[2238]解体ショーはさらに続く
相田です。
GEの株価は今日も17ドル台に沈んだままだ。GEは瀕死の状態から抜け出せない状況なのに、性懲りも無く、次のような前向き発表をする。奴らの悪あがきがいつまで続くのやら、じっくり見届けるつもりだ。
(引用始め)
General Electric Sets a Record for Gas Turbine Efficiency, Giving Natural Gas Another Win
「GEのガスタービン、3Dプリントで発電効率の新記録を達成」
MIT technology review
GEは12月4日、HAガスタービンが3Dプリンティング技術の利用によって新記録を樹立したと発表した。発電効率64%という記録は、前回の2016年にGEが達成した公式記録、62.22%を大きく上回った。
数字だけでは大きな差に感じられないかもしれないが、ガスタービン技術では、わずかな熱効率の向上が燃料の大きな節約と動力向上につながる。ガスタービンの熱効率は、一定量の天然ガスを燃焼させたときに取り出せる動力量を示すものだ。GEパワー(GE Power、GEの電力事業部門)の概算では、熱効率の1%の向上は顧客にとって、年間にすると莫大な燃料の節約になる。
このもう一段の熱効率改善につながった大きな要因の1つが、これまで実現不可能だった形状のタービン部品の製作に、金属3Dプリンティング技術を利用したことだった。新しく設計された部品は、燃焼前の燃料と空気の混合比を効率的に調整する。GEはほかにも、ジェット・タービンに3Dプリンティングで製作したノズルを使用したり、最新の金属3Dプリンターの発表したりして、製造ツールとしての3Dプリンティングへの投資が正しかったことを実証している(「直径1メートルの部品も製造可能、GEの新型3D金属プリンター」参照)。
米国では、石炭に代わって天然ガスの消費が増えている。米国における石炭使用量は過去5年間で30%減少している。天然ガスは安価で豊富にあり、石炭業界が対抗するのは難しくなっている(「トランプ政権は、炭鉱労働者の希望と地球の未来を粉砕する」参照)。ガスや液体燃料に対応するGEのようなガスタービンは熱効率がますます高くなっており、石炭に引導を渡すことになるかもしれない。
(引用終わり)
相田です。3Dプリンターについての説明は不要だろう。GEは3Dプリンターによりガスタービン部品を作ることで、効率がアップしたと言い張っている。しかし、3Dプリンターで作れる部品は、ガスタービンの構成部品のほんの一部に過ぎない。最も高温になる初段バケット(ブレード)や、回転ディスクなどの大型部品を、3Dプリンターで作るのは不可能だ。バケットの形はとりあえず作れるだろう。が、耐熱性を高めるために単結晶合金とした初段バケットを、粉末を固めて作れる筈など無い。ハッタリもたいがいにしろよ、と呆れるばかりだ。
よしんば、どれほどガスタービンの効率を高めても、それが売れなければ、結局は何の意味もない。「3Dプリンティングへの投資が正しかったことを実証している」と、GEがいくら吠えても、投資家達は冷ややかだ。彼らもそれほどお人好しではない。
もう一つのGEが売りにしている技術に、IoTシステム(Internet of things、全ての機械をネットに接続して、データを共有・管理する仕組み)の「プレディックス」がある。しかし、こちらも開発費がかさむばかりで、収益に全く貢献しないようだ。たとえ、プレディックスができたところで、データを取るためのガスタービンが売れなければ、絵に描いた餅に過ぎない。金融事業を手放したGEはやはり弱かった。ここまで弱いとは想像しなかったが。
さて、「真の親会社」がふざけたハッタリを振り撒く裏で、その子会社の東芝の解体も着実に進んでいる。先日、東芝の一部上場を維持するため、6千億円もの株の増資が行われた。この時に、増資枠を新たな株主達に仲介したゴールドマン・サックス証券には、200億円もの手数料が東芝から渡るという。何という濡れ手に粟か。こんな事態を、東芝のメインバンクの三井住友やみずほが、文句を言わずに見過ごすことなど、あるのだろうか?そんな金があるなら、まずこっちに返せ、と普通なら東芝に言うのではなかろうか?せめて日本の証券会社に渡して国内に還元させろ、と忠告すべきではないのか?メインバンクであるならば。
真実は、全てはGEと、そのさらにオーナーであるJPモルガンが作った筋書きにより、話が進んでいるということだ。ゴールドマンに渡った手数料や、増資に加わった株主達が得る利益の一部が、GEのリストラ対策に流れることは確実だ。
新たに加わった投資家の中には、「物言う株主達」も数多く含まれているという。彼らの意向により東芝はこれから、バラバラに解体されるだろう、という報道もされている。しかし、東芝をどうばらけさせるのか、その方法と手順は、「物言う株主達」の横槍で変わるのではない。最初からモルガンにより決められている。だから、メディカル部門が最初にキャノンに売られて、半導体事業もアメリカに売られるのだ。残ったインフラ事業の中の、使えると判断される部門だけが、最後にGEに直接吸収されるだろう。そこまで行くだろう。
「不正会計問題」が持ち上がった時から、東芝をどのように分断して、GEにくっつけるのかを、モルガンはきちんと計画して、実行に移している。三井住友銀行のオーナーもモルガンだ。だから東芝のメインバンクも、モルガンの決定には逆らうことが出来ない。そう考えるべきだ。
私は陰謀論者である、東芝問題に関しては。というか、ここまではっきりとした、誰にでもわかる明らかな「陰謀」が、一体どこにあるというのか?こんな大きな一連の流れが、「肩書きコレクター」や「テヘランから来た男」達などの、経営判断誤りだけで決まってしまうことなど、あり得ない。経済評論家などは、アホ連中ばかりだ。
心労が祟ったせいで、西室、西田の当事者である両巨頭が続けて逝去された。死人に口無しではないだろうが、この二人に全責任を負わせる内容が、今でも盛んに主張されている。しかし、それは間違いだ、と私ははっきりと訴えたい。
サラリーマンならば長年の経験から、大企業の頂点の更に上には「奥の院」が存在することが、何となくわかるだろう。日本の国家の奥の院が「横田幕府」であるように。組織の真に重要な決定は「奥の院」で下されて、社長はそれに従うしかないことが、往々にしてあり得る。東芝の奥の院はアメリカにある。西室、西田の悲劇の理由はそこにある。そして、海の向こうで決められたプランに従って、東芝の解体ショーはこれからも続く。
相田英男 拝