[2392]このあと、世界で次々と 何が起きるか。私が予言します。

副島隆彦 投稿日:2019/03/20 10:41

副島隆彦です。 今日は、2019年3月20日(水)です。

嵐の前の静けさ である。 今は、世界中が静まりかえっている。もうすぐ何かが大きく起きそうだ。

 世界の金融・経済では、トランプ大統領が、FRBパウエル議長を、脅(おど)し上げて、言い放った、「金利を上げるなー」、「金融緩和を再開せよ」が、効いた。

 1月30日から、世界は、「利上げせず」に大きく変った。ヨーロッパも利上げをやめた。パウエルが、泣きそうな顔で、自分たちのこれまでの大方針を、ボッキリ自分たちで折って、トランプ独裁政治に屈服した。日本では、日銀黒田の「マイナス金利政策の続行」だ。

今、アメリカで論争の的になっている、ふたりの若い女

 下院議員(ニューヨーク州 第14区 ブロンクス区)に当選した。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(29歳)AOC(エイ・オウ・シー)と略称で通用する、今、アメリカで一番、人気の 若い女。両親はプエルトリコ出身。なつかしの映画「ウエストサイド・ストーリー」を思い出させる人だ。貧困層の味方。


ニューヨーク州立大学 ステファニー・ケルトン教授(49歳) 貧困層の味方。原理的(パレオ、paleo- ペイリオウ の ケインジアン)

 今、脚光を浴びているこの2人の女たちについて、私は、今度の金融セミナーで解説する。

 こうなると、金融緩和(きんゆうかんわ、easying money イージーイング・マネー )すなわち、ジャブジャブ・マネーの再開だ。 世界は、こっちに大きく舵を切った。このように大きく、大きく分かることが大事だ。そのために、副島隆彦の学問道場は有る。

 それで、この先、世界はどうなるのか? この話を、分かり易(やす)く、分かり易く、世界一、分かり易くやりますから、私の金融セミナーに来て下さい。 4日後の今度の日曜日です。

「副島隆彦(そえじまたかひこ)の“予言者”金融セミナー 第17回」

*会場:イイノホール&カンファレンスセンター 
 東京都 千代田区 内幸町2-1-1
*日時:2019年3月24日(日)
 開場・受付/11:00~ 終了/17:30 (予定)
*受講料:15,000円(税込)/指定席

以下の ネットの「こくちーず」の申し込み画面 ↓↓↓ を 開いて申し込んで下さい。 
https://kokucheese.com/event/index/558149/

副島隆彦です。 もうすぐ 何かが起きる。その効果とか、副作用とかが出る、というような生やさしいものではない。

 それよりも、もっと大きな世界変動 が、私たちに襲いかかってくる。 私は、それを、じぃーっと、静かに、自分の生来の運命としての 予言者の頭 (人々に予兆を伝える能力)で、受け留めて、沈思黙考している。じっとして、自分の頭で、あらゆる事態の予兆を 感じ取っている。

ちょっとぐらいの、辺境国での銃乱射事件やサイクロンや、ハリケーンの被害ぐらいでは、世界は動じない。 

 中東では、シリアの、イラク国境とのデリゾールDejr Ezzor 県のバグーズBaghouz 市 で、 3月初めから、IS「イスラム国」の最後の拠点での、クルド人部隊による最後の掃討戦(そうとうせん)があった。後方からの米空軍による最後の支援の爆撃も行われた。

 3月13日には、 ISとその家族たち3万人が投降して、戦闘が、数日前に終わった。丸8年の戦争だった。 2011年3月15日に始まった。2014年6月10日に、イラクのモスルに、ISが、突如出現してから、やがて5年になる。

 ISの幹部たちで、ここから逃げた者たちは、米軍の中の、ISを作って育てた、ヨルダンの砂漠の秘密米軍基地(空港を持つ)に逃げ込んで、再び、匿(かくま)われたようだ。

