[2330]これからの世界政治の動きを見る目。トランプという男の本性(ほんしょう)。 

副島隆彦 投稿日:2018/07/12 22:29

副島隆彦です。今日は、2018年7月11日(木)です。

 私は、ずっと、自分の「世界史の本」を書くことに熱中していました。

 この 2カ月、「副島隆彦の 独学の世界史の通史(つうし)」を書いている。
「 3200年の イスラエル(=パレスティナ、カナンの地)を中心に置いて。 エジプトと メソポタミア・バビロニア それぞれの5000年の人類史の、その真ん中で、3200年の歴史(モーセの出エジプト記から)を持つ者たち(ユダヤ人) とは、何者なのか、どのようにして作られたのか、あるいは自らを作ったのか。その正体に迫る 」 

という、「副島隆彦の 独学(どくがく)の 3200年の世界史通史(つうし)」(仮題)を書いていました。

 それから、先日、ある優れた編集者から以下の書名(タイトル)案 の本の提案をいただいた。それは、

 「アメリカが 中国に 屈服するとき、日本に何が起きるか (サブタイトル)そろそろ私たちは 日本独立を 本気で考えるべき時が来た」 という長い書名の 提案だ。

 このまま、行けば、中国がますます隆盛して、中国の勝ちで、中国が、もうすぐアメリカをも追い越し、蹴落として世界を制覇するだろう、と、今では、ほとんどの日本人が不安そうに考えるようになっている。 

 この 「やがて中国が世界覇権国(世界帝国)になる」は、私、副島隆彦が、20年前から、ずっと主張して何十冊もの本に書いてきたことだ。 私の十八番(おはこ)である。このことは、読書人階級に属する人間たちの周知の事実だ。

 もし、トランプ大統領が言ったとおり、「 在韓米軍 3万2千人を撤退させたい」ということになれば、一体、どういうことになるか。中国が、北朝鮮も、韓国も、そして、ついには、日本も、支配下に置く、という、時代が、あと十年後には到来する、と、書いて奇異(きい)に思う日本人は、もういない。 

 日本人のほとんどにとって、不愉快な話だ。 私も不愉快だ。 日本が、中国の、属国、朝貢国、被支配国(ひしはいこく)、従属国になってしまう、という考え自体を、どうやって、断ち切ることが出来るのか、という、日本の長期の国家戦略(ナショナル・ストラテジー)を、どうやって作るか、で、私、副島隆彦も苦心、苦衷(くちゅう)している。

 敗戦後、アメリカによる日本の占領、支配、そして属国としての支配が、もう73年間も続いている。在日米軍 も、徐々に撤退、ということになると、日本は、いよいよ、独立、自立する、段階に入る。そのとき、日本独立は、日本国民の悲願だ、と本当に言えるか。

 アメリカ帝国 の撤退 のすぐあとに、それに入れ替わって、中国による日本支配、が、すぐに始まるようだと、日本国、はものすごく厳しい状況に追い詰めらる。日本独立、どころの騒ぎではなくなる。次の、別の帝国による支配が始まる。 だから、アメリカ様(さま)に、何があっても、しっかりしがみついて行きます、という判断に日本国民がなる。 それが、アメリカの思う壺(つぼ)だ、で、これで、ずっとやってきた。

 それ以外の人々としては、目の前の現実である 中国の隆盛(りゅうせい)に何としても、ケチをつけて、「中国崩壊論」という有りもしない虚妄を言い続けて、それで、自分自身の脳内をダマし続ける愚かな反共右翼の人間たちが残っている。

 ところが、トランプという、特異な男には、こんな、考えさえも通用しない。 

 トランプは、何をし出すか、分からない男だ、という 恐怖感が、日本人の中にも生まれつつある。

 今のままの、「アメリカは、もう、自分たちの利益のことしか考えない。アメリカ国民の生活をなんとかするだけで、精一杯だ 」という、 トランプ大統領の、なりふり構わぬ「アメリカ・ファースト!」 America First ! 「アメリカの国内問題優先(こくないもんだいゆうせん)だ。外国は、もっとアメリカにカネを払え」で突き進む。

