[2459]以下に載せる 田中宇(たなかさかい)氏の政治と経済の文章が、大変、優れている。

副島隆彦 投稿日:2019/10/29 07:19

副島隆彦です。今日は、2019年10月29日(火)です。

 現在の世界情勢について、日本から発信している 情報と分析の 文章で、一番、優れているものは、以下に載せる 田中宇(たなかさかい)氏の、文だ。 私は、いつも、田中氏の

「国際ニュース解説」の文に、驚嘆して、その多くに賛同している。
元 共同通信で、世界政治情報の報道の技術を学んで、独立して、こうして、ネット時代に、精力的に、もう20年以上も、独力で、正確、確実かつ、これほどの高度の優れた評論文を、粘り強く発表しているのは、田中宇(たなかさかい。私たちの間での、略称 宇(うー)たん)氏だけである。

 最新の彼の 文章のほんの一部を以下に転載して、載せます。皆さんの、彼のサイトに、読みに行って下さい。副島隆彦が、強力に、文句なしで、強くお勧めします。

(転載貼り付け始め)

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2019年10月28日
http://tanakanews.com/

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
隠れ金融危機の悪化 http://tanakanews.com/191025frb.php
米軍シリア撤退は米露トルコの国際政治プロレス
http://tanakanews.com/191017syria.php
米連銀のQE再開 http://tanakanews.com/191014qe4.php

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★人類の暗い未来への諸対策
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この記事は「隠れ金融危機の悪化」の続きです。
http://tanakanews.com/191025frb.php

 前回の記事に書いたように、世界経済は今後いずれ巨大な金融バブルが崩壊し、
リーマン危機より深刻な金融危機と大恐慌になっていく。現在は巨大なバブルが
崩壊する前の膨張した状態だが、マスコミも金融界も崩壊寸前のバブルのことを
ほとんど語らないので、多くの人がそれを知らない。

 バブルがいつ崩壊するか不明だが、来年(2020年)から金融危機や大不況になるという予測が以前から出回っている。

 トランプ米大統領は、来秋の大統領選まで株価の高値を持たせて好景気を演出し、再選につなげようとしているので、来秋までは全力でバブルを維持するだろうが、その後で金融危機になる可能性があり、それが2020年崩壊説につながっているのかもしれない。

 前回の記事に書いたように、バブル崩壊はすでに9月から米銀行界のレポ市場(短期融資市場)の凍結のかたちで表れており、今後崩壊感が払拭される可能性は低く、いずれ崩壊が債券市場へと拡大し、本格的な金融危機になっていく可能性が高い。

http://www.zerohedge.com/markets/bofa-we-are-irrationally-bullish-2019-liquidity-crisis-coming-2020
BofA: We Are “Irrationally” Bullish On 2019, But A Liquidity Crisis Is Coming In 2020

http://www.focus-economics.com/blog/the-next-financial-crisis-how-when-it-will-happen-according-to-26-experts
How & When Will The Next Financial Crisis Happen? 26 Experts Weigh In

 今後いずれ金融バブルが崩壊すると、世界の中央銀行や政府に事態を延命・蘇生する余力がない(すでにリーマン後の延命策で使い果たしている)ので、金融システムの崩壊と実体経済の不況が世界的にずっと続く。

 崩壊や不況は10-20年続くかもしれない。最近チリやエクアドル、アルゼンチンといった、経済の民営化を徹底して進めてきた中南米の諸国で、経済社会の崩壊や反政府デモ、暴動などがひどくなっているが、これは米国中心の世界の経済金融システムの崩壊の始まりとして、システムの周縁にある対米従属的な新興市場諸国が先に崩れているものだ。