 このように、中東派遣の米軍は、クルド人部隊(YPJの女性部隊もいる)をずっと支援して育ててきた、正義の米軍 と、 ISを、育ててきた、邪悪の米軍(CIAのスペシャル・フォーシズ、特殊部隊)の2つがいる。

北朝鮮はこれからどう動くか。 アメリカ(トランプ)との米朝交渉(2月28日)に失敗したあと、北朝鮮(金正恩)が、核実験と核ミサイル実験を再開しそうだ、という記事が、3月に入って出るようになった。すると3月5日から、日本の防衛産業(軍需銘柄)の 主要な会社の株式が、急に上がり始めた。

例えば、 ① 細谷火工(ほそやかこう)は、3月4日まで、ずっと750円だったのが、3月6日から、1125円に跳ね上がった。 ② 豊和(ほうわ)工業 900円 → 1140円
③ 重松(しげまつ) 650円 → 780円  ④ 石川製作所 1200円 → 2055円
のように。 北朝鮮が、1万キロ以上飛ぶICBM(長距離核弾頭弾道ミサイル)の実験を、やりそうになったら、その時は、極東米軍が本気で動き出す。この動きを、私たちは注視すべきだ。 

 金融・経済の 場面で、3月初めから、大きな 論争が起きている。その内容は、うしろの方に載せる。記事の見出しだけを、ここに挙げておく。ものすごく重要な、時代の大きな転換点に出現した論争だ。 

アメリカで始まったばかりの論争は、 「経済学者たちがこれまで唱えてきた、金融路論(マネタリー・セオリー)は、全部、ゴミ(garbage ガーベッジ) だ 」の記事の見出しを載せます。

1. 「 ブラックロックCEO、現代金融理論を支持せず-「くず」と一蹴 」

BlackRock CEO Fink Says Modern Monetary Theory Is ‘Garbage’  
2019年3/8(金)  ブルームバーグ

2. 「 「財政赤字は悪くない」、大統領選にらみ米国で経済学論争 」
2019年3/8(金) ロイター

3.  「 「現代金融理論」、にわかに脚光 - 米財政赤字拡大や「AOC」効果で」
MMT Bursts From Obscurity Helped by Trump Deficits, ‘AOC 
2019年3/13(水)  ブルームバーグ

4.  「 マイナス金利は経済冷やす? 功罪論争、日銀に影響も 」
2019/3/16  日経新聞 

副島隆彦です。  世界は、「行くも地獄、退(ひ)くも地獄」になってきた。
こうなったら、貧乏人(最低限度の低所得者層)のすべての国民に、 月10万円(欧米でなら、月1000ドル、月800ユーロ) を、政府が、配れ。それが、正義だ。

 政府 と中央銀行 が、どこまでも、どれだけでも、果てしなく、大(だい)借金(すなわち 更なる巨額財政赤字の積み上げ、更なる日銀引き受け)を抱えても、もう、構わない、ヤレ、ヤレ、ガンガンとどこまでもやれ。 という経済理論が、公然と主張されている。

 これは、左翼の経済学の理論である。 アメリカ民主党の左派 (若いAOC女史 )が、旗を振っている。もう、社会主義(ソシアリズム)肯定の、大合唱だ。ジャブジャブ・マネーを、もっとやれ、もっとやれ、貧困層を助けろ、の 叫び声だ。これが、アメリカの ニューヨークから、今、巻き起こっている。

 それに対して、共和党のトランプ大統領 は、「それは間違いだ。左派、左翼の理論に屈服した民主党め」と、批判している。 が、トランプは、自分が、温厚な従来型の、「借金はイカン。政府の借金もイカン。赤字経営はイカン。

 人間は、皆、自分の収入の範囲で、切り詰めて生活しなくてはいけない」 と、 財政赤字反対 の 敬虔(けいけん)な伝統保守の おやじの思想で、反撃している、ように見えて、これは、偽善だ。

