[547]川内村 獏原人村
TV Bros 5月28日号より
川内村 獏原人村
思いによって数値は変わる 反原発活動家が当事者になった日
「この測定器だと、放射線の数値がいつもの3倍くらいあるのね。
で、実際に当事者になってみてわかったんだけど、どう思いたいかに
よってこの数値の解釈が違ってくるんだ。俺はここに住みたいから、
ここが好きだから、どうしてもちょっと甘くなってしまう。これな
ら住めるだろうと思っている」
なるほど
「ところが、現場から遠くなれば遠くなるほど、数値を見る目が厳
しくなっていく。原発に興味がなかった人がパニックになってるん
だ。俺も最初の頃は緊張感でピリピリしてたけどさ」
数値に振り回される?
「夫婦の間ですら変わってくるんだよ。妻は俺に比べて厳しいし。観
測者のポジションによって変わってくる。相対性理論みたいだよね」
確かに。
「自分たちの安全のために、独立した理想郷を築きたくてここを拓
いたけどさ、どんなに文明を否定したところで、自分だけが矛盾か
ら逃れることはできない人だな。なぜ自分が当事者になったのか。
『やっぱ俺たちの言ってた通りじゃないか』と元気に反対運動が
できない今、ニュアンスが変わってきた」
というと?
「今、文明のありようが問われていると思うんだ。これまではひた
すら開拓しては壊し、使い捨てできた。ある程度まではそれでやっ
てこられたんだけど、それが一定のスケールを超えて大きくなると、
質が変わる。汚水だってそう。自然の浄化作用を超えれば犯罪にな
るでしょ」
そうですね
「そのやっていい範囲というラインを研究している人がいないんじ
ゃないかな。もう呑気な時代は終わったよ。これからは自分自身で
勉強していかなくちゃ」
おっしゃる通りだと思います
「逃げまくったところで何の解決にもならない。誰も信じられない
なら、自分を信じられればいい。自分がいいと思える最初の人にな
ればいい。渋滞にはまって、なんで詰まってるんだよ!と他人のこ
とを言う前に、『俺がいるから渋滞しているんだ』と思えるように
なればいい」
その発想はありませんでした。
「じゃあ、ここに留まるためにはどうしたらいいのか。こないだ、
表土の除去を自分でやってみた。放射線は下がるね、やっぱり。絶
望ばかりではないよ。それに、「ごれから一体どうすんのか?」
っていうみんなの怒りを受け止める場所が今ないよね。ここでは毎
年7月か8月の満月の夜に「満月祭」をやっているんだけど、今年
は入場無料にして、その受け皿になれればいいなと考えているよ」
とても楽しみにしています!
「今いるところを良くしていく、
それが世界を良くすることとイコールだと信じているんだ」
話を聞き終え、僕らは村の敷地に出たり春爛漫の土地の緑は鮮や
かで、菜の花が咲いていた。