[298]神風が何度も吹くことを祈る
崎谷です。
今朝、以下の記事のように1、2号機の配電盤兼変圧器に外部からの送電線を引き込み接続する作業が完了したという記事がありました。
この冷却装置を稼働させるまで(あるいは稼働できるかできないかを確認する作業)にもさらに1週間くらいはかかるのではないかというコメントが福島原発の原子炉格納容器設計者で元東芝の後藤政志工学博士からありました。
これであとは冷却システムが電気を送ったときに稼働するかにいまや世界中の耳目が属していると思います。
津波の影響や海水注入などによって、原子炉内部はかなりの損傷を受けていると想像されますので、冷却装置が生きていれば「神風が吹いた」といえる事態だと思います。
(転載開始)
1、2号機に送電線接続…20日から通電作業
読売新聞 3月19日(土)18時29分配信
東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所で、冷却機能が喪失した1、2号機の配電盤兼変圧器に外部からの送電線を引き込んで接続する作業が完了した。
20日朝から2号機内部の機器を点検し、その後、緊急炉心冷却装置(ECCS)などの系統につながる大容量のポンプを動かし、原子炉や使用済み核燃料貯蔵プールなどを効果的に冷やす冷却システムが稼働するかを確認する。
同原発では、地震によって停電したほか、ECCSなどを作動させる非常用ディーゼル発電機も津波の影響などで破損した。
(転載終了)
崎谷です。その後、以下の記事のように福島第一原子力発電所3号機の原子炉格納容器の圧力が再び上昇を始めたことが報道されました。圧力があがったということは、開けていた弁が閉じたか、あるいは原子炉格納容器内の温度が上昇していることを意味していると考えます。
したがって、燃料棒が露出する可能性が高まっているのではないか(実際はすでに露出しているかも知れない)。
3号機にはウランより放射能が高いプルトニウムが核燃料として使用されています。しかし、圧力がこれ以上高まり、格納器が破損すると大惨事になるため、以下の記事のように別のバルブを開く可能性があると報道しています。これによって、再度高濃度の放射能が大気中に放出されることになります。このときも神風が陸から海に吹いてくれることを祈るしかありません。
この圧力を下げる作業のため3号機の電源の復旧作業や放水作業などは中断されますので、3号機原子炉内の温度が再び上昇していく懸念が出てきました。
(転載開始)
福島第一3号機格納容器、圧力降下策で蒸気放出
読売新聞 3月20日(日)12時58分配信
東京電力は20日、福島第一原子力発電所3号機の原子炉格納容器の圧力が再び上昇を始めたとして、格納容器内の蒸気を外部に放出して圧力を下げる操作を再度行うと発表した。
圧力は同日午前1時10分には約2・8気圧だったが、同4時30分には約3・4気圧になった。現在、所内で行われている電源の復旧作業や放水作業などは中断する。
3号機は13日午前8時41分から蒸気を放出する弁を開けたままで、圧力が再び上昇した理由は不明。この弁が閉じてしまっている可能性があるため、復旧作業員などが退避した後、弁を開ける操作を試みる。
それでも圧力が下がらなければ、別の弁を開けるが、冷却水を通さずに排気するため、強い放射能を帯びた物質が外部に放出される可能性がある。
(転載終了)
崎谷です。そして使用済みの核燃料が冷却貯蔵されている4号機の現状について、以下のように日米の見解の相違があることも報道されていました。
(転載開始)
福島第1原発 「4号機プール」見解相違 米「壁に穴」、日本「水位ある」
産経新聞 3月20日(日)7時56分配信
福島第1原子力発電所4号機の使用済み核燃料貯蔵プール(約1400立方メートル)をめぐり、日米で見解の違いが鮮明化している。日本側は19日、自衛隊による放水準備を進めたのに対し、米専門家らはプールに亀裂が入り冷却水が漏れ、「打つ手のない」(米物理学者)状況に追い込まれる可能性を指摘している。
4号機では15日早朝に爆発音が確認された。5階にあるプール付近で爆発が起きたとみられ、建屋が大きく破損した。計測機器が電源喪失で使えないうえ、建屋内は放射線量が高く、東京電力はプールの水位や温度を確認できない状況となっている。このことが日米間の食い違いを生む要因となっている。
米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は18日、米原子力規制委員会の複数の専門家の見解として、プールの壁に亀裂か穴が開いていると報じた。地震が起きた後の事態の推移のほか、事故発生時に同原発にいた米国人から得た情報をもとに判断したという。
