[3561]E・トッドと、池上彰の対談を、私が、縮(ちぢ)めて載せる。「どうもロシアが勝ちつつある」と。
副島隆彦です。 今日は、2023年7月2日(日)です。
副島隆彦です、7月5日に、追加で、2人の対談の3本目をうしろに付け加えた。
以下に、私が、貼り付ける記事は、6月13日に発売された、
『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(朝日新書)に伴って、対談者である、イマニュエル・トッドと 池上彰(いけがみあきら)の 発言の一部を、 本の中身をそのまま、屹度(きっと)この本を売る宣伝の意味もあるのだろうが、最近、しつこくネットで読めるようにしている。これを、私が、ここに転載する。
ただし、E・トッドの主張である、「このウクライナ戦争では、ロシアが問題なのではない。アメリカが問題なのだ」に、池上が、突き動かされて、「ロシアの戦略が成功しつつある(のかも)」 と、ここで池上の大きな、思考転換(しこうてんかん)、思考の変更が、如実に見られる。だからこの対談文 の 記事を、 ここに貼り付ける。
ここで、私、副島隆彦は、ここで、評論、言論業界でやってっはいけない、極(きわ)めて異例なことを、引用文に対して敢えてやる。上記の池上彰の主張の中心点である、「ロシアの戦略が成功しつつある・のかも」の「のかも」を、私が省いた。消した。
このように、 2人の対談者の語りの文を、私が、私の能力、知能を使って、勝手に縮めて、短くする。
どうも、だらだらした 読みにくい、トッドの英語(トッドは、フランス知識人だが。きっと英語で話した。この英語が実は聞きづらいのだ。とてもフランス語で話したとは思えない、分かりにくい 翻訳文だ )の翻訳者が、きっと 苦労したであろう日本語訳文だ。 池上の語りの日本文の方は、正確に起こしているようだ。それも、だらだらと、読みにくい。
だから、それらを、私が、ばっさりと、ガツンと、言い切り、断定の文に、切り詰めて、縮めて、明瞭にした。 接続詞も ほとんど、すべて削った。
今の私たちが話す、現在の日本文の「・・・ではなかろうかと思う」とか、「・・・ということではないだろうか」とかの、不要な、言葉は、すべて私の判断で削除した。
その方が、トッドと池上にとっても、主張が明確になっていい。 現在の日本文は、だらだらと不要な間投詞と接尾部が多く煩雑だ。現在の私たちが書く、日本文は、まさしく劣等言語(れっとうげんご)だ。私たちは、「〇〇は〇〇だ」と、断言、言い切りの、もっと文を約(つづ)めた断定の文にしないといけない。
この考えは、私、副島隆彦の最近の大きな信念だ。日本文の、曖昧(あいまい)表現の、知恵遅れにしか見られない、不明瞭な文を、絶滅したい。その人が、何を言っているのか、をはっきりさせる。 異論、反論、当事者たちからの抗議を、私は、受け付けます。
以下、私が、具体例として、訂正した ネット上の 2人の発言の文の訂正、修正 は、きっと、あとあと重要な主張になるだろう。
元の2人のしゃべり文を読みたい人は、以下のURLに、戻って原文と、私、副島隆彦による 縮(ちじ)め文と、照らし合わせて、確認してください。
https://news.yahoo.co.jp/articles/68c151d38f171b4f35fe573a04153b86dca62f35
(転載貼り付け始め。ただし、副島隆彦が、加筆、短縮、修正してある)
〇 ウクライナ戦争の裏で進む「アメリカの危機」 池上彰「結果的にロシアの世界戦略が成功しつつある」 アエラ誌
2023/06/30 筆者:エマニュエル・トッド,池上 彰
1年以上たった現在でも激しい戦闘が続く、ウクライナ戦争。すでに世界情勢に多大な影響を与えているが、その行く末はどうなるのか。対外的な戦争を行っている状況で、各国とも内政に問題を抱えている。特に注意しておきたいのがアメリカ国内の分断だ。
フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏とジャーナリストの池上彰氏が対談。『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(朝日新書)より一部を抜粋、再編集し、紹介する。
問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界
