[2080]トランプ政権にとって、一番大事なこと。

副島隆彦 投稿日:2017/01/25 09:59

副島隆彦です。 今日は、2017年1月25日です。

 私は、トランプ新政権が、これから何をやって、どういう方向に進み、どういう政治思想で動くのかを、ずっと観察、凝視している。 私はもうすぐ、トランプ政権がどうなるか、どう生き延びるか、への大きな予言、予測を、大きな理論の提起とともに行うだろう。

 私が、注目しているのは、中国とトランプの厳しい外交交渉だ。ロシアのプーチンとは、どうせトランプはすぐにでも会って、米ロの協調体制で動く。 これに、習近平も入ったら、歴史的な、「世界の3巨頭会談 (アメリカ、ロシア、中国、の3大国=3帝国の協調体制)」になる。 それに対して、怒りと憎しみを込めて、この3帝会談の、足をひっぱる、愚劣で醜い勢力の動きも活発になり、彼らもまた世界的な連携をするだろう。ここでこれからの世界の大きな対立構造が決まってくる。

つい、最近まで、「西側(にしがわ。ザ・エスト the West )と呼んで、「俺たち、世界最強の、西側(にしがわ)自由主義陣営、欧米の反共産主義陣営(じんえい)。先進国同盟。ここに日本も所属している」と豪語してきたのに、なんという急激な様(さま)変わりだろう。 今や、欧州同盟EUは、分裂、弱体化に向かう、元気のない 500年間続いた、ヨーロッパ白人さまたち (今は、観光地)に過ぎない。 

 ”EU貴族さまたち”のヨーロッパには、世界を引っ張ってゆく力はない(まだ力があるのはドイツだけだ)。 日本も惨(みじ)めな、「大不況のまま20年」の「落ちこぼれ先進国」だ。 世界中の新興国が、どんどん追いついてきている。 

 だから、私が、じっと鋭く重要視しているのは、「アメリカの 対 中国の貿易赤字(トレイド・デフィシット。経常=けいじょう=赤字)がいくらあるか」である。

(転載貼り付け始め)

  米貿易収支(米商務省) の 統計

U.S. International Trade in Goods and Services

http://www.census.gov/foreign-trade/Press-Release/current_press_release/ft900.pdf

(この資料 ↑ のP17 にある)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。この貿易統計の表からいろいろのことが分かる。 アメリカの、対(たい)中国の 貿易赤字は、一体どれぐらい巨額に膨らんでいるのか? 誰も、明確に議論しようとしない。お金(かね)のことでの、大きな真実を見つめようとしない。一体、どれほどの膨大な、対中国の貿易(経常、けいじょう)赤字をアメリカは、抱えているのか、を、誰も正面から見つめようとしない。アメリカのあの、頭がいいはずの(笑い)一流経済学者たちや、大新聞の記事に書かれたことがない。私の目に触れない。

 これからのトランプ政権にとっての一番、重要な政策は、「米国内に新しい雇用を生み出す。各産業分野の、巨大工場を国内に新しくどんどん、たくさん作って(3年以内に)、ものすごい数で失業している、アメリカ国民をここに雇用をさせる。それから、エネルギーを確保するためにアメリカ周辺の天然ガス、石油を掘りまくる」である。

 ということは、FRBのイエレン議長ババアがこの4年間、ずっと言い続けた、「アメリカの失業率は、5%を切って完全雇用を達成しつつある」は、真っ赤なウソだった、ということだ。イエレンたちは、今から、トランプによって、容赦なく、首を切られる。

トランプの「アメリカに新たな2千万人ぐらいの雇用(国民の就業、就職)を生み出す」という政策大方針は、アメリカ国民の強い願いと合致している。だから、トランプとしては、なによりも、これをやり遂げることだ。このことを、大きな正論(せいろん。正義の言論。 Just opinion ジャスト・オピニオン)として、大きく報道しなければいけないのだ。これを、メディアども(テレビ、新聞)は、やろうとしない。「トランプ憎(にく)し」で、今も、「反トランプ派のデモがすごい」ばっかり報道している。

