[3478]中国の習近平の新体制が明らかになった。

副島隆彦 投稿日:2022/10/26 16:17

副島隆彦です。今日は、2022年10月26日(木)です。

 中国共産党の「20大(だい)」(第20回党大会)で、 次の指導部7人、所謂「チャイナ・セブン」が決まった。それは22日の閉幕式の後の、23日の「1中全会」の後だった。

 前指導者の、胡錦涛(こきんとう)が、閉会式(22日)の会場の、壇上から、やや強制的に、連れ出されて、退席させられたことで、世界に衝撃が走っている。

(転載貼り付け始め)
2022年10月26日(水) 9:52
胡錦濤氏退席前の新動画が拡散 ファイルに不満?:映像:日本経済新聞 (nikkei.com)
https://www.nikkei.com/video/6314320388112/

(転載貼り付け終わり)


(副島隆彦から。ここに、下に貼った、新聞記事の中の、写真と同じもの を貼ってください )

 今や、世界政治に関心のある人、そして巨大中国の今を知りたい、と思う人なら、誰でもが強い興味を持つ、今の中国の指導部内の権力闘争(けんりょくとうそう。power struggle パウワ・トスラグル)のことを、私は、急いで、ここに書かなければいけない。
私、副島隆彦が、何を書くかを、皆が、強く期待しているからだ。
 
 私には、取り立てて、最新の情報で中国に関するものは、無い。ただし、安倍晋三殺しについてのものなら、来週(11月2日)発売の、私の最新の金融本の、うしろの方に、ちらと、恐ろしい情報を、それとなく書いた。分かる人だけ、分かるように書いて載せた。

 中国のことでメディア(新聞、テレビ)で、報じられている以上のことは、私は、今は、知らない。しかし、私、副島隆彦の頭脳が、あんな「中国ウオツチャーで、中国専門で育てられた各社の記者たち、および、日本の国家スパイで、長年、中国を観察して来た(ジャーナリストのふりをする)者たち」が書いている程度のことで、収まるわけがない。 

 私のこの文のお仕舞(しまい)の方に、さっき読んだ、日経新聞の 中国ウオッチャーの中沢克二(なかざわかつじ)記者の、文の頭の方だけ載せる。22日の党大会の閉幕式の様子を、この記者の文が、生々しく書いているからだ。

 胡錦涛(こきんとう。フー・ジンタオ)前国家主席が、壇上の、習近平の右の席から、やや強制的に退出させられた動画が、今朝から世界中に流れた。この衝撃の詳細の動画を、関心のある人たちが日本中で見ている。誰が撮影したものか分からない。 中国政府にとってはイヤなことだろう。

 今度の党大会(20大)で、習近平の独裁体制が完成した。これは明らかに習近平の独裁体制だ。これで、ウクライナ戦争に継ぐ、世界戦争( WWⅢ 。第3次世界大戦)も辞さずの態勢を固めた。共青団が、トップ人事からすべて消えた。 胡錦涛と李克強(りこっきょう。リー・クーチャン)が率いて来た(胡耀邦=こようほう=が創立者) 共青団(きょうせいだん)が、壊滅的な打撃を受けた。

 習近平の独裁は、中国国内と党内の 反対派を 政権からほぼ消滅させた。そして、中国は、ロシア(プーチン)と組んで、英と米の西側諸国を頂点から操(あやつ)る、デープステイト、および、Cabalカバール を打倒する、と決めたのだ。

 私は、このことを、このすぐ下 ↓ にテキサスから、最新のことを書いてくださった、西森マリーさんの「カバールの正体」(2021年7月刊、秀和システム)から、真剣に学んだ。だから、これからは、「ロシア、中国 対(たい)西側、英米カバール の戦い」と書く。

世界人類の99.99%を支配する カバールの正体

 李克強たちの、共青団(きょうせいだん)の 善人さまで、民衆を大事する民主的でリベラルな指導者たちでは、いざと言う時に、戦時体制を維持できない。これからの習近平の5年間 で、欧米の超支配層(カバール)を、打倒する決意だ。私、副島隆彦は、この考えを支持する。