トランプは、20歳代の若い頃は、NY民主党であり、体に民主党リベラルの匂いが染みついている男だ。そして、今、トランプは、「22兆ドル(2400兆円)の政府財政赤字を抱えた政権の責任者」という重荷(おもに)を、自分で背負っている。自分が大借金の責任者なのだ。 副島隆彦は、本当は、その3倍の70兆ドル(8000兆円)有るんだろ、と自分の本で、書き続けてきた。

 トランプ自身が、「そんな借金(巨額の財政赤字)なんか、オレは、恐くないぞ。オレは、大借金を抱えながら、ずっと経営者をやってきた。伸(の)るか、反(そ)るか、の大バクチの 危険を一杯抱えながら、高層商業ビル土建屋、都市開発デベロッパーとして生き延びてきた。こんな借金ぐらいで、オレはへこたれないぞー」と、こういう 男なのだ。

 だから、貧乏国民も喰わせろ、よりも、 株価をつり上げて、401Kで、株の値上がりと配当で、年金暮らしをしている、中産階級(ミドルクラス)の保守的なアメリカの老人たちの機嫌取りをやりながら、自分への支持を宛てにして、「パウエル。金利を上げるな。挙げなくても、何とか、加熱させた景気のまま、なんとか、アメリカはやって行けるゾ。オレが、なんとか、景気を保(も)たせてみせる。お前ら、見ていろ」 という感じだ。これが今のアメリカ政治だ。

 ちなみに、ジャブジャブ・マネー というコトバは、私、副島隆彦が作ったコトバだ。だから、副島隆彦のオリジナル(創作)である。 

 それは、もう17年前に遡(さかのぼ)る。 2002年8月に、当時の速水優(はやみまさる)日銀総裁が、「ゼロ金利政策をやめる。金利を付ける」と宣言した。そして、実施した。

 ところが、アメリカの強い圧力が掛かって、この日銀の悲願であった「ゼロ金利からの脱出。金融市場に金利を付ける」は、挫折、撤回させられた。この時に、速水総裁(日銀創立以来の三井ロスチャイルドの日銀の生え抜き ) は、テレビで、無念そうに、歯を噛みしめながら、言った。「今、市場にジャブジャブというおカネ(過剰流動性)は流れている。これを何とか吸い上げて、正常に戻さなければいけない」と、言った。

 このときの、速水総裁 が言った、「ジャブジャブというおカネ」というコトバが生まれた。そのあと、このコトバを、「ジャブジャブ・マネー」に造語したのは、私、副島隆彦だ。

 そして、私の本の中で、使い始めた。今では、新聞記者や、若手のエコノミスト、経済学者たちが、思わず、咄嗟(とっさ)に、このジャブジャブ・マネーを使うようになった。私は、それを凝視してチェックしている。ジャブジャブ・マネー(別名、金融緩和、緩和マネー)には、このような歴史があるのだ。 

 だから、トランプは、自分が、「このまま、突っ込めー。このまま、行くしかないのだ。金利を上げるな。FRBの政府借金の引き受け=米国債買い取り、買い上げの、金融緩和(イージング・マネー)も再開して、やり続けろ。 それ以外に、手はないのだろ。

 だったら、それをやれ。責任は、オレが取る。オレが、体を張って、大統領としての権限で、この、ジャブジャブ・マネー、ユルユル・パンツのまま、突っ走ってやる。

 金融引き締め (金融でのタカ派政策。健全な財政運営を求める。市場にユルユル・パンツの博奕ガネを持たせない) なんかやるな。いいんだ、このままのユルユル・パンツで。カネ、ちょっとぐらい 後(うし)ろ暗い連中の、危険な投資でもいいいから、そのための資金を借りやすくしたままにしろ。 景気を崩すな。 

 このまま、金融市場に、バクチ用の危険なカネが、溢(あふ)れまくって、それで、この先、金融市場が、どういう危険な大爆発をするか、までは、オレも知らないが。それでも、このまま、突っ込め。 オレに付いてこい。まだまだ、大丈夫だ」 と、 トランプは、大号令を出している。

