[3101]医療崩壊の定義とは
新型コロナ感染症の重傷者増加による「医療崩壊」が話題になっています。メディアで注釈もなく使われている「医療崩壊」とは具体的にどのような状態を言うのか、医師である私も良く分かりません。イメージとしては病院、医院が閉鎖されて病気になった人がどこにも行く当てがない、といった感じですが、そのような事が起こるはずがありません。
私が考える具体的な「医療崩壊」の定義とは「コロナ感染症の重傷者が増加して重症病棟(ICUなど)が埋まってしまい、それ以外の病気による重傷者の治療に制限が(重傷者が多数いる期間限定で)課される状態」と思われます。この状況は現在の変異種による感染者数の増加傾向から出現し得るか、と言われると「起こる可能性はある」と言えます。変異種(正しくはVOC懸念される変異種)は従来型よりも若年者が感染して発症する確率が(幾分)高く(イギリス型N501Yとされるもの)、また発症者が重症化する確率も1%ほど高いです。この1%の違いは結構大きくて、1,000人発症すると10人重傷者が従来型より増える事になり、優に中規模病院のICUのキャパシティに匹敵します。一度人工呼吸器を装着すると1か月近くはかかりますので重傷者が蓄積してゆく結果になります。重傷者は必ずしも死亡せず、助かる人が多いので死亡者数は当てになりません(むしろPCR陽性で他の疾患で死亡をコロナ死としていることが多い)。医療現場からの一次情報として言うならば、私の病院での経験を含めて変異種は明らかに従来型よりも重症化率が高く、関東圏でも重傷者が増加(現在50%超)しています。
私は一定期間コロナの重傷者で他の一般医療が制限されても「仕方ないだろう!」と思います。国民全員がそんなに大騒ぎするほどの問題ですかね?日本の医療者は意識が高いから病人が増えたら増えた分何とかするし、病人も「お互い様」と譲り合う事で何とかやってゆこうとするものです。東日本大震災で北関東以北のインフラが止まって「医療崩壊」した時も、犠牲者0ではありませんが、医療機関同士、病人同士助け合う事で何とかなったではないですか。
では、PCR検査をやりまくれば、感染拡大は防げるか、というとこれはかなり前に医学的・科学的には否定されており、論文もいくつかあります。韓国などはプライバシー無視で陽性者をスマホ位置情報などで徹底的に公開した事がクラスターと拡大抑制につながったと証明されています。日本においても、クラスター現場では感染経路の追跡を潜伏期間も考慮しながら一人ひとりかなり丁寧に時間をかけてやっています。私も実際立ち会った事がありますが、丁寧にたどることでほぼ感染経路を特定し、必要な範囲でPCRを行うよう指示して拡大を防いでいます。だから必要な処置とは今までの対策をやはり確実に続けてゆく事だと思います。こうすればもっと簡単にパンデミックが解決するなどというものはありません。
しかし漫然と飲食店の時短や、外出制限をすればよいというものでもなく、時短で開いている時間帯にかえって混み合うなどの弊害が出ているので間隔をとって長時間開店を許可するといった工夫のしどころは沢山あると思います。
これは古くからの会員としての提案なのですが、医療問題についてのやりとりは「医療掲示板」でやるようにしてはどうでしょう。SNSでは相手の方の人となりや知識の全体像を知る由もないし、限られた文字数では考えや主張を誤解されてしまう事も多いのは仕方のない事です。限定掲示板でのやりとりであれば、細かい事象や質問も、気軽に書き込みできますし、論点を整理して誤解を解く事も可能と思います。私も20年位前に話題の本の著者、崎谷医師と掲示板でやりとりしていた経験がありますが、「時間の無駄にならず、読んで得した気になる投稿」というのを心がけていました。会員がお互いに知識を深めあってゆく事が大事だと思いますし、せっかく会費を払っているのですから、他にも話題に特化した掲示板(そのほかもろもろはふじむら掲示板とか)があるので活用した方が良いと思います。またそれぞれの掲示板に新たな投稿があった時にホームページ上でハイライトさせるなどの工夫を道場の管理者の方は改善していただければと思います。スマホなどからアクセスされる方も増えていると思いますし、多忙な中大変とは思いますが、御一考いただければと一会員の立場からお願い申し上げます。