[2595]2020年7月5日の都知事選挙の行方

片岡裕晴(かたおか のぶはる) 投稿日:2020/07/01 12:13

7月5日投開票の2020東京都知事選挙は、現職の小池百合子が圧倒的に有利で、ほぼ無風状態で圧勝すると当初から言われてきた。6月18日にスタートした選挙戦は12日が過ぎ後半戦に入っている。メディアの報道では小池有利の状況に変わりは無いとされている。

その主な理由はコロナ危機に対する、小池の対応の素早さがあるだろう。オリンピックの延期が決まると、すかさず「ロックダウン」という言葉を(テレビを通じて)発し、東京の空気を一変させ、その後もお得意の言葉遊び、「三蜜」「ステイホーム」「ソーシャルディスタンス」「ウイズコロナ」を連発して都民の関心を自分に引き付けた。

一方、安倍晋三は4月1に(本人は良いことをした積りで大威張りの)ガーゼのマスクを各世帯に2枚配給すると発表、巨額の予算の割には余りにもショボい内容にエープリルフールではないかと皮肉られ、間もなく「アベノマスク」と命名され嘲笑の対象となった。4月12日には星野源とのコラボ動画を発表し、本人は受けを狙ったのだろうが、コロナ騒動で恐怖と困惑で委縮している国民の気持ちを逆なでするものでしかなかった。

小池はコロナ対策で毎日テレビに出て記者会見(これがそもそも選挙運動になっている)を行い、その際、綺麗な模様入りの大きなマスクで口元を覆い、鬱陶しいマスクをファッションとして演出し、そのセンスの良さに女性の間ではたちまち手作りのファッションマスクが流行した。

一方の安倍は自ら発表してしまったショボい「アベノマスク」を意固地になって着け、記者会見でも、国会の答弁でもその小さなマスクでは醜い顔を隠しきれず、はみ出す顎(あご)が醜悪さとセンスの悪さを強調している。
まるで女帝小池百合子を際立たせるために、自ら道化役を演じるために存在するかのように。。。

このような状況を旧メディア(テレビ、新聞=既得権益者)を通してみている人にとっては、都知事選の行方は現職知事の小池百合子が圧倒的に強いと映るであろう。

◆ 小池百合子の青空はいつまで続くか

ところが、無風状態の都知事選挙の雲一つない青空の一角に、五月の終わり一片の黒雲が出現し、刻々と大きくなりつつある。

その暗雲とはドキュメンタリー作家の石井妙子の『女帝小池百合子』のことで5月28日に発売された。

この為、小池の都知事選出馬表明が事前予告されていた6月10日の都議会最終日に議場において表明できなくなり、小池は「コロナ対策のため(出馬表明を)延期します」と、お茶を濁さざるを得なくなった。

『女帝小池百合子』はすでに5刷、20万部を売ってベストセラーとなっている。

しかしながら、小池百合子は他を圧するほどの組織票を持っているので、このまま逃げ切る可能性が高いと言われている。小池はいち早く、コロナ対策と感染予防を理由に従来のような街頭での選挙運動は行わないと宣言した。

また、まことに異例なことに7月1日現在、地上波テレビでの公開討論会が全く開かれておらず計画されてもいない。

テレビのワイドショーでもほとんどテーマとして取りあがられず、ニュース番組でもトップニュースとして取り上げない傾向が続いている。

従来の都知事選挙のテレビでの扱い方と比べると、その異常さが分かる。小池自らが露出を避け、表に出ない作戦をとっている。テレビもそれに忖度し、(選挙隠しと小池隠しに)協力しているように見える。

一方、ネットでは日本記者クラブ主催の公開討論会が告示前の6月16日に主要5候補(小池、宇都宮、小野、山本、立花)を招待し開かれた。

告示後初めての公開討論会が(リモートによる討論会として)6月27日に開かれた。映像制作団体「Choose Life Project」主催の討論会には小池、宇都宮、小野、山本の4候補者が招待されたが、何故か立花は招かれなかった。