 私、副島隆彦は、共青団の民主化路線を行く人々が、好きだ。ずっと好きだった。だが、とりあえず、今回は、彼らの負けだ。
 だが、私には、彼らの、これからの運命が分かる。 彼らは、英と米の超支配者たち(カバール、Cabal )を 中国が打倒しつつあり、、戦いが分水嶺を越した辺りで(3年後?)、中国共産党から出て行って、中国民主党を作るだろう。 

 そうして、中国は、世界覇権国(ヘジェモニック・ステイト)であるための、デモクラシー(デモス・クラティーア demos-crati a )の条件を満たすために、複数政党制(マルチ・パーティ・システム)となり、普通選挙制度(ユニヴァーサル・サファレッジ)を実施する。 私は、このことを、自分の中国本で、ずっと書いてきた。これまでに私の本を、しっかり読んでくれている人だけ、がこのことを知っている。

 中国は習近の新平体制は、共青団(ここに党員が7千万人もいる。現在、9700万人いる中国共産党員のうちの、実に72%だ。人民思いの優しい者たちだ )は、ソフトな欧米追随型の、市場経済優先(小商売をする民衆に優しい)、国内の経済成長優先 だ。彼らの存在を、かなぐり捨てて、習近平は、「共青団では戦えない。若い頃の、地獄の体験と、苦労が足りない」と、自ら、戦争を指揮する態勢を、急速に整えつつある。

 だから、欧米の金融市場との関係を、自分の方から、先に切断しても構わない。中国から、この40年間に、民間大企業を作った大富豪たちが、脱出を始めた。まずシンガポールに向かっている。

 西側によって、金融市場での中国の信用と 資産の評価(ヴァルエイション、valuation ) の下落を引き起こされても、中国は構わない。中国の株式市場から、外資の短期資本が、逃げ出して、上海と、香港、深圳の市場で、暴落が起きても、これを平然と受け止める、と決意したようだ。

 中国は、西側 (カバール)に、弱みを見せない、と、今度の、党大会(20大。2022年10月16日から23日)で、堅く決意した、ということだ。 インチキのドル支配による、世界金融市場を、逆に叩き潰す覚悟を決めた。  

 そのために、あくまで、実物経済(リアル・エコノミー)の優位で、闘う。中国は、金融面(欧米からの、超短期の投機資本=ショート・マネーの”金融核爆弾” )の攻撃 から、自分たちが、痛めつけられ、脅されることを予め、拒否する決断をした。 それよりは、中国派、自分の方から、先制攻撃(プリエンプティヴ・アタック)を掛けて、保有する米国債(べいこくさい)の、一気の一挙的な売却を、NYの債券市場で行う。

 そして、米国債とドルを大暴落させるだろう。 そうやって、中国 と 貧乏”資源”大国の 同盟(New G8 )を、防御し、欧米の金融資本(カバール)からの圧迫を、はっきりと粉砕する態度を明らかにした。

 金融資本ではない、実物経済(リアル・エコノミー。実物資産 =タンジブル・アセット)の力では、もう中国を脅すことはできない。だから、早めに、欧米中心の金融市場から、撤退を覚悟してでも、習近平は、自分自身の 金融の要塞(フォートレス)を構築する気だ。 

 中国は、ロシアが受けた処罰、制裁(サンクション)の打撃から、深く学んだ。2月24日のウクライナ戦争の開始、直後(2日後)に、西側同盟(30カ国で。日本を含む )は、周到に罠を仕掛けていて、それぞれの自国の 中央銀行を急襲した。そして、一気に、ロシア中央銀行の名義の在外資産 を、フォーフィチュア( forfeiture 刑事法の犯罪者の資産の 強制没収 )を行い、総額で3000億ドル=40兆円を、強制没収した(2月26日)。

