[3396]ウクライナ戦争。15本目。核戦争になるのか。以下の2つの評論文を真剣に読みなさい。
副島隆彦です。今日は、2022年5月10日(火)です。
ウクライナ戦争。15本目 として、載せる。が、私、副島隆彦の考えは、今日はあまり書かない。以下に載せる 重要な 2本の 「核戦争は起きる。プーチンは核兵器を使う(だろう)」という趣旨の評論記事を 読んでもらう。
昨日5月9日の、ロシアの第77回の戦勝記念日の様子を、クレムリン宮殿の赤の広場でやったのを、私は遅れてネットで見た。プーチン大統領が、おだやかに演説原稿を読み上げた。
参加者と、行進にする兵士たちと、観客席で聞いているロシア人たち、および、ロシア国民全員が、じっとプーチン演説を聞いていた。 ロシア人は、団結して、このウクライナ戦争の形をとった、ロシアと西側(北アメリカ、ヨーロッパ)との、核戦争を含めた世界戦争 の戦いの苦難に耐え抜く、という、決意に満ちた、引き締まった顔を全員がしていた。誰もニコリともしなかった。
以下に載せる 1本目は、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授へのインタビューを纏(まと)めて日本文にしたものだ。 インタビューアーの奥山真司(おくやましんじ)君は、今は、日本の数少ない 地政学(ちせいがく。地理政治学。ドイツ語でゲオポリティーク。英語で、ジオ・ポリティックス 。恐ろしい世界政治学の一部門 )の専門家に成長した。昔は、私のところに寄って来た。しかし、「私は反米ではありません」 私「ああ、そうなの」と、彼は私と袂(たもと)を分かった。喧嘩別れしたわけではない。
以下に載せる日本語文の、文末(ぶんまつ)の、日本語としておかしい個所は、私、副島隆彦は、主張をはっきりさせるために勝手に短くしたい。「・・・になってしまっているのではなかろうか」とか、「・・・というものです」とかは、不要だ。これらの表現法は、はっきり言うが、日本語という言語の欠陥点である。これらは、英語の、would , should, could 、might などの口語(おしゃべり文体)の 使い方に起因する。日本人が、これらの用法を理解するのは大変、困難だ。「・・・だろうなあ。でしょうねえ。×かもしれないですね」などだ。こういう文末表現だ。 本当は、すべて文章は、「・・だ」で、断定、言い切りで書かなければいけないのだ。私、副島隆彦が、こう言うと「それは、あんまりだ」と反論が起きるだろう。
それでは、「でしょう」「だろう」までは許す。それいじょうは許さない、と、私、副島隆彦は、日本国の文章規範(きはん)として決断している。
これらの曖昧(あいまい)表現法は、ヨーロッパ語文法典で、「サブジャンクティブ・ムード」(叙想法=じょそうほう=)と総称される。 高度の、人間心理のあいまいな表現法(ユーフェミズム)で、いわゆる × 仮定法 ではない。ここらのことは、私、副島隆彦は、英文法理論の研究者でもあるので、よく分かっている。これ以上は今は書かない。私の「英文法の謎を解く」(筑摩新書、3巻。1995年から)が、復刊されるので、その時になったら、宣伝する。
もう一本は、Edward Luce エドワード・ユース という、英高級紙の、FT (フィナンシャル・タイムズ)に、政治分析文を書いている大物新聞記者だ。 4月29日に載ったものだ。それを、提携している(大株主)の日経新聞が、5月6日に翻訳文を載せた。
この2本の評論文で、「ロシアのプーチンは、核兵器を打つ、かどうかについての、世界最高の言論人が、どう言っているか」が、私たちは分かる。今日は、私、副島隆彦の意見は書かない。この2本をしっかり読みなさい。
勝手にこのように私が、学問道場に、貼り付けて転載するのを、文春も、日経も、そんなに嫌(いや)がらないだろう。こういう、世界的な緊急事態だから、彼らも、情報拡散して欲しいと思っているだろう。 副島隆彦記
(転載貼り付け始め)
〇 「 J・ミアシャイマー / この戦争の最大の勝者は中国だ 〈プーチンが核ボタンを押すまで終わらない〉 / 聞き手:奥山真司――文藝春秋特選記事 」
2022年5/10(火) 文藝春秋オンライン
「文藝春秋」2022年6月号の特選記事を公開します。 J・ミアシャイマー(国際政治学者・シカゴ大学教授)、聞き手:奥山真司(国際地政学研究所上席研究員・戦略学博士)
◆ ◆ ◆
「ウクライナ危機の主な原因は西側諸国、とりわけ米国にある」 ロシアがウクライナに侵攻する9日前の2月15日。 シカゴ大学政治学部のジョン・ミアシャイマー教授(74)はユーチューブで配信されたインタビューでこう述べた。
外交関係者たちが高く評価する一方、学生たちが抗議運動を展開。さらにプーチン擁護のために同氏の論を都合よく利用する陰謀論者もおり、米国でも賛否両論が激しく巻き起こっている。再生回数は百万回を越えた。
ミアシャイマー教授は米陸軍士官学校(ウエストポイント)を卒業後、5年間の空軍勤務を経て、1982年からシカゴ大学で教鞭をとってきた。徹底したリアリズムにもとづき大国間のせめぎ合いを分析・予見する「攻撃的現実主義」の第一人者として知られる。冷戦後の国際政治の研究をリードしてきた。2001年に著した『大国政治の悲劇』で、中国の平和的な台頭はなく、米中は対立すると予想し、それが現実となった。
いったいこの戦争の本質は何なのか? 誰が勝者となり、結末はどうなるのか?
