[2068]日本は核燃料サイクルを続けるだろう

相田英男 投稿日:2016/12/17 14:33

相田です。

最近はゴジラと音楽のサブカル話ばかりで、本業(?)の原子力の投稿をしてません。例の話のまとめとなる第5章は、半分位で中断していますが、私が書かない間に何故かいつも色々な話題が提供されてしまいます。まずは以下の田原総一郎の話をご覧ください。その後で、高速増殖炉開発について、私が思う処をざっくばらんに書きます。

(引用始め)

これでいいのか!非公開で「もんじゅ」後継炉の開発が決められていた!!
田原総一郎 2016年12月12日

僕は、ほんとうに腹を立てている。高速増殖原型炉「もんじゅ」のことだ。つい2カ月ほど前、僕はメルマガで、「お粗末すぎた『もんじゅ』の運営は、日本の原子力問題の象徴だ」と書いた。今でも強くそう思っている。

高速増殖炉では、燃やした「燃料」、すなわちプルトニウムを再処理し、ふたたび原発の燃料として使用できる。だから、当初は「夢の原子炉」と呼ばれた。研究開発用の原型炉が「もんじゅ」だ。しかし、その開発の経緯は、お粗末としか言いようがない。

1995年にナトリウム漏れ事故が発生。しかも、当時、運営母体であった動燃は事故を隠ぺいしていた。その後、もんじゅは運転を休止、2010年に試運転を開始したが、今度は部品が落下し、またもや運転を止めた。2012年には機器の点検漏れが9679個あったことが発覚した。

約1兆円もの国費を投じながら、まさに、失態続きだった。これでは廃炉は当然だろう。ところが、である。政府は国民に今後を問うどころか、11月30日の非公開の会議で、「もんじゅ」の後継となる、高速実証炉の開発方針を示したのだ。

この実証炉は、「もんじゅ」のようにプルトニウムの増殖はない。だが、原理は同じだ。つまり、原型炉で失敗しておきながら、実証炉を造るというのだ。なんという無責任さなのだろう。しかも国民に何の説明もない。

その会議の出席者は、経済産業相、文部科学相、電気事業連合会、三菱重工業、そして「もんじゅ」の運営にあたる日本原子力研究開発機構だ。政治家と役人と身内同然の企業だけ、と言ってもいい。

以前にも書いたことだが、僕は原発に対して、完全に「ノー」という立場ではない。東京電力、経済産業省はもちろん、主なメーカーや学者にもたくさん会い、これまで取材を重ねてきた。だから、頭ごなしに技術を否定するわけではない。しかし、「原子力ムラ」と呼ばれる、閉鎖的な組織の在り方の問題性を、取材を通して僕は非常に強く感じた。

だからこそ言いたい。今回の、実証炉の開発を決めたようなやり方をするから、国民は原子力全体に不信感を持つのだ、と。「福島の教訓」は、まったく生かされていない、と僕は憤っているのだ。れてはいけないと思うのである。

(引用終り)

相田です。上の話を読んでのコメントです。

①高速増殖炉はナトリウムの冷却材が必要なため、実用化は困難だと盛んに主張されるが、実はナトリウムを扱うための基本技術は、とうの昔に日本で確立されている。その装置は1978年から茨城県大洗(海水浴場で有名。最近では、女子高生が部活で戦車に乗って相手校と砲撃戦を行うという、奇天烈なTVアニメの舞台にされたことで、オタクの聖地にもなっているらしい)で稼働している実験炉の「常陽(じょうよう)」である。常陽の熱出力はもんじゅの五分の一と小さいが、ナトリウムの冷却ループを使った高速炉としての運転を20年以上問題なく続けている。最近は補助装置の故障で停止しているが、修理できれば元のように運転が可能である。この常陽の知見を生かして作られたのが原型炉のもんじゅと言われているが、本当は実はそうでは無い。ここが肝心な所であるが後で説明する。

