[2276]【連載: GEと東芝は一連托生】リストラ請負人の登場

相田英男 投稿日:2018/02/16 17:25

相田英男です。

空席だった東芝の会長に、新たに車谷暢昭(くるまたにのぶあき)という人物が就任した。元は、東芝のメインバンクの三井住友銀行で、副頭取まで務めあげた方で、次期頭取の有力候補でもあったという。東芝での車谷氏は、会長とCEO(最高経営責任者)を掛け持ちする。綱川氏は社長を続けるものの、CEOからCOO(最高執行責任者)に「降格」する。(CEOの方がCOOよりも格が上である)だから、これからの東芝の事実上のトップは、車谷氏ということになる。

最高経営者を東芝が、外部から招聘するのは、あの土光敏夫(どこうとしお)以来だという。が、技術畑出身だった土光に対し、車谷氏は生粋の銀行員だ。あの時とは事情が全く違う。車谷氏は三井銀行の入社だそうだから、住友ではなく真正の三井派閥だ。つまりは、三井グループ(財閥)が「東芝事件」を、グループ内の重要事項である、とみなした。そして、直接に手を下すためのエージェントを、東芝に送ったという事だ。

今回の人事については、車谷氏自身も三井住友銀行側も「別に思惑などないですよ、成り行きなんですよ」などと、すっとぼけている。が、どう考えても、そんな訳が無いだろう。思惑が大ありだ。

車谷氏は、半導体事業も、ウェスティングハウスも海外に売り渡して、稼ぐ力を失った東芝を、早急に立て直さねばならない。しかし誰が見ても、短時間で東芝に稼げる事業を作るのは難しい。というか、それはほぼ不可能だ。一方で、先にゴールドマンサックスが集めた「物言う株主達」は、当然ながら短時間でのリターンを東芝に要求するだろう。この状況下で、技術を全く知らない車谷会長が打てる手段は、とても少ない。おそらく一つしかない。

東芝にとって、メインバンクも、物言う株主達も納得させ、そして、多くの従業員達の雇用も維持できる方法とは、それはズバリ、GE(ゼネラル・エレクトリック)との合併だ。

実は、合併の必要に迫られているのは、東芝よりもGEの方である。端的に言えば、今のGEにはお金が足りないのだ。おそらくは、それほど日数が経たない内に、GEのフラナリーCEOにより、GEの事業を個別に分社化するスケジュールが発表される。しかし、GEは以前の贅を極めた時代がとうに過ぎ去っており、手持ちのキャッシュが圧倒的に不足している。分社化したところで、各事業会社のそれぞれの台所の裏は、火の車の筈だ。

一方の東芝は、半導体などの有望な事業を全て手放した。しかしその見返りに得たキャッシュにより、4月以降のしばらくの間は、一時的にではあるがかなり潤う状況にある。このキャッシュの使い道が最も重要だ。本来ならば、これを元手に成長する事業を見極めて設備投資に回すべきだ。しかしそうはならない。その前に、東芝はGEと事業統合するだろう。GEが分社する事業会社のそれぞれと、東芝の各事業部が合併する事で、GE側の赤字を東芝のキャッシュが補填するだろう。これが結論だ。

東芝側ではネームバリューがあるGEと、(見かけ上は)対等に合併できるため、投資家の信用が増すのではないか?全ての関係者の間で、Win−Winの関係が成立するのは、おそらくこの方法だけだ。

だから、車谷会長がこれからやる事は、将来の収益に繋がる新規な事業の立ち上げではない。一応やる振りはするだろうが。それよりも、東芝の各事業が直近で、どれだけのキャッシュを作れるかどうかの、地味なリストアップ作業だろう。その情報をフラナリーと共有する事で、お互いの会社間で、合併する事業の組み分け密かに行う。そして、東芝のキャッシュが目減りしない内に、電撃的にGEとの事業の合併を発表し、まとめ上げるだろう。

車谷会長に、三井財閥から(それを背後で操るJPモルガン財閥から)与えられた、真のミッションはGEとの合併だ。「ビリヤード理論」からの結論では、おそらくこうなる。優先されるのは、日本ではなくアメリカ側の事情だからだ。

東芝とGEがくっつくのならば、それはそれで面白い。当然ながら迎え撃つ、日本のメーカー側も対応が必要だ。実は、もう既にやっているようなのだが。そこについては、改めてここに書くだろう。

(引用始め)

2018年2月14日 / 19:08 / 2日前
焦点:東芝CEOに車谷・元三井住友副頭取、モノ言う株主対策とも

[東京 14日 ロイター]
経営再建中の東芝の会長兼CEO(最高経営責任者)に、主力取引行の三井住友銀行元副頭取の車谷暢昭氏が就くことになった。車谷氏は銀行の中枢である経営企画部門が長く、M&A(買収・合併)も熟知する大物バンカー。

<古巣の三井住友銀行もビックリ>
14日に会見した車谷氏は、CEO就任の背景に主力行の三井住友銀行の意向があるのかと問われ、明確に否定した。三井住友銀も車谷氏のトップ就任は「全く聞いていない」(幹部)としており、その他の取引行も「寝耳に水」(首脳)。経営不振企業に、銀行が役員を派遣するケースは珍しくないが、今回はまったく異なる様相を呈している。

車谷氏は旧三井銀行出身で、もともと三井系の東芝とは近しい関係にある。銀行では経営企画が長く、日興証券の買収や英バークレイズへの出資、米シティバンクの日本のリテール事業買収などに携わった。

三井のエースとして将来のトップ候補との呼び声も高かったが、副頭取を最後に自ら探した英投資ファンド、CVCキャピタルの日本法人会長ポストに転じたキャリアを持つ。グループ企業のトップに「天下り」するケースが多い銀行界では、まれな人事として業界の話題をさらった。三井住友銀のある幹部は「プライドも高いが、実力も折り紙つき」と評す。

<モノ言う株主対策の見方も>
就任会見では、綱川智社長兼COO(最高執行責任者)が「二人三脚で東芝の経営に当たる」と説明。車谷CEOが中長期の事業戦略を、綱川COOが業務執行を担当するという。
ただ、取引銀行役員からは、車谷氏起用の狙いについて「モノ言う株主対策ではないか」との声も出る。6000億円の増資で2期連続の債務超過を解消させる東芝だが、その代わりに「モノ言う株主」という火種も抱え込んだ。

引受先の投資家には、エフィッシモ、エリオット、サード・ポイントなどアクティビストと呼ばれる海外大手ヘッジファンドが並ぶ。実際に、香港のアクティビスト・ファンドは同社の半導体子会社売却に異議を申し立てている。

先の役員は「今後、株主対策が重要となる中、車谷氏の金融マーケットに対する知見や人脈が必要とされているのではないか」と話す。

もちろん、期待されるのはそれだけではない。半導体売却と増資で最大の危機を脱しつつあるように見える東芝だが、再建の道のりは長い。「(東芝を)グローバル競争の土俵に復帰させる」と語った車谷氏。メガバンク中枢で磨いた手腕をどのように発揮していくのか、注目される。

布施太郎 編集:田巻一彦

(引用終わり)

相田英男 拝