[527]有害物質の「汚染」と放射能の「汚染」はまったく違う

六城雅敦 投稿日:2011/05/14 13:48

昨日放射能の「汚染」について関係者との会話がありました。

その方が言うには、汚染地域にわざわざ行くことは理解できない。わずかでも健康被害の「可能性」があるのであれば誰でも避けるべきである、と言うのです。

その方は六価クロムや有機溶媒の土壌汚染と同列に考えられていることは明白です。

有害物質の土壌汚染と放射能汚染は性質が違うのです。

(1)まず一つに化学汚染と異なり、
汚染物質は時間経過によりどんどん無害なもの・ありふれたものに変化していってしまいます。

天然のウランやラジウムなどは半減期は何万年何千年と長いのですが、その代わりに<放出するエネルギーは低く長く発生する>ものです。この状態を原子の自然崩壊と言います。
だからこれらをいくら精製しても原子燃料になることも爆弾にもなりません。

一方原子炉内で中性子があたることで質量が増えて<放射能>を帯びた原子は、自然には存在しない状態なので、短期間で崩壊してしまいます。
定員オーバーのエレベーターに押し込まれたけれど、すぐにはじき出されるような状況を想像してみてください。もしくはお団子を山盛りにした三方にさらに載せてみたけれど、ぼろぼろと崩れるようなイメージです。
(当方のブログへのリンク)放射線はなぜ発生するのか?
http://www.rokujo-radium.com/blog/index.php?entry=entry091008-004219

人工的な放射能物質の代表はプルトニウムです。とても不安定な元素だからこそ、ちょっとのきっかけで連鎖的に崩壊するのです。
このように原子炉から漏れた人工的な元素(同位体:アイソトープ)は短命です。

そこでセシウム137(放射能汚染の指標として使われる代表的な元素)の半減期は<30年もあるじゃないか!?>と言われます。

放射能の減少(放射性崩壊)は指数関数的に減っていきます。簡単に言えば最初に一気に減って、やがて徐々に減るカーブを描いたグラフになります。
直線で徐々に減っていくわけではなく、あるていど半減期の始めの一割や2割程度の期間でドカーンと減ってしまいます。ですから半減期が30年でも、わずか数年でほぼ半分になることが予想されます。

実際にラドン(半減期8日)を計測したことがありますが、一晩もおくとほぼ数値は消えてしまいました。半減期とは崩壊過程をシュミレーションしてy=(1/n)^xに当てはめて出した理論値です。誰も30年もガイガーカウンターを見つめて計ったものではありません。

残留放射能が怖いと言っても、時間、それもそれほど100年や1000年といった長期ではない期間で人工的な放射能物質(原子番号の大きな元素)は跡形も無くなってしまうのです。

(2)二つ目にやみくもに恐れている人は放射線とは何かを理解できていないのです。

放射線は何でも怖い。なぜなら目に見えないから・・・とおっしゃいます。放射線は元素が他の元素へ変わるときに、原子から発生する、原子核、電子、電磁波(X線)です。

飛び出した原子核や電子は距離さえあれば空気で徐々に失速してしまいます。原子や電子ですから、やがて空気になっていまします。(電子はマイナスイオン、原子核はヘリウム)

それでは短波長の電磁波(X線)はというと、これも距離の二乗で半減していきます。電磁波はエネルギーです。他の物質にあたって熱になってしまいます。(応用したものが電子レンジです)

汚染地帯を歩いて黒焦げになった人はいません。時間の経過とともに放射線は減っていきます。

セシウム137が怖くて、ラジウム温泉が怖くないというのはナンセンスです。 どちらから発生する放射線は同じものです。多少元素により原子核、電子、電磁波の割合が違うだけです。

(3)放射線はDNAを傷つけるから癌になる!?体内に蓄積されて被爆する!?

生命の細胞は寿命があり、かならず自然死(アポトーシス)を起こします。新陳代謝(しんちんたいしゃ)と言われます。
新陳代謝はなぜ起こるのかというと、細胞には寿命があり、再生することで常に新しい組織を維持する能力が生命体にはあります。原爆症で髪の毛が抜けたというのは頭皮細胞がアポトーシスを起こしたからです。(脱毛の原理では抗がん剤による脱毛と同じです。抗がん剤もアポトーシスを誘発する作用が大きいからです。)

一度に強い放射線を浴びることで、DNAの複製でエラーが生じて不良細胞が発生したり、粘膜細胞が破壊されてしまうと言われています。

放射線は所詮は「熱」「外力」と同じエネルギーですから、強い放射線は外傷(火傷)を作る可能性はあります。ただし細胞核内のDNAレベルで傷つけるというという理屈も机上の理論です。どの程度の放射線が傷つけてしまうのかという閾値(しきいち)は永遠の研究者の課題の感があります。

同様に体内に蓄積されると信じられているようですが、口に入れたものがそのまま体内に残ると考えるほうがおかしいでしょう。成長の止まった成人の体内に長期間留まるとは考えられないと多くの生物学者が指摘しています。

「体内毒素」や「デトックス(毒出し)」という美容業界用語があります。体内は汚れや毒が蓄積されていると洗脳して、成功を収めています。
要するにこのような「体はやがて汚れて腐臭を放つ」(そんなことあるかいな!)という洗脳を無意識に受け入れた結果が放射線への無知な恐れの正体ではと考えています。