[1847]北朝鮮の核実験 で 「(戦争の)軸足 pivot を アジアに移す」 の ヒラリーの勝利が決まった。

副島隆彦 投稿日:2016/01/07 06:45

副島隆彦です。今日は、2016年1月7日です。

北朝鮮が、昨日の午前10時に水爆(ハイドロジェン・ボム)実験を行ったようだ。


北朝鮮による水爆実験を報じるCNNの画面

水素爆弾の実験というには規模はかなり小さいようだ。これに伴う人工地震の震度は、マグニチュード4.9と小さい。

今朝(5時)のロシアRTV(エル・ティー・ヴィー)の放送では、「 わずか6キロトンの破壊力だ。広島の原爆の2分の一だ。ロシアの水爆実験は400キロトンだった」と 報道していた。 それでも、水爆一歩手前の、小型の核兵器の製造になる。 これを弾頭(ウォーヘッド)に積んだ中距離ミサイルが出来ると、おそらく 素朴な広島、長崎型の50倍ぐらいの破壊力を持つだろう。

この北朝鮮の核実験が、これからの世界にどのような影響をもたらすかを、私は考える。

それは、これで 悪女(ワルおんな)のヒラリーが次のアメリカ大統領になることが、決まった、ということだ。

6日の朝、オバマ大統領が、「銃規制の強化」を求めて、ホワイトハウスから演説した。横には顰め面(しかめっつら)のバイデン副大統領が立っていた。そのときオバマは、演説の途中で急に泣き出した。 これは、銃社会の、銃の乱射事件の頻発で苦しむアメリカに対してオバマが警告を発し、「もっと厳しい銃規制(ガン・コトロール)を米議会は法律を通すべきだ」という内容だった。しかし、このオバマの涙は、銃規制問題だけのものではない。


会見を行うバラク・オバマ大統領とジョー・バイデン副大統領(右)

オバマは、北朝鮮の核実験を事前に報告を受けて知っていた。これで、オバマにとっては、大嫌いな、ヒラリー戦略の「軸足をアジアへ」(ピボット・トゥー・エイシア)が起きるから、そうしたら世界は、中東・ヨーロッパに継ぐ、戦争状態に突入する、と分かった。そうなると、オバマのこれまでの世界平和を続ける、という努力が壊される。

これで、世界はいよいよ 大きな戦争(ラージ・ウォー large war ) に向かう。私たちが生きている東アジアにもついに戦争の脅威が迫ってきた。

私は、年末に、アメリカの言論雑誌に、いつくも カリカチュア(風刺漫画)が、載っていて、それは、中東の過激派 IS(アイ・エス)と 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)が手を結んで、つながっている漫画だった。 どうやら、この凶暴なふたつの勢力をつなげて、世界を動乱状態に持ち込もうとする動きがある。12月5日に、キムジョンウンは、今度の核実験のゴーサインを出していたようだ。

私、副島隆彦が、親しいアメリカのコンサーヴァティブ・アイソレーショニスト(保守で、国内問題優先主義)の中年男性たち(リバータリアン的である)は、「ヒラリーたちが、次の新しい戦争を始める準備に入った」と感じている。


ヒラリー・クリントン

北朝鮮の指導部の中に、アメリカのネオコン派や反共(はんきょう)主義米軍人たちの強い影響下にある勢力が形成されていて、彼らが、第三次世界戦争を起こすことを画策している。 この勢力がヒラリーを押し立てて、次の世界に動乱を持ち込むつもりだ。

今年一年(2016年)中は、まだオバマ政権である。だからオバマは、絶対に世界が戦争状態に入ることを阻止し続ける。オバマは、軍の最高司令官として、大規模な米軍の作戦の開始に絶対に署名しない。しかし、来年(2016年2月)からは、もうそうはならない。ヒラリーは、それをやるだろう。

それは、北朝鮮の核兵器 開発施設への、先制攻撃(クリエンプティブ・アタック)での爆撃という選択肢(オプション)を含む。そのときは、バンカーバスターという、地中奥深く100メートル以上掘られた施設にまで届いて、そこで破裂するミサイルだ。それは、戦術核(せんじゅつかく)兵器(タクティカル・ニュークレア・ウエポン)も含まれる。

