[521]日本語と自他認識

茂木 投稿日:2011/05/10 10:27

会員番号1149番の茂木です。

今回の東電原発事故を巡る動きを見るに付け、日本語で思考する人々の「環境への同調性」に驚きます。ここの会員が、作為の環境=風評に踊らされてどうするのか。副島氏の熱意を源はそこにあると思います。

日本語が内包する環境への同調性、自他認識の薄弱性について、以前私のブログ
http://celadon.ivory.ne.jp
に書いた「母音言語と自他認識」という記事を、一部加筆・再編の上転載させていただきたいと思います。

———————————————–
「母音言語と自他認識」(11/16/2010)

 日本語が母音語であることと、それに伴って起こる日本語的発想における「自他認識」の薄弱性は、

I 日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が多い
II 日本人は母音を左脳で聴く
III 日本語は空間の論理が多く、主体の論理が少ない
IV 日本語に身体性が残り続ける

という循環運動(IVから再びIへ)で説明できる。詳しくは「脳における自他認識と言語処理」や「社会の力」などの項を見て欲しいが、ここではすこし順番を変え、言葉をさらに補足しながら、この循環運動を説明してみよう。また仮説の域を出ないことも多いだろうが、興味深い理論だと思う。

1. 人の言語野は左脳にある
2. 子供ははじめ右脳経由で言葉を覚える
3. 習熟すると人は左脳(言語野)で言葉を処理するようになる
4. 人の脳の自他認識機能は右脳にある

5. 日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が多い
6. 英語は子音の比重が多い

7. 人は発話時に母音を内的に聴く
8. 社会と母国語の学習によって脳神経回路が組織化される
9. 母親と社会から日本語(母音語)を聞かされて育つと、母音に習熟し、発話時に母音を左脳で聴くようになる
10. 母親や社会から英語(子音語)を聞かされれて育つと、母音に習熟せず、発話時に母音を右脳で聞き続ける

11. 日本人は発話時に自他分離の右脳をあまり刺激しない
12. 欧米人は発話時に自他分離の右脳を刺激する

13. 日本語は容器(空間)の比喩が多く、擬人の比喩が少ない
14. 英語は擬人の比喩が多く、容器(空間)の比喩が少ない

15. 日本語は空間(環境や場)の論理が多く、主体の論理が少ない
16. 英語は主体の論理が多く、空間(環境や場)の論理が少ない

17. 日本語的発想は環境中心で、環境と一体化しやすい
18. 英語的発想は主格中心で、環境と一体化しにくい

19. 日本語に身体性が残り続け、母音の比重が多くあり続ける
20. 英語は子音の比重が多くあり続ける

 以上だが、ここで再び、上の言葉を補足しながら冒頭の循環運動(IVから再びIへ)を見てみよう。

I  日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が多い
(1)人の言語野は左脳にある
(2)社会と母国語の学習によって脳神経回路が組織化される
II  日本人は母音を左脳で聴く
(3)脳の自他認識機能は右脳にある
(4)人は発話時に母音を内的に聴く
(5)日本人は発話時に自他分離の右脳をあまり刺激しない
III 日本語は空間の論理が多く、主体の論理が少ない
IV 日本語に身体性が残り続ける

 いかがだろう。複雑で分りにくいかもしれないが、この循環運動が理解できれば、日本語が内包する環境への同調性、自他認識の薄弱性がよくわかるのではないか。さらに詳しくは「言葉について」の各項、「脳における自他認識と言語処理」でも引用した“日本人の脳に主語はいらない”月本洋著(講談社選書メチエ)などを参照して欲しい。
———————————————–

ブログからの引用は以上ですが、日本語という極めて環境依存性の高い言語を使って、どのように「公(おおやけ)」の議論の場を構築していくか、という難題を皆で一緒に考えましょう。Twitterも始めました。http://mobile.twitter.com/sanmotegi
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。