[2390]2月28日の米朝会談(トランプ・金正恩)の決裂、もの別れ にについて。
副島隆彦です。今日は、2019年3月12日(火)です。
まず、私の新刊本 が、今日のぼやきで宣伝されています。読みに行ってください。
今、ネットで見たら、アマゾン(私の大嫌いな。しかし、みんなここの書評子(しょひょうし。ブック・レヴュアー)に頼る。他の楽天とかの民族資本が、この技術を真似して追いかけることが出来なかったから)の「国際・外交関係」のジャンルの「アメリカ」でベストセラーで1位になっていた。
「政治入門」でも4位だ。
この本の書名は、「国家分裂(デヴァイデッド)するアメリカ政治 七顛八倒(しちてんばっとう)」(秀和システム)です。ここで、私は、次のように書いた。「アメリカ合衆国 は10年後に、3つの国に国家分裂する。 まさかそんな、有りえない。と思う人は、それはそれでいいですから、話(はなし)半分として私のこの本を読んでください」 と 書いた。興味のある人は、買って読んでください。
国家分裂するアメリカ政治 七顚八倒
さて、私は、先週2月27、28日の 「米朝(べいちょう)会談は 決裂した」について、書くと言った。そのままにしてあった。他の仕事をしていたからだ。それでも、気になっていたので遅ればせながら、今から会談への私の評価、判断、印象深かったことを書いておかなければいけない。
左側の3人のニンマリした顔に注目。2日目から金正恩を嵌(はめ)る計画だ。ボルトンが突如、参加した。人数が合わない。奥のニック・マルバニー新首席補佐官は気づいていない。その手前は、通訳の女性。
「米朝のトランプ・金正恩(キム・ジョンウン)会談、2月28日は、もの別れに終わった。合意に達しなかった」。合意文書も交わさなかった。予定していたセレモニーは何も行われなかった。そのあとの記者会見は、トランプ大統領がひとりで、やや、もの悲しそうにやった。
金正恩は、怒り心頭に発した感じで、顔を真っ赤にして、椅子を蹴って立ち上がったかどうかは、分からないが、その場を去った。 彼が外の車の中で、顔を真っ赤にしている写真だけは、ベトナムのハノイの会場を離れる唯一の写真として、報じられた。相当に深刻な感じで、北朝鮮に帰っていった。「自分はトランプに、まんまと騙された。大恥を掻かされた」と、苦しそうに歯噛(が)みしながら帰って行った。
2月28日の、会談の会場近くにいた記者による、真迫(しんぱく)の報道記事の良いものが有ったので、それは最後の方に載せる。
会談決裂のあと、金正恩の特別列車は、中国大陸を北上して、また3日掛けて北朝鮮に帰った。帰りには、北京に寄っただろうが、習近平(しゅうきんぺい)には会えなかった。会ってもらえなかった。中国は、冷ややかに、「会談が失敗したのは、自分の責任だから、自分で対処しなさい」という態度だ。
中国は、国際社会(即ち今は、The UN ザ・ユーエヌ 諸国連合 )の決めた、「核兵器を廃棄して、世界の言うことに従いなさい。5大国(ファイヴ・パーマネント・メンバーズ。常任理事国)以外は、核兵器は持ってはいけない、という世界体制に従いなさい」という態度である。
会談決裂(2月28日)から12日経(た)った今日(3月12日)の時点で、私、副島隆彦が書けることを書いておかなければいけない。
以下の新聞記事が、一番、正確でよい。3月5日の韓国の「中央日報」紙のものだ。これをしっかり、じっくり読むことが、米朝会談の真実をもっともよく知ることが出来る。これ以上の良質の 公開情報の新聞記事は、私の知る限り他になかった。
たった今、私が、知った、3月11日のジョン・ボルトン安全保障担当補佐官へのABCのインタヴューでは、「その後、北朝鮮との連絡は途絶えている」である。
(転載貼り付け始め)
「 米国が発見し北朝鮮が驚いた新たな核施設の場所は「分江(プンガン)」」
2019年3/5(火) 中央日報
北朝鮮の新たな核施設と疑われる場所
ドナルド・トランプ米大統領が、先月28日(現地時間)、米朝首脳会談の決裂後に非核化対象に指定した寧辺(ヨンビョン)核施設以外の「それ以上」は、分江(プンガン)地区の地下高濃縮ウラン(HEU)施設だ、と会談に精通する複数の消息筋が3月4日に伝えた。