 私、副島隆彦は、この出来事を、5月に出した、『有事の金。そして世界は大恐慌へ』(徳間書店刊)に詳しく書いた。今からでも、読みなさい。
 
 中国は、このロシアが受けた打撃から、強烈に、真剣に学習している。 
中国は、NYの債券市場で、先制的に、米国債を 小出しに、しかし、大量に売る、という準備態勢に入っただろう。すでに、中国株と、人民元は、売られて下落を始めている。1ドル=7.27元である。
 これに対決して、中国が、米国債を売ることで、NYの債券市場が崩れる(金利は暴騰する)。株式市場も大暴落を始めるだろう。   

今度の、「チャイナ・セブン」で、王滬寧(おうこねい。ワン・フーニン)が、生き残ったばかりか、党内序列4位で、復帰した。王滬寧が、中央書記処(しょきしょ)書記で、中央政治協商(きょうしょう)会議の主席になった。 

 詳しいことは、書かないが、王滬寧(おうこねい)は、ロシアの、ドミトリー・サイムズ(亡命ロシア知識人で、強い影響力のある人物。私と佐藤優の最新刊の、対談本で詳述した )と 同格で、つまり、ヘンリー・キッシンジャーと、連絡を取り合って、すぐに習近平に知らせる係だ。この事が、分かる人から上が、世界政治の 頂点のところを、理解できる、「バカの壁」を、上に突き抜けた人間だ。日本国内では、私たちの学問道場の熱心な会員で、私が、これまでに、免許皆伝を与えた 500人ぐらいしか、いないだろう。

 私、副島隆彦は、すでに、10年ぐらい前から、自分の中国本に書いている(毎年、1冊ずつ、この15年間、出してきた)。1993年に、鄧小平(とうしょうへい)が、40歳の習近平を呼びつけて、次のように言った。

 「習近平よ。私は、お前を、次の次の指導者にする。堅忍自重 して、修養を詰め。 お前のお父さんの、習仲勲(しゅうちゅうくん)は、偉かった。文革時の苦難に、私と同じく17年間、耐えた。

 習近平よ。お前は、私の敵である、江沢民、曽慶紅(そうけいこう)ら、腐敗した上海閥が、育てた男だ。それを、私は、彼らにバレないように、お前を、こちら側に奪い取り、育てる。胡錦涛と温家宝 から、いろいろと習え。

 共青団の、人民思いの、あの善人たちでは、中国を率いてゆくことはできない。彼らは、六四(ろくよん。天安門事件、1989年) で、学生たちを抑えることが出来なかった。

 お前なら、戦争が出来る。人民が、500万人、1千万人死んでも、お前なら、出来る。だから、私は、お前を、次の次の指導者にする」

と、鄧小平は習近平に言った(だろう。ただし、これは、私、副島隆彦の作り話。証拠はない。笑い )

 私は、このことを自分の中国本に、これまでに再三書いた。この1994年(習近平はこの時、40歳。私と同じ1953年生まれ。現在、69歳 ) から3年後の、1997年に、偉大だった 鄧小平は死んだ。

 中国分析で、あれこれと、中国を、腐(くさ)すように、冷酷に書いて、中国を分析して、さも、自分たちが、何か優れた知識人で、欧米基準の、立派な人間だ、と思い込んでいる、すべての者たちに、言っておく。

 世界は、「 独裁勢力  対 民主勢力 の闘い」と称して、
ロシア、中国の 全体主義(totalitarianism トータリタリアニズム )で、独裁制で、人権無視の 非民主的な国家たち と、 闘う( VS ヴァーサス) 、自分たちを、デモクラシー勢力で、より優れた政治体制の下(もと)にある優位な人間たち、と、思い込んでいる者たちよ。

