[1967]庵野カントク、アンタはエライ

相田英男 投稿日:2016/08/11 22:02

 相田英男です。
 今回は原発ではありません。

 ここのサイトとリンクしている(私が尊敬する)藤森かよこ先生のブログで熱く取り上げられていたので、私も観に行った。シン・ゴジラだ。

 感想を正直に言おう、全くもって藤森先生の推薦の通りだと。凄い映画だよ、これは。

 この映画、2時間の中でゴジラが登場して動き回るのは、30分位ではないのか?そのうちの半分は、未成長のヘンテコな形だから、ちゃんとしたゴジラのあの姿で動くのは、15分位しかないだろう(実は動かないで寝ている時間の方が長かったりする)。残りの時間は、大人の役者達が部屋の中で早口で議論し合うだけという、異様な構成だ。子供向け内容では全くなく、そもそもが怪獣映画ですらない。

 一体この映画は、何を言おうとしているのか?

 答えは簡単だ。これは、子供向けの怪獣映画を装った、真実暴き系の映画なのだ。少し前の阿部寛と広末涼子が主演した「バブルへGO」と同じパターンだ。池上明がNHKの「週間子供ニュース」の時代にやってたことでもある。

 テキストで書いたり話したりすると、問題にされて潰される内容を、「子供向けの番組ですから」、とか、「怪獣が出ますから」、とかいう理由を付けて、サラリと、そして堂々と正面から訴えたのが、この映画なのだ。

 「シン・ゴジラ」が訴える内容とは何か?それは、日本という国がアメリカにより上から押さえつけられて、真実が語れなくなっていること、そのために、重要なことがなかなか自分たちで決められずに、一般市民に大きな犠牲を強いる、ということだ。即ち、副島隆彦の「属国日本論」が「シン・ゴジラ」の「真の」テーマなのだ。
 
 映画を見た人は、私の主張が荒唐無稽な電波発言ではないことがわかるだろう。庵野カントクは、副島先生の本を相当に読み込んでいる筈だ。その影響が、意図的かどうかはわからないが、映画の中に色濃く出ている。たぶん間違いないと思う。

 とはいえ、この映画はエンターテイメント性も抜群だ。今放送中のテレビドラマで見かける名のある役者さん達が、チョイ役で続々登場するので、会話シーンばかりでも、華があって飽きさせない。ストーリーもよく練られていて秀逸だ。「子供にわからないだろう」とはいっても、アニメでありながらも何が言いたいのか内容がさっぱりわからんかった「もののけ姫」とか、「千と千尋の神隠し」よりは、百倍くらい良い映画だと私は思うけど。

 前の日にテレビでやってたアメリカ版ゴジラ(渡辺謙のやつ)をチラと見て、「気色悪い」とチャンネルを変えたカミさんが、食い入るように、最後まで映画館で見てたよ。

 この夏の最大の話題作で、客も相当入ってそうにもかかわらず、この映画のテレビの宣伝はあまり見ないように思う。「スターウォーズ フォースの覚醒」に較べると、相当に控えめだ。宣伝費用のせいなのだろうが、試写会で初めて観た連中が、「しまった、こんなヤバい作品だったとは … 」と、気づいて電通に宣伝を減らすように圧力を掛けたのか? などとつい妄想してしまう。

 ともあれもう遅い。この映画は出来てしまった。ゴジラの名を冠した、こんなにも内容テンコ盛りの映画を無かったことにするなど、最早出来ない。日本は「シン・ゴジラ」を得たのだ。ザマアミロ、である。

 小学生には無理でも、中学、高校生の少年少女達は、内容を何とか理解しようと、この映画を必死で見直すに違いない。そして、この映画が訴える真のメッセージに、いち早く気づくだろう。現実の大人の社会の惨めさと、自分の力でそれを乗り越えられるかもしれない可能性があるのだと。

 問題から逃げても、人のせいにしても、何も解決しないのよ、サヨクの皆さんよ。

 庵野カントク、アンタは良くやったよ。この映画に触れた子供達が、大人になる日が楽しみだよ。日本はまだ捨てたもんじゃないよね。

相田英男 拝