これが、今のアメリカであり、それに引きづられてゆく世界だ。

 そのあと、どうなるのか? だから、それは、私が、最新刊で書いた「 国家分裂( divided デヴァイデッド)するアメリカ政治 七顛八倒(しちてんばっとう)」(2019年2月刊、秀和システム)だ。 アメリカは、ゆくゆく、国家分裂するのだ。

あのソビエト連邦が、1991年12月に消滅したとき( 今からもう 28年前だ)に、4分裂したのと全く同じように。まずバルト3国が、瞬間で離れた。そして、ウクライナが離れた。そして、中央アジア5カ国のイスラム諸国が分離独立した。だから、アメリカ合衆国も分裂するのだ。

そして、あとに ただのロシア、ロシア共和国が、ポツンと残った。人口はたったの 1億五千万人に 減っていた。 それと、似たようなことが、やがて起こる。 アメリカは、10年後には、3分裂する。 まさか、そんな。と 思う人は、それでいいから。副島隆彦の話、予言、ホラ話に、驚いているのなら、この本を買って読みなさい。

だから、貧乏国民を助けろ。ベイシック・インカムで、一人毎月10万円を政府が出せ、という政策議論と、トランプが、「オレが何とかするが、それでも、ジャブジャブ・マネー(緩和マネー)を出し続けろ。税金ではもうこれ以上取れないのだ。 

 誰も今以上、税金を払う奴はいない。 それなら、政府と中央銀行FRB が、どこまででも、借金を増やしてゆくしか、他にないじゃないか。おれは、それで構(かま)わない」と、トランプは、ふてぶてしく居直ってる。  

つまり、 (1)
アメリカの左翼経済学者(ケインズ左派の伝統を正しく、復活させている)と、(2) トランプ たち  「このまま、金融緩和で突っ込め。引き締めなんかするな」が、やろうとしている方向は、同じだ。大きくは、なんの変わりもない。それなのに、それを、金融、経済の新しい論争として、上品に説明しているだけだ。 主張と結論は、一致している。それが、今の、米、欧、日の 3大先進国地域の現状、現実だ。  

このトランプの動きに、世界中の 既成勢力(きせいせいりょく)の、陰に隠れている支配者たち(ヨーロッパ貴族たち、ユダヤ人財閥たち、悪質な官僚たち)は、青ざめ始めている。もし、財政危機と、金融市場の崩壊による 大混乱、大恐慌が起きたら、自分たちが隠し持っている富(とみ)も、奪い取られてしまうのではないか、と脅え始めている。

私、副島隆彦の結論も、「行くところまで、行け。世界の破局まで。大恐慌か、大戦争か、の人類にとっての 必定(ひつじょう)に道を、突き進んでゆけ」というものだ。

その時に、私は、私の考えに、真剣に耳を傾けて、注意深く、用心深く、生きる真に賢い人々にだけ、救いの助言をする。そのために、以下の金融セミナーを開く。あと4日後の、3月24日である。時間と金(かね)のある人は、どうぞ来て下さい。

当日券もあります。直接、来ていただいて当日払いでもいいです。ただし、入場の際の受付が込みあいますので、 以下の 申し込みの サイトで、自分の名前だけは、登録して置いて下さい。

「副島隆彦(そえじまたかひこ)の“予言者”金融セミナー 第17回」

*会場:イイノホール&カンファレンスセンター 
東京都 千代田区 内幸町2-1-1
*日時:2019年3月24日(日)
 開場・受付/11:00~ 終了/17:30 (予定)
*受講料:15,000円(税込)/指定席

以下の ネットの「こくちーず」の申し込み画面 ↓↓↓ を 開いて申し込んで下さい。 
https://kokucheese.com/event/index/558149/

