[2264]東芝の破綻事件は、ゼネラル・エレクトリック(GE)破綻の前座にすぎない

相田英男 投稿日:2018/01/20 20:13

相田英男です。

ブルームバーグに次のような記事が載った。この内容の一部を引用した記事が、朝日新聞にも出たようだ。私は新聞紙を取っていないので、よくわからないが。ついに日本でも、GEの凋落について報道せざるを得なくなった。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-01-17/ge-rout-deepens-as-6-2-billion-charge-reignites-investor-dread

悲惨な状況が続く中で、新社長のジョン・フラナリー(GEの金融セクター出身)は、遂に、とうとう、GEの事業を発電、医療、航空機器などの、部門別に分割する可能性に触れたらしい。カナダで不動産業を営むヒロという方が、ブログでこの状況について書かれていた。非常にわかりやすいので、一部を引用する。

(引用始め)

2018年01月19日 11:26
他人事ではないアメリカ企業の雄、GEの苦境
ヒロ

アメリカ人に知っている会社を10社上げよ、といえば必ず入るであろう会社の一つがゼネラル エレクトリック(GE)でしょう。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、アメリカ人の家庭にはGEの製品が必ず一つや二つあると言われています。

では何の会社かといえば航空機エンジン、医療機器、原発や発電、家庭用電化製品、更に金融もあるコングロマリットであり、アメリカのダウ指標が1896年にできてから一度も外れたことがない唯一の会社という、どう逆立ちしてもアメリカの代表的企業であります。

そのGEはあまりにも多くの著名経営者を輩出してきました。トーマス エジソンが創業し、最近ではジャック ウェルチ(1981-2001)やジェフ イメルト(2001-2017)両氏が経営者としてあまりにも有名で、共に非常に長くトップに君臨してきました。(そのはるか前の経営者もおおむね10-20年前後、長い人は30年もトップに君臨しています。)

さて、その誰でも知っているGEは今、苦境のどん底にあります。それはあれだけ称えられたイメルト前CEOが残した負の遺産の処理があまりにも膨大だからであります。メディアには「GEの解体」のタイトルが躍ります。ただでさえ冴えない業績で配当金を半分にすると発表し、株主の失望感やるせないところにGEキャピタルが手放したはずの保険事業に関し、将来の支払いのための巨額費用を計上せざるを得ないことが「発覚」し、大騒ぎになったことで「GEよ、お前ももうここまでか?」というトーンになっているのだろうと思います。(このシナリオ、東芝とそっくりであります。)

株価はリーマンショック時の一時的下落を除き、1997年並みの水準です。ダウがこれだけ騰勢を強める中、一社足を引っ張っているといっても過言ではないでしょう。それこそGEが普通に成長していたらダウは今頃27000ドルを目指していたかもしれません。

同社の問題はコングロマリット型経営の難しさを物語るものであります。ビジネスの主流が装置産業型で巨額の投資を要するものが多い中で時代の流れに乗りそこなうと全くダメになってしまうリスクを抱えるのであります。イメルト氏が2年ぐらい前に航空機のIoTに先鞭をつけたとインタビューで発言し、強いリーダーシップをとっているようプレゼンしていたのは「カラ元気」だったのでしょうか?

実はGEの苦境を見て東芝の経営の難しさとかなり似ていると感じました。事実、その業務範囲も似ています。東芝は売却という対応を取りました。そしてついに上場維持の確約が取れるところまで落ち着きました。GEも当然、事業の切り売りをすることになるとみていますが解体には至らないはずです。いくら何でもGEもそこまで落ちぶれてはいません。(後略)

http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/archives/52512542.html

(引用終わり)

グローバルに活躍され、広い視野を持たれるるヒロ氏でも、理解が足りないところがある。彼は技術屋ではないので、仕方がないが。東芝の破綻とGEの凋落は、別の話ではなく、一つの繋がった大きな事件だということだ。親会社であるGEの事業が行き詰ったため、その余波を受けて、その子会社の東芝が破綻したのだ。そのシナリオが一緒なのは、会社の系列が同じなのだから、当たり前といえる。

今の私には、「GEがどうしょうも無くなったから、先に東芝を潰して、その金をアメリカに吸い上げているのだ」、という、大きな流れが進む状況が、非常に腑に落ちる。こんな風に東芝問題を理解するのは、日本では私だけなのだろうか?

日経新聞などの日本のマスコミでは、未だに、西田とか、佐々木とか、田中とかの、旧社長連中の判断ミスで東芝が破綻した、という特集記事を載せている。例えばこんな風に。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25584070R10C18A1TJ2000/

日本の経済評論家達は、みんなアホなのだろうか?まあ、アホなのかもしれん、とは思う。九万年前の阿蘇山の噴火を超える規模のカルデラ噴火が、今の日本で起きても、愛媛や広島の市民達が平気で生きていられる、とか、信じられる連中みたいだし。

今一度確認するが、明治の日本に、近代産業を興す際に、大型発電プラントをアメリカのGEから導入することを目的に、「意図的に作られた会社」が東京電力である。そしてGE製の発電装置を、国内でライセンス生産するために「意図的に作られた会社」が、東芝なのだ。どちらも三井財閥直系の中核企業である。だから、GEが傾くと、東電も東芝も、その両方が傾くのだ。最後は、福島原発事故がとどめを刺したのだが。しかし、それ以前の、2008年のサブプライムローン危機の際に、アメリカ政府から13兆円の補助金を受けた段階で、GEは終わっていた。

ジャック・ウェルチが社長時代にやった、金融ビジネスによる製造業へのテコ入れは、やはり禁じ手だった。強烈なドーピングだったのだ。私は、ウェルチの本を90年代に読みながら、「こんなふざけたビジネスが製造業に認められるのか?」という違和感を、強く持っていた。「金融業で得た利益で、ガスタービンを開発するなど、言語道断ではないのか。何が史上最強の経営者だよ!?」という怒りが、抑えられなかった。

今にして、遂に、そのふざけ切った矛盾の全てが、私の目の前で音を立てて瓦解しつつある。「ザマあ見ろよ、今までよくもやってくれたな」という感慨が、私の中に込み上げて来る。「いくら何でもGEもそこまで落ちぶれてはいません。」とヒロ氏は書かれているが、私はそうは思わない。ウェスティングハウスが80年代に瓦解したように、GEも遅ればせながら、跡形もなく瓦解するだろう。強烈なドーピングの副作用は、もはや避けられない。

東芝と東電を道連れにしながら、醜い最後をGEは迎えざるを得ない、と私は考える。反原発主義者の広瀬隆も、あろうことか、GEとそのガスタービンを大層ひいきにしていた。GEを賛美する文章を、広瀬隆は、これまで大量に遺している。「あんたもザマあ見ろだ」と、私は広瀬に言いたい。

相田英男 拝