[2521]コロナ・ショック後の世界(2)

片岡裕晴(かたおか のぶはる) 投稿日:2020/04/14 12:04

昨年の12月、武漢でコロナウイルスの感染が広まっているというニュースを聞いた。当初はコウモリのウイルスが野生の動物に感染して、それを武漢の食肉市場を通して買って食べたことにより人に感染が広まったという通説が報道された。その後、武漢郊外にある生物化学兵器研究所から漏洩したものだという説が広まり、それも誤って漏洩した説、人為的にわざと漏洩させたという説、人為的漏洩説にもその黒幕が様々あり、諸説入り混じっている。

もし、人為的に作られたウイルスが(過失からであろうと作為的にであろうと)感染を広げているのだとすると、このウイルスは実に巧妙に設計されたウイルスであるといえる。なぜなら、感染後発症するまでに何日も掛かり、しかも感染しても全く症状の出ない人と,軽い風邪程度の症状で収まっている人が全体の8割を占め、感染初期の人+症状の出ない8割の人が本人の自覚のないままに感染を広める媒介者となって、広範囲に動き回ってしまうという事が起っている。

これはこれで、重要なことで真実を知りたいと思うが、いま我々が考えなければならないことは、この『コロナ・ショック』が社会を混乱に陥れ、いずれ『コロナ大恐慌』が起きるだろうという心配である。

そしてコロナ・ショックの後に社会がどのように変わっていくのか?非常に興味のあることです。

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① 結局、一年延期となった来年のオリンピックは中止となる

オリンピックは一年「延期」ということになったが、本当は中止するのがベストの選択だったと思います。

「損切り」が出来ずに、未練がましく「ナンピン買い」をしてしまったようで、ますます傷口を広げてしまうでしょう。

コロナ恐慌のために国民はオリンピックどころではない。来年になれば国民のオリンピックを見る目は益々冷(さ)めて、白けてしまう。

オリンピックを待ち望んでいた国民の多くは、(本当は)オリンピックが素晴らしい祭典であるかのようにテレビで毎日毎日洗脳され続けていただけで、いざ自分たちの生活が脅かされる状態になれば、馬鹿げた祭典など見向きもしないだろう。そんなことも予見できずに「延期」に固執するとは政治センスがあまりにもない。

オリンピックを開きたいのは五輪利権に巣食う一部のスポーツ・ゴロと選手強化のために莫大な税金をつぎ込んで金メダルを目指す選手だけとなろう。(彼らの多くも結局は未来のスポーツ・ゴロのなのだ。スポーツは素晴らしいものだが、大量の税金をつぎ込んで選手を養成するのは間違っている)

安倍首相はこう言えば良かったのです。「オリンピックを延期した場合、追加でさらに費用がかかります。その費用をコロナ恐慌で困窮する国民のために使いたいと思いますので、オリンピックを中止します」と言えばどれだけ喜ばれたであろう。それが言えなくて(あるいはそんな発想は元から無いので)オリンピックの「延期」を決めた・・・でも結局はオリンピックは中止になるだろう。

オリンピックに関しては「2020東京オリンピック」は中止になるだろうが、オリンピックそのものを廃止するべきだとの議論が起ってくるだろう。1980年にオリンピックにプロの選手が出ることが容認され、オリンピックの商業化が進んだ。プロのスポーツ競技はスポーツ大会ではなく、スポーツ興行である。

② BIと消費税廃止の議論が盛んになり、その方向に一歩近づく

コロナ恐慌で大量の失業者と大量の廃業する零細企業が出て、次の総選挙をきっかけにBI(ベーシック・インカム)と消費税廃止の問題が選挙のテーマになる。

コロナ恐慌は金融恐慌につながり、やがて『コロナ大恐慌』と呼ばれる社会の混乱になるだろう。下手をすると、社会の崩壊にもつながりかねない事態だとの認識が必要だろう。歴史的には『コロナ以前』『コロナ以後』と明確に区別して語られるようになるだろう。

失業して収入が無くなり、住む家さえ失ってしまう人が大量に出ることが予想される。それを防ぐには毎月の最低の収入を保証しなければならないほどの危機なのだ。

コロナ危機で収入が激減した人に対する(一人当たりではなく、一家庭に)30万円の支給は金額だけが強調され一見素晴らしい対策に見えるが、やたら手続きが複雑で、一体だれがもらえるのか良く分からない。PCR検査が行政の手続きを複雑にして、わざと受けずらくしたように、この収入支給対策も手続きをわざと複雑にして、貰(もら)えずらくしているとしか思えない。

そんな対策よりも一人当たり10万円をすべての人に支給する。赤ちゃんから高齢者まで、貧乏人から金持ちまで支給する。そして、一定額以上の年間所得があった人からはサラリーマンなら年末調整で、自営業者なら確定申告で、年金受給者なら高額年金を受給している人から(年金支給時に調整して)、それぞれ『コロナ恐慌復興税』として回収すればよい。