副島隆彦です。 それでは、最後に、前の方に載せた、今、始まったばかりの、アメリカでの、「(経済学者たちがこれまで教えてきたきた、金融路論(マネタリー・セオリー)は、全部、ゴミ(garbage ガーベッジ) だ」 の記事を2本だけ、載せます。

(転載貼り付け始め)

〇 ブラックロックCEO、現代金融理論を支持せず-「くず」と一蹴
BlackRock CEO Fink Says Modern Monetary Theory Is ‘Garbage’  

2019年3/8(金)  ブルームバーグ)

米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は「現代金融理論(MMT)」を支持しない考えを示した。

フィンク氏は7日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、MMTは「くず」だと一蹴。「財政赤字は非常に重要な問題だと私は確信している。財政赤字は金利をずっと高く、持続不可能な水準に押し上げる可能性があると私は強く信じている」と述べた。

MMTを支持するエコノミストらは、米国は借り入れが自国通貨建てであることから、紙幣を印刷して借金を賄うことができ、破綻はあり得ないと主張する。アレクサンドリア・オカシオコルテス氏ら当選1期目の民主党議員らが、グリーン・ニューディールや国民皆保険など社会政策の原資の1つとして支持に回っている。

米議会予算局(CBO)によると、米財政赤字は数年以内に1兆ドルを突破するとみられている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、MMTを「誤り」だと指摘。サマーズ元財務長官やノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏も批判している。

一方で否定的に見ていない人がいることも事実だ。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の元チーフエコノミスト、ポール・マカリー氏は、自身は「正真正銘のMMT支持者ではない」ものの、強い共感を覚えると述べている。

フィンク氏は、「MMTは財政赤字が害をもたらし多過ぎると分かるまで、借り入れを続けられるという理論だ。親である私からすれば、子どもの素行が悪くてもずっとただそれを見ているだけで、手が付けられなくなるまで放っておくことと同じだ。良いアプローチではないと思う」と述べた。

〇 アングル:「財政赤字は悪くない」、大統領選にらみ米国で経済学論争

2019年3月6日  ワシントン、ロイター  –

 3月6日、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とローレンス・サマーズ元米財務長官は過去3週間、ツイッターやテレビ、新聞のコラム欄を活用して、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授(写真)に反論を重ねてきた。提供写真(2019年 ロイター) Howard Schneider

[ワシントン 3月6日 ロイター] – ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とローレンス・サマーズ元米財務長官は過去3週間、ツイッターやテレビ、新聞のコラム欄を活用して、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授に反論を重ねてきた。

 ケルトン教授は、政府予算や財政赤字は完全雇用やインフレを実現するために積極利用すべしという「現代金融理論(MMT)」の強固な提唱者で、2016年の前回大統領選ではバーニー・サンダース上院議員の顧問を務めた。

 ケルトン氏の主張に対し、クルーグマン氏は「支離滅裂」と一蹴し、サマーズ氏はワシントン・ポストのコラムで新たな「ブードゥー経済学(魔術のようで理論的に怪しいとの意味)だ」と批判した。

 サマーズ氏はCNBCテレビで「全ての米国人が支持するはずの考えを1つ挙げるなら、それは算術の法則だ」とも発言。これに対してケルトン氏は5日、ツイッターに「この論争では負ける気がしない」と投稿するなど事態は白熱化している。

 一連のやり取りは単にソーシャルメディア(SNS)上での余興やゲームだとやり過ごすこともできる。だがこれは野党・民主党内で大統領選候補の指名をにらんで強まってきている基本的な議論を反映している面もあり、その点を軽視することはできない。

 具体的には左派を中心に提唱されている国民皆医療保険や温暖化対策の1つである「グリーン・ニューディール」の財源を、どうやって確保するかという問題だ。いずれも大統領選に向けた候補指名争いの主要な論点として浮上。早くもトランプ大統領からは民主党は「社会主義」を受け入れている証拠だと攻撃を浴びている。