 おまえたち、その民主国家群を、上から操(あやつ)って、支配している、デープステイトや、カバールの 超(ちょう)支配者たちのことを、お前たちはどう扱う気か。

「そんなものはいない。それは、× 陰謀論 だ」と、言い続けている者たちへ。私、副島隆彦 の真実の言論の刃(やいば)が、お前たちを、ひとりひとり、切り殺してゆく。

 お前たちには、ロシアと中国を始めとする、貧乏“資源”大国 の連合体が、
これまでの、西側 G7(先進国7カ国)すなわち、カバールCabal の世界体制を、「85 (非西欧): 15 (西欧、カバール)」の、人口、国土面積、資源の力、で打ち倒すだろうことが、分からない。見えない。理解できない。

ただし。ただし、だ。 副島隆彦は、目下、「 正義と 善 を唱える者たちが、必ずしも、勝たない。なぜなら、人間と言う、生き物 自体が、(動物たちから見ても)悪であり、ワルであり、汚れた、穢(きたな)い生き物だからだ。だから、悪魔(サタンよりも、ディアボロー、ダイアボロー と言う。スペイン語だ )を崇拝する者たちの、カバールによる、巨大な悪が、完全に打ち倒されることはない 」という、大きな、課題を、ずっと、考え込んでいる。深く考えている。

 これは、敗北主義 (はいぼくしゅぎ)と、言って、英語では、 defeatism デフィーティズムと言う。日本は、77年前の、連合諸国(れんごうしょこく the UN)に打ち破られて、敗戦した国だ。敗戦国には、ずっと、この、戦争で負けた国としての、惨めな思いの、敗北主義(デフィーティズム)が、付きまとう。 この デフィーティズムは、第1次大戦に負けた、ドイツで生まれたコトバだ。
 
 だから、佐藤優氏が、私たちの対談本で、明言(めいげん)した、「ウクライナは、急いで停戦(シース・ファイア)するべきだ。私は、戦争をするプーチンを好きではありません。それは、自分には、争いを好まない、沖縄人の血が流れているからです」と、言っていた。この言葉に、私たちは、深く留意しなければいけない。

 人間は、自分の能力の無さや、力の無さを、良く知っている者たちほど、常に、卑屈である。他所、周(まわ)りと、ケンカしないで、いつも、いつも「すいません、すいません。私が、悪いんです」で、生きている。 

 今の日本人の、この敗北主義の精神(ガイスト、エスプリ。霊魂だ)を、私たちは、もっともっと深く、研究しないといけない。勝手に、「 大和魂(やまとだましい)で、中国にも、ロシアにも、そして、アメリカにも勝つぞ」と、喚(わめ)いても、無駄だ。

 私は、習近平が、独裁体制を敷いて、英と米の デープステイト=カバールとの、これから、の厳しい、核戦争を含めた、世界戦争に耐えようとする決意を、評価し、支持する。

 だから、習近平たち中国共産党が持つ、悪(あく)の部分を、肯定する。そうしないと、カバールの巨大な悪(あく)に、勝てないからだ。

 プーチンの、優れた政治天才として持つ、正義と善(古代ギリシアの ”賢帝” ペリクレスの)を、はっきり知っている、ロシア民衆は、これから、自分も死ぬ覚悟で、西側同盟を支配する悪魔教の者たち(カバール)との戦いを、続けるだろう。

 私たち日本人は、どうするのだ? 人間が持つ、小さな悪を自ら自覚して、こじんまりと、この島国(島嶼=とうしょ=国 )に、立て籠もって、上手に立ち回って、世界から吹いて来る、大きな嵐を乗り切るだろう。これで、よし、と私も、する。

 そして、日本は、やがて、この2千年間、そうだったように、歴代中華帝国(れきだいちゅうかていこく)に、従順に従う、属国のひとつに、静かに戻って行く。これもよし、とする。

 私は、これから、急いで、超特急で、自分の、今年の中国本を書いて、出さないといけない。やる。どんなに、粗製乱造(そせいらんぞう)でもやる。編集長と2人で、突貫工事で、たったの1か月で書き上げるだろう。だからと言って、私の本が、内容の無い、つまらない本になる訳(わけ)が無い。

