点がズレるかもしれませんが、先日日本の私の故郷の町の建設業に激震が走りました。以下、新聞を貼り付けます。

(貼り付け開始)
榊原建設談合事件で逮捕された同社営業部長が元暴力団員だったことが判明

倉敷市発注の下水管埋設工事をめぐる談合容疑事件で、同市堀南の建設会社「榊原建設」社長榊原修容疑者(47)=同市福井=とともに逮捕された元同社営業部長の千田広行容疑者(56)=同市広江=が、同市を拠点とする暴力団の元組員だったことが26日、関係者への取材で分かった。

建設業関係者らによると、千田容疑者は暴力団の威力を背景に、談合に応じない入札参加業者を脅したり、同社関連業者を下請け参入させるなど、榊原容疑者の指示で談合を取り仕切っていた可能性が浮上。
得た利益の多くは暴力団の資金源となっていたとみられ、岡山県警が慎重に裏付けを進めている。

県警は同日午前、同社事務所や両容疑者の自宅など数カ所を家宅捜索。
押収資料を分析し談合の実態解明を急ぐ。
山陽新聞(岡山県の地元新聞)

倉敷市の公共事業をめぐり談合したとして、県警組織犯罪対策2課などは25日、倉敷市の建設会社「榊原建設」代表取締役、榊原修容疑者(47)=同市福井=と同社元営業部長、千田広行容疑者(56)=同市広江5=を談合の疑いで逮捕した。
2人は、容疑を否認しているという。

逮捕容疑は、昨年8月23日に開札された倉敷市福田町古新田の下水道埋設工事で、入札に参加した25社の代表者らと談合したとされる。
参加業者は、落札する業者をあらかじめ決め、落札を狙う業者が一番安い値段で入札するよう打ち合わせており、2人が主導したとされる。

倉敷市の公共事業では、落札価格が予定価格の95%を超えると公正な競争だったかを確かめるため、市の調査が入る。
この工事の落札価格は3570万円で、予定価格3765万6150円の94・8%だった。

25社が集中する地区では、昨年1月~10月の間に27件の下水道管埋設工事があり、うち25件で落札率が94%台だった。
県警は昨年11月、榊原建設を含む31社を談合の疑いで捜索。
談合に暴力団が関与している疑いが浮上しており、県警は、談合で得た利益の一部が暴力団に流れたとみて調べている。

◇「入札制度を検証」倉敷市、事件受け
建設業者が逮捕されたことを受け、倉敷市は26日、総務局長名で「大変遺憾」とするコメントを発表した。
業者は、市の要領で指名停止の対象となり、近く市建設工事入札指名等委員会(委員長・三宅英邦副市長)を開いて停止期間を決定する。

同市は「入札制度を否定するもので、許されない」とし、「再発防止を徹底するため、入札制度の検証を行う」としている。

同市は、昨年10月に県警が談合の疑いで市内の数十業者を強制捜査したことを受け、同12月に土木工事の一般競争入札の参加資格を変更し、競争率を1・5倍程度高めた。
市によると、今回、問題となった地区では下水管埋設工事の予定価格に対する落札率は大半が94%台だったが、変更後は80%台前半に低下し、「効果があった」としている。
毎日新聞
(貼り付け終わり)

実は倉敷市福田町古新田というのは私の実家のある地域の名称であり、この記事は正にその地域に埋設される下水道管布設工事(公共工事)を巡る談合問題だったのです。
笑ってしまうのが、昨年27件の入札物件の内、25件の工事の落札率が94%台だったということです。
入札工事に馴染みのない方には判り難いかもしれませんので、簡単にご説明します。
例えば、予定落札価格(メーカー希望小売価格のようなもの)が1000万円の建設工事があったとします。その工事の入札に指名された(発注者である行政側によって)業者が20社であったとすると、その20社が集まり、当然のことの如く落札業者と落札金額を会議によって決めるのです(所謂談合ですね)。この会議によって決定された落札業者は、行政側の調査の入らないギリギリのところを突いて入札金額を設定し、件の工事を落札せしめます。その落札金額が948万円だったとして、調査基準が95%以上という規定になっていたとすると、予定落札価格に対して94.8%の価格で落札されたこの入札については、行政側の調査は一切入らないことになるのです。この予定落札価格に対する実際の落札価格の割合のことを「落札率」と言います。
岡山県倉敷市発注の下水道管布設工事では、その落札率94%の物件が、全27件中25件もあった、ということと、95%という基準はクリアしている為、調査は何れも免れていた、ということなのです。
こういった事実が、過去何十年と亘って延々と繰り返されてきた「実績」を持ちながら、倉敷市の総務局が「大変遺憾だ」というコメントを発表したのは、どう捉えれば良いのでしょう。「入札制度を否定するもので、許されない」のは、業者に対して言っている言葉なのか、それとも見て見ぬフリを数十年続けてきた役人自身(総務局長自身も含め)に言っているのか、或いはそのことを助長してきた地元市議会議員や市長に対して言っているのか、私にはさっぱり判りません。
今回の事件も、恐らく榊原建設という建設会社の社長と営業部長が逮捕され、談合に関わったとされる市内建設業者ら30社程度が、半年から1年の指名停止(倉敷市発注工事の入札に参加出来なくなる)処分を受けて終わるのです。これらはトカゲの尻尾でしか有り得ません。本体は別にあるのです。そしてその本体には、警察も中々踏み込もうとしません。
世の中には、このような「利権」と呼ばれるモノがゴマンとあります。冒頭述べた原発も巨大な利権です。そして、その利権に群がるハイエナ業者と、利権を演出し続ける泥棒役人達と、それらの間で絶妙なバランスを保っているバイキン政治家とで社会が構成されているのです。それが日本という国なんでしょう。
公共工事を巡る問題については、様々あります。また機会を改めて続報をお届け致したいと思います。