[308]3月19・20日の報告文

栃木・石井 利明 投稿日:2011/03/21 23:05

3月19・20日に副島先生と一緒に福島へ調査に行った、石井 利明と申します。
昨日(3月20日)の夜に、先生を那須塩原の駅に送り、私も自宅に戻りました。

福島の現場に同行し報告文を書く前に、東日本大震災および原発事故による被害を受けられた皆さまに、謹んでお見舞いを申し上げます。

確かに、今回の震災は福島・宮城・茨城という太平洋に面した県に、特に甚大な被害を及ぼしました。しかし、現地に行ってみると、その震災の中で、たくましく生きる多くの方々とも接することが出来、本当に得がたい体験をさせていただきました。

まずは、19日の出来事を時系列で報告します。
今回の報告は、先生のぼやきと重複しますが、ご容赦ください。

郡山を出発して、私たちが目指したのは、事故原発から丁度30キロ地点にある大滝根山(おおたきねやま、1192メートル)でした。
先生が、ぼやきで、「そこには、自衛隊の電波通信塔があります。私は遠くからその大滝根山の全貌の写真も取りました」とある通りです。
写真を貼り付けます。

・大滝根山

後ろに小さく見える、丸く薄いグリーンのドームが自衛隊のレーダー施設です。
ガイガーカウンターは、0.82マイクロシーベルト毎時(0.82μSv/h)を示しています。
接近するために道を登ると、バリケードが現れ、われわれの行く手は阻まれました。

タクシーはそこで引き返し、滝根町(たきねまち)を通過して、一路東へ、原発を目指して進みます。
滝根町から川内村(かわうちむら)に向かう途中、10基ほどの風力発電施設が現れたところで、地域の防災放送が聞こえました。

・風力発電

「この付近の放射線量は、1マイクロシーベルトで健康被害の心配はありません・・・」という放送の数値と、持参したガイガーカウンターの数値が、ほぼ、一緒であることを確認。この辺りでは、僅かですが、畑仕事をしている住民も目撃しました。

もう少しで、屋内避難勧告の出ている30キロ圏です。
現地の現実は、私の住む160キロ離れた栃木県の日常と大差の無いものです。
報道と現実とのギャップに、だんだん私の頭はクラクラしてきました。
そして、現実を見ることで、放射能に対する言い知れない恐怖が、少しですが、和らぎました。

事実を知れば強くなれる、という先生の名言が、すぐに頭に浮かびました。
事実は現場にあります。
その頃から、タクシーの運転手、Kさんの口も滑らかになってきました。
もしかしたら、Kさんも私と同じように感じて、恐怖心が薄らいでいったのではないでしょうか。

曰く。
「阿武隈山地の地盤は固い岩で出来ているから、地震でも地滑りなんかは起きないんです・・・」
「いわきはいい所だよ。暖かくて雪も降らない。東北の湘南って呼ばれている。土地も安いし住むには最高だよ・・・」
「それにしても、今回の原発の件は心配だ。なにしろ、東京のために発電している電気で、地元には全く関係ないんだから。東京の人たちは知っているのかなぁ」

程なくして、30キロの検問所に到着。
タクシーの中で、私は緊張しました。
しかし、そこには、ポツンと一台の福岡県警のパトカーが停まっているだけ。

現れた警察の人に、先生が「調査に来ました」と告げると、
「屋内避難の人も出入りしているし、行くなら気をつけていって下さい。」と至極(しごく)簡単に入れてくれました。

検問所を通過する前に、ガイガーカウンター持って数値を見せました。
「このあたりの数値は低いので安全のようですね」と話すと、心なしか、おまわりさんの表情も和らいだようでした。

私は、ここまで順調に原発に近づけるとは思っていませんでした。
繰り返し報道される原発の危機的状況を前に、私は、非常な厳戒態勢(げんかいたいせい)がひかれていると思っていたからです。

そして、厳戒態勢は、実際にあったのです。
先生の話だと、数日前に現地を訪れた、戦場カメラマンにしてバグパイプ奏者の加藤さんは、20キロ圏に入ることが出来なかったということでした。
原発に対する厳戒態勢は緩(ゆる)められていることを実感しました。
私たちには、”運”も味方してくれたのです。

30キロ圏の検問所を過ぎると、次の検問所が現れることもなく、川内村に到着。
ここは、避難勧告の出ている、20キロ圏内です。
早速、ガイガーカウンターで数値を取りました。

数値は、0.934マイクロシーベルト毎時(0.934μSv/h)。
そこで、ここで昼食を取ることに決定。
私は先生が買ってきてくれた、とんかつ弁当を。先生は、幕の内弁当を。
JAの軒先を借りていただきました。

腹ごしらえも出来、気を引き締めて国道399を一旦北上し、富岡街道から原発方面に向いました。
途中、何台もの車とすれ違いました。
車内には、例外なく、全身白ずくめの防護服と防護マスクに身を包み、車を運転する人たちを確認できました。
だんだん、目的地に近づきつつあることが実感できるようになりました。

そして、何回もトンネルを抜け、海が見える所に差し掛かると、運転手のKさんが、「あれー!」と声をあげ指差す方を見ると、そこに福島第一原発が見えました。
私は、これが、あの連日連夜放送されている原発だ、という実感が直ぐにはわきません。なんだか、こんなにあっけなく目撃して良いのだろうか、というような不思議な気持で一杯でした。

先生と、タクシーを飛び出し、もう一度確認してみました。
確かに、福島第一原発です。
原発に向かって吹く、激しい風の中、ガイガーカウンターは、15マイクロシーベルト毎時(15μSv/h)前後の数値を表示しています。

2~3分くらいでしょうか。先生と私は、じっと数字を見ていました。
最大で17マイクロシーベルト毎時(17μSv/h)を確認しました。
写真では、13.47マイクロシーベルト毎時(13.47μSv/h)です。

第一弾の報告は、ここまでにします。
お読みいただき、ありがとうございました。
以上
石井拝