 今や、このやり方は、「トランプ・ドクトリン」と呼べるものになってしまった。

 今のアメリカ政府の動きを見ていると、周囲の者、すなわちアメリカ合衆国以外の、外側の人間たちにとっては、「もう目も当てられないぐらい、アメリカの凋落(ちょうらく)は、ひどい。何という醜態(しゅうたい)だろう」、 「 アメリカはあんなに強そうにしていて、それでいて、今や、こんなにも力 がない。実際には、北朝鮮への 管理された小さな戦争(マネイジド・スモール・ウオー)ひとつ出来ない。図体(ずうたい)だけ大きくて、強そうに見せかけている軍人たちを抱えただけの、臆病者たちの国だ 」と、まわりは、本当にガッカリを通り越して、意気消沈している。

 「これから先も、このあとも、しっかりとアメリカについて行くしかないのだ。 アメリカに逆(さか)らって、いいことは何もない」 と、 日本の 体制保守派の人たちは、安倍政権と一緒になって、 どこまでも、対米従属を、屈辱的と言えるほどまで、続けている。

 トランプの、あの、6月12日のシンガポール米朝(べいちょう)会談での、「もう、何が何でも、どうでもいいから、上から柔らかく、金正恩(キム・ジョンウン)を押さえつけて、何が何でも、北朝鮮の核保有問題を、平和的に解決しなければ、いけないのだ 」 というトランプの、商売人根性丸出しの、 恐るべき、やり方、は、世界中の人々を悄然(しょうぜん)とさせた。

 日本国民の多くが、あの時、強く感じたのは、 「ああ、アメリカは、いざとなったら、日本を守ってくれないんだ。日本は、これまでお金ばっかり、たくさん払わされて」というものだった。
この日本国民の、大(だい)失望、驚愕そして、「日本は何にも出来ない。日本には、全く手がない」という 八方塞(はっぽうふさ)がりの茫然自失だった。

 あれから、丁度1か月が経(た)つ、日本人は、この虚脱感から回復していない。立ち直っていない。

 それは、有識者や、知識人層だけはない。ごくふつうの国民の、少しは、国の将来や、国民のこれからの暮らしのことを、真剣に考えている層が、そのように反応した。

 トランプは、「日本は、安倍晋三さえ、しっかり、自分が捕まえていさえすれば大丈夫だ。あとの国民は、首相のアベさえ、押さえ込んで、自分の言うことを聞かせおけば、どうにでもなる」 という 考えだ。 

 事実、日本人は、すべて、アリンコのようなもので、首相を取られたら、どうにも動けない。そういう仕組みの国にされてしまっている。このオカシナ首相の下で、私たちは、いいように、アメリカのトランプに、あやつられている。手も足も出ない、という状況だ。

 北朝鮮は、さらに、今以上に、核兵器の開発を拡充している。核保有を、これからも続けて、それを、国際社会(=世界)に、居直って、既成事実として認めさせようという考えである。そのことは、もう、誰の目にも明らかだ。 このままでは、北朝鮮の完全な非核化( complete denuclearization コンプリート・ディーニュークリアライゼンション)は、出来ない。

 アメリカは、あのとき、「誰が、アジア人なんかのために、アメリカの軍人兵士が、血を流すもんか。誰が、アジアでの戦争なんかするか 」 と、急激に、態度変更をした。

 「自分たちにさえ核兵器が飛んで来ないのなら、それで、いい。あとは知ったことではない。あとはアジア人たちが、自分たちで勝手にやれ 」という、決断をした。 これがアメリカ白人たちの、あのときの、急激な思考転換、変心、心変わり だった。5月ぐらいから、それが起きていた。それを私を含めて、多くの人間が、読み誤った。  

 1968年の、ベトナムでの、テト攻勢での、ベトナム戦争が泥沼化した、あの時のことが、アメリカ国民のトラウマになっている。だから、アジアでの戦争は、もう、いやだ。やりたくない、という気持ちに、一気に崩れていった。 それをトランプが代表者(権力者)として、よく分かっていて、体現(たいげん)した。

 北朝鮮は、これからも、今のままだ。この問題はこの先もずっと続く。ずるずるとこのままだ。ああ、何と不愉快なことだろう。 北朝鮮は、核兵器を持ち続ける。ICBM の開発も続けて、アメリカ大陸まで届く、1万2千キロ、正確に飛んで、ワシントンのトランプの執務室の真上を目標にして到達し、確実に爆発する、核ミサイルを、持ち続ける。