分江(プンガン)地区は寧辺核施設に隣接している。トランプ大統領は当時記者会見で「我々はそれ(寧辺核施設)以上をしなければならなかった」とし、「皆さんが話したり書いたりしていないものの中に我々が発見したものがある」と公開した。トランプ大統領は「彼ら(北朝鮮側)は我々がそれを知っていたため驚いたようだった」とも明らかにした。
複数の消息筋はこれについて「 首脳会談の2日目(先月28日)の会談で、北朝鮮側が寧辺(ヨンビョン)地区を廃棄すると言うと、米国側は 寧辺以外に追加核施設1カ所の追加を求めた」とし、 「この1カ所が分江(プンガン)地区の核施設で、米国側はこれを非核化対象に含めるように要求した」と明らかにした。
李容浩(イ・ヨンホ)北朝鮮外相は、会談決裂後の3月1日深夜の記者会見で「米国は寧辺以外にもう1カ所(非核化)しなければならないと最後まで主張した」と明らかにした。この「1カ所」というのも分江(プンガン)地区だというのが消息筋の説明だ。
当初トランプ大統領が明らかにした「寧辺以外の核施設」をめぐり米国メディアが報道した平壌(ピョンヤン)近隣のカンソン発電所の核施設という予測があった。しかし 消息筋によると問題の「寧辺他(ほか)核施設」は、過去にメディアで公開されていない施設だ。
消息筋らは「米情報当局は長い間北朝鮮の核活動を追跡してきたものと把握している」とし、「分江(プンガン)地区は既存の寧辺(ヨンビョン)核団地の北西側に位置し、北朝鮮は外部から探知されるのを憂慮し、その地域の地下にHEU工場を作ったものと把握している」と説明した。
消息筋によると分江(プンガン)地区は、寧辺核団地に隣接しているため「寧辺(ヨンビョン)団地をなくす」 という北朝鮮側の提案に対し、米国は「分江も含まなければならない」と見なした。
一方、北朝鮮は、寧辺核施設と分江地区は隣接しているが実際は分離されているため米国の要求を受け入れた場合「寧辺地区廃棄」に限定した自分たちの戦略が揺らぐと判断したものと予測される。北朝鮮と米国が寧辺核施設についての定義から違ったという評価が出る理由だ。
分江(プンガン)地区内の地下核施設が、地上に露出しているどの建物とつながっているのかは確認されていない。しかし、消息筋は「この施設は2010年にジークフリード・ヘッカー博士(スタンフォード大学国際安保協力センター所長)に北朝鮮が公開した施設よりはるかに大きい規模だと判断している」とし、「ヘッカー博士が確認したHEU施設より古いが地下にあるため米国当局の確認が遅れたものと理解している」と付け加えた。
ヘッカー博士は、寧辺(ヨンビョン)核団地内を流れる九龍江(クリョンガン)の南側にあるHEU施設を視察し、約2000台の遠心分離機が稼動中であるものと推定した。遠心分離機は特殊製作したアルミニウムの筒の中にウランを入れ、高速で回転させて濃縮する装置だ。韓米情報当局は方川地区施設には1万個以上の遠心分離機が稼動中と見ている。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦です。この記事をしっかり読むことで、私たちは、一番正確に会談決裂の理由と経緯(いきさつ)を知ることができる。これ以上のものは、すべて推測、推察、あるいは伝聞である。
他の報道が、首都平壌(ピョンヤン)郊外の「カンソン核濃縮施設」をアメリカ側は 廃棄に加えよ、と執拗に付け加えよ、と要求したのでなくて、「東倉里(トンシャンリ)の隣の分河(プンガン)の核施設」を廃棄に加えよ、だったのだ。
私は、以上の記事の内容を下敷き、前提として、これから、次のように「2.28米朝会談の決裂」について評論する。
まず、アメリカの態度は、「金正恩を 押さえ込め」である。この35歳(1984年生まれ説に拠れば)の北朝鮮の独裁者の若者を、何が何でも、大きく押さえ込め、である。
上に載せた一枚の28日の会談開始の際の写真に、すべての真実が、描かれている。
この会談の写真の、一番手前のボルトン補佐官 と ポンペイオ国務長官と、その向こうのトランプ大統領の満面に笑みを讃えた、と書けば、立派だが、本当は、ニターと、この3人は笑っている。示し合わせたように嗤(わら)っている。向こう側に座っている金正恩に、敬意を払って、穏(おだ)やかに、生産的に会談を進めよう、という感じの笑顔ではない。
この顔は、初(はじ)めから、相手を舐(な)めてかかって、「この若造に、私たちの言うことを聞かせるように、上手に、話を持ってゆこう。柔らかく押さえ込もう。そして、何とか、折り合いを付けて、会談を成功させよう」という、感じではない。
