[2032]副島隆彦氏の米大統領選に関する近著2冊関する書評2/2

三毛猫かぐら 投稿日:2016/11/02 12:10

副島隆彦氏の米大統領選に関する近著2冊関する書評 

 ”トランプ大統領とアメリカの真実”に続き、ヒラリー・クリントンを題材にした米大統領選シリーズ第二弾、”Lock Her Up ! ヒラリーを逮捕、投獄せよ“が発売された。そのセンセーショナルなタイトルと正気を逸した表情のヒラリーが載ったどぎつい表紙に一瞬手に取るのをためらったが、購入して一気呵成に読了した。

史上最低の大統領選とマスコミが繰り返し揶揄する今回の米大統領選について、著者はその慧眼をもって、マネーを支配する米支配者層の代表ヒラリー・クリントンとグラスルーツ運動に支えられたポピュリズムの代表ドナルド・トランプとの乾坤一擲の戦いであることを一連の著書で浮き彫りにする。

また、ヒラリー候補が抱えるEメールスキャンダルが、我々の想像する単なる公務における私的メール使用などという生易しいものではなく、現職大統領をも巻き込んだ、米国司法制度の根幹を揺るがしかねない一大政治スキャンダルであることの核心を突く。

米国では既に国家機密にも指定されたヒラリーメールの概要を日本で知るには、本書を手にする以外にない。
情報の非対称性と言葉の壁という2つのハンディキャップに苦しむ我々日本国民が、米国大統領選という大舞台で繰り広げられる壮大な政治劇を楽しむためのガイドブックとして。また、やがてこの米大統領選の帰結を受け日本へ及ぶであろう影響を読み解く上で必読の2冊と言える。

前著、”トランプ大統領とアメリカの真実”では、一介の不動産業者に過ぎないトランプ氏が大統領候補にまで台頭する過程を、ポピュリズム、リバータリアニズムといった基本的米政治用語の定義を押さえながら米国政治思想の流れを背景に当該分野の本邦第一人者である著者が緻密な筆使いで解説する久々に読み応えのある1冊であった。

ことにセンサスデータを基に著者が独自に作成したという米国の人種構成とその推移に関する2枚の図表は今回の大統領選を読み解く上で重要な資料と成り得る。
最新の海外事情に精通しているのみならず、こういう当たり前の事実を怠ることなく自らの手で検証し、積み上げ、独自の理論を展開して行く姿勢が著者の真に優れたところである。

最新刊となる”Lock Her Up !”ではヒラリー候補の抱える巨大な闇、Eメールスキャンダルの真相とベンガジ事件について、クロノロジーの手法を用いて余すことなく語られている。
ヒラリーメールについてはマスコミでも度々取り上げられてきたが、いずれも焦点のぼやけた断片的な報道で、その真相をつかむことができなかった。さらに、華々しいトランプ候補の女性スキャンダル報道とういノイズによりかき消されてきたヒラリーEメールスキャンダルの全貌を今やっと理解することができた。

また、挿入写真として用いられているポートレートの1枚1枚が、人物の本質を目ざとく捉えており、本書を視覚的にも見ごたえのあるものとしている。
殺人に向かう傭兵達と一緒に喜々とした表情のヒラリー!
茫然としたうつろな表情で実年齢より遥かに老けて見えるヒラリー!
目をひんむき驚きとも恐怖とも言えない正気を逸した表情のヒラリー!
いずれもヒラリー候補の真の姿を実によく捉えている。

さらに著者は2016年9月時点での情報を基に、トランプ大統領の誕生に確信深め、ついには選挙戦中にヒラリー候補が病魔に倒れ、逮捕拘束されることを大胆にも予測する。その様を記した箇所を中心に本書は読み物としてもまた楽しむことができる。ストーリーテラーでもある著者の面目躍如といったところか。

しかしながら著者がヒラリー候補の病状評価と予後予測について語るくだりについてはいささか詰めの甘さを感じた。
百聞は一見にしかずと、”ヒラリー・クリントンの奇行まとめ”と題したYuTube動画を見たところ、これが米大統領候補の姿かと、あまりの酷さに我が目を疑った。一見の価値ありである。

