[2394]大化けする「N国党」、胡散臭い政治団体から国政政党への飛躍(2)

片岡裕晴 投稿日:2019/03/31 09:35

(2019年1月16日投稿の文章[2382]の続きです)

4月の統一地方選挙の前哨戦、台東区議会議員選挙がさる3月17日行われ、N国党公認候補者は立候補者41名、定数32名のところ18位で当選しました。新しく区議会議員となるこの人(38歳)は4年前の選挙に無所属で立候補し、この時は42位の最下位、得票数337票でしたが、今回は1656票と大きく票を伸ばしました。4年間の研鑽努力はもちろんあったでしょうが、やはり「NHKから国民を守る党」の公認候補であったことが、大きく票を伸ばした理由であることは誰もが認めるところです。

【受信料の徴収に JUSTICE はあるのか=NHK問題という政治テーマ】

2008年大阪府知事選挙に立候補し政界に躍り出た橋下徹の登場は目覚ましいものがありました。「市バス運転手の平均年収800万円問題」をはじめとする市府政改革に多くの大阪府民、特に、ろくな就職先がなく大いなる不満を抱えたロストジェネレーション世代の支持を得て旋風を巻き起こしました。

昨年12月2日に行われた学問道場の定例会で副島先生はこの現象を「下からの噴き上げる風を集めた橋下徹」と述べられていましたが、同じことが今、NHKをめぐる問題として起こりつつある。

悪の既得権益組織NHKが派生する、国民にとって鬱陶しく、迷惑で、危険でさえあるいくつかの問題として浮上し、これを黙って放置しておくにはもはや我慢の限界というところまで、増長してしまっている。この問題について以下に三つの項目に分けて述べていきます。

大事なことは「民意」なのだ。

① 第一に、「受信料」に JUSTICE(公正) はあるのかという問題。NHKは公式には全世帯の79.9%(平成29年度)が受信料を支払っていると言っている。しかし、これをまともに受け取る人は現実を知らなすぎる。実際には50%程度だろう。

深刻な問題となっているのは、各家庭を訪問し、受信料を支払えと脅すNHK集金人とのトラブルである。まるで暴力団の様な脅迫的な態度に恐れをなし、受信料を嫌々払う法律に無知で気の弱い人たちが後を絶たない。

NHK集金人の恐怖から何とか助けてほしいと願う人たちと、このような状況をおかしいと声を上げる人たちが、まずはN国党の支持者であり、「下から噴き上げる風」としての民意なのだ。(敗戦の混乱期と1950年代のNHKラジオが国民の求心力の要としての役割を果たしていた、あの素晴らしい時代を知っている人々も今の状況をおかしいと思っている)

一方、受信料を払っている人たちからも不満の声は上がっている。それは受信料を払わずにNHKを見ている人達に対する不満であり、もし仮に全員が受信料を払えば受信料は今の半分で済むと主張している。
これらの「民意」を汲んで、すべての国民が納得できる簡単な解決方法がある。
それはスクランブル放送をすることである。スカパーやWOWOWと同じように、視聴料を払ったテレビ受信機のスクランブルを解除すればいいのだ。(全てのテレビ受信機にはB-CASカードが付いており、この20桁の番号で受信機は特定される)

スカパーの視聴料と同じくNHKも受信料を払った人だけが、スクランブルを解除され観ることが出来るようにすればいいのだ。
こんな簡単な方法ですべての国民が納得できる手段があるのに、これをしたくないのは当のNHKとNHKの既得権益から利益を得ている一部の不埒者なのだ。

NHKから国民を守る党のスローガン「NHKをぶっ壊す!」とは具体的に言えば、放送法を改正しNHKにスクランブル放送を実施させることだ。

放送法が改正され、NHKがスクランブル放送をしなければならなくなると、敢えて受信料を払い、スクランブルを解除しようという国民は私の予想では3割程度になるだろう。

② 2つ目はインターネット(通信) vs.テレビ(放送)という構図である。

政府は3月5日、NHKによるテレビ番組のインターネット常時同時配信を可能にする放送法改正案を閣議決定した。今国会で成立する可能性が高く、NHKは2020年3月末までにサービスを開始することがほぼ確実となった。(この時点ではアプリが、敢えて無料でダウンロードできるだろう。そして、無料でサービスが受けられるであろう。しかしそれは巧妙な罠であることを知っておかねばならない)