初めから、トランプたちは、金正恩を厳しく追い詰める、ということをしていない。だが、折り合いを付けて妥協する、というのでもない。では何なのか? 初めからトランプは、合意文書を交わそうとしていない。しかし交渉の決裂を最初から予想したものでもない。
トランプは、昨年の 6月12日の シンガポールでの米朝会談。本当は、その前夜に密かに、2人は、マリーナ・ベイ・サンズ・ホテルの カジノの最高級の部屋で、持ち主のシェルドン・アデルソン=サンズ・グループ、カジノ王= の案内で初対面して話している。
トランプは、「私の言うことを聞いたら、お前もな、元山(ウオンサン)に、こんな立派なカジノ場を開いて、北朝鮮を繁栄した豊かな国にすることが出来るんだぞ」と誑(たら)しこんだ。
だが、昨6月12日の米朝会談は、アメリカ国内では、「北朝鮮に弱腰に対応した、平和路線の、曖昧な緊張緩和だけだった」と酷評された。北の ICBM = 核ミサイルがアメリカ本土まで1万キロ飛んで来ないようにしただけの、アメリカが大きく譲歩しただけの協定だ、と 批判された。
それで、トランプたちは、今度は、国内で弱虫(よわむし。ウインピー)呼ばわりされないように、強い態度に出た、という ポーズを 北朝鮮(金正恩)に対して取らなければいけなない、という判断になった。
だが交渉を決裂させてはいけない。金正恩を本気で怒らせてはいけない。「金正恩に核実験と核ミサイルの発射実験の再開だけは、させないようにする。それをやられたら私たちの負けだ。押さえ込み戦略の大失敗になる。決定的に追い詰めたらいけない」という、最低限度の柔らかい態度を、この3人組(トランプ、ポンペイオ、ボルトン)は事前に合意、確認したろう。あとは、「やってみなければ、分からない」だ。
このあとは、私は、アメリカ人というものの行動様式から判断して、次のように計画、計略しただろうと考えた。「この若者のデブを、どこまで押して押して、どこまで苦しめたら、こいつがどこの時点で、怒りだして席を立つか、を見てみよう」と決めた。
これは、実験だ。実験は、エクスペリメント experiment という。アメリカ人は、ヨーロッパから渡ってきた近代人(モダーン・マン)たちだから、徹底した実験と観察(オブザベイション) の精神を持っている。 やってみなければ分からない。ベンジャミン・フランクリがやった、雨の日の、雷(かみなり )の中に凧を(たこ)を飛ばして、稲妻(いなづま)を呼び寄せて、雷(サンダー)の稲妻(ライトニング)の正体が電気だ、と突き止めた。あの実験の精神だ。
だから、どこで金正恩が怒りだして、あるいは、「自分はアメリカにからかわれている」と自覚して、席を立つかを、限度まで試してみた。そうしたら、本当に、金正恩たちは、「ここまでが自分たちの譲歩の限度だ」「他に密かに隠し持っているICBMまで、全部リストにして渡せ、という要求は、あんまりで、相互譲歩に当たらない」と、席を蹴って会場から出た。
こうなると、3人組は、少年のように、互いに顔を見合わせて、「やってしまったなあ。本当に、こいつ、席を立ったよ」と、互いに唖然としたはずだ。
だから、アメリカ国内の評価、評論では、「トランプの負けだ」というリベラル派の外交専門家からの批判の論評が現れた。それでも、トランプは、金正恩を、決定的には追い詰めなかった。ここが、トランプのやり口の常套手段であり、確信点だ。 相手を土壇場の最後まで追い詰めてはいけない。
相手の逃げ場を塞(ふさ)いではいけない。そうしないと相手は死に物狂いになって、反撃してくる。
それは、トランプが、大型商業ビルと歓楽用の高層ビルをたくさん建設し経営してきた商売人としての、苦労の人生哲学だ。仕事の出来ない役員(幹部社員)のクビを切るときには、柔らかく脅しながら、相手を追い詰めないように気を配り、最後の温情を示しながら追い出さないと、あとで相手がどういう仕返しをしてくるか分からない。同業者や契約相手に対してもそうだ。自分が刺される、撃たれることもある、という切実な人生経験から出ている。
だから、ここで、トランプは、交渉決裂ではない、会談は決裂したが、相手を逃げられなくした上で、もう一度、話し合いが出来る、という戦略(ストラテジー)を採用した。
ここで大事なことは、日本人は、ディール( deal )と ネゴシエイション (negotiation )という コトバの違いが、分かっていない、ということだ。