* * *
池上彰 この先、この戦争はどうなるか。ウクライナはロシアを国内から追い出すまで戦争を続けると言う。プーチン大統領は、ドネツクやルハンスクなどウクライナ4州から撤退しない。
アメリカも、この戦争から抜け出すことは難しい。ヨーロッパ諸国も、ロシアに経済制裁をした結果、天然ガスが入ってこないことで経済的打撃を受けている。この戦争に勝者はいない。延々とみなが負ける負け戦が続く、この未来が来るのでは。
エマニュエル・トッド この戦争が始まったとき、私は地政学の本を書いていた。世界は中国対アメリカという構図で見ることができると考えた。アメリカの生産力がひじょうに弱まっている。中国も出生率が低下している。だが、この構図だけで世界を見るのは正しくないことに気づいた。
私は焦点をロシアに移した。すると、ロシアは保守的だが、たとえば乳幼児の死亡率を引き下げた(副島隆彦注記。これはプーチンのすばらしい業績だ。これと、ロシアの男たちの死亡年齢を5歳上げた)。乳幼児の死亡率がアメリカを下回った。だから社会として安定した国であると分かった。
ロシアの人口は減少傾向にあり、ロシア的な帝国主義を世界に広めていくほどの
勢力ではない。中国も同様に出生率が低下している。だからこの2国が、今の世界システムで問題(災難、危険)なのではない。
ヨーロッパは、混乱しつつも、社会的にはまあまあ安定している。イギリスが危機的な状況にあるから、私は、アメリカの問題に向き合うことになった。
世界のシステムを考えていくうえで、どの国が問題か。世界が不安定化していく中心はアメリカだ。世界がこれから先に向き合うのは、アングロサクソン圏、とくにアメリカの「後退のスパイラル」だ、と私は気づいた。問題は、ロシアでも中国でもなく、アメリカだ。
いまの人類が直面している問題は二つ。地球温暖化と、アメリカだ。この戦争がどういう形で終わるか、あるいは終わりがあるか分からない。その理由は、不確実性(uncertainty アンサーテンティ)だ。 ロシアと アメリカの軍需生産力が不確実だ。どう終わるのかは、なかなか見えづらい。
さまざまな終わり方の可能性を考えていくと、アメリカ社会が貧困化などの問題で後退のスパイラルにますます入り込んでいく。このことに因(よ)る「アメリカの崩壊」があり得る。
フランスのジャーナリストたちは、ロシアが50%くらいの確率で崩壊すると見ている。だが私は5%だが、アメリカが崩壊すると見ている。イギリスもおそらくこれから後退し、崩壊を迎える。この可能性がある。
池上 番の危機は、アメリカの危機だ。みんなロシアが危機だ危機だと、日本ではいろんな人が言っている。しかし実はアメリカが大変な危機的な状況なのだということですね。
確かに、アメリカ国内での分断ということは、明らかに進んでいる。共和党の内部が分裂をしている。下院の議長が15回も投票しなければ決まらなかった。ト
ランプが
「選挙に出る」と言ってしゃしゃり出ている。共和党も、トランプについていくという人ばかりではない。
じゃあバイデン大統領は大丈夫なのか。機密文書の問題が出てきたり高齢で。アメリカ自身が迷走している。アメリカ自身が危機的な状況にあると考えなければいけない。
ロシアがこの戦争の前から、「世界でアメリカが唯一の大国であってはいけない。多様な世界でなければいけない」と言っていた。今回のウクライナ戦争をきっかけに世界がさまざまに分断し、多様になっている。これでロシアの世界戦略が成功するかもしれませんね。
ウクライナは大変な苦戦をしている。私たちはそこだけを見てしまうが、もっと広く長く見ると、ロシアの世界戦略が成功しつつある。
トッド この分断した世界が、必ずしも不安定な世界だ、とも限らない。
分断した世界が不安定だと言い切るのは間違いだ。人口の面から停滞した国があって、ある程度、平和的で安定した社会(国)もある。アメリカがただ1国の世界覇権国家として存在し続けるといった世界のほうがむしろ危(あやう)い。世界の不安定化を招く。分断された世界の方が、不安定ではない。
池上 なるほど。メディアが一方的に伝えていることに対して、「ちょっと待て。いやいや、問われているのは実はアメリカなんだ」という、オルタナティブな別の見方も提示すべきだ。そして冷静な視点でこの戦争を見るべきだ、とトッドさんから教(おそ)わっている。