ということは2017年からの凶悪なヒラリー政権で、東アジアでも戦争の脅威が、私たち日本国民の毎日の生活に脅威と恐怖感を与えるだろう。日本の安倍政権の長期化の兆(きざ)しは、それに対する十分に計算されつくした動きだ。

日本の安倍政権というのは、アメリカのネオコン勢力が作った、まじめな日本国民の意思を無視した、アメリカのいいように動かせる政権だ。安倍晋三のおじいさんの岸信介(きししんすけ)がアメリカのCIA(中央情報局)の意思に忠実に動くように作られた政権であることの 継続版 だ。日本国民の 真の独立への真剣な願いは、いつも、いつも壊されてきた。


安倍晋三

安倍晋三たちの 精神と思考の中心にあるものは、何なのだろうか、と私、副島隆彦はずっと考えてきた。そして分かったことは、彼らの信念に中心にあるのは、反共産(はんきょうさん)主義というものだ。そして、この反共という思想は、それ自体が、共産主義の否定、撲滅、破壊を求める、という アンチテーゼ( 命題への反措定)ということであって、自分たち自身のそれ以上の信念や思想はない。  私は、この問題を、今、真剣に考えて本を書いている。

ということは、同じく、安倍晋三たちに反対する、日本のリベラル派や左翼勢力の 恥部(ちぶ)である、
「共産主義とは何か。それに対して、自分は、どういう態度を取るのか、への 発言を避けること」に、私、副島隆彦は正面から、逃げないで答えなければいけない、ということだ。

去年の世界の動乱の中心だった 中東(ミドル・イースト) から、私たちが住む東アジア(極東、ファーイースト)に、軸足(じくあし、ピボット、pivot)が急速に移されたようだ。ここで、私たちが鋭く思い出すべきは、ヒラリー・クリントンが、2011年11月に、発表した、「軸足をアジアへ」 “Pivot t o A s i a ”(ピボット・トゥー・エイシア)論文である。


(「ピボット・トゥー・エイジア」論文の画面)

後(うしろ)の方に全文を載せる、古村治彦君が翻訳した、 2011年11月号の米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」誌の ヒラリー 論文を、皆、丁寧に読んでください。ここにヒラリーは、はっきりと書いている。

(転載貼り付け始め)

・・・・アメリカの未来がアジア・太平洋地域の未来と密接にリンクしていることを実感した。アジア・太平洋地域へ軸足を移すというアメリカの戦略的大転換(strategic turn to the region)は、アメリカの世界的なリーダーシップをこれからも維持していく点からも論理的に正しいことである。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 このように、2011年11月に、オバマ一期目での国務長官の辞任の決意を固めたヒラリーが、オバマへの最後通牒のような威嚇力をもって、捨て台詞のように、「4年後を見ていなさい」という感じで、この論文を書いたことが、2016年の今となって、よく分かる。

オバマ政権に対して、これからの1年間に、強い圧力がかかる。
アメリカは、金融・経済 での世界指導力が大きく落ちている。金融・経済の迫り来る大きな崩壊の危機を、アメリカはどうやって乗り切るか。それは、最後に残されたアメリカの力(ちから)の誇示である、大きな軍事力の行使である。 もう アメリカには、軍事力しか、大きな力は残されていない。ヒラリーたちは、この残された持てる力(ちから)を使うだろう。

迫り来る世界恐慌を、アメリカの軍事力で吹き飛ばして、世界中を統制(コントロール)下に置いて、アメリカの世界覇権(ワールド・ヘジェモニー)の継続を、再度、画策する。

ところが、アメリカの軍人たちは、もう、外国での戦争をすることに尻込みしている。米軍の地上部隊は、もう外国に出てゆきたくない。それではそうするか。やはり、民間軍事会社 と 職を求める失業者たちからなる傭兵部隊(マーシナリー)に頼るだろう。それでも、十分に世界中を動乱状態にすることは出来る。