 だから、問題は何も解決していない。このまま、これから先も北朝鮮の核(かく)問題は、続いて行く。

 次の世界政治の日程は、9月の ウラジオストクでの、プーチン主催の 経済フォーラムに、金正恩が、招待されていて、そこで、ロシアが、北朝鮮への 天然ガスのパイプラインの 引き込みの話をするだろう。まだ、北朝鮮への 国連決議、としての 経済制裁(エコノミック・サンクション。禁輸。エンバーゴー)は、全く、解除も緩和も、されていないのに、どんどんこういう話になる。

 日本の安倍首相も、このときウラジオストクで、金正恩との日朝会談を希望している、というのである。一体、どの面(つら)下げて、そういう「対話の場を作りたい。日本からの北朝鮮への経済援助の案を示したい」と言えるのか。あの、「北朝鮮に対して、最大限の圧力をかけ続ける」はどこへ行ったのだ。

 中国の習近平 は、自分が、この秋に、北朝鮮を訪問する予定もあるらしい。これが、キタナラしく続いてゆく、世界の現実政治(リアール・ポリティクス)だ。 

 この他は、今や、シリアの西の 、現在は、イスラエルが占領していて(1968年の第3次中東戦争で)実効支配しているゴラン高原から、ほんの数キロ先まで、ついに、イラン正規軍(革命防衛隊=レヴョルーショナリー・ガード=という民兵組織のふりをしているが ) が、迫っている。 ゴラン高原を、シリアとイラン、そして、ヒズボッラーというレバノンの親イラン・シーア派の軍事組織が、奪還の、戦争を始めたら、中東が再び、戦争地帯になる。

 そして、私たちの極東(きょくとう、ファーイースト。アメリカ政府の用語なら、北東=ほくとう=アジア)にも、その影響が及ぶ。 私が、ずっと書いてきたとおり、世界の火薬庫(かやくこ。アーセナル)は、中東と 極東の ふたつ しかない。 どちらからで、戦争が、順番に起きる。それが、人類(人間)という、愚か極まりない生き物が、80年に一度、ずっと、この4千年間、繰り返して来た、「人類史の自然法則」だ。 このことから、今の私たち人類も、例外ではない。

 私、副島隆彦の 冷酷な目からは、アメリカの軍需・国防産業(ミリタリー・インダストリー)が、いつまで黙っているだろうか、だ。 アメリカは、小さな戦争を、10年に一度、どころか、5年に一度は世界のどこかで、しないと、保(も)たない国なのだ。 人類史の中の、すべての帝国は、必ずそういう性質をしている。アメリカの軍需産業界 は、どうやって、「大統領よ、次の戦争を、さっさと始めて下さい。 私たちの 兵器の在庫 が溜まって仕方がない」と言い出すか。

 これが、私、副島隆彦が、今も抱えていて、解けない方程式だ。北朝鮮で使うはずだった、大量のミサイルは、どうするのか? 

 中東(ミドル・イースト)が、さっさと次の 火薬庫に、逆戻りしたように見える。
 イラン軍と、シリア軍は、「S300」という、ロシアの、地対空(ちたいくう)ミサイルを、ロシアから購入して、かつ、それを 自分たちで、正確に動かして、撃てるようになった。それで、イスラエルの戦闘爆撃機を、今年の1月から、正確に打ち落とせるようになった。 イスラエルが、この事態に深刻になっている。これまでのように、イスラエルが、この地域(リージョン region )の 制空権を持つ、ということがなくなった。

 この事態に、慌てふためいているネタニエフ首相は、おとといも、ロシアに飛んでいって、「プーチン、お願いだ。イラン軍を、シリアから撤退させてくれ。圧力を掛けてくれ」と、泣きつくように、懇願(こんがん)しに行った。アメリカのトランプは、イスラエルだけは、何があっても、助けなければいけない。それなのに、救援できない。 

 だから、このことは、前述したが、私、副島隆彦が、ずっと言い続けている「アメリカは、国内のことで、手一杯だ。外国のことなど構っていられない」という思想で動いているからだ。

 この、アイソレイショニズム=ポピュリズム=リバータリアニズム で、「外国のことに関わりたくない」の 政治思想、信念 で動く。私、副島隆彦は、これらのアメリカの現代の政治思想の研究の 専門家(エキスパート)である。 私から、習わなければ、日本の 専門家、政治学者、外交研究者は、育たない。