この戦争はどういう形で終わるか。この戦争の終わり方が私は見えない。どういう形で広がるか、あるいは終わるか、を(あなたは)どう考えるか。
トッド そうですね……。この戦争は「終わらない」と思う。 私は5年だと思う。(私の専門である)人口動態(学。 じんこうどいたいがく。demography デモグラフィー)で見ると、ロシアの人口が減り始めるのが5年後である。第1次世界大戦、第2次世界大戦ともに5年ほどで終わった。
池上 私の予測では、プーチン大統領の頭のなかに、4年間の「独ソ戦」(ロシアでは大祖国戦争と言う )がある。第2次世界大戦中の1941年6月から45年5月にかけて「独ソ戦」があった。
ドイツの侵略で、現在のウクライナの土地で大戦車戦をやった。4年かかってドイツを追い出した。だから、少なくとも4年は続くだろう、とプーチン大統領は考えているだろう。
だから、少なくともあと3年間くらいは、やはり私たちも残念ながら、覚悟しなければいけない。結果は勝者がいないという戦争だ。私たちはこう認識すべきだ。
この戦争が終わったとき、中国、インド、サウジアラビアといった国が勝者として生き残ると考えられるか。
トッド 2つの大国が対決すると、その後にその周りにいた国が台頭してくる、ということが人類の歴史のなかである。
第1次世界大戦もヨーロッパのなかで対立が起き、ヨーロッパは自殺するような形で崩れた。この対立のなかからアメリカの世界覇権というものが生まれた。
この意味で、池上さんのおっしゃった、その他の国々が勝者のようことがあり得る。ただし、これらの国は世界の覇権を取るほどではない。
インドという国は、人口が多い、ひじょうに多様な国で、ムスリムの人口も多い多宗教国家で、本当に不確実だからわからない。世界を支配するほどの力は
ない。サウジアラビアもない。
むしろロシアが勝者になる可能性がある。この戦争は単なる軍事的な衝突ではなく、実は価値観の戦争(the war of values ザ・ウォー・オブ・ヴァリューズ 。大きな価値 が対立する戦争。どちらも後には引けない戦いになる )だ。西側の国(the West ザ・ウエスト)は、アングロサクソン的な自由と民主政治 が普遍的で正しいと考えている。
一方のロシアは、権威主義でありつつも、あらゆる文明や国家の特殊性を尊重するという考えが正しいと考えている。中国、インド、中東やアフリカなど、このロシアの価値観のほうに共感する国は意外に多い。
〇 「 エマニュエル・トッド×池上彰対談 ウクライナ戦争、中国の参加で見えた「米国の凋落」 」
2023/06/14 アエラ誌 朝日新聞 (の中の、まだ生き残っっている左翼インテリ記者の残党たちの活動による よい仕事だ。副島隆彦)
歴史人口学者・家族人類学者 エマニュエル・トッドさんEmmanuel Todd 1951年、フランス生まれ。家族構造や人口動態などのデータで社会を分析、ソ連崩壊などを予見。近著に『トッド人類史入門 西洋の没落』
ジャーナリスト・池上 彰さん(いけがみ・あきら) 1950年、長野県生まれ。名城大学教授、東京工業大学特命教授。主な著書に『池上彰の「世界そこからですか!?」』など
ウクライナ戦争の終わりが見えない。各国の思惑も絡むなか、注目すべきは「アメリカの凋落」だと指摘する歴史人口学者のエマニュエル・トッドさんと、ジャーナリストの池上彰さんが語り合った。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。
* * *
ウクライナ戦争が始まって1年3カ月余。ゼレンスキー大統領が「反転攻勢」の開始に言及するなど、依然として出口は見えない。ロシアを抑え、軍事費で世界1位と2位は、アメリカと中国だ。その中国はなぜ、このところウクライナ戦争に仲介の動きを見せているのだろうか。エマニュエル・トッドさんと池上彰さんは6月13日に、『問題はロシアより、むしろアメリカだ』(朝日新書)を出版する。ウクライナ戦争を「終わらない戦争」とみる2人の対談内容を本誌で緊急報告する。
池上:中国の習近平国家主席が、2023年3月20日にロシアを訪問して、プーチン大統領と会った。この動きを(トッドさん、あなたは)どう見るか。
トッド:ロシアがこのウクライナ戦争で分かったことは、ウクライナが軍事面でNATOに支えられている。
