[3238]脱炭素社会

佐藤義孝 投稿日:2021/08/24 01:06

 7月31日放送のアナライズプラスによると、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す国境炭素税が導入されれば化石燃料割合の高い日本では車の生産が出来なくなる可能性があるそうです。

(引用始め)
アナライズ・プラス(2021年7月31日放送「マーケット・アナライズ plus 」
https://www.youtube.com/watch?v=Gdo-dzRUaBs
(引用終わり)

 (7分頃から)co2を出す火力発電の割合が高い日本より原子力発電の割合が高いフランスのほうが税金が安いので競争上フランスで生産することになり日本では生産出来なくなるとのことです。

 番組でも紹介されてましたがトヨタの社長も脱炭素に危機感を抱いています。

(引用始め)
CO2と雇用の関係 豊田章男の危機感
https://toyotatimes.jp/insidetoyota/130.html
日本では、化石燃料を使った火力発電比率が75%と非常に高く、コストも非常に高く、(表の中にあるように)再エネのコストが火力よりも唯一高い地域になっています。

かつてクルマのグローバル化が進んだときに、自動車各社は「より売れるところでつくろう」「人件費がよりコンペティティブなところでつくろう」と海外に生産をシフトしたこともありますが、これから先はCO2排出の少ないエネルギーで(クルマを)つくれる国にシフトする動きが出てくる可能性があります。

自工会各社は、国内生産約1,000万台の約半分に相当する482万台を輸出しています。LCAで見ると、この輸出分の生産が、再エネ導入が進んでいる国や地域へシフトすることが予想されるわけです。

日本の再エネ導入が進まなければ、この輸出の482万台をつくったとしても、使えなくなります。

トヨタの例では、東北とフランスでつくったヤリスを比べた場合、クルマとしては同じであっても、日本生産のクルマは使っていただけなくなると思います。

そうなると、輸出で自動車業界が稼いでいる外貨獲得15兆円が限りなくゼロになり、自動車業界550万人のうちの70万から100万の雇用に影響が出てくると思います。
部品、機械、素材など、自動車産業はすそ野が広い。国内生産の減少が日本経済に及ぼす影響は甚大だ。
(引用終わり)

 トヨタは他社と比べて、国内生産比率の割合が高いので、国内で生産出来なくなると産業の空洞化を招き企業城下町が消えてしまいます。そうなると、関連企業や飲食店や宿泊施設に対する多大な影響をもたらします。かつて日産の工場が閉鎖された例です。

(引用始め)
巨大工場が消える計り知れないダメージ! パジェロ製造やホンダ狭山工場の閉鎖で「城下町」への影響とは
https://www.excite.co.jp/news/article/Webcartop_587939/
不可抗力的に厳しい状況に追い込まれたのは、工場周辺の飲食店などだろう。工場には社員だけでなく納入に来た業者やさまざまな出入りがあり、そうした人の流れは飲食店にお金を落とすことになる。しかし、工場閉鎖となれば売上が下がることは必至であり、村山工場の周辺でも9割近い飲食店が姿を消したという。
(引用終わり)

 こうなると自然エネルギーの割合を上げるか他国みたいに原子力に力を入れるかだと思いますが、冒頭の動画によると例えば、風力の導入には環境評価して設置、建設までに8年かかるそうです。

 他国は小型炉の建設に動いてます。

(引用始め)
中国が海南島に小型原子炉を建設~その「思惑」を探る~
https://zuuonline.com/archives/231382
去る2021年7月13日(北京時間)、中国は海南島に世界初の商用モジュール式小型原子炉である「Linglong1」の建設を開始した。そもそも、「小型原子炉」とはどういったものなのか。またなぜ北京や上海ではなく海南島なのか、その思惑を探りたい。

いわゆる「脱炭素化」に向け、エネルギー分野で様々な技術開発が進められる中で、より安全で経済的な原子力発電ということで、原発業界が力を入れているのが「小型原子炉(小型モジュール炉、SMR)」である。
(中略)
米国だけではない。英国ではロールス・ロイスが主導して「SMRコンソーシアム(小型原子炉開発企業連合)」を立ち上げ、小型原子炉に参入している。
(引用終わり)

 日本では原発事故もあり拒否感が強いと思います。また最近では柏崎原発の不祥事もありました。

(引用始め)
柏崎刈羽原発のテロ対策欠陥を生んだ背景事情
https://toyokeizai.net/articles/-/418736
問題の悪質性では、IDカードの不正使用は検知設備の機能喪失放置よりもむしろ重大であり、東電社内のモラルの低下を浮き彫りにしている。東電は社員がどのような職務に携わっていたかについて詳細を明らかにしていないが、意識的にルール違反する社員が原子炉の運転に関わっていたとしたら、重大事故を招きかねない。

(不正を行ったのが)運転機器の日常点検や保守点検に携わる職員だった場合には、記録改ざん行為を引き起こす恐れがある。いずれにしても恐ろしい事態だ。
(引用終わり)

 冒頭の番組では他に排出権取引についても取り上げられてました。ゲストのニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次さんによると環境問題は産業政策そのもだそうです。

 どの国も企業も個人も環境問題をやればやるほどコストがかかりコストを回収できないとどうにもならないので競争政策が起きるそうです。その中で勝ち組と負け組が生まれると言っていました。

 要するに環境問題にかこつけたお金の分捕り合戦ですね。欧州のやることはとんでもないですね。私はこうなると国・企業・国民が一丸になって考える必要があると思います。