あ、そうだ。最後に、アメリカの政治 ことも、短く書いておきます。
 再来週の11月8日(水)に、アメリカで中間選挙(ミッドターム・エレクション)が行われる。 私の予測(予言)では、残念ながら、米民主党は、それほど負けないで、悪辣(あくらつ)な、又してもの不正選挙(ヴォウター・フォロード)も手伝って、上院も下院も、過半数は割るが、ボロ負け(大敗)することはない。だから、今のボケ老人のバイデンが、残りの2年を続けるだろう。つまり、このまま、イヤな政治が続く。

 我らが英雄の、ドナルド・トランプが率いる共和党は、勝つことは勝つが、大勝はしない。愚劣、極(きわ)まりない、今や、LGBTQ の気色の悪い思想(それでも、これが、変態=へんたい=のまま、曲がりなりにも、人類の最先端で進歩思想だ。トランスジェンダー=性転換者=という、奇形の、オカマとゲイたちの世界)の信奉者たちが、のさばる、民主党が、それほどは、負けない。

 この民主党(本来は、労働者と貧困層の政党 )を、上から支配するカバールたちが、そんなに簡単には、負けない。なぜなら、彼らは、人類の悪(あく)であり、悪(あく)そのもの、だからだ。このことを、私は、今、深刻に考えている。    副島隆彦記

(転載貼り付け始め)

〇 「「胡錦濤と目を合わすな」 病が招いた軍団完敗の悲劇 」
 編集委員 中沢克二  2022年10月26日    日経新聞

 北京中心部にある要人の執務地「中南海」の奥深くで秘密裏に繰り広げられる宮廷政治劇が、はからずも外国人記者のカメラが回る目の前で起きてしまった。共産党総書記の習近平(シー・ジンピン、69)は、怒り心頭だろう。

宮廷政治劇の主演は、前共産党総書記の胡錦濤(フー・ジンタオ、79)だ。習は脇役にすぎない。習は究極の権力集中である極権を手にしたものの、前任の長老を「体調不良」という理由で第20回共産党大会の閉幕式から途中退席させるしかなかった。

(この画像は、貼らなくてもいいです)
 中国共産党大会閉幕式で関係者に声をかける習近平総書記(左)。この後、胡錦濤前総書記(右)は退席した(22日、北京の人民大会堂)=共同

 中国政治の奥深さを知る人物は、厳しい情報統制のなか、漏れ伝わってきた当時の現場の実情をこう再現する。
 「(閉会式の)あの日は(人民大会堂のひな壇に座る要人らの)誰もが示し合わせたように、健康が優れない胡錦濤と目を合わせないようにしていたんだ。すれ違いざまに目が合えば、『聞きたくない話』に付き合わされ、自分が政治的に危うくなる」

「聞きたくない話」の中身
  まるで要注意人物、腫れ物に触るような扱いだ。ポイントは「聞きたくない話」という部分である。ずばり習近平への不満もにじむ胡錦濤の本音の嘆きという意味だ。習が全権力を握った今、長老と話すのさえ危険な行為になった。だから誰もが胡錦濤を避け、身体が弱っている長老への気遣いもなく冷たい態度をとる。

 おかしい。10年前まで厳しい規律が特徴の共産党トップだった人物が、習の晴れ舞台で不満を示すだろうか。あり得ない。そもそも長老は公の場で気ままに発言できず、内輪でも現トップの権威を傷付けないよう振る舞うものだ。


 閉幕式を途中退席する胡錦濤氏(後ろ中央)と李克強首相(前左)、習近平氏(前右)(2022年10月22日、北京の人民大会堂)=比奈田悠佑撮影

 ところが、そのあり得ないことが起きそうだった。まれにみる異様な宮廷政治劇を読み解くキーワードは「体調」と「本音トーク」だ。胡錦濤は確かに体調不良だった。だが、不良だからこそ遠慮のない本音の嘆きが出ることもある。