ロシアは、戦争経済(ウォー・エコノミー)の段階に入った。この戦争はもう消耗戦だ。たくさんの兵士が死んだ。資源面においても、たとえば軍事品、大砲etcが重要になった。この分野で、ロシア側も西側(the West ザ・ウエスト。欧米)も、「アメリカの弱さ」に気づいた。アメリカの生産面における弱さを知って、「中国がロシア側で参加する」ということが明らかだ。
■米が負ける可能性
グローバル化した世界で、工作機械の分野で、中国は世界の約30%だ。日本は約15%、ドイツも同じ約15%。イタリア、アメリカは7%、8%だ。これは私の仮説だが、アメリカとNATOの国々の負けが見える。
中国の態度は、中国はこのウクライナ戦争が始まった時点から、常にロシアを支えた。ロシアが負けると、アメリカは次は中国を攻撃すると、中国にはわかっている。だからロシアを支える。
中国がここ最近、態度を少しずつ変えてきている。アメリカとNATO側が、この戦争に負ける、と中国は気づいたのではないか。中国はウクライナ戦争で、アメリカが、この戦争を台湾まで広げることで決着となると、最初は厳しく見ていた。ここ最近は、「このヨーロッパでの戦争は台湾までは来ない。ロシアとウクライナの地で終結する」と見ている。
■産業生産力の戦争
この戦争を産業生産力の面から見よう。アメリカは爆弾や大砲を十分に生産できない状況になる。アメリカは、同盟国の工業国にプレッシャー(圧力)をかける。どこの国か。ヨーロッパではドイツ、アジアでは韓国と日本、とくに日本だ。
アメリカ側についている国で、産業国家は、日本とドイツだ。アメリカがこの2国にプレッシャーをかけ始める。
池上:態度を少しずつ変えてきている中国は、23年2月24日に、ロシアとウクライナの、停戦に向けての仲介案を出した。これをどのように評価するか。中国の狙いは何か。(あなたは)どう見るか。
トッド:世界レベルで、「中国は仲介国である」と、自身を位置付けた。
23年3月10日に、外交関係を断絶していたサウジアラビアとイランが、中国の仲介で外交関係を正常化する合意をした。サウジアラビアの同盟国であるアメリカは蚊帳の外だ。
この「世界の地政学ゲーム」に中国が入ってきた。先ほど触れたが、「ロシアがこの戦争で負けることはない」とわかったからだ。中国は、「アメリカはだんだん傾いていく大国だ」と見ている。そして中国が世界政治の中心に近寄る。だからこその3月10日の行動(サウジとイランの国交回復、和解を仲介した)だ。
■NATOを潰す目的
世界的なアクター(役者)の一つとなった中国は機会があるたびに、「アメリカに取って代わろう」としている。ここには、「真の和平案はない」と私は考える。
中国とロシアの同盟関係の目的は、NATOを潰すことだ。アメリカの産業界が非常に弱くなっているとすでにわかっている。
私の悲観的な見方を話す。ロシアと中国は、この戦争をやめることに利益がない。続けることにこそ意義がある。逆にアメリカは、自分のしかけた罠にハマってしまった。
この戦争は近い将来どうなるか。ロシアと中国は人口的な面、人的資源の面で、だんだんと人口が減ってくる。
ロシアの人口ピラミッドから、5年後に人口が減るという時期が来る。これからの10年ぐらいで中国も労働人口の30%が縮小する。だからロシアと中国にとっては、今がアメリカのヘゲモニー(覇権)を崩壊させるチャンス、時期だ。 (構成/編集部・小長光哲郎、通訳・大野舞)※AERA 2023年6月19日号より抜粋
「 問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界 」 (朝日新書)
エマニュエル・トッド,池上 彰 2023年6月13日 発売
●エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
歴史人口学者・家族人類学者。1951年、フランス生まれ。家族構成や人口動態などのデータで社会を分析し、ソ連崩壊などを予見。主な著書に『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文芸春秋)『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)など
