[190]中国の内蒙古から(フフホト通信)

石井裕之 投稿日:2011/02/14 23:51

中国の内蒙古の石井でございます。
暫くご無沙汰しておりましたのも理由がございます。
こちら中国では、2月2日(大晦日に当たる)から「春節(正月のお祭り)」を盛大に祝います。それでも近年、北京や上海といった都市部では、恐らく1週間から10日あまりで、その都市機能を回復していると思われますが、地方に行けばいくほど、田舎に行けばいくほど、長期に亘ってお祝いをするようです。

例年、この時期にはインターネットの調子がおかしくなります。メールの送受信がしくにくくなったり、スカイプの音質が落ちたり、携帯電話の海外へのアクセスがしにくくなったり、といった具合なのですが、今年はインターネットの具合が非常に悪く、ヤフーやその他日本のホームページ関係(外国のサイト)へのアクセスが制限されている様なのです。
私は、メールをヤフーに依存しておりましたが、ヤフーのメールサーバーにアクセスできないものですから(2週間も)、ついにグーグル(gmail)経由に設定変更して何とかメールのやり取りが出来るようになりました。

これは本当かどうか判りませんが、2月10日のモバイル向け「時事通信」によると、例のエジプトの民衆蜂起に、北京政府が随分と気を揉んでピリピリしている、というのです。
というのも、その大規模デモの勢いが中国のネットユーザーに飛び火しないか、ということのようなのです。
真相がどうなのか判りかねますが、西暦の年末以降、俄かにネットへの接続が厳しくなってきて(中国国内のアクセスは問題無し)、旧暦の年末年始がピークだったように思います。
先にも述べましたが、
・ヤフーメールが全く使えない(メール操作画面どころか、ヤフーIDの入力画面すら表示されないことがある)。
・インターネット検索は出来るが、実際に検索された個々のページにはアクセス出来ない。
・ちょっと重たいサイトは(ヤフーのホームページ含めて)、全くアクセス出来ない。
・スカイプにログイン出来ない。
と、このような感じです。去年から中国のネット人口が急激に増えてきていますから、ただ単に、中国ローカルから海外へのインターネット経路の帯域不足であるだけなのかもしれませんが・・・。

インフラの爆発は、何もネットに限ったことではありません。道路も飛行機も列車も非道い混雑状況です。「お正月だ!お正月だ!お金持ちも貧乏人もとにかく家に帰ろう♪」みたいな内容の童謡があるくらいです。更に、一昨年の年末には、この帰省ラッシュの状況を面白おかしく描いた映画まで上映されました。
例えば、列車のチケット予約は通常3日前から出来ます。ここ内モンゴルのフフホトから北京に行く(およそ500kmの道のり)夜行列車は、晩の9時頃に乗りこんで、明け方7時前に到着する、というとてものんびりしたものなのですが、チケットの値段が安いもの(一番安い普通の腰掛け席で1000日本円程度)ですから、地方から都市部に働きに出ている工員の帰省手段は、この列車に集中します。
今年から、このチケットの予約をある程度分散して行える(実は今まで、基本的に出発駅でしか購入出来なかった)ようにシステム変更したようですが、それでもチケットを買い求める帰省客が徹夜泊まり込みで長蛇の列を為します。年末年始の風物詩というにはあまりにも大変な(過酷な)行事です。
新幹線や飛行機といった、公共交通機関はどれも似たり寄ったりの状況です。

http://j.people.com.cn/94638/94659/7285128.html
↑これは、ここ呼和浩特(フフホト)の正月の飾り付けの様子です。この他、家の玄関や室内にも、やはり正月専用の飾り付けを行います。中国映画で御馴染になりましたが、中国の家の玄関には「福」の文字が必ず貼り付けてあります。この飾りは年中貼り付けていますが、正月前に新作に取り換える習慣なのです。
また、ここ呼和浩特では大晦日の晩に、街の到る所に石炭を積み上げたキャンプファイアを作ります。底辺1.5m×高さ1m程度でしょうか。街の中央広場の中には、10m間隔で並べられています。神様の迎火の意味合いがあるようです。ボーと燻る石炭の小山の群れは、それはそれで荘厳な雰囲気です。
爆竹や花火に至っては、凄いを通り越して非道い、と言った状況です。
大晦日から新年に切り替わる23時50分頃からにわかに花火があがり始め(このフライイングは、恐らく時計を正確に合わせていないことが原因と思われます)、明け方の5時頃まで、打ち上げ花火と爆竹の大合唱です。更にその爆音に反応した自動車のセキュリティーシステムの警告アラームも交じります。「ヒュードン!」と「バンッバンッバンッ」と「バッバッバッバッ」と「シュッシュッシュッ」と「ビービービー」の巨大音量が、何の規則性もなくただただ延々と交じり合うのです。マンションの中で家族におめでとうと言うのも怒鳴り声になります。そうしないと外の大音響に声が搔き消されてしまいますからね。
極端な話、この正月期間だけで、ここ呼和浩特市において何百万発の打ち上げ花火が消費されていることやら。どうりで中国人である私の家内が、日本の夏祭りの花火に見向きもしない筈です。本当に、規模が全く違いました。
この花火や爆竹は、財の神様をお迎えする意味合いを持ちます。ですから、正月のみならず、お店を新装開店した際などに必ず用いられます。

この春節も、旧暦の1月15日を挟んだ3日間に、最後の盛り上がりを魅せてフィナーレを迎えます。まだやるの?って感じなんですが、まだやるんですっ!
思い起こせば、40年前の私の実家(水島のハズレの農村)でも、正月の7日間くらいは、毎日色々な人(親戚や近所の人たち)が訪れて、飲めや喰えやの大騒ぎでした。流石に花火はありませんでしたが、年の瀬にウスと杵を使って行う餅つきが本当に嬉しかった記憶があります。こちら呼和浩特では、その当時の古き良き慣習が今尚引き続き行われているのです。
ただ、この慣習。都市部を中心に簡素化しつつあります。ちょっと寂しいですね。