 トランプは、なんと、その イスラエルさえ、見捨てようとする。 まさしく、アイソレイショニズム=ポピュリズム=リバータリアニズム の具現(ぐげん)だ。 ここで、イスラエル(人口860万人の小国。そのうちの600万人ぐらいがユダヤ人だ。埼玉県ぐらいの大きさしかない )を、トランプが、そんなには真剣に守ろうとしない。 今のイスラエルが、アメリカに、捨てられている、今の様子は、日本と、実によく似ている。

 だから、この7月16日に、トランプと、プーチンが、このことで、ヘルシンキで? 会談する。

「イラン軍を、シリアから撤退させるように、ロシアは、イラン政府に圧力をかけろ。その見返りに、アメリカは、ロシアの クリミアの領有を認める(ウクライナからの分離を支持する)」という取引き、駆け引きをしようとしている。 トランプには、世界政治=外交 では、これぐらいの手しか他にない。

 アメリカは、北朝鮮、ひとつ、片づけられないのに、その10倍は大変な、イランがすでに秘密に保有している核保有の問題を、なんとかする、ことなど出来ない。 イランからイスラエルは、1300キロ(短距離核弾頭ミサイルで十分だ)しか、離れていない。

 いくら、アメリカが、諸国に向かって、「イランの石油を、輸入するな。させない。イランと取引している国は、アメリカが制裁を加える」と、西側同盟国(ヨーロッパ と日本 )を脅しても、イランは、確かに、深刻に困っているが、それでも、インドと、中国に、石油を売る。 インドと中国は、いくらでもイランから買う。

 北朝鮮については、中国が、本気で怒り出すまで、北朝鮮は核開発を続けるだろう。中国は、北朝鮮が、自分に、進んで屈従、屈服したことを、無上に喜んでいる。 3月26日から、突如、始めた金正恩の北京詣(もうで)で、長い2千年の( 紀元前後の、漢の帝国=王朝 のとくぐらいからの)「臣下の礼」の伝統に従って、帝国への藩国(はんこく)、藩塀国(はんへいこく)、朝貢国(ちょうこうこく)としての 従属する態度を示した。 

 中国は、朝鮮国が、このように、自分に臣従してくれれば、それでいい、それなら、核兵器の保有を許してやる、と、考えるほど、中国はお人好しではない。北朝鮮の核兵器は、中国にも届くし、北京をも 狙っているのだ。

 トランプが、また、あの異常な性格だから、気が変わって、「北朝鮮の金正恩は、私との約束を守らないのだな。よし、それなら、私も考えを変える」と、再び、“元の木阿弥”、で、軍事対決路線に、戻るだろう。駆け引き、取引の人間の本性(ほんしょう、ほんせい)に、従って、どのようにでも、勝手に、自分の態度を変える。これが、トランプという男だ。 「君子は豹変(ひょうへん)する」などというものではない。商売人は、自分に都合が悪くなると、どれだけでも、態度を変えて、相手をダマす、だ。

 だから、これから先の、極東(きょくとう)情勢は、これまでと、全く同じ、緊張したまま、政情不安のまま続いてゆく。

 あのとき、トランプが、決意して、北朝鮮に、軍事攻撃を掛けて、強制的に核施設を破壊して、たたき壊していた方が、世界にとって、ずっと、よいことだったのだ。 それを、トランプは、自分の商売人の本性(ほんしょう)で、相手を、どんなことをしてでも、自分との取引に応じさせて、そして、上手に騙(だま)してしまえばいい、という、策略に出た。

 あのやり方の巧妙さと、同時に、手口の穢(きたな)さが、アメリカ国内の外交の専門家たちに、もの凄く評判が悪い。  

 私は、これから、「トランプという男の 本性(ほんしょう)が、ようやく分かった」 を書く。私は、トランプという人間を、どうも見損なってきた。この人物は、私の想像を遥(はる)かに超えて、とんでもない人間なのだ。 

 このことが、これまで実感で分からなかった。この私でさえ、トランプという 巨大な人騙(ひとだま)しのウルトラ・プロフェッショナルが分からなかった。

 私は、ようやく、ドナルド・トランプという人物が、どういう人間か、腹の底から分かった。この人物は、私が、2年前に書き始めて、今では日本国内で、広く語られるようになったことだが、「トランプは、根っからの商売人(しょうばいにん)だ」論などでは、もう済まない。 

 「トランプは、不動産業、デベロッパーで、歓楽地用の巨大建築物を作るのが専門の実業家で、根っからの経営者だ 」 という、当たり前の言い方をしてきたが、こんなものえは済まない。トランプは、アメリカの 大(だい)暴力団 mobster , gangster の、その 最高幹部なのだ。 