 あんな、ホモ、おかま、ゲイ、レスビアンどものLBGT(エル・ビー・ジー・ティー)の、「私たちは、より進んだ、進化した人間たちなのよ」の気取り屋どもや、「違法移民(イリーガル・アライバル、illegal alival )
である俺さまを人種差別するのか」の 暴力団の移民ヒスパニック、それと黒人過激派 たち数千人の 破壊活動のデモ なんか、これまでアメリカの主流派メディアは、相手にしないで、報道してこなかった。急に自分たち自身が、ニューヨーカーのホモおかま人間と同類になりつつある。あるいは、その正体をさらし始めたのか。

このホモおかまゲイ、レズビアンと、環境保護派(菜食主義者)と、暴力団化した過激派たちを、「社会的弱者ほど威張っていい」の人間たちを、私、副島隆彦による あの世界(欧米)政治思想の巨大分類の図表では、3’(さん、ダッシュ)の「アニマル・ライツ」animal rights と 呼ぶのである。分かるかな? あ、そうか、とわかったら、あなたは、「副島ワールドの入り口から、半分は、中心のシンデレラ城まで近づいた」ということだ。

 腐り果てた、アメリカのメディアども(それに追随する日本のメディア=テレビ、新聞も)は、トランプへの 憎悪を顕(あらわ)にして、トランプに敗北した自分たちの惨めさと、怨念(おんねん)を剥き出しにしている。

 私がずっと今も調べている、アメリカの貿易赤字は、上に載せた、公式のアメリカ政府の発表の統計数値からも分かる。 アメリカは、一年間に、7010億ドル(2015年)すなわち、79兆円の 貿易赤字を抱えている。この金額は、この20年ぐらい、ずっと増え続けて、ここ数年は同じぐらいだ。 そして、このうち対(たい)中国での ネットの貿易赤字(輸入と輸出の差額)は、3393億ドルだ。 これを今の為替の113円でかけると、34兆円である。

アメリカの外国貿易の、赤字の丁度半分を、中国が生み出している、ということだ。

 年間34兆円を、対(たい)中国で、赤字としてアメリカ合衆国は抱えている。この金額(数字)は、単年度(たんねんど)であり、毎年、毎年、これだけの赤字を、ネット、差し引き、正味の 実需(じつじゅ)実体(じったい)の赤字としてアメリカは抱えている。膨大な金額だと、と言わざるを得ない。これだけに、ダダ漏れの、赤字垂れ流しをやっていたら、出血多量で死んでしまう。

 どうして、誰もこの議論をしないのだ? どうして、この金額を誰も書かないのか? 私、副島隆彦は、どの記事でもみたことがない。
 そんなに中国が嫌いなのか。真実の数字を見たくないのか。アメリカ人にしてみれば、これほどの中国産品の、大洪水のような、アメリカへの怒濤(どとう)の流入は、コワくて正視できないことだ、として、「触らぬ神に祟(たた)りなし」で、誰も書かない。

 ちなみに、日本の 対(たい)アメリカの、今(2015年)の黒字(アメリカから見れば、赤字)は、年に7兆円(623億ドル)である。 ドイツは、日本よりも多くて、対米で8兆円の黒字を貿易収支で生み出している。

今、「国境線に壁を作る」で、騒がれているメキシコは、560億ドルだから、6.3兆ドルだ。 

この問題の秘密は、メキシコ国境沿いに、ものすごい数の工場が、メキシコ側で、作られて操業していて(日系企業もたくさんある)そこの経営者たちは、毎日、アメリカ側から、メキシコに国境線を越えて通っている。そして、「メキシコ製」になった工業製品を、アメリカに無関税(関税なし。これがNAFTA、ナフタだ)で持ち込んでいる。その金額が、正味、差し引きで、6.3兆円なのだ。このことにアメリカ国民が怒っている。