また、3月12日には最高裁判所は(テレビを持っていなくても)ワンセグ携帯電話を持っていればNHKに受信料を支払えとの結論を下した。
この裁判はワンセグで受信料を払わなければならないのかということで争われていたもので、一審の地裁では、払う必要はないとの結論が出て原告が勝訴したが、NHKが上告し二審の高裁ではNHKが逆転勝訴した。このため原告が最高裁に上告したが、最高裁は上告を棄却したため、高等裁判所の判決が確定した。

この二つの事件は(あえて事件と言う)NHKがテレビ受信機だけでなく、パソコンや携帯電話でも(テレビを持っていない人からも)受信料を徴収しようという魂胆がうかがえる。

更にカーナビのワンセグでもNHKは受信料を払えという主張をしており、一つの事例では自宅の車庫では電波が届かずテレビが映らないにもかかわらず、「電波が届くところまで車を走らせれば映るでしょ」とNHKは無茶苦茶な主張をしている。そもそも車を運転しながらテレビを見ることは道路交通法に違反のはずだが、この裁判もNHKが負けることはないだろうとの予測が強い。

この三つの事例を冷静に観察すると、NHKの悪足掻きの構図が透けて見えてくる。NHKはかなり焦っている。

国民がテレビ離れを始め、ネットに集まり始めたから。
そればかりではない。急速に普及したスマートフォンは、どこかで火事が起こったり、事故や事件が起こったり、何か楽しいイヴェント行われている現場に偶然居合わせた一般の人々が、「にわかカメラマンやビデオ撮影者」に変身し、すぐさま映像をネットにアップロードする。

その上、現場中継を行い、「にわかリポーター」として現場の詳しい状況をリアルタイムで知らせてくれる。その機動性や即時性は巨大な組織とプロの人材をたくさん抱えている放送局でさえ後れを取っている。

地球上に何億人といる「にわかカメラマン」や「にわかリポーター」の頂点にいる人達の水準は非常に高い。
この中から既存の巨大放送局に対抗して小さな「放送局」を始めている人たちがいる。テクノロジーの進歩と圧倒的な人数という広いすそ野が巨大放送局を打ち負かしつつある。

「通信」と「放送」の勝負は先が見えている。

だからNHKは大いに焦って、公共放送から「公共メディア」へ変身しようと悪足掻きしている。  だが、・・・間に合うのかな?

③ 3つ目の問題はNHKの報道姿勢である。余りにも安倍政権寄りの報道姿勢であり、政治的中立性を損なった偏った報道をし、国民にとって必要なニュースを意図して報道しない。
これに対しては、まともな思考の出来る人々からの批判が根強くあり、加えてNHK職員の不祥事、事件の多さに反発して、受信料の支払いを拒否する人たちが多く存在する。この人たちは①の人たちとは意識や立場が異なっているものの、NHKに受信料を支払いたくない、NHKの受信料には JUSTICE はないと思う点で共通する。

N国党は③の集団とは距離を置いているものの、国政政党に成長し、放送法を改正する段階では③の人たちをも吸収して「国民政党」に発展するだろうと私は予測している。更に、NHKがぶっ壊れた暁には、党名から「NHK」を削除して「国民を守る党」へ名称が変更されるであろう。

1950年代にはNHKの集金人は制服をちゃんと着用し、公共放送の意義(国家や企業のお金ではなく、国民のささやかな受信料に依って放送する意味)を丁寧に説く伝道者として全国の家々を回っていたのだが、今ではカツアゲをする街のチンピラに成り下がっている。

これに対応するように「NHKから国民を守る党」の政治家やその支持者が街頭やYouTube動画を通して、熱烈な伝道者となり、アンチNHKの活動を行っている。

4月の統一地方選挙では、N国党は50名近くの公認候補者を立てている。更に、7月の参議院議員選挙では公職選挙法で政党要件を満たす10名の候補者を立て、有効投票数の2%以上の獲得を目指し、国政政党への飛躍を実現するであろう。

2019年3月31日投稿