収入を断たれて困窮している人は一刻も早く現金を手にしたいはずである。手続き云々よりもまず全員に配ればよい。マイナンバーが全員に通知されたのだから、現金も同じように配れるはずだ。

その際に不正が起るかも知れないなどと下らないことをいう人が必ず出てくる。少しぐらいの不正は起こっても仕方ないのだ。水道は各家庭に届くまでに10%ぐらいの漏水が起ったとしても、それを理由に水道事業を止めるのは本末転倒である。多少の不正はあっても当たり前と考えなければならない。

このすべての人に一定金額を支給すればよいという発想は実はN国党の党首、立花孝志がYouTubeで発表していることである。

立花孝志は七月に行われる東京都知事選挙に出馬を表明している。その表明の際の公約の一つとして、「50万円を赤ちゃんから高齢者まで、すべての都民に配る。一定額以上の所得のある人からは、来年の税金を納めるときに、50万円を回収すればよい。東京都がそれを実行すれば他の道府県も同じことをするだろう」という事を言っている。

前回の都知事選挙と同じく、今回も立花孝志は当選を目指しているわけではない。選挙とは当選だけを目指すものではない。選挙とは自らの政治主張を表明し合う場である。誰が当選しても当選した都知事は落選した候補者を支持した少数意見も尊重して政策に反映させるのが民主主義であると言うのが立花の主張である。

もう一つの消費税をゼロにすることは最も手早く、国民に現金を配る方法であり、実施するための費用がほとんどかからず、早く、確実にすべての人に経済的恩恵を与える方法である。年収が200万円の人なら20万円の所得が増えたことになる。そして、低所得者ほどその減税の効果は大きい。2年間これを実施して経済の底割れを防ぎ、その間に経済を立て直すための基本の政策となる。

③ テレワーク、リモートワークがビジネスの進め方の主流となる

コロナショックをきっかけとして、多くの企業が導入し、また導入を試みているテレワークやリモートワークがそのまま受け入れられ定着していく。

学校教育においても遠隔授業、オンライン授業が模索され、いずれは新しい手法として取り入れられてくるだろう。

テレワークは従来オフィスでしていた会議やデスクワークを遠隔で行うということだけではなく、仕事の進め方も変わり、その結果、今まで隠れていた無駄が明らかになり、AIの導入も加わり多数の失業が出るかもしれない。

④ グローバリゼーションが見直される

国際分業、グローバリゼーションは行き過ぎであり、間違いであるとの認識が広まる。

一番目の理由として、国際分業は平時には最適なシステムかもしれないが、いったん災害や戦争が起こった場合、部品の供給が止まり、たった一つの部品が無いために完成品の組み立てが止まってしまうという決定的な弱点が(3.11に続き)再び認識された。

二番目の理由として、途上国の安い労働力を求めて工場を海外に移すことは、資本の側にとっては(一時的に)利益の拡大になるが、国内に失業者が生まれ、所得が減少し購買力が失われるため、せっかく安く作った製品が売れないということになる。

何故なら、一社だけが労働力の安い途上国に工場を移した場合なら、他の競合企業との競争に勝てるのだが、やがて全ての企業が同じことをすれば、価格競争での優位さが無くなるだけでなく、所得が減少した先進国の全ての労働者の購買力が減少し、製品を売るための市場そのものが縮小し、ついには無くなってしまうという矛盾がある。

1989年11月ベルリンの壁が崩壊し(西高東低だった)東西の労働賃金の堰(せき)が無くなった。
水の水位がやがて低い方に均(なら)されて行くように西側の労働者の高い賃金が徐々に下がり始め、さらにグローバル化が進むことによって、労働力の安い低開発国に工場が移転され、先進国の生産システムが空洞化すると同時に、先進国の労働者の賃金が低下するという現象が西側の先進国で起こった。

以上2点が明らかになった結果、国際分業は破綻した。従ってコロナ・ショック後の世界においては生産の国内回帰の流れが求められるだろう。労働者の所得を増やし、購買力を増加させ、市場を再生することが正しいのだとの考え方が生まれてくるだろう。

ただし、AIやリモートワークの普及によって、すべての仕事が影響を受け、人に頼らない仕事の進め方に置き換わっていくため、グローバル化以前の状態には決して戻らず、失業者の増加につながる。このことが②のBIの議論の根拠となるだろう。