 だから対中国の 毎年、毎年、単年度(たんねんど)で、34兆円もの巨額の貿易赤字を出して、それがたまりに溜まっている。これが、累積=るいせき=額の貿易赤字だ。これが10年なら340兆ドルだ。
 この巨額の貿易赤字(これは経常=けいじょう=赤字、カレント・デフィシット current deficits とほぼ同じ)は、累積したものが、資本収支(しほんしゅうし)と国際収支(こくさいしゅうし)の形で、ものすごい金額になっている。

 だから、トランプは、習近平と、サシで、この「この巨額の貿易赤字を、まず、半分に減らす」外交交渉をせざるを得ないのだ。 この貿易赤字の額の垂れ流し状態こそは、アメリカ国の最大の懸案であり、外交交渉の中心だ。これを、他の議論にすり替えたり、ゴマ化したり、とぼけたりしても無駄だ。

 中国は、「人民元が、今の倍(元高)になっていい。今の元安(げんやす)は、中国が望んだものではない。1ドル=4元 になってもいい。今の1ドル=6.9元は、中国が作ったものではない」「中国は、この10年図と、アメリカから強要され続けたとおり、元高に向かって努力してきた。それを何だよ。何がドル高政策、強いドルがいいだ。馬鹿」と考えている。 

 だから、トランプの真意は、「もうこれ以上の、ドル高=強いドル はいらない。アメリカは、実需=貿易を伸ばして、アメリカ国民を食べさせなければいけない。もうこれまでのような、腐った、博奕(ばくち)打ちどもの、金融バクチ、金融取引で、もうけを出す、という考えは、捨てる。実物経済(タンジブル・エコノミー)、実体経済(リアル・ウェルス・エコノミー)重視だ」となる。

 だから、これからは日本円との関係でも、ドル安、円高(えんだか)になってゆくのだ。1ドル100円 割れになってゆく。どうせこうなる。だから、中国とのトランプの激しい交渉で、大きくは、トランプは経営者、ビジネスマン、だから、「分かった。分かった。中国よ、貿易赤字が半分に減るなら、それなら、台湾は、渡す。 それから、西太平洋(ウエスト・パック)の支配権、管理権も、中国に渡そう」という 、大きな交渉になるだろう。第二列島線( 第一列島線=日本列島 の線 は、すでに突破された)まで、中国の支配下にはいってゆく時代が来たのだ。 

 この第二列島線の内側に、当然、日本も韓国も、台湾も、フィリピンも入ってしまう。ちがいますか?

 この厳しい現実を、見たくない、見たくない、何が何でも、見たくない、という人たちは、今のまま、自分の 愚かな、足りない、世界が見えない、ちいさな脳(思考力)のまま生きているがいい。私の知ったことか。

ああ、時間が無くなった。
 以下に載せるのは、トランプが、次の FBI長官を、あの、ジェイムズ・コーミー(コウミー)長官に、続投させる、というNYタイムズの記事だ。 遂に出た。これで、今から着着と、ヒラリーを逮捕、裁判にかけて(米議会が)有罪として投獄する手続きが始まる。

(転載貼り付け始め)

Trump Is Said to Keep James Comey as F.B.I. Director JAN. 24, 2017 NYT

https://www.nytimes.com/2017/01/24/us/politics/trump-comey-fbi-director-.html

  The F.B.I. director, James B. Comey, told his top agents from around the country that he had been asked by President Trump to stay on the job running the federal government’s top law enforcement agency, according to people familiar with the matter.

A decision to retain Mr. Comey would spare the president another potentially bruising confirmation battle. It also would keep Mr. Comey at the center of the F.B.I.’s investigation into several Trump associates and their potential ties with the Russian government. (以下、略)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。このように事態は、進んでゆくのだ。

 さて、以下の記事は、アメリカの重要な映画監督である、オリバー・ストーン監督の、最新作「スノーデン」 “SNODEN” についてのインタビュー記事だ。日本でも、あさって、1月27日から公開されるそうだ。 もう多くは書けなくなった。