――このインタビューはミアシャイマー教授にとって開戦後日本メディア初登場となるものである。
◆ ◆ ◆
おそらく米国やドイツ、さらには日本の政府高官たちは、私の論に批判的だと思います。彼らにとって私の意見は「不都合な事実」だから。西側諸国が今回の戦争をどう見ているのかは、概ねこうです。
・全ての責任はプーチンにある
・プーチンは帝国ロシアやソ連再興を目指している
・プーチンは拡大主義者であり帝国主義者だ
・プーチンはヒトラーの再来だ
これらは、西側諸国の圧倒的な見方となっている。ただ、この考えは完全に間違っているし、“西側の作り話”といってもいい。
もっとも、私はプーチンを擁護しているわけではない。プーチンによる戦争遂行方法に責任があることは否定しない。しかしながら、「なぜこの戦争は起きたのか?」という問いに対する私の答えは、米国をはじめとする西側の対東欧政策が今日の危機を招いたというものだ。
そして、米国はこの戦争に深入りしたことで、結果的により大きな脅威、つまり中国への対応ができなくなった。 ではなぜそう言えるのか? 私が長年提唱してきた「攻撃的現実主義」の立場から、順を追って説明する。
世界には三つの大国が存在する
まず認識すべきは、国際社会の実態はアナーキー(無政府状態)であり、国家の上に位置する権威や「保安官」は存在しないということだ。今回の危機をみれば分かるように、国連の安全保障理事会は役に立たない。投票権を持つ常任理事国のロシアは、気に入らない提案には拒否権を発動できる。これでは安保理の決定事項は実効性に欠け、意味を持ちません。
無秩序な国際社会において、大国は合理的な欲求に基づいて、地域の中で一番強い覇権国を志向する。そして、自国の覇権が及ぶ地域において他の大国の勢力が及んでくることを防ごうとする――それが「攻撃的現実主義」の要諦だ。
今の国際システムには、3つの大国しか存在しない。米国、中国、ロシアだ。冷戦終結後、しばらくは米国の一極時代が続いた。しかし、2003年のイラク戦争後、中国が台頭し、ロシアが復権し、世界は米国一極から三つの大国からなる多極世界に突入した。トランプ大統領は2017年12月、政権発足後初となる戦略文書のなかで「我々は多極世界のなかで生きている」と記したが、これが米国が多極世界を公に認めた転換点だった。
ソ連崩壊後、長らく低迷してきたロシアはプーチン政権以降、資源価格の高騰をてこに徐々に復活してきた。また、経済的に力をつけた中国は軍拡を続け、西太平洋から米国を追い出そうとしている。 そうした中でウクライナ危機が起きた。 ・・・あとは有料。本文 10,907文字
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦です。2本目を載せる。
(転載貼り付け始め)
〇 「 [FT] 核使用を示唆するロシア 見えない米国のシナリオ 」
By エドワード・ルース Edward Luce
2022年4月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
https://www.ft.com/ 2022年5月6日 日経新聞
ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用も辞さない姿勢を示しているのはある意味、よい兆候といえる。それは、ウクライナでの戦争でロシアが劣勢にあることを表しているからだ。だが彼の脅しは同時に破滅的な事態を招く危険もある。
(写真) 必要ならば核兵器の使用をも辞さない姿勢をみせるロシアのプーチン大統領を前に、世界はキューバ危機以来の危険な事態に突入している=ロイター
もしプーチン氏が核兵器使用の可能性に触れることで西側諸国を恐怖に陥れるのが狙いなら、その戦略は機能していない。北大西洋条約機構(NATO)はウクライナへの支援を拡大し続けているからだ。
問題はプーチン氏がロシアの敗北が避けられないと考え出した場合、何をしでかすかだ。プーチン氏は、次にどのような行動を取るか自分は常に正しく理解している、と言いたげだ。彼は虚勢を張っているだけなのだろうか。その答えはプーチン氏にさえわからないのかもしれない。
「本質知る人は沈黙貫く」
いずれにせよ、もはや事態は後戻りできない状況まで来てしまった。プーチン氏は、核戦争に至ったかもしれなかった1962年のキューバ危機以降に確立された核兵器を使うという脅しはしないというタブーを破ってしまった。そのことで私たちはまったく新しい世界に身を置くことになった。
今、大半の人が気づかないうちに世界はキューバ危機以来の危険な事態に突入しつつある。50歳未満のほとんどの人は、核の脅威など20世紀の遺物だと思いながら成長してきた。だが、この数週間で核攻撃の応酬が現実のものになるかもしれないとの可能性が浮上、今やそのことが今世紀の平和にとって最大の脅威となってしまった。