私たち日本人は、いよいよ この「ショック・ドクトリン」 shock doctrine (国民、民衆に不意のショックを与え、恐怖心を抱かせるて冷静な判断力を奪う)の政策の実行に対して、十分に警戒と注意をするべきだ。私、副島隆彦は、これからも、「次は、こうなる。その次はこうなる。そして、彼ら世界権力者、支配者たちは、このような手口で攻めてくる」と冷静に近未来(きんみらい)の予測、予言を行ってゆく。

副島隆彦拝

(以下は、資料として載せます。転載貼り付け始め)

副島隆彦の論文教室
http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/files/ronbun208.html

「199」 翻訳 ヒラリー・クリントン米国務長官による重要な政策論文である「アメリカの太平洋の世紀(America’s Pacific Century)」を皆様にご紹介します(1) 古村治彦(ふるむらはるひこ)訳 2012年10月12日

ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦です。今回は、ちょうど1年前に米外交専門誌に発表された論文を皆様にご紹介したいと思います。

1年前の論文ということで、そんなものをどうして今頃紹介するのかと思われる方もいらっしゃると思います。しかし、この論文はアメリカの世界戦略の転換を示すものであり、1年経った今でもその重要性は変わりません。

この、「アメリカの太平洋の世紀」というタイトルをつけられた論文は、アメリカが、「アジアへ回帰する」と宣言したもので、この戦略的転換は、欧米のマスコミでは、pivot to Asiaと呼ばれています。pivot(ピボット)と言えば、バスケットボールで使われるプレーが思い浮かびます。

ピボットとは、ドリブルができないとき、どちらかの足を軸にして回転するというものです。pivot to Asiaのピボットは、「軸足を定める」「転回する」という意味で使われています。

私は、アメリカのpivot to Asiaが、中国への関与を深めることを目的にしているのか、それとも中国を封じ込めることを目的にしているのか、今でも判断しかねていたのが正直なところです。

クリントン政権時代には、コンゲージメント(封じ込めを意味するcontainmentと関与を意味するengagementの合成造語)政策が採られましたが、これに近いものなのと思います。しかし、最近のヒラリー・クリントン国務長官の動きを見ていると、対立confrontation政策なのではないかと思うようになりました。

読者の皆様の判断材料として、今回から3回に分けて、重要論文をご紹介いたします。

※アメリカのアジアへの大転換の関する記事は、ブログ「古村治彦の酔生夢死日記」(こちらからどうぞ) でもご紹介しております。お読みいただければ幸いです。ブログの左にカテゴリーで「pivot to Asia」としてまとめてあります。

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「 アメリカの太平洋の世紀(America’s Pacific Century)
政治の将来が決まる場所は、アフガニスタンでもイラクでもない。
アジアである。 そして、アメリカは、政治の将来を決める動きの
中心となる 」

ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)筆

フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌 2011年11月号
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/10/11/americas_pacific_century

ヒラリー・クリントン

イラクでの戦争が終わりに近づき、アメリカはアフガニスタンから米軍を撤退させ始めている。今まさにアメリカは大変重要な転換点(pivot point)を迎えている。この10年余りの間、アメリカはイラクとアフガニスタンという2つの戦地に莫大な資源を投入してきた。

これからの10年、私たちは、限られた時間とエネルギーを、賢く、体系的に使う必要がある。これからの10年、私たちアメリカは、指導的地位を確保、維持し、国益を確保し、私たちの持つ価値観を世界に拡散するために最も有利なポジションを取らねばならない。より具体的に言うと、次の10年のアメリカの国政にとって最も重要な目標の一つは、アジア・太平洋地域に対して、外交、経済、戦略などの面で投資を確実に増やす、ということになる。

アジア・太平洋地域

アジア・太平洋地域は、これまで、国際政治を動かす主要な地域だった。この地域は、インド亜大陸から南北アメリカ大陸の西海岸にまで広がっている。この地域は2つの大洋である、太平洋とインド洋があり、これらは海運と戦略でその結びつきが強まっている。この地域には、世界の総人口のほぼ半分が居住している。

また、世界経済のエンジンとなるいくつかの国も存在する。更には、温室効果ガスの排出国トップ10のうちのいくつかも存在する。アメリカにとっての重要な同盟諸国もあり、また中国、インド、インドネシアのような新興大国も存在する。

