[3387]ブレトンウッズ3と雑感

鈴木雄司 投稿日:2022/04/22 06:41

本題に入る前に目に留まった本を2冊ほど。
■ジェフリー・エプスタイン 億万長者の顔をした怪物(ハーパーコリンズ・ジャパン)
https://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail/14301
今頃ですが、エプスタイン事件の翻訳本が日本でも出版されていました。既得権者に都合の悪い事実は、見ざる聞かざる言わざるの情報統制なので話題にもならずひっそりと販売されている印象です、

■コールダー・ウォー: ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦争(草思社)
http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2131.html
こちらは、2015年に出版された本です。ロシアの資源外交はドル覇権崩壊への布石であったならウクライナ戦争の根底は、世界覇権をめぐる争いなのでしょう。

—————
■日本経済新聞 「ブレトンウッズ3」の足音 せめぎ合うドルと商品
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD220VM0S2A320C2000000/

■現代ビジネス 中国当局も注目する「ポズサー・レポート」衝撃中身
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/93575?imp=0
クレディスイスの短期金利ストラテジスト、ゾルタン・ポズサーが3月7日に公表したリポートで、今回のウクライナ戦争を機に新しい通貨秩序につながる動きがあり、最終的に現在のドル基軸の
金融システムが弱体化し、欧米のインフレ率上昇を招くとの分析が出された。同レポートでは、「目下の危機が収束しても、ドルは明らかに弱体化するであろう。ゴールドを基礎にしたブレトンウッズ体制は内部通貨(インサイド・マネー=押収可能な米国国債など)を基礎にしたブレトンウッズ2に移行し、さらに外部通貨(アウトサイドマネー、ゴールドとその他コモディティ)を基礎にしたブレトンウッズ3に移行していくだろう」
—————

ウクライナ戦争が目下の焦点ですが、日本が戦争に巻き込まれないことを前提にするならば、経済戦争の行方が気になるところです。

日本経済新聞で「ブレトンウッズ3」、つまり実物資産を通貨価値の裏付けにした新しい金融システムへの移行に関する記事を出たのは大きな意味があると思います。日経が書くくらいなら、既に新しい金融システムへの移行は水面下で行なわれているのでしょう。日本経済新聞のほうは、有料記事なので冒頭しか読めませんが、現代ビジネスでは「ポズサー・レポート」についての詳細が読めます。

目下、円安によるインフレで日銀総裁への風当たりが日増しに強くなっているようです。しかし、黒田総裁は、「国民の生活を守る」「国民一人一人の声に耳を傾ける」などと耳障りの良いことを言うはずもありません。日銀総裁の眼中に「国民」ないと思います。
「国民」よりも上位概念である「国家」、ひいては、国家の本丸である国債を守ることが通貨の番人としての役目です。少々乱暴な言い方をすれば、「国民の生活を犠牲にしてでも国債だけは守り抜く」覚悟でしょう。そのためには、指値オペでも異次元緩和の継続でも何でもやると強い決意と覚悟を示しているわけで、その意味では、黒田総裁はブレていません。現在は円安基調ですが、米国崩壊が隠し切れない段階までくれば、そのうち円高基調に転換すると予想します。

また、円安になれば海外に移転していた工場が日本に戻ってくるとの主張も散見します。ところが、そうはいかないようです。週刊東洋経済(2022年3月26日号)の特集記事「工場が消える」では、カーボンニュートラルのため二酸化炭素を排出する工場がこれから閉鎖ラッシュになるというのです。
いまこそ、実物経済の復活の狼煙をあげるべき時なのに、グローバリストにそそのかされて国内の製造拠点をどんどん閉鎖すれば日本はまさにもぬけの殻になってしまいます。
しかし、こちらもウクライナの戦火が欧州にでも飛び火すれば、脱炭素などというまやかしは、一時凍結するか、そのままうやむやになって消えていくと予想します。

日本はとにかく低金利のまま国債を守り抜く覚悟のようです。異次元緩和によって日銀自らが招いた災いかもしれませんが、あとは、2024年の新円切り替えに伴う金融リセットまで一直線に突き進むと思われます。ブレトンウッズ3も2024年であれば、まさしく良くも悪くも新時代への移行になると思います。