 この傾向はずっと続く。新興市場諸国でも、非米的な諸国は比較的崩壊していない(レバノンやイラクなど中東諸国での反政府デモの拡大は、米国からイランなどへの覇権意向と関連しており、中南米と事情が違う)。

http://www.strategic-culture.org/news/2019/10/23/burn-neoliberalism-burn/
Burn, Neoliberalism, Burn – Pepe Escobar

http://tanakanews.com/190429multipol.php
多極化の目的は世界の安定化と経済成長

 世界不況が20年も続くのは信じられないかもしれない。だがよく考えると、たとえば日本は90年代のバブル崩壊から30年蘇生せず、超低成長が続いている。

 マイナス成長を粉飾してプラス成長に見せかけるのは難しくない。日本は事実上30年間の不況である。くそな専門家たちがそう言わず、人々が専門家を軽信しているだけだ。20年間の世界不況が起きても、人々がそう感じるかどうかは疑問だ。人類の不感症をよそに、20-30年間の世界不況がこれから起こりうる。

http://tanakanews.com/170608bubble.php
米金融覇権の粉飾と限界

http://tanakanews.com/151115economy.htm
ひどくなる経済粉飾

 IMF世銀は先日の年次総会で、これから全世界が同時に不況になっていくという予測を発表した。リーマン危機後のような不況になるという。ナショナル・ジオグラフィックは、これからの30年間で世界的に食糧難がひどくなり、最大で50億人の人々が、十分な食料と水を得られない状況になるという予測を発表している。

 IMF世銀もナショナル・ジオグラフィックも、エスタブ系(引用者注。エスタブリッシュメント。それぞれの国の支配階級の人たちのこと)の勢力だ。
「陰謀論者や左翼のたわごと」ではない。(最近はエスタブ系の方が「たわごと」ばかり発しているが)

http://www.zerohedge.com/economics/imf-forecasts-synchronized-global-slowdown-weakest-growth-lehman
IMF Forecasts “Synchronized Global Slowdown” – Weakest Growth ‘Since Lehman’

http://www.zerohedge.com/health/national-geographic-warns-billions-face-shortages-food-and-clean-water-over-next-30-years
National Geographic Warns Billions “Face Shortages Of Food And Clean Water” Over Next 30 Years

 金融資産の多くを持っているのは大金持ちの層だが、これからの金融崩壊で最も打撃を受けるのは、金持ちでなく貧乏人だ。金融崩壊は政府の財政破綻や企業の倒産を引き起こす。社会福祉や公的年金の機構がつぶれ、それに頼って生きてきた人々の生活が破綻する。

 企業の連鎖倒産によって失業が急増し、中産階級の人々も生活難に陥って貧困層に転落する。賢い大金持ちは金融崩壊をうまくヘッジするだろうから、世の中の貧富格差はどの国でも今よりさらに急拡大していく。そんな状態が何年も、何十年も続く。

http://bit.ly/347gb4c
Goodbye Middle Class: The Percentage Of Wealth Owned By The Top 10% Just Got Even BIGGER

(以下、略)

この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/191028ubimmt.htm

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

◆隠れ金融危機の悪化
http://tanakanews.com/191025frb.php

【2019年10月25日】米国で9月後半から大手銀行が米国債の担保と引き替えで
も中小銀行に融資したくない「レポ市場の凍結」がおきている。いったん連銀
が介入するとみんな連銀から借りたがり、凍結に拍車がかかった。

(副島隆彦の引用者。割り込み加筆。 レポ市場、レポ取引 とは、repurchase agreement リパーチェス・アグリーメント の日本語略称。「買い戻し特約付きの銀行間の1日、2日の超短期の資金の貸し借り市場」のこと。 インターバンク interbank 銀行間だけでの 資金の融通のし合いの、短期の金融市場だ。
 日本では、「無担保翌日ものコール市場取引の市場」。たった2日のオーヴァー・ナイトの資金融通だ。この料率が、「マイナス0.125%」とかで、今は、そのまま短期資金の政策金利と同じになった。私、副島隆彦が、40年前に銀行員をしていた頃に、この銀行間のコール市場が出来た。その前は、短資(たんし)会社が、銀行間の間で、超短期の資金の融通を仲介していた。