●池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。NHKの記者やキャスターを経て、フリーに。名城大学教授、東京工業大学特命教授。主な著書に『世界史を変えたスパイたち』(日経BP)『第三次世界大戦 日本はこうなる』(SB新書)など
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦です。どうやら、トッドの主張に押されて、 池上彰 が、私、副島隆彦の影響を受けだした。 池上は、「どうもロシアの世界戦略が成功しつつある」
西側(the West ザ・ウエスト)ではない、非(ひ)欧米諸国の、団結をようやく受け入れ出した。最近の言葉でいえば、非(ひ)西側は、インド、サウジと中東諸国、ブラジルと南米諸国として、アフリカ54か国、など のglobal south 「グローバル・サウス」である。ここには、ロシアと中国がはいる。
私、副島隆彦は、池上彰が、「どうも、ロシアが勝ちそうだ。アメリカの国内が危ない。ロシアよりも、アメリカが先に崩壊するのではないか」と、この対談本で、言い出したから、と言って、急に驚かない。 私にとっては、西側=G7体制は、the Deep State デープステイト = cabal カバール の 極悪人(ごくあくにん)たちが、頂点で支配する体制だから、世界人民によって、打倒されるべきだ、と、ずっと主張してきた。池上彰が、ここまで来るとは微(かす)かにも思っていない。
それでも、この2人の発言に、日本のインテリ層は驚かなければいけない。自分の頭が少しでも良くなるためには。そう思うので、対談での主張を勝手に、約(つづ)め言い切り、断定の文にすることで、明瞭にした。日本語(文)の、今の、劣等、欠陥言語 の巨大な欠点を、私たちは、なんとかしないといけない。 副島隆彦拝
副島隆彦です。今日は、2023年7月5日(水)です。さらに追加で、3本目の、トッド・池上対談の ネット上の、アエラ AERA 誌の 文章を、以下に転載します。
〇 「 アメリカがドイツに戦争をしかける理由 ウクライナ戦争で見えた「保護国」に依存するアメリカ 」〈AERA〉
2023年6/27(火) アエラ誌 朝日新聞出版
(副島隆彦注記。私が、この対談へも、手を加えて、だらだらとしたおしゃべり文章を短く縮(ちぢ)めて、断言、言い切りの明瞭な文にした )
ウクライナへの最大の支援国としてロシアの軍事侵攻を阻むアメリカ。しかし、アメリカにはドイツへの介入の目論みがある。こう語るのは、フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏だ。その背景をジャーナリストの池上彰氏との対談をまとめた 『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、紹介する。
* * *
池上彰 トッドさんはドイツについて、アメリカは、実は、今回ロシアにだけでなく、ドイツにも戦争をしかけていると言う。ロシアとドイツを分断して、ドイツ経済を破綻させようとしていると指摘している。なぜ、アメリカはその必要があるのか。その試みは成功するのか。
エマニュエル・トッド そうですね、アメリカが、ドイツ経済を完全に破壊させるというのは正確ではない。あくまでも自分たちアメリカ、そして西側のためのものとしてだけドイツ経済を保ちたい、ということだ。 ロシアの補完的なものにドイツがなるのではなくて、あくまでもアメリカのためにドイツはあるべきだ、とアメリカは見ている。私は、アメリカがドイツ経済を破壊しようとしているとまでは言わない。
それでも、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」が人為的に爆破された(副島隆彦注記。これは、アメリカ軍とノルウエー軍の水中工作部隊がやったことが、ほぼはっきりしている。
アメリカは今もしらを切っている。副島隆彦注記)この出来事を見ても、アメリカがそういう、ドイツ経済を破壊したい思惑を持っていることがわかる。 アメリカがいまの戦争に勝つためには、ドイツの産業と工業の力、そして日本や韓国の工業の力がなくては勝てないん。これらの国々が、軍需品を生産してくれることが必要。