アメリカと北朝鮮にディールは成立しているのだ。今も「北朝鮮が核兵器を廃棄するか、しないか」のディールの中にいる。しかし、ネゴシエイションとしては、今回、壊れて、失敗してもの別れに終わった。
ディールと ネゴシエイションの 違いが分かっている日本人は、あまりいない。このことを、私は、自分のまわりの人たちに質問して、確かめて来た。どうも分かっていないようだ。 佐藤優氏にも、この違いを一年ぐらい前に北方領土問題で、会ったときに教えた。
デイール も ネゴ(シエイション)も、すでに日本語になっている。カタカナ、外来語として、私たちは、使っている。だから問題なのだ。この違いを知らないのだ。
ディールは、「大きな枠組みでの取引、交渉ごと、話し合い」だ。それに対して、ネゴシエイト negotiate する、ネゴする、だって、「交渉する、話し合う、折衝、談判する」と和英辞典に載っている。それで区別が付かない。同じことじゃないか、となる。その程度の理解を皆している。
ディール ( deal ) は、敵対しあわずに、相手と話し合う、交渉することが決まったこと意味する。 だから大きな枠での取引、交渉に入ったことを意味する。そこには信頼関係が生まれる。信頼関係が無ければ、取引、交渉は出来ない。
そして、その上で、ネゴ(シエイト)する。ネゴシエイションは、この大きな取引、交渉(ディール)の中で、値段を決め、お互いの取り分を決め、自分の利益を確保し、自分が譲歩して、相手の分け前を認めて、時には、出血サービスで、自分が痛い思いをして、相手の取り分を多くする、ということだ。 これが、ネゴシエイションだ。
だから、英文の例文で示すと、
I ‘ d like to make a deal with you . 「私は、あなたと取引をしたい」
と、deal を 初対面での、取引、交渉ごとの相手への持ちかけるときに使う。
「 make a (good ) deal with 人 」という使い方が基本だ。これで、取引、交渉 が始まる。
そして、このあと、ネゴシエイション が始まる。昨年に続く2回目である米朝会談(トランプ・金正恩会談)は、このネゴシエイションである。すでにディールは、昨年の6月12日に成立している。そして、まだ壊れていない。
だから、ネゴ(シエイト)するの例文は、
The Union negotiated with the employers about wages . 「ザ・ユニオン・ネゴシエイテッド・ウイズ・ジ・エンプロイヤーズ・アバウト・ウェイジズ」 で、 「組合は、経営側と賃金のことで交渉、折衝をした」 となる。
ここでは、今年、値上げする賃金(月収)の金額が具体的に提示され、それぞれの職場階級での待遇とかもはっきり 決めなければいけない。これがネゴシエイションだ。
ネゴシエイト negotiate の特徴的な使い方は、さらに次の例文だ。
The car could not negotiate the steep hill . 「ザ・カー・クドント・ネゴシエイト・ザ・ステイープ・ヒル」 「車は険しい坂を越えることが出来なかった」 だ。このネゴシエイトは、「どうにかこうにか努力して、あれこれ動かしてみて、上手くゆかせる」という意味がある。
今度の2月28日は、このネゴシエイションの失敗だ。そして、「取引は成立した。話し合いは成功した 」 It’ s a good deal. 「イッツ・ア・グッド・ディール」 = We ‘ve got a deal 「ウイブ・ゴット・ア・ディール」 とはならなかった。
ネゴシエイトは、あれこれの条件を細かく折衝(せっしょう)して取り決める、という意味だ。 だから、取引、話し合い、交渉ごと と言っても、このように、ディール(大きく話し合いの信頼関係にあること)と その上での、ネゴ(その中味を細かく決める)とは、違うのだ。私たち日本人は、そろそろこの違いをはっきりと知るべきだ。 どっちも、取引、駆け引き、交渉ごとで、一緒じゃないか、と、粗雑に考えない方がいい。
だから、トランプにとっては、「とにかく、金正恩を押さえ込め。爆発させるな。上から、ぎゅっとアメリカの力で押えて、じわじわとでいいから、言うことを聞かせろ」となる。