トランプは、腹の底から商売人で、ド穢(ぎたな)い 男で、 自分と取引する、すべての人間を、ダマして、必ず、その相手から、取引されたものすべてを奪い取る人間だ。そのように獰猛(どうもう)に生きて来た。

 アメリカ人は、その人が、どういう信念(ビリーフ belief )で生きているかを、お互い公表し合いながら生きている。宗教や思想信条についても公表し合っている。 だから、その人が、その人の思想、信念に忠実に発言し行動する限り、決して批判、非難されない。しかし、その人が、その人らしさを、自ら裏切って、おかしな行動に出たら、まわりは、その人を、厳しく批判し、非難する。

 トランプの場合、彼の思想、信条は、「 駆け引き、取引(ディール deal )をする人間」 として、公表している。だから、すべてが、取引、駆け引きだ。 だから、この自分の信念に忠実で有る限り、誰もトランプを非難できない。取引、駆け引きの時は、フェア/ アンフェア の ルールの範囲内であれば、どんな手を使っても、許される。 ただし、「相手を完全に、初めから騙すつもり」の cheating チーチング の 域にまで達して行う、騙しは、許されない。トランプは、そのすれすれのところを生きている。

 そして、アメリカ国民は、この男を自分たちの指導者に選んだ。 このことが、重要だ。

 今のアメリカ国民は、余裕がなくなって、どんなことをしてもいいから、外国人たち、外国政府から、アメリカの利益を取って来てくれ、という考えで動いている。 「そして、その契約から生まれる、経費、費用は、すべて、相手に払わせる」ということを、公言するトランプを頼もしいと、思っている。

 この、どんなことも、すべて取引、駆け引きである、どんなに穢(きたな)い手を使ってでも、相手に上手に勝った人間が、エライのだ、という 原理で まさしく、トランプは、動いている。このことに、私たち日本人が、急いで、はっきりと知って、そして、トランプに対して、十分に身構える必要がある。

 トランプは、一円も、一ドルも、相手に渡さない。返さない。利益を分け合う、ということもしない。すべて 自分の物にする。 そういう男なのだ。 だから、まさしくトランプは、ニューヨークの 大金持ち、実業家の 強欲(ごうよく greed グリード )の思想の頂点を極めた、ユダヤ人そのものだ。

 トランプは、ドイツ系の移民の3世だと分かられてる。このことは、血族の行方から証明されているが、その本性(ほんしょう) は、まさしくユダヤ人だ。

 彼は、ユダヤ人と全く同じ精神構造をしている、カルヴァン派プロテスタントの、倫理観(りんりかん ethics エシックス、ethos エトス、イーソス)をしている。この生き方を、徹底的に突き詰めた、自分の思想に忠実な男だ。 

 カルヴァン派(ピューリタンはその別名)にプロテスタントは、ユダヤ人の生き方、ジュダイズム(ユダヤ教。これは ユダヤ思想とも訳せる)と、ほとんど同じ思想なのである。 このことを、今度、私は弟子たちとの、2005年に出した本の新装版で、13年ぶりの改訂版である、『 金儲けの精神を ユダヤ思想に学ぶ 』 (祥伝社新書刊) を、この5月に出した。買って読んでください。

 ニューヨークのユダヤ人たちの、突き抜けた強欲の思想で、トランプは、生きている。「ここでは、それが当たり前なのだ。騙された相手が、悪い」 というのが、ニューヨーカーたちの生き方だ。

 日本人でも、根っからの、生まれた時からの 商売人、実業家、経営者たちには、トランプの、このやり口、生き方が、よく分かるらしい。 商売人は、自分の仕事仲間たちでさえ、騙す。人を、取引で、騙すことが、当たり前の世界を生きている。 

 だから、このことが、外交理論とか、国政政治とかの 専門家(エキスパート)や、ジャーナリスト、言論人たちに、理解できない。 だからトランプが突飛な発言をし、交渉相手を、面食らわせるような行動に出ることに、まだ慣れないものだから、自分たちの方が、狼狽(うろた)える。