小池と山本は15分遅刻しての参加となり、小池はリモートであるにもかかわらずマスクを深々とかけて(顔を半分以上隠し)参加し、司会者(津田大介)からの質問におざなりに回答するにとどまり、他候補者への質問コーナーでも積極的に参加する意思が見られず、かつリモート討論ではの音質の悪さ、画質の悪さが加わり、まったく盛り上がらない討論会に終わった。(主催者の意図に反して大失敗の企画だったと思う)

討論をネットで見た人がまず思ったことは、なぜ立花孝志が招待されていないのだろうという疑問であり、津田(主催者)が立花を呼ばなかったことが様々憶測され、(既得権益者側の)津田(と主催者)の意図に反して、返って立花への関心を高め、立花に有力な結果をもたらしたと思う。

三回目のネット討論会は6月28日、東京青年会議所の主催で行われ、招待者は主要5候補に加えホリエモン新党公認、N国党推薦の齊藤健一郎(堀江貴文の秘書)、服部修(ミュージシャン)の7人が招かれた。

東京青年会議所の招待者基準が恐らく国政政党(*)の公認または推薦がある候補という原則を守ったからであると思われ、津田大介が招待者から立花孝志を恣意的に外した事を考えると、公平さを感じられたと思う。

(*)国政政党・・・日本には現在9つの国政政党がある。自民、公明、共産、維新、立憲、国民民主、社民、れいわ新選組、N国党。れいわ新選組とN国党は昨年の参議院選挙で国政政党の定義である「所属する国会議員を5人以上か、直近の国政選挙で2%以上の得票を得る」という要件を満たし、新興の国政政党となった。他の旧7党が既得権益層の支持を得ているのに対し、反既得権益層の支持を得る新興2政党という新たな対立点が生まれつつある。(旧7党VS.新興2党)

この構図(旧7党 VS. 新興2党)は昨年10月の参議院埼玉県選出議員補欠選挙と今年四月に行われた衆議院静岡4区補欠選挙においても現れている。

そして今回の東京都知事選挙では党独自の公認候補を擁立できたのは、れいわ新選組とN国党(=ホリエモン新党)の新興2政党のみであることが注目すべき現象であることを強調しておきたい。

また、ホリエモン新党(N国党)が一人しか当選しない首長選挙で公認候補を3人擁立したのは(これまでの常識ではあり得ない)深く巧妙な戦術的意味があるのだろう。

◆ 『女帝』の悪い情報はネット上で拡散している

今やだれでも知っている小池百合子の学歴詐称問題。カイロ大学を首席で卒業という虚偽の経歴をマスコミ界にデビューするためのアクセサリーとして(若い日の小池百合子は)ごく軽い気持ちで使ったのだろうが、政界の頂点に近くまで上り詰めた今となっては、余りにも重い虚偽であり国益を左右しかねない問題にもなっている。

しかし、学歴詐称問題を都議会で追及されても、まともな回答はせずに誤魔化しを続けている。

そればかりか『女帝小池百合子』に書かれた数多くのエピソードは、初めて知る人にとっては余りにも恐ろしく信じられない事柄が沢山描かれている。それを一言でいうなら一般国民(有権者)との会話はテレビカメラの前ではきわめて暖かい態度で国民に寄り添うことを言い、後日カメラの無い場面では手のひら返しの冷たい態度を見せるということになるだろう。

1995年の阪神淡路大震災の一年後、一向に進まない復興の窮状を訴えるために小池の地元芦屋の女性たちが小池を訪ねた。小池はマニュキアを塗りながら、陳情を聞いていたが、一度として顔を上げることが無かったという。小池はすべての指にマニュキアを塗り終えると指先に息を吹きかけこう告げた。「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます?私、選挙区変わったし」女性たちは大きなショックを受けた。

