[2543]ドサクサの改憲論議で警戒すべき、「なりすまし公務員」の正当化

藤川健二 投稿日:2020/05/04 12:59

憲法記念日の5月3日、ただのややこしい風邪のコロナ騒ぎのドサクサに、安倍首相が憲法改正を言い出した。

安倍首相「議論進めるべき」 憲法改正の必要性訴え

緊急事態と第9条にフォーカスさせようとしているが、最大限の警戒を持つべきは、同時にコッソリ第15条も書き換える、「なりすまし公務員」追認による、違法の正当化だ。
各党にも原案作成を呼び掛けているが、そんな事するはずもなく、仮に自民党草案がそのまま通ってしまうと、かつての内務官僚みたいな醜いおっさんどもが数だけ集まり、主権者の自由を制限し、「ジョーシキ、ジョーシキ」と強制力を振りかざす、下らない戦前を繰り返すのが、目に見えている。本当に、下らない。

現行憲法第15条。
日本国憲法
<引用始め>
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
<引用終わり>

選挙で選ばれた者が公務員であり、事務員(官僚)が法案を作文し、政府を通じ、議会を通させるのは、違法である。代議士は、法律を書くために選挙で選ばれたのだから、自分で考えて全部書け。
上級公務員(官僚)の管理職がコストだ。官吏は、異動なしで、各分野のスペシャリストだけで構成すべきだ。

対し、自民党改正草案の第15条。
日本国憲法改正草案(全文)
<引用始め>
第十五条 公務員を選定し、及び罷免することは、主権の存する国民の権利である。
2 全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選定を選挙により行う場合は、日本国籍を有する成年者による普通選挙の方法による。
4 選挙における投票の秘密は、侵されない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。
<引用終わり>

”公務員の選定を選挙により行う場合”と、コネと暗記と忖度で成り上がる、「なりすまし公務員」を正当化している。絶対に許してはならない。

さらに、”秘密は、これを侵してはならない。”を、”秘密は、侵されない。”と、妙な言い回しの変更を加えている。誰が主体の憲法のつもりか?

そして、9条に抵触する、国家の戦力である自衛隊を正当化したいなら、いったん法律を全廃、刑法を”復讐法”に書き換え、自衛隊も警察もまとめて民兵組織、”自警団”にしてしまえば良いのだ。警察も銃器を持っていて、国民や国内滞在外国人は持てないのだから、国家の戦力でないとは言い難い。そうすれば官僚から強制力を奪い取れるし、税が節約出来て、合理的である。参加したい者が参加すればいい。任侠好きな人も多いだろう。

ところで憲法前文には、「法の目的」が述べられる。法は目的が重要。

現行憲法。
<引用始め>
(前文)
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
<引用終わり>

現行憲法の前文は、人類普遍の原理と法則を述べていて、「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」だから、のちの改正も、現行法律条例も、排除する。せっかくユニテリアンの国の自由主義思想を導入したのだから、変える必要は、無い。

そして「福利は国民がこれを享受する」だから、官吏の天下りや”予算(税金)マネロン”を、許してはならない。
そういえば森友学園も野田中央公園も、クール・ジャパンやジャパンディスプレイ、オリンピック(都職員が大勢天下りしている)も、役人が、予算を組んで、民間に回し、受け取り、壊す、という予算(税金)マネロンじゃないのか?トカゲのシッポ切りが事件で報道される。
また、国際機関のOECDやIMFが日本の消費増税を訴える事自体が不自然で、官吏が、カネの力で国際機関をたぶらかし、国内で増税支援させることを放置するのは、政治道徳の法則に外れる。尖閣に来ている中国船も怪しい。向こうのお仲間と共謀して、呼んだんじゃないか?

話を戻し、自民党の改正草案、前文。
<引用始め>
(前文)
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。
<引用終わり>

よくこんなもの書いたものだ。本当の歴史など解っていないくせに「長い歴史と固有の文化」、税収を上げるため核家族化を進め、ナチュラルな共同体を破壊してきたくせに「和」、明治以降の軍部官僚、内務官僚が暴走した伝統しか想定していないであろう「良き伝統」と、あやふやな文言と冗談の羅列。デントウ、デントウなどと言うなら、最高神のアマテラスを連れて来いよ。せめて神話の”アマテラスが具体的に何者か”論じてから言えよ。どうせ、想定外なものが出てくる。

作られたパンデミック騒ぎのドサクサで、こんなこと言いだすのだから、行くとこまで行けば、あるべき歴史の道筋、かつて英国やフランスでやったように、”リパブリーク(の儀式)”が必要なのだろ。国王が自主的に退いた日本では、”比叡山焼き討ち”だけれども。
これからが、其の為に起こる金融・経済崩壊なら、しょうがない。迷惑なこったい。

今の日本は、地域や家族の共同体がバラバラになり、行く先は、個人意思の多様性を最大限許容する、個人主義の徹底化、個人の自由最優先、リバータリアニズムしかないのだ。今更幻想の「国家共同体」の押し付けなど、ウザいだけだ。これは歴史の運命、法則性の問題である。