[2282]日銀の出口戦略について

小林真也 投稿日:2018/03/03 23:01

昨年会員になりました小林と申します。昨日新聞を見ていて驚いたことがあったのでシェアさせて頂きたいと思います。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/180303/mca1803030500002-n1.htm

日銀の黒田総裁が、金融緩和の出口戦略の開始時期について、初めて言及したそうです。黒田総裁になってから始まった異次元の金融緩和というのは、日銀が市中の国債を大量に買うというもので、現在では日銀は400兆円近くもの国債を保有しています。2012年ごろまでの経済本では、日本の負債の量は大きいが、国内の金融機関などが保有しているから大丈夫、という論調が中心でしたが、それが異次元金融緩和が始まってからは、日銀が買ってくれるから大丈夫、という論調に変わっていったものと記憶しております。

しかし、日銀が無尽蔵に国債を買い続けるということは、いわばお金を刷って国の借金を賄うということであり、それが許されるならば、日本の財政規律が疑われることになり、円という通貨の信用にも関わってきます。だから、建前では金融緩和には出口戦略がある、ということにはなっていました。日銀が国債を引き受けるのは、景気が良くなるまでの一時的措置だ、と。そして、実際は景気なんかまったく良くなっていませんが、最近は政府、日銀は失業率など一部のデータだけを見て、デフレ脱却が近づいているといい始めていました。そして、ここにきて黒田総裁が出口戦略の時期について言及し始めました。

しかし、素朴な疑問として400兆円もの国債を、一体だれが引き受けるというのでしょうか。数年前に、副島先生も著書の中で指摘しておられましたが、三菱UFJ銀行が国債のプライマリーディーラーの地位を返上するという報道がありました。客観的に投資家として見て、日本国債は格付けも低いし、少子高齢化が進み、ファンダメンタルズが弱体化していく国の債券など誰もほしくはないでしょう。

年金基金も、すでに株や外債に資金を移動しており、いまさらその資金を引き揚げるわけにはいかない。そうなると、外国人投資家くらいしか書い手はいないということになりますが、それこそが誰もが恐れていたシナリオではないでしょうか。外国人投資家には、日本政府や日本国民を助けるいわれなどありませんから、ある程度まで外国人投資家の国債保有比率が高まった時点で、売り崩してくることも十分にありえるでしょう。そして我々日本人の銀行への預金や保険金の大部分は日本国債に変わっていますから、それは日本人の金融資産が、外国人投資家にごっそりもっていかれることを意味します。

黒田総裁の真意がどこにあるのか、私には知る由もありませんが、もしわかってやっているなら、なかなか見上げた根性だと思います。副島先生も著書の中で黒田総裁は山本五十六になるだろう、とおっしゃっていますが、その通りなのかもしれません。