 米国政府が抱える債務は22兆ドルに膨らみ、義務的経費や利払いなどで慢性的な財政赤字が生まれている状況を踏まえ、あらゆる政治グループに属する経済学者と米連邦準備理事会(FRB)の専門家は、財政は既に持続不可能な経路をたどっているので、この先は慎重な運営が求められると警鐘を鳴らす。

 こうした中で、ケルトン氏の理論を用いれば、米国の債務や財政赤字の活用法、またFRBの果たす役割に関する見方はがらりと変わってくる。つまり民主党の大統領候補指名レースに参加している人々が論じているような政策の実現を後押ししてくれる。

 これほどの発想転換は、平時なら思いもよらないだろう。しかし2007-09年の金融危機から10年が経過し、サマーズ氏や国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランチャード氏らいわゆる主流派の経済学者ですら、政府の財政政策運営について再考を迫られている。

 なぜならFRBによる大規模な債券買い入れや大型減税を実施しているのに物価や金利が跳ね上がらない局面では、もっと借金をして生産的な公共事業に投資しても安心だろう、という意見が一般的になってきたからだ。

 オバマ前政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェーソン・ファーマン氏は5日、前政権は野心的な公共事業を策定したものの、それでも政府債務の対国内総生産(GDP)比を一定に保つか、下げるのが得策だと考えていた。ところが今では多くの人から、なぜ対GDP比を低くしなければならないか質問を受け、比率を抑えるべきだという経済的な確信が揺らいできたという。

結局のところ、ファーマン氏もブランチャード氏も、コストに見合うメリットがあるプロジェクトへの支出を米国は敬遠すべきでないという見解を持つようになっている。特にブランチャード氏は、地球環境を救うために債務が膨らませるのは「名案だ」と話す。当然支出に限度はあるが、債務の利払い費用の伸びを経済成長ペースが上回る限り、借金を継続できそうだ。

 ケルトン氏に至っては、政府ができるし、やるべきだと考える範囲はもっと広く、債券市場や外国為替市場が許さないことを地球を救う支出を抑制する理由に挙げるのは、かなり筋が悪いと主張する。同氏は大統領選出馬を決めたどの人物ともまだ連携していないが、求職者全てに政府が仕事を保証するなどの一部のアイデアは、カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)などと共通している。

 またケルトン氏は、米国の通貨発行権を完全雇用や温暖化対策の財源確保などの実現に活用すべきだと論じている、ただパウエルFRB議長は先週の下院証言でこうした考えを全否定し、サマーズ氏らは他国で物価高騰や通貨危機を招くといった副作用があったと指摘した。

 とはいえMMTは批判的な立場の人々が積極的に反論せざるを得ないほど波紋を広げているのは間違いない。

 オバマ前政権のCEAスタッフだったベッツィ・スティーブンソン氏はツイッターでMMTについて「右も左もない。普通の人々が興奮が冷めた時点で代償を支払うような魔法の考えだけが存在している」と投稿した。

〇 「現代金融理論」、にわかに脚光-米財政赤字拡大や「AOC」効果で

MMT Bursts From Obscurity Helped by Trump Deficits, ‘AOC

2019年3/13(水)  ブルームバーグ

過去30年ほどを振り返ると、「現代金融理論(MMT)」について無名のブロガーがあしざまに言うことはしばしばあった。だが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長やブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)といった人物が話題にすることはなかった。

MMTを発展させた経済学者は学会でもインターネット上でもおおむね非主流派として活動してきた。しかし今や、彼らの考えはにわかに脚光を浴びている。ウォール街の大物や政策当局の重鎮がMMTについて意見することのない日はほぼ皆無で、否定的な見解が示されるのが通常だが、支持が寄せられるケースもある。

何年も無視されてきたMMTが、なぜ今になって突如、米国の経済論議の焦点となったかを巡っては当然、疑問が生じる。次に幾つか考えられる答えを挙げてみる。

すでに赤字
 MMTの論旨は、自国通貨を持つ政府の支出余地は一般的に想定されるよりも大きく、全てを税金で賄う必要はないというものだ。この見解によれば、米国はいかなる債務返済に必要な貨幣も創出できるため、デフォルト(債務不履行)に追い込まれるリスクはゼロということになる。