 以下のオリバー・ストーン監督への、朝日新聞のインタヴュー記事は、この末尾にあるとおり、「「聞き手・藤えりか」となっていて、この女性がインタヴューしたことが分かる。
 そのために、記事の文体が、どうもなよなよした、女性的な文になって、粗野な本物のアメリカ白人男である(彼の精神と神経は極めて繊細。ずば抜けた頭をしている)ストーン監督らしくないので、私は、これが気になったので、文体(ぶんたい)を、私、副島隆彦が勝手に書き換えた。元の新聞記事を読みたい人は、以下のURLをクリックして再度、読んで下さい。 副島隆彦 記

(転載貼り付け始め)

●「(インタビュー)トランプ政権への期待 映画監督、オリバー・ストーンさん」

2017年1月24日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/DA3S12761842.html

 過激な言動で物議を醸(かも)すドナルド・トランプ氏が超大国のトップに就いた。政権批判の映画を世に出し続けてきた米アカデミー賞監督が「トランプ大統領は・・・・で、素晴らしい」と高い「評価」をしている。オリバー・ストーン監督に、真意を聞いた。

 ――あなたは、米大統領選の結果はショックだった、と米メディアに語っていましたが、ツイッターで「トランプを良い方向にとらえよう」と書きました。

 「ヒラリー・クリントン氏が勝ったら危険だな、と、私は感じていた。彼女は本来の意味でのリベラルではない。ヒラリーは、米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよい、と信じている女だ。ロシアを敵視し、非常に攻撃的だ。彼女が大統領になっていたら、世界中で戦争や爆撃が増え、アメリカは軍事費の浪費に陥っていただろう。第3次大戦の可能性さえあった」

 「米国はこうした政策を変える必要がある。トランプは『アメリカ・ ファースト(副島隆彦注記。アメリカは国内問題を優先すべきだ。外国への関与は、セカンダリー=2のつぎ=だ、という思想)』を掲げるから(副島隆彦注記。トランプは、アイソレイショニストだから)、他国の悪をやっつけに行こう、などとは言わない。(このことで)妙なことになったと考える人たちがいるだろう。が、この結果、トランプの登場は、アメリカはこれまでのグローバリズム(世界支配主義)の政策を大きく変えるべきだ、と考える人たちに近づいた」

 ――あなたは、トランプ政権下で、米国の介入主義(インターベンショニズム。外国の政治に干渉すること)は終わりを迎えると?

 「そうだ。米軍を外国から撤退させて、他国への介入主義が弱まり、米国は自国の経済を動かし機能させ、インフラを改善させる、とトランプは言っている。これならすばらしいことだ。これまで米国は、自国経済、自分の国内問題にまじめに対処せずに、国民の多くが貧困層になった。自国民を大事にして来なかった。ある面では自由放任主義だ。そうなのか、と思えば、別の面では(副島隆彦注記。役人たちによる)いろいろの規制が過剰にある。トランプは、そう指摘しており、この点でも私は彼に賛成だ」

 ー トランプ氏は、ちょっと普通の人の頭では理解できないことを、はっきり言いますよね。

 「 一気にものすごい量で(失業している人たちのために)雇用を増やす、なんて、どうやって成し遂げられるのか、私にはわからない。だが、彼のこの政策宣言が、ものすごい誇張だとしても、私たち米国民は、そこからよい部分を見つけなければ。少なくとも今の米国に必要な、斬新なスタイルだ」

 「トランプは、イラク戦争(副島隆彦注記。2003年から2012年まで)は、膨大な資産の無駄だった、と明確に語っている。正しい意見だ。 第2次大戦以降、すべての戦争がそうだった。ベトナム戦争(副島隆彦注記。1967年から1975年)は、とてつもない無駄だった。ところが、大手メディアは明らかにトランプのやろうとしていることを妨害したがっている。( 副島隆彦注記。アメリカの大手メディは、グローバリストの手先だ) 私は彼らには反対だ。トランプが、プラスの変化を起こせるように皆で応援すべきだ」

 ――あなたのいうトランプ政権によるプラスの変化とは?

