[2332]サウジによるGE(ゼネラル・エレクトリック)への破滅宣告

相田英男 投稿日:2018/07/26 12:06

相田英男です。

ロイターに、以下の題目の記事が載っていた。GE(ゼネラル・エレクトリック)に関するものだ。日本では報道されていない。記事の意味が理解できるマスコミ関係者が、日本には誰もいないのだろう。リンクを張っていないので、記事タイトルから検索されたい。

Exclusive: General Electric’s power unit faces threat in Saudi Arabia
Alwyn Scott, Stanley Carvalho
19, 2018 / 2:22 PM

記事の内容を簡単に説明する。サウジアラビアは自国の電力を賄うために、GE製のコンバインドサイクル(ガス・蒸気複合方式発電、拙著「東芝は何故原発で失敗したのか」を参照されたい)設備を、数多く導入している。その内のF型ガスタービン(ガス温度1400℃級)の50台以上について、整備、保守を担当する会社のコスト基準を、従来より厳密にする。そして、製造元のGE以外の会社の、F型ガスタービンへの保守作業への参画を、積極的に認めると、国営電力会社のサウジアラビア・エレクトリック・カンパニー(SEC)が発表したという。

この記事の内容は、至って地味ではある。しかしサウジのこの発表は、GEにとって極めて厳しい。事実上の、GEへの死刑宣告とも言える内容だ。

拙著に詳述したが、コンバインドサイクル用のガスタービンこそは、GEの中核事業として維持し続けなければならない、重要な製品分野だ。ジャック・ウェルチCEO時代の強烈なリストラの中で、多くの事業が切り捨てられた。その一方で、他社を圧倒する性能と事業収益を上げるべく、最重要テーマとして開発が推進されたのが、発電用ガスタービンだった。

その事業のキモは、実は、ガスタービンを作って売ることではない。ガスタービンの稼働中に、強度の熱負荷を受けて劣化する、高温部品の交換、保守等のメンテナンス作業の契約を、販売と同時に締結する。それ以降に毎年発生するメンテナンス費用を、10年以上の長期にわたって手に入れ続ける。これがガスタービンビジネスの、真の旨味である。

このような緻密な戦略に基づいて、ガスタービンのメンテナンス業務は、GEに着実な利益をもたらして来た。そのメンテナンス業務を、サウジはGEから取り上げるつもりだ。GEのタービン保守費用は、凄く高額であることが知られている。ユーザーはかねてからGEの、ブランド力をひけらかす高額なメンテナンス費用を、苦々しく思って来た。サウジもこれまでは、「アメリカ様の信用ある会社の製品ですから、仕方ありませんね」と、GEの言い値でメンテナンス費用を払っていた。しかし、ついに反旗を翻した。

GEのガスタービンはサウジ以外の国にも、沢山売られてている。サウジだけがメンテナンスをやめただけでは、大きな影響は無い。しかし他のサードパーティ会社でも、補修が出来るとなれば話は変わる。サウジ以外の国の、かなりのタービンユーザーが、GEから保守契約を乗り換えるだろう。GEがそれに対抗して、メンテナンス費用を下げても、収益がジリ貧になるだけだ。

ガスタービンが今売れなくても、時期が来れば情勢が変わり、また売れ出す可能性もある。しかし、保守サービスを他社に奪われるのはつらい。GEのビジネスモデルの根底が破綻するからだ。

このようなGEの状況については、サウジも重々承知である。その上での今回の発表だ。コングロマリットとしてのGEの存続に、致命傷を与える決定を、サウジは敢えて、このタイミングで行なった。

アメリカのこれまでの横暴と、今の状況のあまりの情けなさに、堪忍袋の尾が遂に切れたのだろう。中東の盟主として、日本と共に長年アメリカを支え続けてきた、サウジによるこの仕打ちは、インパクトがある。アメリカへの長年の怒り爆発という感じだ。

ダウ・ジョーンズの銘柄を外れはしたが、GEの最近の株価は13ドルくらいの低値(笑)で安定していた。落ち着いているように思えたが、状況は確実に、GEにとって悪化している。今回のサウジの発表で、また一歩、破滅に近づいた印象だ。

GEのニュースを追ってゆくと、J.P.モルガン チェースのアナリストで、スティーブ・ツサ(Steve Tusa)という人物のコメントをよく見かける。ツサはかねてから、「GEの株価はまだ高い、せいぜい11ドルくらいがいいとこだ」と、繰り返しコメントしている。「同じモルガン系列のアナリストなのに、セルジオ越後みたいに辛口のコメントだな」と、私は不思議に思っていた。しかし、今回のサウジの動向のような最先端の情報を、ツサは知っていたのだろう。これでは、GEの株価を上げることは無理だ。

対抗策としてGEは、シーメンスやMHPS(三菱日立パワーソリューションズ)等の、他社が製造した古いタイプのガスタービンを、最新型にアップグレードするサービスを提案するという。ユー・チューブにGEは宣伝を載せているらしい。しかし、はっきり言って私は唖然とする。こんな、東アジアの三流メーカーが考えるような、情け無い仕事を提案するなど、地に堕ちたものだ。GEは最早、昔の栄光の、あのGEではなくなった。

やっぱり、福島原発事故の責任をほっかむりしたり、東芝を罠に嵌めて潰した報いからは、逃げられないのだ。厳しい神の裁きと鉄槌が、GEに今、降り掛かりつつある。最後までしっかりと、私は顛末を見届けるつもりだ。

相田英男 拝