つまりこれらアメリカの「保護国」( ほごこく。Protectorate プロテクタレット。従属国と同じ意味。副島隆彦注記) が、軍需品の生産をしてくれる必要があるん。 この状況は、始まったばかりだ。もし、ウクライナ軍が負けてしまったら、NATOはいまの状況をコントロールできなくなる。もしそうなったら、ドイツがアメリカに従わなくなることも想定できる。状況はますます複雑になっている。
ポーランドの大使が「もしウクライナ軍が負けたら、今度はポーランド軍が戦争に突入する」と発言した。このことからも、ひじょうに状況は複雑になる。ポーランドという国は、ヨーロッパの歴史を眺めてみると伝統的に、無責任なところがある。ひじょうに複雑化してしまう。いろいろと想像はできる。
18世紀のヨーロッパでは、ドイツとロシアが、ポーランドを潰(つぶ)すこと(領土を分け合って、ポーラントを国家として消滅させた。副島隆彦注記。 )をした。ポーランドを分割した。 予測であり、考えたくもないようなことなので、私も話すのがとても難しい。
ドイツ自身が何を考えているの、全くわからない。私自身、このウクライナ戦争で、ドイツがアメリカに非常に従順であることに驚いた。 ノルドストリームをアメリカが破壊したことに対しても、されるがままだった(副島隆彦注記。一片の抗議声明もドイツ政府は出さなかった)。
この状態は、1812年にナポレオン軍がロシアへ侵攻してきたときを、私たちに思い出させる。 あのときナポレオン軍が次第に勢いを失って、どんどん後戻り(撤退。withdraw ウイズドロー) をせざるを得なくなった。あの時代は、フランスとロシアは人口がほぼ同じだった。ナポレオンが率いるフランス軍の下には、ひじょうに多くのドイツ人も含まれていた。
ロシアに対してフランスとドイツは同盟国だった。ところがフランスがだんだんと敗北して、戦況が怪しくなった。このときに、ドイツは、フランスを見棄てて(離反して)ロシア側についた。 このことからも、ドイツが今後、どういった行動に出るか、見えない。もしかしたらアメリカがナポレオンのときのフランスと同じ目に遭う。この意味で「ナポレオン=バイデン」と言うことができる(笑)。
いまの状況を見る限り、戦況はアメリカに完全に優位だと言えない。いろんな国がそれを感じ取って動き始めている。今、私が言っていることはあくまでも予測でしかない。半分冗談として捉えていただきたい。
私はこれらの要素を考えて分析をしていこうと思う。いまの時点では、こうなるだろうと、予測はできない状況だ。 ここで私は、ひじょうに断定的なものの言い方を、つまりいわゆる西洋のディスクールで聞かれ考え方とは少しズレた、かなり断定的な言い方をしている。
実は、西洋のディスクール(discourse 言説。げんせつ。英語ではディスコース。講演。談話。 コトバによる思想の伝達のこと。副島隆彦注記)はひじょうに偏(かたよ)っている。だから、私のものの言い方もひじょうにエクストリーム(過激 extreme )になり、断定的な言い方になる。 話の全体(コーパス corpus ) つまりいろんな議論に関する分析(アナリシス analysis )と ディスクール(議論)の全体で、そのなかのマジョリティー(多数派意見)はどのようなものなのか。
そのマジョリティーの人が何を言っているかに配慮するので、私のこの(ヨーロッパ知識人としては過激な)言い方がある。 西洋では、「プーチンはモンスター(怪物、妖怪)だ。それに対して、アメリカは自由の擁護者だ」とよく言われる。この意見は、西洋ではどこでも誰でも、言っている。みなが目にする話だ。
それに対して、私の意見はマイノリティーだ。だが、誰から何かを奪う意見ではない。私は、意見の多様性、多元性というものを擁護したい。
池上 トッドさん自身は、「ちょっと断定的な言い方をしますが」とか、あるいは「私は、アメリカフォビア( America phobia 米国嫌い)だ 」とちょっと冗談めかして言う。このような保留(りゅうほ。reserve 限定条件。差し控え) をしつつも、このウクライナ戦争は多様な見方が本当に必要だ思うのですね。
メディアが一方的に伝えているなかで、「ちょっと待てよ(問題はアメリカだ)」という視点が、非常に大事である。このとき極めて知的レベルの高いトッドさんの視点が、私には大変参考になる。このウクライナ戦争の今後を見ていくうえで、とても大事な視点だと思った。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