 この無担保の、銀行間での、余裕資金の 預け合い、貸し借りにも、 自己保有の同じ国債を、数回、使い回して、見せガネのように担保に出す、という手口で、資金を調達する、苦境に陥っている銀行がある。これが、「シャドウ・バンキンぐ・システム」の中で、さらに悪用されると、ダークプールでのデリヴァティブ取引になってしまう。 それで、銀行間で、信用不安が起きて、危なそうな中小銀行に大手の銀行が、この短資市場で、貸さなくなる動きがこの9月にNYで起きた。信用不安が起きたのだ。

資金の円滑の動きが鈍って、凍り付いたら、大変なので、NY連銀(れんぎん。FEBの実働部隊)が、仕方なく、この市場に自分の資金を放出して、介入した。それが「親方日の丸」のおっぱいから、チュウチュウお乳を吸うような、民間銀行の体質を生む。 このNY連銀の資金の放出は、そのまま、「中央銀行の緩和マネーの実施、すなわち、ジャブジャブ・マネーであり、これを、田中宇氏は、パウエルFRB議長の「QE4(キュウ・イー4)の実施」の決断だと考えた。卓見である。この事態を、田中宇氏は、重く見ている。引用者、割り込み解説終わり )
   
 米銀行界は相互信用が失われたままの大変な危機だ。金利低下で銀行の利益は減る一方で、信用失墜は今後もずっと続く。最終的には世界の銀行の半分がつぶれる。マスコミなど権威筋は危機をほとんど報じず、事態を過小評価した後、黙っている。「隠れ金融危機」がどんどん悪化している。

◆米軍シリア撤退は米露トルコの国際政治プロレス
http://tanakanews.com/191017syria.php

【2019年10月17日】クルドは米軍産の傀儡でなくロシアが守ってやれる非米的
な勢力になり、米軍に代わって露イランがクルドを守るようになる。米国はト
ランプの希望どおり、シリアの覇権をロシア側に委譲する。トルコはいずれロ
シアの仲裁でシリア政府と和解する。

 トルコ軍はクルド地域以外の北シリアにしばらく進駐し、ISIS残党の面倒を見る。このような覇権移転をやるために、トルコは米露と談合しつつ北シリアに侵攻した。米軍のシリア撤退の騒動は、米露トルコが「戦争」を演じつつ、実は米覇権放棄や多極化のシナリオに沿って動いている「国際政治プロレス」だ。

◆米連銀のQE再開
http://tanakanews.com/191014qe4.php

【2019年10月14日】9月中旬に米連銀(FRB)がレポ市場に介入した直後か
ら、民間銀行がどんどん群がってきて連銀依存が急拡大し、民間銀行どうしで
融資したがらなくなる事態が起きた。連銀のレポ市場介入は逆効果だった。

 銀行界の連銀依存が急拡大したので、連銀は介入を拡大せざるを得なくなり、今回の事実上のQE再開に踏み切らざるを得なくなった。今後、依存症からの離
脱に失敗した人が依存症に逆戻りした時の事態の破綻のひどさと同じことが、
米金融界に起きる。

 今回始まったQE4はおそらく、トランプが再選される来秋の大統領選挙を越えて続く。QEの資金で来年まで株や債券のバブルが維持されるが、中長期的には暴落に至る。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。このように、田中宇氏の、文章は、硬質(こうしつ)で、高雅(こが)で、大変、優れている。ここまで、政治と経済の 両輪(りょうりん)を、鋭く、的確に描いて、さらに、深く洞察して、私たち日本人に「なるほどー。そうだったのか」と分からせてくれる 言論人は日本には他にいない。私たちは、田中宇(うー)氏という世界基準の頭脳を持てて、本当に幸運だ。

 それでも、田中氏の文は、普通の読書能力の人々には、ちょっと難しいのではないだろうか。だから、そのために、私、副島隆彦が、田中宇(うー)たん よりも、やや下品で、日本人の実感に近寄った、浪花節(なにわぶし)の文章を書いている。私たちは、これからも、また、宇(う)ーたんを、私たちの学問道場の定例会にお招きして、彼と連帯して、彼と言論界で強く共闘してゆきたい。 

副島隆彦拝