⑤ 安全保障の考え方が見直される

仮想敵国を作り、武器を購入し、国の防衛を考えることが国民の生命と財産を守る為の安全保障だと、普通の人はマスコミの洗脳によって信じ込まされていた。

ところがコロナ危機に見舞われたことにより、多くの人は(目から鱗が落ち)安全保障にたいする考え方を変えざるを得ないだろう。

自分や家族の安全と命を守るために、都市のインフラを維持するために、必要な武器はオスプレイやイージスシステムではない。

必要なのは医療用のマスクやガウン、消毒用アルコール、医師や看護師や病院や人工呼吸器やECMO(エクモ)、そしてワクチンや治療薬やそれらを開発をする研究者(オリンピックの強化選手ではなく!大学の研究者の冷遇ぶりを見よ!)と何よりも国内においてそれらを製造し供給できる体制なのだ。

ドラッグストアーの店頭では買うことが難しい不足するマスクはその大半が中国で作られているようだ。医療用の高性能マスクや、ガウンなども素材も含めて外国で作られている。

このような安全保障上必要な基本的なものはたとえ価格が高くなったとしても、国内で供給できる体制を作って置かなければならないという認識が国民の間にできるだろう。

全く同じ理由から、食料品の国内自給を考えなければならない。国際分業にして外国から安いものを買うのが合理的であるという考え方は、コロナ危機に依って、食料の輸出を抑制しようという動きが各国に出ている今、完全に破綻している。

⑤ 選挙のあり方が変わるだろう

次の総選挙が二年以内に行われる。コロナの流行は2年は終息しないだろうとの有力な見解(ジョンズ・ホプキンズ大学の予測、京都大学山中伸弥教授の見解など)がある。コロナ騒動が収まらない中での選挙が行われる場合、従来のような街頭演説や有権者に握手を求めて人込みの中を歩くといったスタイルの選挙は出来ない。次の総選挙がネットを使った選挙が当たり前となるキッカケになるだろう。

自らの政治主張をYouTube動画を使ってい選挙運動を行えば、有権者と候補者がダイレクトに意見を交換することも可能である。内容のある主張や政策を有権者にうまく伝えられないような候補者は視聴者(有権者)から相手にされない。

これまでの、大声で候補者の名前を連呼したり、ウグイス嬢が必要だった選挙は一変するだろう。選挙事務所さえ必要は無くなり、真の意味での「金のかからない選挙」が実現する。

これまでの選挙においては地盤(後援会組織)、看板(知名度)、鞄(選挙資金)が当選の条件とされてきたが、ネット選挙はそれを打ち破る新しい手法であり、旧来の方法で当選していた議員に代わって、新しいタイプの議員が生まれてくる可能性が高い。

特に、「従来の選挙は金がかかる為、当選後の議員活動において選挙資金の提供を受けた企業や組織、個人の意向に沿った政治をしなければならず、それがこの国の政治を歪め、一部の人の利益のための法律が立法されるる原因であった」とする立花孝志の主張は一定の支持を集めるだろう。

選挙に金を掛けずに当選できれば、当選後に誰かに忖度(そんたく)した政治を行う必要がない。ネット選挙は殆ど金を掛けずに行うことが可能である。ネットで行う主張に魅力があり、正しいものであれば、視聴者(有権者)の支持が集まる。

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昨年12月、武漢で発生した、蝙蝠(こうもり)を起源とする(と言われた)ウイルスが人に感染しているというニュースに接していた時は、まだまだ他人事であった。

武漢の断固たる都市封鎖にただただ驚き、ダイアモンドプリンセス号騒動のゆるい対応にあきれ、学校の休業に戸惑い、欧米での感染拡大が中国を上回って再び驚き、オリンピックの延期にやれやれと思い、外出自粛要請、緊急事態宣言と続き、いま多くの日本人は委縮してひっそりと家の中に閉じ籠っている人が多い。

巣籠(すごもり)のために保存食を大量に買い溜めし、トイレット・ペーパーも沢山買った人が大多数であったことは、スパーマーケットの売り場を毎日観察していればよくわかる。

感染はこれからも広まり、多くの人がやがて免疫を持ち流行は終息するだろう。その意味ではコロナウイルスをそれほど恐れる必要はないのかもしれない。しかし、感染しない方がいいだろう。医療体制(治療薬の開発を含めて)が整う時間を考慮すれば、自分や家族の安全を考えて、できるだけ遅くに感染するのが個人としての対策だと思う。

しかし、その間に経済活動は深刻な打撃を受けて、立ち直れない人が多く出ることも簡単に予想できる。

人々はショックを受け狼狽し、テレビの情報にのみ頼る人々は、いいように洗脳され、情報に操られていく。権力者は長年の間に積み上げられ、隠し続けてきた不都合な不正をこれから起こる『コロナ大恐慌』のどさくさに紛れて、胡散霧消(うさんむしょう)にしてしまおうとするだろう。

『コロナ大恐慌』は本当に起こりつつある。真に恐ろしいのはコロナウイルスではなく、この混乱により湧き出てくる詐欺師や邪悪な政治家が善意の顔をしてあくどく立ち回ることの方だろう。

2020年4月14日投稿