②日本の高速炉開発は、原研(旧日本原子力研究所)の設立当初から、中心課題となる「国産動力炉開発」の一環として始まったが、最初はあまり重要視されていなかった。第一次南極越冬隊長として名を馳せたカリスマ技術者の西堀栄三部(にしほりえいざぶろう)が、南極から戻り原研理事として赴任した以降は、西堀の発案による半均質炉(はんきんしつろ)が国産動力炉の第一候補とされ、原研の予算と人員多くが半均質炉の開発に投入された。高速炉の開発はその脇で、数人の担当者により細々と続けられたという。しかし期待の半均質炉は、西堀の開発方針が二転三転したことなどから、開発メンバー間の求心力が失われてしまい、菊池理事長の時代に開発が中心される。原研労組のストライキ問題に加えて、中心テーマだった国産動力炉開発も失敗したために、原研の評価が著しく下がったことが菊池理事長の辞任を招いたのだった。

③高速炉の開発は原研でも相当に困難と考えられていたが、菊池理事長の時代には、液体ナトリウム中の臨界実験が可能な試験装置(FCA)の予算が認可されて、開発が加速されていた。その時の高速炉開発の中心メンバーとして活躍したのは、大阪大学理学部で菊池正士と伏見康治(ふしみこうじ)の指導をうけた、物理学者の能澤正雄(のざわまさお)氏であった。菊池の次に原研理事長に赴任した丹羽周夫(にわちかお、三菱造船元社長)は、名誉挽回のため高速炉開発を原研の最重要課題に設定し、能澤氏はその開発責任者として活躍する。能澤氏の取り纏めにより、1967年に原研の高速炉開発グループは、200枚以上の第二次設計図面を完成させ、その図面に基づいて作られた装置が常陽だった。

④能澤氏は 西堀栄三部が失敗した半均質炉よりも、技術的ハードルが高いと予想されていた高速炉の開発を、見事に成功させた非常に優れた技術者だった。大阪大学での研究に壁を感じていた能澤氏に、原研への入所の根回しをしたのは伏見康治だった。伏見は工学的センスに優れた能澤氏の才能に目を付けて、師である理事長の菊池をサポートするために、能澤氏を原研に送り込んだのだろう。伏見の見立て通りに能澤氏は原研で見事な成果を上げたものの、その時に菊池は既に理事長の座を追われていた。

⑤しかし原研がせっかく仕上げた常陽の設計図は、同時期に設立された新たな特殊法人の動力炉・核燃料サイクル事業団(動燃)に全て引き渡され、建設と運用も全て動燃の業績にされてしまう。左翼の集まりである原研には、超重要プロジェクトの高速増殖炉の開発は任せられないという、体制側の怒りによる判断だった。引き続き動燃ではもんじゅの設計が始まっまったものの、能澤氏を始めとする原研で常陽の設計を担当した技術者たちは、もんじゅの設計に加わることは無かった。動燃から技術的なアドバイス求められることも、殆ど無かったらしい。

⑥能澤氏によると、もんじゅの設計には常陽に比べて危なっかしい処が幾つもあったという。結果的にそれらの箇所の多くが、完成後にトラブルを起こす事になった。ナトリウム漏れ事故の起点となった温度計のさや管以外にも、基礎設計段階で数多くの問題がもんじゅには存在したらしい。そもそもが、左翼だろうが統一協会だろうが、きちんと考えて作った装置であれば、早々に壊れるものでは無いのだ。もんじゅがいわくつきの装置である事実は、体制側も重々承知だったのだろう。これ以上ダメな装置に税金(1兆円以上?)を投入するよりも、同じ金で新しくちゃんとしたのを作ってしまえ、というのが、今回の「実証炉」建設の動機だろう。

⑦今回の実証炉は、もんじゅのような国内メーカー各社が分担してつくるのではなく、三菱重工が単独で作るという。三菱は20年位前からもんじゅの後継機の製造準備をしていたことは、業界では誰でも知る事実だ。設計も三菱ではほぼ出来上がっているのだろう。日立や東芝よりも三菱は意気込みが違う。本来ならば、三菱はウエスティングハウスと連携して、新型軽水炉のAP1000を世界中に売りまくる予定だったが、東芝とそれを影であやつるGEの策略により阻止された。その後も新たな原子炉の受注も無く、製造技術が衰えてゆくのが三菱は不安なのだろう。三菱のために多額の税金を払う事には疑問もあるだろうが、アレバのEPRの無様な状況を見ると、製造能力の劣化が深刻な事態を招くことが誰しも理解出来るだろう。今回の実証炉の建設には、常陽の成果ともんじゅの失敗からの知見が十分に反映されるのだろう。多分ええ加減なものを作ることはない筈だ。そうでないと、三菱自体が終わってしまう。ちなみに中国では今、めちゃめちゃ原発が建設されているため、現場の製造能力は日本を既に越えている。日本製鋼所の圧力容器だけは例外だが。「華龍一号」も多分ハリボテ原発ではない。日本で原発が作れなくなったら、別に中国から「華龍一号」を買えばいいのだが、流石にそれでは・・・