 米国はすでに過去10年間にわたり公的債務を積み上げていることから、こうした主張にあまり異論はないかもしれない。公的債務は当初、グレートリセッションへの極めて正攻法的な取り組みとして、金融危機対応の中で急増した。ところが現在では、すでに拡大局面にある景気をさらに加速させるために財政刺激策が講じられ、その規模は1960年代以来の大きさだ。

 このため、MMTの提唱者はこの理論について、いつの日にか採用されるかもしれない政策パッケージと見なすべきではないと指摘する。むしろ、どのような手段が政府に利用可能かを理解するための枠組みのようなものだとされる。しかも、それらの手段の一部はすでに活用されている。

市場は気にせず
 「財政赤字は金利をずっと高く押し上げるだろう」。こう主張するブラックロックのフィンクCEOはMMTを「くず」と一蹴した。

 市場の地合いは急変する可能性があるが、投資家は今のところ財政赤字の規模を不安視していない。米国の財政赤字はすでに国内総生産(GDP)比4%を上回っている。それでも米政府が実施する国債入札で、30年債の落札利回りは3%程度にとどまっている。赤字の危険性を巡る警告には事欠かないものの、市場はそれに同調する様子がない。

低インフレ
 米国の失業率は過去最低水準にあり、本来なら物価高をもたらしているはずだが、現実はそうなっていない。
 この結果、25年前には自明と受け止められていた考えにエコノミストらは自信を失いつつある。そうした中で、他の先進国に比べ米国で一段と極端な所得格差の拡大や、国民皆保険というセーフティーネットの欠如といった21世紀型の懸案に対処することに重点を置く枠組みが新たに求められるようになった。

トランプ効果
 政治的には、MMTの提唱者は左派寄りの傾向があるが、右派・左派いずれの政権でも自分たちの理論を応用することは可能だと主張する。そして、トランプ大統領が財政政策のアプローチで法人減税や国防費拡大などの経済目標にまず優先的に取り組み、財政収支の影響への心配は二の次としている様子に、MMTの提唱者がひそかに称賛を表すこともときどきある。
 
 ホワイトハウスのクドロー国家経済会議(NEC)委員長は10日、「優れた成長政策においては、必ずしも財政赤字を気にする必要はないと思う」と話した。

AOC効果
 米国の政治にMMTを持ち込んだのはバーニー・サンダース上院議員だ。しかし、サンダース議員がMMTをはっきりと支持したことはない。

 支持を明確にしたのはサンダース議員の選挙運動に参加したこともあるニューヨーク州選出の新人議員で、AOCの頭文字で知られるアレクサンドリア・オカシオコルテス氏だ。オカシオコルテス氏はMMTについて、「会話でもっと盛り上げる」べきだとし、議会がその「財政権」を動員するよう呼び掛けている。経済・政治課題についてのアイデア表明の場である同氏のソーシャルメディアは何百万人ものフォロワーを誇る。

日本も大幅赤字
 MMTの措置を本格的に活用したとほぼ言える国は日本だろう。日本では20年前に金利がゼロに達し、日本銀行が一部ファイナンスしている公的債務残高はGDPの約2.5倍の規模にある。赤字続きでもインフレ高進はなく、債券市場からの資金逃避の動きもない。

主流派も動く
 米国トップの大学の著名エコノミストは一斉にMMTを批判している。ハーバード大学教授で元財務長官のラリー・サマーズ氏は「重層的な誤り」があると論評。

 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏や国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランシャール氏もMMT攻撃に加わった。と同時にこうした著名人らから、公的債務懸念は行き過ぎだとして赤字拡大の支出に好意的な姿勢が見られるのも最近は多くなってきた。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