 トランプは、従来の、これまでの、アメリカの政治家たちがやってきた、やり方はしない。これまでの考え方では、この男には通用しない。

 これまでとは、全く違ったやり方をする。どんなキタナイ手でも使う、そして、相手を、追い詰めて、屈服させる。

 トランプは、自分のすぐ身近にいる人間たちでも、絶対に信用しない。すべて、疑ってかかって、「いつこいつが、自分を裏切るか」を、冷酷に観察している。 そして、用がなくなった、と思ったら、すぐに切り捨てる。 容赦はない。 

 例外は、娘のイヴァンカと、その旦那の、若くして、恐ろしい男である、ジャレット・クシュナー(36歳)だけだろう。この男も、トランプと同じ、ニューヨークで、「すべての人をだます」ビジネス(商売)で、生きて来た人物だ。 

 この 娘夫婦以外は、トランプにとっては、使用人であり、いつかは、切り捨てる対象だ。 すべて火傷(やけど)を負って追い出されて行く。まさしく人使いの荒い 経営者のやり方だ。

 「ご苦労さんだった。○ ○君は、実によい仕事をしてくれた。有能な人物だった 」と、決まり決まった、コトバを掛けて、人を 追い出す。そうしないと、残酷に非情さだけで、首を切ったら、その解雇された従業員が、必ず自分を刺しに来るからだ。 

 生まれながらに、優れた、すなわち、凍り付くような人間関係、仕事での取引、を生きて来た、経営者、商売人というのは、こういう人たちだ。  

 私は、日本国民に、このことを、今から、もっともっと、教えて、詳しく説明して、トランプという、 「すべてが駆け引きだ」の頂点を極めた恐ろしい男に、十分、用心して、注意深くなって、警戒して、これからは、対応しなければいけないのだ、と、警告を発することにする。

 トランプが、どれぐらいの獰猛(どうもう)さで、自分に寄ってきて取引する人間たちや、自分のすぐ周囲にいる、すべての人間 を食い殺す人間であるか。 このことを、私は、 日本の在野の 国家戦略家(こっかせんっりゃくか)として、 日本国民に、警告を発する。

 このことを日本の指導者層に向けても発信する。 日本の権力者層、指導者層、大企業経営者たちと、日本の各界(かくかい)の親分衆に対しても警戒するように、注意を促し続ける。私、副島隆彦が、このように 決意、決断して動くことが、日本国、日本国民の重大な利益だからだ。

 再度、書くが、トランプは、日本だったら、安倍晋三首相ひとりの 首根っこさえ、押さえつけて、自分の言うことを、全部、逐一、聞かせていれば、それで、いいのだ、と 知っている。最近も、トランプが、安倍に、「北朝鮮の核兵器の処理のために、日本は、500億ドル(5.5兆円)払え」と言った、と報道された。

 菅義偉官房長官が、それを、公式に否定した(後ろに記事を載せる) 。この日本が払うべき5百億ドル、のトランプの発言は本当にあっただろう。日本人なんか、安倍さえ、捕まえておけば、あとはアリンコの集団のようなもので、どうにでもなる、 と、トランプは分かっている。

 事実、そうだ。 アベさえ押さえつければ、日本などと言う、 アジアの一国の手駒(てごま)は、自分のいいように、操(あやつ)れる、と分かっている。 
 先の戦争のあと、ダグラス・マッカーサー大将(4つ星将軍)が、戦争の勝利者として、日本に、進駐軍( SCAP スキャップ、という。GHQ は、その建物俗称  )としてやってきて、皇居の お堀の隣から、昭和天皇ヒロヒトさえ、自分が、いいように動かせれば、日本人は、すべて言うことを聞く、と知っていて、そのように占領政策を実施したことと、同じだ.もっと、悪い。 マッカーサーは、まだ、上品だった。知性と教養があった。 

 それがトランプには、ない。 ニューヨークの クイーンズ区(ワード)の外れ、という 日本の江東区、足立区、江戸川区のようなところで育った、若いときから不動産業者として抜け目のない、したたかな生き方をしてきた人物だ。  

(以下は、新聞記事の、転載貼り付け始め )

○「 5兆円拠出報道を否定=菅官房長官 」

時事通信 2018/06/25 
 
 菅義偉官房長官は、6月25日の記者会見で、トランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長に対して、北朝鮮の非核化費用として日本に約5兆5000億円を拠出させる約束を交わしていたとの一部報道について「報道にあったような事実は全くない」と述べ、否定した。

