[2462]「馬鹿でブスで貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。」を早速読んでみた
まず自分は馬鹿であることを自覚しよう、それが幸せへの第一歩なのだ
「馬鹿でブスで貧乏」という女の三重苦、いわゆる低スペック女子への福音となる待望の本が現れた。
読了後の感想は、
男である私(六城)が読んでも、まったく同感であるし、逆に本書でいう馬鹿ブス貧乏でありながらも芯の強い女性は理想像とも見えるのだ。
「妻のトリセツ」を読んで中年女の思考がわかった気になるのも良いが、それで納得し受容できるほど度量のない男性諸氏にもお勧めの本といえる。
フェミニズムの恩恵(といってもまだまだ途上だが)を受けている現代の女性でも、まだまだ精進が足らんという励ましが全編にわたってこれでもかと、微に入り細に入りくどいほど書き込まれている。
書名の通り<愛をこめて書いた>という題に偽りはない。
馬鹿だからブスだから貧乏なのだという著者の主張に眉をひそめる方々が大部分だろう。
だがいくら心地よい自己啓発本が世には氾濫していても、人口の8割がたは著者の言うところの馬鹿ブス貧乏であるという現実だ。
この本の要諦であり結論は
『死ぬ瞬間に、あなたが自分の人生を肯定できるかどうかがポイントだ。何をするにしても中途半端でブスで馬鹿で貧乏だったけれども、この人生ゲームを捨てずに逃げずによくやってきたね!健気だったね!と自分の頭をナデナデできるかがポイントだ。』(まえがきより)
人口に膾炙(かいしゃ)されているファンタジー(幻想)と現実を混同してはならない。バカは踊らされるだけということにバカは気づかない。
テレビ番組のセレブの生活も、SNSで垂れ流される虚飾の世界もすべてはファンタジーでしかない。現実逃避のために用意されているのだから、息抜きとして楽しめばよいと著者はまず指摘している。
この本は自己啓発書ではない、いうなれば世のほとんどの人(馬鹿でブスで貧乏人)への啓蒙書だ。
人は見かけよりも中身だとか清貧という道徳観に縛られず、もろもろの道徳や貞操観念は人生のいろどり程度として認識すべきという実践の書である。
馬鹿で貧乏でブスはもっと地に足をつけた生き方を目指し、経済的損失をなるべく回避した生き方を模索すること。
馬鹿正直や馬鹿真面目を装いつつも、世の中は欺瞞に満ち、ほとんどが馬鹿とキチガイと悪人(詐欺師)ばかりだと思っておけばサバイバルして行ける。
本書は、そんな自信を馬鹿でブスで貧乏な我々に与えてくれるのだ。
このように書くと、フェミニズムを前面に置いたエッセイだと勘違いしてしまうが、本文は中盤(中年期)に大きなどんでん返しが訪れる。
税と社会保険だけではなく、社会の支配構造にも気づけよと、ご丁寧に参考図書を列挙して藤森せんせーは懇切丁寧に解説してくれるのだ。
貧乏大衆に過ぎない馬鹿でブスなあなたもオバサンになったら、それくらいは気づかないと無駄な気苦労をしょい込んでしまいますよという警告だ。
その中年期も閉経を迎えると、賢く容姿も愛嬌も備えた完璧な女性ほど更年期の症状は悪くなる傾向が強いのだから、馬鹿でブスでも一つはよいことはあるものだ。
また女性とは元来子供を15人ほど生み育てるぐらいの生命力がある生き物だ。だからこそ閉経後でも燃え尽きるパワフルさはだれにもあると藤森せんせーは指摘されている。
現代において女性が男性よりも長命なのは、内包するエネルギー(フロイトのいうリビドー:libido)がもともとから女性のほうがあるからだという藤森せんせーの説には納得するしかない。
そして女性は閉経を経てもなお長い期間、オバサンとして生き永らえねばならない。この期間が馬鹿で貧乏であっても教養を深める最後のチャンスだ。
体力も気力もガタガタになってゆく老年期にむけて、残された時間を少しでも読書に振り向ける習慣を作ることが説く。
『ともかく、老年期に入る前に、やれるだけのことを実践し、やりたいことは、できる限りすべて経験しておこう。空っぽになるまで、消費しつくすまで、中年期を存分に生きてください。できることなら、中年期の終わりに、力尽きて死ぬのが理想的だ。
ほんとうは老年期があなたに来ないほうがいい。なんとなれば、高スペックの頭が良くてお金のある人でも、日本の現代と近未来における老年期を充実させて生きることは難しいから。』
しかし悲観することも、恐れることもない。なぜなら馬鹿ブス貧乏であるから失うものもない。
そして誰もがお婆さんとしての容姿に帰着して行く。
孤独に耐え、警戒心を怠らない生き方だった馬鹿ブス貧乏なら、老後も充実して送ることができるのだと藤森せんせーは説く。
そして健康に注意し、独学でよいので小学生中学生から学びなおす心構えが肝要という。
老人世代のおひとりさまへの指南書は、本書でたくさん紹介されている。
孤独死への対処にまであるのだから、これほど至れり尽くせりの内容はない。女子高生から後期高齢者までどの層にもお勧めだ。
馬鹿でブスで貧乏の我々が必携必読の、サバイバル・バイブルなのである。