プーチン氏の核の使用も辞さない構えの発言を巡る議論が一般の人にどう捉えられているかといえば、まさに「事態の意味する本質をよく理解している人は沈黙を貫く。一方、よくわかっていない人ほどあれこれ発言している」という現状に集約される。
プーチン氏を負けが積み上がって明らかに不利なのに攻撃的な言葉を繰り出すことでポーカーのゲームから降りられない人のようだとみるのは簡単だ。そうみる人は彼がどこかで折れざるをえなくなると思っている。
戦術核使用でもいかに危険か
だが、米国の国防総省を含む政府高官らは、そんな安易な考え方は全くしていない。なぜなら彼らの多くは、コンピュータ・シミュレーションなどを使った軍事演習を通して今の事態の深刻さを理解しているからだ。爆発力が低い戦術核でも、万一それを使うことになれば往々にして戦略核の応酬へと事態はエスカレートし、世界滅亡の日へと至りかねない危険を学んで知っている。
プーチン氏が核兵器を使う可能性が5%でもあれば、世界のほとんどの人にとってこれまで生きてきた中で最も危険が大きくなっていることを意味する。しかもロシア政府による4月下旬の一連の発言で、その可能性は10%に上がったと考えてよい
(編集注。ラブロフ外相が4月25日にロシア国営テレビでのインタビューで、「核戦争が起きるかなりのリスクがあり、過小評価すべきでない」との趣旨の発言をした。4月27日にはプーチン氏が「 必要に迫られれば 他国が持たない手段も用いる」として核兵器を使う可能性を指摘した)。
ロシアが、4月20日に極超音速で飛ぶ弾頭を複数備えているとする新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」 を試射した。このことで、「西側に、よくよく考えるべき材料を与えた」とプーチン氏は同日述べた。 それは映画「007」シリーズの20世紀の作品に登場した悪役ブロフェルドの言葉として聞いても違和感がないほど悪意に満ちた発言だった。
さらにプーチン氏は4月27日、ロシア議会関係者との会合で「我々は(ロシアの存続にかかわる脅威に打ち勝つために)誰にも負けないあらゆる兵器を持っている。必要なら、それらを使う」と語った。
今や米ロ間に対話ルートさえ存在しない現実
バイデン米大統領や欧州各国の指導者らは、この発言への当然な対応として、NATOとしてウクライナでの戦争に参加することはないと明確にしてきた。つまり西側諸国としては、「(自分たちは)ロシアが核兵器使用のレッドラインとする「ロシアの存続を脅かすような脅威」は与えていない」ということだ。だが、それは西側の見方にすぎない。
プーチン氏やロシア政府高官が口にする脅しは、ロシアとしては既にNATOとは戦争状態にあるという認識から発せられている。ロシア国民は毎日、ロシアは今、西側諸国の支援を受けたナチスと国家の存亡をかけて戦っている、と聞かされている。この主張は冷戦時代の非難の応酬よりも激しい。
キューバ危機後、「相互確証破壊(MAD)」という概念が浸透した(編集注。米ソの間で相手から大規模な核攻撃を受けても、破壊を免れた核戦力で確実に報復することになるため、2国間で核戦争を含む軍事衝突は理論上、発生しえないという考え方)。ただ、これは双方の間で相手の手順や思考を明確に理解するためのパイプを維持していることが前提だった。
しかし、そのために構築された情報共有の手段のほとんどは、この10年で破棄された。プーチン氏は冷戦時代からのプロトコル(手順)を封印し、米国のカウンターパートに会いたがるロシアの核科学者らをスパイだと非難さえする始末だ。このため、世界の核弾頭の約9割を保有する米ロは、70年代や80年代に比べ互いが相手に対して発するサインについてほぼ何もわからなくなってしまっている。この状況はあまりにもまずい。
限られる選択肢
喫緊の課題は、プーチン氏がウクライナで戦術核を使った場合、バイデン氏がどう対応するかだ。ミサイルを製造した場所(例えば工場)や発射拠点への通常兵器による攻撃は一つの選択肢だ。あるいはロシアに全面禁輸を科すと同時に、中国を筆頭に対ロシア制裁に加わらない第3国に2次的な制裁を科すという選択肢もある。
ロシアの領土を攻撃するという最初の選択肢は、致命的な事態の悪化を招き、制御不能に陥るリスクがある。2つ目の選択肢は、対応としては不十分だと却下される危険がある。2つの中間の選択肢として、ロシアの艦船を標的に攻撃する、大規模なサイバー攻撃を仕掛けるといった展開も考えられる。
いずれもプーチン氏がどう反撃してくるか推測しながらの選択肢となる。米大統領府がどんなシナリオを描いているのか、我々には知るよしもない。ましてやプーチン氏の頭の中などわかるはずもない。だが、こんなにも我々にとって切迫している問題はない。
By Edward Luce 2022年4月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
(転載貼り付け終わり)
この2本の評論文を読んだ後は、各自、自分で真剣に深刻に考えなさい。
副島隆彦拝