中国は、ここでは、知らん顔をする。自分たちが、北朝鮮を大きく背後から操(あやつ)って、いいように、アメリカに嗾(けしか)けている、と、世界から思われるのは困る。中国にとっても、北朝鮮の核兵器は、自分たちにも飛んでくる、危険な飛び道具なのだ。
だから、トランプは、このあとも、ずっと、だらだら、じわじわと北朝鮮を、経済制裁(エコノミック・サンクション。封鎖。貿易の禁輸。エンバーゴー )で苦しめ続けて、北朝鮮の国民を苦しめ続ける策に出た。予定通りとも言える。アメリカ(トランプ)は、自分たちのところまで核ミサイルが飛んで来さえしなければ、それでいいのだ。 韓国と北朝鮮が、同じ民族として、どんどん38度線(サーティエイト・パラレル)の軍事境界線を実質的に無化して、南北の経済繁栄を模索しても、構わないから、このままの制裁を続ける。
唯一、トランプにとっての リスクは、 北朝鮮(金正恩たち指導部)が、激しく怒って、激発することだ。それは、核実験と核ミサイルの発射実験だ。 次は、1万3000キロ 飛ぶ 「火星15号」の実験だ、と言われている。弾道ミサイルが1万キロ以上飛べば、それは、ICBMであり、確実にアメリカ本土に到達する。
こんどの米朝交渉のもの別れ、決裂(だから、ネゴシエイションの失敗)で、安倍政権は、万々歳で、大喜びだった、と伝わっている。 なぜなら、米朝が、「北朝鮮は、7000キロ以上飛ぶICBMだけを廃棄して、それ以外の中距離の弾道ミサイルの保有を認める」などどいうことで、ディールが大きく成立していたら。
日本の保守勢力は、真っ青になっていただろうからだ。日本とか中国に届くミサイルは、構わない、となったら、それこそ、日本の安全保障が、根底から危機に瀕する、と、保守派の人たちは、“大人(おとな)ちゃん”ぶって考える。
だから、このあと、北朝鮮が、長距離の核ミサイルの実験をするようだと、これは、大きな交渉(ディール)そのものの失敗、破壊 となる。その時は、トランプ政権は、追い詰められる。1万キロ飛ぶ核ミサイルが、米本土を襲う、ということが想定されるようになるとアメリカ国内が大騒ぎになる。
だが、トランプは、「いや、まだ、北朝鮮との ディール(交渉、話し合い、信頼関係)は成立している。壊れていない。大丈夫だ」 と、考えている。トランプというのは、こういう男なのだ。駆け引き と 交渉ごとの天才であり、海千山千の 不動産業界を、渡り歩いてきて一代で富を築いた男だ。
だから、駆け引き、取引となると、あの 赤い唇をベロリと舌で舐める、ヘビかトカゲのような仕草で生きて来た。 有名な言葉がある。NYの不動産業界の大物の長老の男が言った。「トランプは、私たちと契約して、そして契約内容に細かい細工がしてあって、そして私たちから全てを奪い取っていったよ」というものだ。
トランプは、極度に慎重で注意深い男で、罠に掛からない。かつ頭の回転が恐ろしく速い。とても名うての弁護士たちでも適(かなわ)わない。こういう男を指導者にしている国は、強い。ロシアのプーチンも恐ろしいぐらいに頭がいい男だ。きっと中国の習近平もそうなのだ。 大国の指導者、というのは、自ずと、小国の指導者とは格(かく)が違う。
だからトランプは、「まだ、大丈夫だ。話し合い(ネゴシエイション)は、これからだ。ただし、相手が、激発して、核ミサイルの実験をするようだと、話し合い(ディール)そのものが壊れてしまうかもな」 と、考えている。これが、トランプだ。
そして、トランプは、ディール(話し合い、交渉)がたとえ壊れても、それでも、構わない。その時は、また、別の手を考えて、金正恩(35歳)を押さえ込もう、とするだろう。
もし、金正恩が、追い詰められて、ミサイル実験を行っても、トランプは、「それならそれで、やり方は、あるよ。それなら核とミサイルの開発拠点に米軍が爆撃して破壊する、こともあり得る」と、判断する。ここでもトランプは追い詰められない。しかし、それは、大きな戦争(ラージ・ウォー large war )ではない。
アメリカを守るための限定的な小さな戦争(スモール・ウォー)だ、と、トランプは、言い訳して、アメリカ国民を説得できる。アメリカ国民を少しぐらい脅かして、恐怖にたたき込むことも統治(とうち)としては、必要なことだ、とトランプは考えている。