動画が悪意を持って故意に修正されたものでないならば、ヒラリー候補は明らかにinsaneであり、何らかの精神神経疾患を患っているのは疑う余地がないと思われた。動画ではヒラリー候補の病状諸説が挙げられているが、多くは単なる状態像を説明しているに過ぎず、想定される疾患もその論拠に乏しい。
現在のところヒラリー候補の病状を最も有力な診断仮説と思われるのは、トランプ候補のdrug abuse説である。

10月15日にニューハンプシャー・ポーツマスで開催された集会においてトランプ候補はヒラリー候補の薬物使用疑惑と薬物検査の必要性について述べている。

また先の動画では、ビル・クリントン政権時代のホワイトハウスで興奮したヒラリーを落ち着かせるためにchill pills(鎮静剤)を使用していたという報告が興味を引く。ファーストレディー時代に使用した鎮静剤を契機にヒラリー候補は神経刺激薬(psycho stymulant)の乱用にまでステップアップしていったのかもしれない。

実際に診察もしていない人物の診断を下すということは憚られることであるが、神経刺激薬の常用による副作用と一過性脳虚血発作(TIA)の合併というのが今のところヒラリー候補に見られる多彩な症状から服薬動機までを、最も合理的に説明可能な診断仮説と思われる。

そしてその時期については大統領選後にずれ込む可能性も高いが、ヒラリー候補は著者の予想通り、麻痺や重篤な機能障害の残る回復不可能な脳梗塞や心臓発作に倒れるであろう。

米国では、日本で覚醒剤として違法薬剤に指定され、使用が禁止されているアンフェタミン(アデロール®)がADHDの治療薬として合法的に入手可能である。

一般に米国人エリートはストレス軽減に大麻やオピウムなどを好む傾向があると言われ、先日もトヨタの米国人女性役員が麻薬性鎮痛剤オキシコドンの密輸を理由に辞任したのは記憶に新しいところであるが、現在のヒラリー候補が必要とし実際に使用しているのは神経刺激薬だろう。

そういえば郵政選挙で小泉純一郎氏が行った名演説の際、日本で合法的に入手可能な準覚醒剤であるメチルフェニデート(リタリン®)を服用したと著者が何かの本に記していたのを思い出した。

これからの時代はアスリート同様、政治指導者もまたドーピングチェックが必要な時代となるのかもしれない。

繰り返しとなるが、著者の予測通り、ヒラリー候補は早晩病に倒れ、やがては罪に問われるのであろう。しかしながら、著者自身が述べている様に著者とて神や預言者ではない。その正確な時期までを言い当てるのは極めて難しい。
また、今回の大統領選の結果次第で著者は厳しい批判を受けるであろう。

こうした状況下においても、言論人としておのれの保身を顧みず、自身の言に姑息な保険をかけることなく、今回の米大統領選の帰結を旗幟鮮明とする著者の姿勢は素晴らしく、また切なさを感じる。

果たして著者の予言が成就するか、私はただ固唾をのんで見守っている。

残すところあと1週間余りと米大統領選はいよいよ終盤にさしかかるなか、先日オクトーバー・サプライズがさく裂した。

一方、著者の予想とは裏腹に2016年11月1日現在、マネーの支配者達の喧伝機関と化したマスコミは依然として怪しげな世論調査を論拠にヒラリー優勢を伝え続けている。

そしてトランプ候補が心配する不正選挙が実行されるのならば米史上初の女性大統領が誕生し、これがあたかも順当な結末であったかのようにマスコミは報ずるのだろう。

しかしそのとき我々は多くの米国人と一緒にマネーの支配者達によって米国の民主主義が捻じ曲げられるまさにその瞬間を目撃することとなる。

果たしてその時、トランプ候補はかつてのニクソンやゴア同様、おとなしくこの結果に忍従するのだろうか?
また、閉塞した社会の変革を求めてトランプ候補を支持した多くの物言わぬ、いや物言えぬ米国民はいったいどういう行動をとるのだろうか?
私は知りたい。

それが「アメリカのトランプ時代の幕開け」というタイトルになろうが、「ヒラリー大統領の末路」というタイトルになろうが、この米大統領選の帰結を記した著者の手による第3部を早く読みたい。

最後に、日本の言論界で孤立しながらも常に真実を伝え続ける著者の勇気と忍耐力に私は深い畏敬の念を覚える。