少なくとも、あの場にいた面々は、後に国営通信の新華社が英語版公式ツイッターで「胡錦濤は体調が優れなかった」と説明した本当の意味を知っていた。ストレートに「本音トーク」をしかねない危うい状態である。例えば、人は酔い潰れたときなどに本音を吐き、遠慮のない行動を取る。深層心理がそのまま表れるのだ。

 10月22日も両隣の習や全国人民代表大会常務委員長の栗戦書(リー・ジャンシュー、72)に何らかの意見をぶつけ、「自分にしゃべらせろ」などと迫ったとの説がある。これは証明できない。誇張の可能性もある。

 ただ、これに絡み、極めてわかりにくい大事な「スクープ」があった。病状を紹介する新華社の英語版ツイッターの2つ目である。記者と名乗る筆者は、新華ネットの副総裁である劉加文という重鎮だ。「胡錦濤は党大会閉幕式への出席を主張していました。最近、健康回復に時間がかかっていたにもかかわらず……」と明記している。

 閉会式に出席したいというのは、長老たっての希望だったのだ。新華社の説明には、健康上、出るべきではなかったし、習の意向に反して出席してしまったという含意がある。もう一歩、深読みすると、胡錦濤は閉会式への出席という行為そのもので何かを伝えたかったという示唆にもみえる。

 真相はやぶの中とはいえ、ひとつだけ確かなことがある。勝ち誇る習の隣に座った胡錦濤が、自らのふがいなさを嘆き、いたたまれない心境だったことだ。長老らが持つ赤い書類ばさみの中の紙には、胡錦濤がみるのもいやな名簿が入っていた。

 直前の次期中央委員会メンバーの選出の結果、長く自分を支えてくれたかわいい弟分李克強(リー・クォーチャン、67)が最高指導部から丸裸状態で退任し、中央委員にも残らなかった。丹精込めて自分が育て上げた共産主義青年団(共青団)と縁が深い改革派、汪洋(ワン・ヤン、67)の運命も軌を一にしていた。

そして次の日には、子飼いの副首相、胡春華も最高指導部入りできないばかりか、59歳という若さにもかかわらず政治局から追い出される。共青団の真のホープといわれた好男子の哀れを誘う末路である。

 チベットで健康を害した際、手足となって働いてくれたかわいい子分の胡春華さえ、自分は守れなかった。習は事前に通告していたはずだ。長老は翌日、起きる共青団派にとってのさらなる悲劇を知っていた。このままでは組織が弱体化し、7千万人を超す共青団員は路頭に迷う。軍団の崩壊である。


 記者会見に臨む習近平総書記(手前左)ら中国の新指導部。李強氏(手前右)、趙楽際氏(2列目右)、王滬寧氏(2列目左)、蔡奇氏(後方中央)、丁薛祥氏(後方左)、李希氏(後方右)(2022年10月23日、北京の人民大会堂)=比奈田悠佑撮影

 3期目入りする習が、自らの秘書、お友達で埋め尽くされた最高指導部メンバーを披露した23日の驚愕(きょうがく)の記者会見。そこからときを戻し、すったもんだの末、長老が途中退席を迫られた一幕を観察すると、違った風景がみえてくる。中国史に刻まれるクライマックスは、誇らしげな習によるお披露目ではなく、胡錦濤が主役の前日の悲劇なのだ。「胡錦濤劇場」は10年の闘いの全ての結果を物語っていた。

 体調不良とされた胡錦濤は、習の仕事を取り仕切る中央弁公庁の副主任らの手助けもえながら立ち上がったものの、一時退席を拒み、2回も席に戻るしぐさをみせた。新華社が説明した強い意志からしても、この時点で会場から去るのは長老の意思ではなかった。

 習と言葉を交わした後、李克強の肩をポンとたたいて歩き出した長老は、完全に正気に見えた。肩をたたいたのは、退任に追い込まれた李克強のやるせない心情を思いやる真心からの慰労の表現だろう。 (以下、省略。途中まで)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