 「例えば ロシアや中国、中東、とりわけIS(過激派組織「イスラム国」)への新政策だ。トランプは、テロと戦うために、ロシアのプーチン大統領と協調する、と発言しており、これは正しい考えだ」

 ―― ロシアが米国にサイバー攻撃した、とされる(副島隆彦注記。自分たちが辞任する直前までの執拗な、CIAの副長官たちの)発表に対して、監督は疑義を呈していますね。

 「 米国の情報機関について、私は極めて懐疑的だ。米中央情報局(CIA)は 、長年、多くの間違いを犯してきた。キューバのピッグス湾事件(1963年)やベトナム戦争、イラクの大量破壊兵器問題などだ。米国は、世界をコントロール(支配)したがり、他国 の主権( 副島隆彦注記。 sovreignty ソブリーンティ)を認めたがらず、多くの国家(の政府)を転覆させてきた。この国家情報機関のやってきたことを、はっきりと批判し、貶(けな)しているトランプに、私は賛成だ。

 だが、そうした問題は、米国の社会では広く語られない( 副島隆彦注記。アメリカ国民の多くは、アメリカの国家情報機関が、世界中で、他国で行ってきた違法な破壊活動や、指導者殺しや、政権転覆に対して、「我れ関せず」で知らん顔をする )。 トランプのCIAなどへの厳しい発言は、これまでの米国のリーダー層が取ってきた態度とは反対の立場となるからだ」

 ―― リベラル派が多いハリウッドは反トランプ氏が目立ちます。

 「そのリベラルと呼ばれてきた人たちが、ものすごい他国への介入主義者(インターベンショニズム、interventionism )と化しているんだよ。ずっと自分はリベラルだ、と言われてきた(そして本人もそう思っている)ヒラリー・クリントンをみればわかる。米民主党(デモクラット)は、中道右派となってしまっていて、左派(レフト left 、左翼、急進リベラル派)を真に代表していない。

 ――監督。あなたが、米政府による個人情報の大量監視を暴露したCIAの元職員のエドワード・スノーデン氏を描いた新作の映画「スノーデン」を撮ったのはなぜですか。

(副島隆彦注記。 この映画「スノーデン」 “SNODEN”は、日本でも、1月27日から公開される。上映映画館は、極めて限られているだろう)

 「私は、いつも時代に合わせて映画をつくってきた。2013年に、スノーデンのアメリカの情報機関がやってきた違法な活動を暴露したことを知り、衝撃を受けた。米国は監視国家だ、という疑いが真実であり、証拠を伴った確信のものとなった。スノーデンの弁護士の招きで、私はモスクワに行って、以来、彼とは9回会って話を聞いた」

 「この映画は、スノーデンの証言に基づいてつくった。彼が、2009年に、(副島隆彦注記。日本の東京の)横田(よこた)基地内で(1年半)勤務していた時、日本国民を監視したがった米国 が、日本側に協力(するよう求められた、が)を断られた。しかし米国は監視を実行した、とする場面も。私は描いた。スノーデンは、米国は、日本が米国の利益に背いて同盟国でなくなった場合に備えて、日本のインフラに悪意のあるソフトウェアを仕込んだ、とも述懐している。これは他国に対する戦争行為だ。

 これは、あくまで彼が私に語った話であり、確認をとろうにも、私が、米国家安全保障局(NSA、エヌ・エス・エイ)側に連絡しても、彼らと話すことは認められなかった。

 私は経験上、スノーデンは事実を話していると思う。 米情報機関はこの映画の内容を否定するだろう。米大手メディアもこの問題には取り合わない。だが、本当は、彼らは、そういう態度をやめるべきで、まじめにこのことをジャーナリストとして考えるべきだ」

 ――米議会は昨年(2016年)、スノーデン氏が、ロシアの情報機関と接触しているとの報告書を出しました。

 「あの米議会の報告書はまったくのたわ言だ。スノーデンには、そういうことをする動機が見当たらない。彼は、米国の情報活動が、米国の安全保障に役立つ形で改善されることを願っている。彼はまずジャーナリストたちに情報を提供した。そして、今も表に出て、理想主義的な発言を続けている。この態度は、いわゆるスパイがやることではないでしょう」

