[3025]ご質問に対しまして

北関東勤務医 投稿日:2021/03/02 15:21

一柳様
最初のご質問ですが、40代の健常者が重症化した場合、人工呼吸、ECMOなど、最大限の適切な治療がなされますので、死なないのです。比較的若いので、治療が奏功することが多いです。
ただし、私は死亡者が多い、少ないで論じているのではなく、コロナ対策を怠ると、ICUで助かる人が助けられないという観点で申し上げてます。日本では、助かる人は結構助けていると考えています。

COVID患者さんのICUでの人工呼吸管理は、通常の患者さんの数倍の手間と人員を要します。期間も長いです。ECMO管理に至っては普通のICU患者の3から5倍の人数が必要です。助かる人を助けるのも、物凄く大変で、コロナ禍が1日も早く終息することを願っております。

PCR検査は、これ以上の精度の検査が現状できないのでやっております。偽陽性、偽陰性色々な問題がありますが、もう1年近くこれに頼って患者さんと向き合っており、役に立つ道具として認識しております。また、結果を無条件に信じず、他の症状や画像診断も用いて感染の有無を判断しておりますので、結果を盲信しているわけではありません。

一柳さんのおっしゃる様に、やはり偽陽性が出ることがあり、ウイルスの死骸を測定している事はあるかも知れません。症状が改善した後、何度検査しても陽性が出て、なかなか転院できない患者さんもいらっしゃいます。だからと言って陽性が出てもこれは死骸だという証明はできません。さらにだからと言ってみんな陽性に出るのでこんな検査止めてしまえという訳にも行かないのです。

この検査の一番の特徴は、感染の疑いのある人を見つけることで、たとえウイルスのカケラであっても検出されれば陽性となります。その人に感染力が無いことを判断する術は今のところ有りません。なので、陽性が出たら人に感染させる恐れがあるので、隔離となります。おそらく嫌だから家に帰りたい人がほとんどだと思いますが、そうすると感染症のコントロールがつかないので、法律で縛っている訳です。

COVID感染者と接触の機会がなければ、通常PCR検査をする事は無いと思いますし、濃厚接触者と認定されないよう、マスクの着用をお勧めいたします。どちらもマスクを着けず、1メートル以内、15分間の接触があると、濃厚接触者になります。これはもう機械的、事務的に決められており、ちょっと理屈じゃないのですが、このルールはおそらく経験則で決められおり、今のところ上手く機能していると思います。

私を含め医療関係者は家族以外ではこの様な状況にならないよう、注意して生活しています。もしPCR検査を受け、陽性だが増幅回数が高いので納得できないと反論されても、現状では保健所、医療機関は相手にしてくれないと思います。

私が一柳様だったら、感染しないように最大限気をつけて生活すると思います。ご不自由でも、コロナがおさまるまで、ご自愛ください。万が一感染して、軽症でおさまっても、高齢者では普通の風邪に比べてかなりキツイ症状が出る様です。いつ重症化して、人工呼吸になり、そのまま家族とも会えずに亡くなるかも知れない訳ですから、かからないに越した事はありません。

一般の方の亡くなる数が少ないから、死ぬのは年寄りだけだからといって、何もしなくて良いだろうということではありません。現状でも助かる見込みのない高齢者は、人工呼吸をせずに看取っています。
重傷者ありきの対策で、まだまだ生きられる人を助けるためなので、どうかご理解いただきたいと思います。

一柳様、学問道場の皆様のご健勝をお祈りいたします。

勤務の合間で、答えられない質問もあったかと思いますが、ご容赦ください。