原子力企業幹部も同日、米紙ニューヨーク・タイムズにプールが壊れており、水の補充が極めて困難になっていると語った。
4号機の危険性を最初に指摘したのは規制委のヤズコ委員長。16日の下院エネルギー委員会で「水はもう完全になくなり乾いている」と証言した。日本側は否定したが、同氏はすぐに「情報は信じるに値する」と反論した。
これに対し、北沢俊美防衛相は19日の記者会見で「米側の見解は聞いている」としながらも、4号機の表面温度が100度以下であるとして、残っている水により冷却の効果があらわれているとの認識を示した。
経済産業省原子力安全・保安院の担当者も19日、産経新聞に対し、プールの水位について「16日に目視した時点よりも下がっていると考えられるが、水がなくなっているという情報はない」と強調した。
16日に陸上自衛隊のヘリが原発上空で計測した放射線量は250ミリシーベルトと高い数値だったが、専門家は「燃料棒が露出していればもっと高い数値になるはずだ」と指摘する。
東電と保安院も4号機より、プールの水が蒸発して白煙が上がり続けていた3号機の方が緊急性が高いとして、3号機への放水を優先した。
北沢氏は「(3号機で)一定の効果をあげたら4号機に移る」と語った。
(転載終了)
崎谷です。以上からは、現場では今できる必要最小限の作業を行っていると同時に、新たに噴出した問題に緊急対処しなければならないという大変恐ろしい緊張状態がずっと続いていると思います。まだ予断を許しません。
スリーマイルの事故では偶然、格納機の底にメルドダウンして溜まったウランの反応が停止し、それ以上の大惨事を経験しなくて済みました。なぜ反応が止まったかはその後の専門家の検証でもまだ明らかになっていません。
これは、自然現象も含め世の中の出来事は正確な予測不能な「複雑系」物理現象だからです。物理現象がコントロール下にないときは、少し条件の違いによって180度違う結果が出ても不思議ではありません。
今回の原発事故も復旧した電源で冷却システムが“偶然”うまく稼働する、あるいは圧力が上がっていた格納機の圧が“偶然”に下がっていくといったかなり予測不能な偶然に依拠せざると得ない状況はしばらく続くでしょう。
そのギリギリのところにまだ私たちがいることを直視し、最悪の事態に備えるという「予防原則」の知恵を働かさなければなりません。現在の「予防原則」は、福島原発が制御不能になったときを想定して避難する準備をすることです。最悪の事態が起こらなかったらそれで安心したら良いのです。
私は今回の事故が起きた1週間前に福島近辺の住民は西日本へ避難させることが「予防原則」だと考えていましたし、今でもそうです。西日本には不況のあおりで空き室だらけの不動産やホテルが山ほどあります。ここを買い取るなり借りるなりして事態が落ち着くま避難させればよい。
日本政府のリーダーが「私は米国の暗殺部隊に殺されるかも知れない。しかしそれでもよいから積みあがった米国債の一部を売却して、そのお金に充てる」と国民に早い段階公の場で宣言すべきだったと思います。米国債を売却できなければ、それを担保に海外の金融機関で借款してもよい。
それを、政府は子供手当を廃止して復興資金にあてるなど相次ぐ増税策を話し合っているという報道がすでに出ている。とんでもない連中である。これ以上国民に増税すると日本の経済は奈落の底に落ちることは小学生でもわかることだ。それほどアメリカ、いや自分の保身だけが大事なのか。
このように日本という国は、明治維新以降は太平洋戦争までずっと現場の人間や国民だけにしわ寄せが来ていたのです。とくに太平洋戦争以降は、米国に心身を売り渡してしまったさもしい人間たちが、国民の上に立ち、散々搾取してきた。今もそうである。
また原発被害だけでなく、地震被災で両親を一瞬にして亡くした孤児たち(重度のストレス性心的外傷をこれからも負う)の問題も山積している。この子供たちを助けられるのは、今被害のない地域の余裕のある家庭だけなのだ。私の周りにも政府が声をかければいつでも孤児を引き取るという方がおられる。私も引き取れるものなら引き取りたいと思う。
日本がこの緊急事態に変わらなければいつ変われるというのだろうか。これから日本国民は、もう者分かりのよさそうな「大人」の言葉(米国という長いものに巻かれておけ)には耳を傾ける必要はない。国民の多くが現実を直視して自立していくこと、そして何度も神風が吹くことを切に願っています。