⑧日本では核燃料サイクルは破綻したと誰もが主張するが、私はそうは思わない。プルトニウムを抽出しなくても、軽水炉の使用済ウランを使って発電することは理論的には可能だ。それにはキャンドル炉を使えばよい。キャンドル炉とは、東工大教授を先日退官した関本博(せきもとひろし)氏が長年掛けて研究している原子炉であり、ビル・ゲイツがスポンサーとなり開発している、テラパワー社の進行波炉(しんこうはろ)と同じタイプの装置だ。テラパワーは関本氏の論文を重要視しており、関本氏から多くのアドバイスも受けている。進行波炉には軽水炉のようなメルトダウンが原理上存在しない。それでいて、天然ウランや使用済ウランによる核反応が可能で、50パーセント以上のウランを燃料として用いることが、進行波炉では可能になるいう。軽水炉の場合、燃料として使えるウラン235は天然ウラン中にわずか0.3%しか含まれていないため、ウランのほとんどが「核のゴミ」と化してしまうが、キャンドル炉ならば 、軽水炉よりはるかに多くのウランが有効に使えるのだ。それもメルトダウンする事もなく。

⑨アメリカには金が無いので、テラパワーは中国と進行波炉の開発進めている。既にテスト装置は完成しているらしいが、発電に使うにはまだまだコストが高いらしい。そうだろうな、とは思う。今すぐでなくても、別に100年後位に装置が完成すれば良い。その間に日本では、軽水炉の使用済ウランを進行波炉用にリサイクルする技術ができれば、その後の数千年以上はエネルギーの不安から解放されるだろう。そんな未来は左翼ジジイ達には耐えられないだろうが、どうせそうならざるを得ない、と私は考えている。だから私は、今の原発の状況を別に心配はしていない。うるさいジジイ達は心に不安を抱えたまま、さっさとあの世に逝って貰いたいと切に願う。

⑩キャンドル炉がそんなに素晴らしい方式ならば、なぜ日本政府はキャンドルではなく、もんじゅ型の高速炉にこだわるのだろうか?その理由は簡単で、進行波炉は運転する際にプルトニウムを必要としないからだ。プルトニウムを抽出せずとも、使用済ウランから直接、高速中性子による核反応を起こせてしまうことが、キャンドル炉は凄いのだ。これが日本政府には恐ろしい。中国や北朝鮮に対する脅しのために、プルトニウムを合法的に所有する理由が日本に無くなってしまうからだ。せっかく長年掛けてアメリカを説得し続けて手に入れた、プルトニウムを持つ権利を自分から捨てますなどとは、まだまだ言えないのだろう。だから今回の「高速実証炉」が、どうしても必要なのだ。

この際だからプルトニウム無しの高速炉の開発に日本は舵を切ります、と堂々と宣言してたらどうか、という気もするが、プルトニウムを捨てると不安で仕方がない根性無しのポチ右翼達からの反発もあったりして、政府も難しいのだろう。私は個人的には、東アジアの幸せのためには、北朝鮮と韓国がさっさと合併して大国となって安定化することが大事である、と思っている。お互いつまらんツッパリは止めて、楽しく暮らした方がいいじゃん、日本も含めてさ、プルトニウムもさっさと捨てて仕舞えば良い、ついでに中国の水爆も一緒に、と、本心では切に願っている。

何だか話に脈絡が無くなってきたので、これで止める。実は他にも、日本で原発の開発を続けなければいけない切実な理由があると、自分には思えるのだが、ますます荒唐無稽な内容になるので、次回に回す。

相田英男 拝