○「 米朝交渉、食い違い鮮明=非核化プロセスで溝―ポンペオ氏訪朝 」 

報道陣を前に厳(きび)しい表情を見せるポンペオ米国務長官=7日撮影、平壌

2018年7/9(月) ワシントン時事通信

北朝鮮の非核化に向けた米朝交渉で食い違いがより鮮明になっている。

完全非核化まで「制裁継続」=米国務長官

 6、7の両日に訪朝し、高官協議を行ったポンペオ国務長官は「進展があった」と強調するが、北朝鮮は「米国は一方的かつ高圧的だった」(外務省報道官談話)と不満を表明。「非核化の意志が揺らぎかねない」と警告した。6月12日の米朝首脳会談から約1カ月がたっても非核化のプロセスで依然溝が埋まっていないことが浮き彫りになった。

 北朝鮮の強硬姿勢について、協議を長引かせて交渉の主導権を握るための「戦術」との見方もある。ポンペオ氏は8日の東京での記者会見で、会談後の論評に注意を払うつもりはないと述べ、問題視しない構えを示した。その上で「われわれは誠実で建設的な対話を行った。今後も継続する」と述べた。

 過去の交渉でも見られた時間稼ぎが有効かどうかは、トランプ大統領次第だ。11月の中間選挙までに外交成果を得たいトランプ氏は交渉に前のめりになっているが、思うような成果が得られなければ、「(圧力を強める)別の方法に戻る」とけん制もしている。

 CNNテレビによると、ホワイトハウスや国務省内では、遅くとも8月末までに非核化の明確な計画が必要だという意見がある。進展がなければ、米朝交渉を優先するために中止を決めた米韓合同軍事演習の再開もあり得るという。 

・ 米朝、非核化で平行線=北朝鮮「遺憾」と反発-米国務長官、訪朝終え来日
・ 米朝協議で拉致提起=ポンペオ国務長官、安倍首相と会談
・ 安倍氏の「非核化費用」発言批判=拉致提起にも不快感-北朝鮮

○「完全非核化まで制裁」 日米韓外相、対北朝鮮で結束

2018/7/8  日経新聞

 日米韓3カ国の外相は8日、都内で会談し、北朝鮮の完全な非核化を実現するまで経済制裁を維持する方針を確認した。ポンペオ米国務長官は会談終了後の記者会見で、6~7日の米朝高官協議で「北朝鮮は完全な非核化を再び約束した」と表明。交渉が前進していると強調した。

 日韓両国も米朝協議を後押しし、交渉が進展するよう結束を図る考えで一致した。

日米韓外相 完全非核化の結束確認

 日米韓の外相会談が8日都内で開かれ、北朝鮮の完全な非核化実現に向けて結束する方針を確認した。ポンペオ米国務長官はこの間、経済制裁を続ける考えを示した。

 ポンペオ氏は3外相会談で、北朝鮮の平壌で金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長と話した内容について河野太郎外相と康京和(カン・ギョンファ)韓国外相に説明。完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)をめざす方針を共有した。核関連施設の査察や核兵器の国外搬出など、具体的な非核化プロセスでの3カ国の協力を擦り合わせた。

 ポンペオ氏は朝鮮戦争で亡くなった米兵の遺骨返還について7月中旬に協議することや、北朝鮮がエンジンミサイルの試験施設を破壊する意向を示したことも報告した。日本人拉致問題を改めて提起したことも説明し「北朝鮮と話すたびに毎回取り上げている」と述べた。河野氏は謝意を示した。

 ポンペオ氏は会談後の記者会見で「北朝鮮が完全な非核化を達成するまで制裁は継続する」と明言。「話し合いの進捗だけでは制裁を緩めることはできない」とも話した。制裁をテコに、北朝鮮から非核化に向けた具体的な行動を引き出したい考えだ。

ポンペオ氏、北朝鮮に反論「それが強盗なら、世界中が強盗 」

 北朝鮮は米国の非核化の要求を「強盗のような要求」などと非難を強めている。ポンペオ氏は「それを強盗というなら世界中が強盗になる」と反論した。7月8日のツイッターでは6月の米朝会談前後から使っていない「最大限の圧力」の言葉を使うなど、北朝鮮からのけん制に反応するような言動もみられた。

 安倍晋三首相は同日、首相官邸でポンペオ氏、康氏とそれぞれ会談した。ポンペオ氏との会談では拉致問題の早期解決に向け、日米の協力を改めて確認した。首相は「北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題の解決は日本と地域の平和と安定に極めて重要だ。日米で連携して解決したい」と話した。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