北朝鮮拉致問題では、小泉が訪朝した2002年9月17日東京の外務省飯倉公館に被害者家族が集まっていた。そこへ「5名生存、8名死亡」という残酷な情報がもたらされる。沈痛な空気の中、記者会見が開かれるが、被害者家族の中央になぜか小池の姿がある。「いつもテレビに映りこもうとする」と拉致議連の中で問題になっていたらしい。

めぐみさんの死亡という知らせを聞いた直後の横田茂さんの会見は涙に言葉を詰まらせたものであったが、その横田夫妻の真後ろには、黄緑色のジャケットを着た(目立つ)小池の姿があり、横田夫妻の肩に優しく手をかける小池の姿がテレビを通して映し出された。

テレビの中継はここで終わり、取材陣や政治家は引き揚げ、部屋には被害者家族と関係者が取り残され、大きな悲しみに包まれていた。そこへ、いったん退出した小池が足音を立てて駆け込んできて、大声を上げた。「私のバッグ。私のバッグがないのよっ」部屋の片隅にそれを見つけると、横田夫妻のいる部屋で小池は叫んだ。「あったー、私のバッグ。拉致されたかと思った」

『女帝小池百合子』にはこのような耳を疑う様なエピソードが沢山描かれている。それは人々の口から口にヒソヒソとザワザワと語られ、さらにネットを通じて拡散されている。

発売前から予約ですでに売り切れ追加の増刷が決まり、6月の中頃にはいったん本屋の店頭から消えて手に入らなくなってしまった。発売後一か月で20万部を売り上げて、ベストセラーの一位を続けている。

◆ 小池百合子が当選しない可能性はあるだろうか?

前回の都知事選挙で小池百合子に投票した人が、今回はこの本『女帝小池百合子』を読んだ後、それでもなお彼女に一票を入れる人がいるだろうか?普通の良識を持った人なら、こんな恐ろしい女、上昇志向しかなく、政治的な理念も何もない小池百合子に投票しないだろう。しかし、それは何のしがらみも無い普通の人の場合だろう。

現実には、しがらみのある恐ろしい組織票の壁に良識は跳ね返えされて、今回も小池百合子が当選するだろう。

僅かでも可能性があるとしたら、それは過去最多の立候補者数22名に求めることが出来るかもしれない。

◆ 法定得票数・・・当選するためには有効投票の総数の4分の1以上の得票が必要

前回の都知事選挙で「NHKをぶっ壊す!」とNHKテレビの政見放送で叫んでトンデモオジサンと馬鹿にされた泡沫候補立花孝志は三年後の2019年の参議院選挙で当選し、日本に九つしかない国政政党の党首となった。

その立花は前回の都知事選挙では27,241票 得票率0.42% 第8位という結果であった。

前回の有権者数 11,083,306人 有効投票数は約662万票 投票率59.73 % 前回の数字を元にして一位と予想される小池の得票率が25%を切るには170万票がそのラインと想定できる。つまり<現職の小池都知事 VS. 21人の挑戦者>という構図である。21人の挑戦者の得票率の合計が75.1%に達すれば「再選挙」が実現する。そして再選挙になれば恐らく小池は敗れるだろう。

しかしそれでも小池が当選する可能性は高く、再選挙に持ち込むには①ベストセラー『女帝小池百合子』に描かれた真実のエピソードがあと4日間でどれだけ広まるか、②増加傾向にあるコロナ感染者数と小池のコロナ対策が都民にどう評価されるか、③オールドメディアのテレビ新聞が公開討論会の開催も含めてどのように報道するかに掛かっている。

以上①②③が小池に有利に展開すれば小池は二期目の都知事として再選されるだろうが、それでも来年の都議会議員選挙では小池与党の都民ファーストは惨敗するであろうから、小池は任期途中で辞任する可能性が高い。(→ 結局、再選挙)

 2020年7月1日投稿