私たち日本人は、この北朝鮮の核兵器 を巡る アメリカとの 交渉、話し合いの流れを、ぼーっと見ているしかない。しかし、よけない心配をする必要は無い。どうせ、このまま、世界は続いてゆくのだ。平和がなによりだ。戦争に巻き込まれないようにすることが何よりだ。そのために私たちは、単純ではない、深く深く考えて、練り込まれた知恵を働かせなければいけない。私たちは、もう、二度とアメリカに騙されたらいけないのだ。
副島隆彦拝
(以下に、あとあとの為に、一本だけ、出来の良い、当日の現場からの報告記事 を載せる)
〇 「 米朝首脳、「特別な関係」では克服できない決裂の裏側 」
Josh Smith ハノイ 2月28日 ロイター
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がベトナムで開いた2回目の首脳会談では、結局、限定的な合意にすら達することができなかった。今後に進展があるかどうかは、昨年以降停滞気味の事務レベル協議にかかっている。
首脳会談が突如決裂したことは両国の溝がいかに深いかを物語っている、と専門家は話す。会談直前にあわてて行われた交渉で積み残された対立点は、いくらトランプ氏と正恩氏の個人的な親密さがあったとしても克服できなかったことも浮き彫りになった。
トランプ氏は首脳会談に先立って、北朝鮮が早期に核兵器の全面的な廃棄に同意するとの期待を持つべきでないとくぎを刺した。ただ、政府関係者は、朝鮮戦争の終戦宣言や北朝鮮の寧辺にある主要核開発施設の閉鎖、あるいは相互連絡事務所の設置などいくつかの合意はあり得ると示唆。
ホワイトハウスも両首脳が合意文書に署名するとの見通しを示し、少なくとも昨年のシンガポールにおける首脳会談で了解し合った目標の確認はできるとの期待が広がっていた。 ところが署名式典やワーキングランチは土壇場で中止となってしまった。
米シンクタンクの軍備管理協会(ACA)のエグゼクティブディレクター、ダリル・キンボール氏は「ハノイ会談は意味のある結果を生み出さなかっただけでなく、トランプ氏と専門チームはシンガポールで掲げた高らかな目標に向かって少しでも進むという面でこの7カ月を無駄にしてしまった」と述べた。
トランプ氏は、正恩氏が部分的な非核化と引き換えに制裁の全面解除を望んだため、合意できなかったと説明した。
<特別な関係> 国際社会では首脳同士が会談する場合、事務方が細かい懸案を全て詰めた後で開催されるケースが多いが、今回の米朝首脳会談はそれができなかった。
ポンペオ米国務長官は「北朝鮮のような国と交渉する際には、最上位の指導者しか重要な決定ができないことがままある」とハノイから帰国する機上で記者団に打ち明けた。
今回の結果について楽観派は、トランプ氏が両国は交渉を続けると主張したのは以前の威嚇と緊張の関係にすぐ戻ることはない証拠だとみる。逆に悲観派は、トランプ氏の外交は北朝鮮への圧力を弱めるにすぎない一種の政治ショーに基づいていることが証明されたとみている。
ただ大半の専門家の意見が一致しているのは、首脳会談が進展なく終わったことで、トランプ氏は今後正恩氏との「特別な関係」に頼って交渉を進めていくのが適切だと訴えるのが難しくなるという点だ。
非政府組織(NGO)である国際危機グループ(ICG)のシニアアドバイザー、クリストファー・グリーン氏は「トップダウン型交渉(の妥当性)が少なくとも当面かなり痛手を受けることになる。トランプ氏は乏しくなった政治資源を新たな首脳会談に使えない。だから次の進展は事務レベルによってもたらされる」と説明した。
<擦り合わせ作業> 昨年のシンガポールの首脳会談後、米国の事務方は北朝鮮の担当者に会うことすらままならない場面もあり、交渉が急ピッチで実施されたのはハノイ会談の直前になってからだった。
米民主党のエドワード・マーキー上院議員は28日、ツイッターに「ハノイ会談前に事務レベル協議が足りなかったことで実りのある合意のチャンスが損なわれた」と批判した。
米国アジアソサエティ政策研究所(ASPI)のバイスプレジデントでオバマ前大統領に外交問題を助言していたダニエル・ラッセル氏は、「双方の溝を埋めて選択肢を検討するための懸命な外交努力がなされていなかった」以上、両首脳が合意できなかったのは何ら驚くに当たらないと指摘。現時点で北朝鮮側にトランプ氏と直接ではなく米国の事務方と早急に話し合うよう説得するのは骨が折れるだろうと付け加えた。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