[2302]ぼやき「2034の」内容の件

相田英男 投稿日:2018/04/08 23:25

相田です。

ぼやき2034で副島先生が言及されている、日本のメーカーが得意とする高性能の鉄鋼材料とは、高張力鋼(ハイテンションスチール、略称 ハイテン)と呼ばれるものです。鉄鋼材料の中でも、最高ランクの強度を持つ素材で、厚さを薄くしても高い強度が得られるため、近年、自動車の鋼板に多用されています。川崎重工が削り過ぎて問題になった、新幹線の側バリの材料もこのタイプの筈です。

ハイテンの難点は、強度が高すぎるため、冷間(れいかん、室温のこと)プレス加工で成形する時に、スプリングバックという現象がおきやすく、きちんとした形が作れないことです。このため、ハイテンの製造には、高度な加工技術が必要です。このハイテン材の製造に実績があるのが、神戸製鋼所です。神戸製鋼は色々と叩かれますが、一流の素材メーカーです。

ちなみにハイテンの製造が難しいため、ヨーロッパのメーカーでは対抗技術として、ホットスタンプ法が開発されました。こちらは、900度を超える高温でプレス成形して、形を最初に作ってしまい、同時に金型内部で素材を急冷(クエンチという)します。急冷の効果で、金属のミクロ組織を微細安定化させて、ハイテンを超える強度を得ると共に、成形も安定させるという、優れた技術です。

コストや使う部材の寸法などの観点から、ハイテンとホットスタンプには、一長一短があるようです。材料技術も日々地道に進歩しています。

相田英男 拝