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鈴木 昭彦 投稿日:2011/05/29 17:32

角山茂章福島県立会津大学学長の福島原発事故への見解を示す記事が福島民報に掲載されました。

副島隆彦氏の主張とほぼ同じような見解です。
ご参照下さい。

角山茂章
昭和42年 東京大学理学部物理学科卒業
昭和60年 工学博士
職歴
昭和42年 日本原子力事業(株)総合研究所入社
昭和50年 米国GEと共同研究のため米国駐在(1年間)
平成2年 東芝原子力研究所(平成2年日本原子力事業と東芝原子力事業部が合併)管理部担当部長
平成9年 東芝原子力システム社技監
平成13年 アイテル技術サービスフェロー
平成14年 会津大学産学連携センター教授
平成15年 会津大学副学長
平成18年4月 会津大学理事長兼学長就任

レベル7と国際風評被害(5月29日)
 
 国際版英字紙に、白雪姫がリンゴを見て「日本から来たの?」と問う漫画が掲載され、批判を浴びた。国際的な風評被害の表れだ。
 原子力安全・保安院は4月12日、福島第一原発事故の評価を国際原子力事象評価尺度に基づき、大きなリスクを伴う「レベル5」から、深刻な事故を示す「レベル7」に一挙に引き上げた。環境に放出した放射能の量が判断の理由となった。チェルノブイリ事故と同程度とされ、福島県のイメージは大きく低下した。
 しかし、フランス原子力安全局は、大事故とされる「レベル6だ」、ロシアの国営原子力企業も「レベル7への引き上げは行き過ぎ」としている。今月になっても同様な意見が国際的に出ている。
 チェルノブイリでは原子炉のコンクリートのふたが飛んだ。格納容器が本来ない構造のため、燃料や黒鉛が外部に噴き出した。その後、石棺と呼ぶコンクリートで覆ったため、熱がこもって再度爆発し、東西1200キロにわたり520万テラベクレルの放射性物質が飛散した。
 レベル6の事故は旧ソ連ウラル地方のキシュテムで起きた。原爆製造用の原子炉五基と再処理施設を持つプラントで、放射性廃棄物タンクの冷却装置が故障、温度が急上昇して爆発した。廃棄物は北東方向に300~350キロまで飛散し、7・4万~18・5万テラベクレルが放出されたと推定される。レベル5には、米国のスリーマイル島事故、カナダのチョークリバー研究所事故、英国のウィンズケール火災事故が分類されている。
 福島は保安院の推定で37万テラベクレルであり、キシュテム事故よりも大きい-としてレベル7となった。しかし、事故は福島県内のほぼ百キロ圏内に収まっている。最近はプラント建屋に作業員が入れるまでに環境は改善しつつある。汚染地域の面積を福島とチェルノブイリを比較すると、高濃度地域は800平方キロと1万平方キロ、低濃度地域は550平方キロと18万平方キロだ。大きな差がある。
 評価基準で、レベル7は広範囲、例えば一国以上での統計的な健康被害や、死亡などの明確な健康被害を与えるような事故-との表現で定義されている。基準は国際的に共通の解釈がしやすいよう、レベルを放出放射能の約500、5000、5万テラベクレルで分けた。ただ、必ずしも量だけが重要ではなく、住民や近隣諸国の理解を図ることが目的と明記されている。
 福島の原発では、原子炉を守る圧力容器、さらに外側を覆う格納容器に一部漏れがあるものの、依然本来の形状を維持しており、原子炉本体が爆発したチェルノブイリとは大きく異なる。しかし、国内はもとより県内の議論でも、しばしば「チェルノブイリのような悲惨な事故」として福島が引用されることが多い。
 国際原子力機関の調査団が24日から来日している。また、原発では、これ以上の放射能放出を抑えるための献身的作業が進んでいる。今が、間違った国際的風評被害の元となっているレベル7の評価を正す絶好の機会であろうと考える。(角山茂章・会津大学長)