 「スノーデンがモスクワに着いた時(2013年6月)、そこを経由するだけであって、ロシアに滞在するためではなかった。モスクワの空港で、ロシアの情報機関の職員から『私たちに出せる情報はないか』と言われ、『ノー』と答えたそうだ。彼はロシアから出国したがった。南米諸国(副島隆彦注記。おそらくパラグアイとか、ボリビアとか)から受け入れの申し出があった。しかし自分に米政府の手がおよび、自分の安全が確保できそうになかった。結果として、ロシアが最も安全だとなったのだ」

 ――大統領に就任したら、トランプ氏は、CIAの影響で、反ロシアに態度を変えるかもしれないと懸念されていますね。

 「彼がそうなる可能性はある。でもトランプ氏はビジネスマンだ。貿易を好む限り、ビジネスマンは戦争をよしとしない」

 ――トランプ政権下でスノーデン氏はどうなるでしょう。

 「トランプは、スノーデンを非難した(副島隆彦注記。情報機関の職員が国家情報をたくさん持ち出したことで)。しかし、大統領に就任後、米国の情報機関がいかに堕落しているかを調べて、知れば、違った感情を持つようになるのではないか。

 ニクソン元大統領は(1971年に)訪中した。レーガン元大統領は(1986年に)ゴルバチョフ旧ソ連書記 長と会談した。トランプ大統領も変わり得る。彼が情報機関の本質を知るにつれ、内部告発者(ホイッスルブロウアー)寄りになっていく可能性はある。

 (ジュリアン・アサンジの)ウィキリークスに情報を提供したマニング上等兵(副島隆彦注記。25年の懲役刑だった)も、最近、(オバマ大統領の辞任前の一斉の恩赦=アムネスティ=で)減刑された。スノーデン氏にもいずれ寛大な措置がなされることを願っている」

 ――あなたは、映画「スノーデン」の制作にあたっては、米国内からは出資が一切得られなかったそうですね。

 「米国のどの映画スタジオからも断られた。資金集めは大変だった。彼らの多くは政府と関係があり、政府の何かの怒りを買うことを恐れて自己規制したのだと思う。この映画の制作にはとても困難を伴った。それでも、なんとか配給(はいきゅう)会社は見つかったが、小さな会社だ」

 ――かつて、監督は、映画「JFK」などで、米大手スタジオ「ワーナー・ブラザース」とよく連携していましたね。

 「今回は、ワーナーにも断られた。米国がテロとの戦いを宣告した2001年以降、米国に批判的な映画をつくるのが難しくなった。そうした映画がどんどん減っている。米軍が過剰に支持・称賛されたり、CIAがヒーローに仕立てられたりする映画やテレビ・シリーズが目立つ。非常に腹立たしいことだ」

 ――今回は、どうやって資金を集めたのですか。

 「少額資金をかき集めながら悪戦苦闘した。フランスとドイツからの出資が支えとなった。欧州議会が、「EU加盟国にスノーデン氏の保護を求める決議」をするなど、欧州は彼に耳を傾けている。2度の大戦を経た欧州は、国家による監視を好まない。その危険性も理解している。英国は例外だが(笑)」

 ――そうした状況下、あなたは今後も映画制作を続けられますか。

 「先のことはわからない。今は私は、プーチン・ロシア大統領についてのドキュメンタリー映画を仕上げている。だが、商業映画としてはこの『スノーデン』が私の最後の作品になるかもしれないね。米国では映画制作への協力を得にくくなっている。仮につくるとしても、たぶん国外で制作することになるだろう」

 ――トランプ氏は、彼を批判した俳優メリル・ストリープをツイッターで罵倒しました。今後、米映画業界は萎縮(いしゅく)していくのでしょうか。

 「そうなるかもね。ただ、私はハリウッドの政治とは一線を画している。時に嫌われることもあるが、これまで同様、私は発言し続ける」  

(聞き手・藤えりか)

 Oliver Stone 1946年生まれ。従軍したベトナム戦争を題材 にした「プラトーン(副島隆彦注記。本当は、platoon で、プラツーン。一個小隊、14人ぐらい)」 、「7月4日に生まれて」でアカデミー監督賞。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦 拝