[2357]GEの崩壊に拍車が掛かっている

相田英男 投稿日:2018/10/04 17:13

相田英男です。
副島先生の前に、割り込みます。すみません。

先日のHAガスタービンのトラブル報道以来、気が動転し、舞い上がって、イタイ投稿をしてしまうのは、日本では、どうやら私一人だけ見たいです。

それで、ようやくHAタービンのトラブルの理由が、少しわかりました。やっぱり、初段タービンブレード(回転動翼)表面の、コーティングが破損したみたいです。

例によって、英文記事の抜粋を引用します。

(引用始め)
GE Sinks to Nine-Year Low as Turbine Trouble Continues to Pressure Stock
By Teresa Rivas, Sept. 25, 2018 11:54 a.m. , Barrons

GE has 30 HA turbines in operation, with price tags of about $60 million and warranties that typically run two to three years, he writes, but so far, little detail has emerged about what caused the latest troubles, other than it seems the material coatings on the blade were failing. “It is unclear whether the failure was operating situation dependent (e.g., altitude, temperature, humidity, operating parameters, etc.) and whether these fixes will have to be applied to all units,” he wrote. If it’s a coating- manufacturing issue, he says he expects a “broad-based” fix will be available.

(引用終わり)

ブレードの材料には、ニッケル基の単結晶合金という、耐熱強度を最大限に高めた金属を使います。その表面に、温度を下げる遮熱(しゃねつ)を目的としたセラミックコーティングと、高温中の酸化を防ぐ金属の耐酸化コーティングを、少なくともダブルでコーティングしています(もっと多層かもしれない)。それで、エクセロンが点検のために、HAタービンを停止して中を覗いてみると、ブレード表面のコーティングの一部が損傷(おそらく一部が剥離、脱落した)して、ひどく酸化損傷していた、という事らしいです。

今度は誤訳ではありません(多分…)。でも、問題がコーティングなら、そうだと最初から言って欲しかった。oxidation issue などという、曖昧な表現をするから、全く……

コーティングが損傷した理由は、発表されていません(相変わらず、ネタを出し惜しみする)。ブレードの使用環境(ブレードのサイズ、温度、湿度、起動回数等の装置固有の運転条件、等)が原因で、想定よりもコーティングが早く劣化したのか、そうでなくて、コーティングの施工のやり方がマズかったのか、よくわからない。後者ならば、色々な対策( “broad-based” fix )も立てようがある。けれども、前者ならば時間が掛かる、と、記事では言ってます。ブレードの劣化現象自体を、解明する必要がありますから。

そして、今回のGEニュースはこれだけではありません。何とCEOのフラナリーが辞任するという、衝撃の発表まで飛び出しました。こっちはさすがに、日本でも報道されたようです。

フラナリーCEOは就任から1年での解任です。ジャック・ウェルチが20年、ジェフ・イメルトが16年間勤めた後ですから、たったの1年とは、GEもなりふり構ってない状況です。解任のきっかけは、HAガスタービンの停止だったようです(フランスのブシャン発電所でもHAタービンが停止した。LTSAのタービン保証期間中の、故障による電力会社の損失は、GEが負担する筈)。

しかしです。実際には、もっと深刻な理由がありました。日経の有料版に、フィナンシャル・タイムズの記事があり、一部引用します。(翻訳記事ですから、間違えようがないです…)

(引用始め)
GEのM&A戦略と高額手数料に疑念高まる
2018/10/3 16:28
日本経済新聞 電子版(フィナンシャル・タイムズ誌の翻訳)

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は2000年代に入って、ウォール街の投資銀行にM&A(合併・買収)手数料として60億ドル以上を支払ったものの、市場価値が80%下落した。製造業のコングロマリット(複合企業)である同社は1日、2015年に仏アルストムから買収した事業の業績低迷を受けて、電力部門ののれん代約230億ドルを減損処理すると発表した。そのことにより、 同社のM&Aの歴史に疑問が生じている

(引用終わり)

GEがフランス最大の重電会社のアルストムを、2兆円以上で買収した話は、私の東芝本に書きました。機会があれば御参照ください。それが今になりアルストムは、GEの収益に貢献できないため「のれん減損」するというのです。金額は何と230億ドルですから、買収金額を丸々減損する、ということです。あまりにも巨額です。

東芝がウェスティングハウスを減損をした金額が、4千億円から6千億円くらいでしたから(自分の本で書いて、ど忘れするのもどうかですが)、それの数倍の規模になります。これを受けてS&Pは、GEの債格付けを現在のAから2段階下げて、ジャンク級より3段階上の「BBB 」にしたとのこと。GEはこれで、社債による資金の調達が、更に困難になります。

いやはや、さすがに「親会社」だけのことはあります。、破綻の規模が、GEと東芝では別次元です。

私はこの掲示板で、「GEはそのうち潰れて倒産する」と、繰り返して書いて来ました。しかし、今の状況は、私の想像以上の速さで破綻が進んでいます。ベルリンの壁が正に崩壊するのを、見守る心境でいます。

でも、「たら、れば」の話ですが、GEが潰れるのであれば、今ではなくて、20年前のジャック・ウェルチの時代であるべきだった。それならば、日本の電力会社や重電会社は、GEの頸木から早く解放される。そして、原発に真摯に向き合って、福島原発のメルトダウンは防げた、と思っています。

とりあえずは、これで。

相田英男 拝