アジア・太平洋地域では、現在、安定と繁栄を促進するために、より成熟した安全保障と経済の枠組みを構築しつつある。まさにこの時期、アメリカのアジア・太平洋地域に対しての関与は必要不可欠なものだ。アメリカは枠組みの構築を支援することができる。そうすることで、この21世紀も続くアメリカの指導力を確保するという利益を得ることもできる。

アメリカは第二次世界大戦後、様々な機関や関係性を網羅した包括的で、永続的な環大西洋ネットワーク(transatlantic network)を構築した。このアメリカの関与は、その時の投資の何倍もの利益を現在に至るまでもたらし続けている。今、アメリカは、第二次世界大戦後にやったことを今度はアジア・太平洋地域でやっているのである。

アメリカは太平洋地域の大国として、第二次世界大戦後に大西洋地域(ヨーロッパ)に対して行ったような投資をアジア・太平洋地域に対しても行うべき時が来たのだ。これはバラク・オバマ大統領が政権発足当初から進めてきた戦略であり、すでに成果を上げている。

バラク・オバマ大統領

イラクとアフガニスタンについては移行期にあり、アメリカ国内の経済状況は厳しい状況が続いている。こうした状況下で、アメリカ軍の再配置でなく、本国への撤退を求める人たちがアメリカの政界の中にいる。彼らは、国内の諸問題解決を優先するために、アメリカの海外への関与のレベルを引き下げることを求めている。

そうした動きやその裏にある衝動は理解できる。しかし、彼らの主張は、的外れである。アメリカにはもはや世界に関与する余裕はないと言う人たちがいる。こういう人たちは時代に逆行した主張をしているのだ。

アメリカは海外への関与を何としても続けていかねばならないのだ(We cannot afford not to.)。アメリカの企業のために新しい市場の開放から、核拡散の抑制、通商と船舶の安全な航行のためのシーレーンの確保まで、アメリカの海外での活動はアメリカ国内の繁栄と安全保障のために必要不可欠なものなのである。

60年以上の間、アメリカは、「本国への帰還」論争が醸し出す魅力と、その中にあるゼロサム的な論理に抵抗してきた。私たちは、これまでと同じように、こうした誘惑に抵抗し、打ち勝たねばならない。

国外では、多くの人々がアメリカの意図について疑念を持っている。アメリカはこれからも世界に関与し、リードしていくつもりがあるのかと疑っている。アジア諸国の人々は、私たちアメリカに対し、アジアに留まってくれるのか、世界各国で様々な事件や出来事が起きるたびにそちらにかかりきりになるのか、経済的、戦略的関与をこれからも続けてくれるのか、必要なときにはきちんと行動してくれるのかといった疑問をぶつけてくる。私たちはいつも、「私たちは関与し続ける。その意思は変わらない」と答えている。

アジアの経済成長と活力を利用することは、アメリカの経済的、戦略的利益にとって重要であり、オバマ大統領の掲げる最優先事項の一つである。アジアの開かれた市場は、アメリカ企業にとって投資、貿易、最新技術の獲得といった点でこれまでにないほど大きなチャンスを提供してくれる。

アメリカ国内の景気回復は、輸出の拡大とアメリカ企業がアジアの成長する消費者層をつかめるかどうかにかかっている。戦略的な観点から言えば、アジア・太平洋地域の平和と安全を維持することは、世界の発展にとって重要だ。アジア・太平洋地域の平和と安全を守るには、南シナ海の船舶航行の自由を守り、北朝鮮の核開発に毅然とした態度で対峙し、地域の大国の軍事行動の透明性を確保することが重要だ。

東アジアサミットの様子

アメリカの未来にとってアジアが必要不可欠であるように、アジアの未来にとってアメリカの関与は必要不可欠である。アジア・太平洋地域は、私たちアメリカのリーダーシップとアメリカ企業の進出を熱望している。彼らの熱望ぶりは、この時期、これまでにないほど高まっている。アメリカは、アジア・太平洋地域において、強力な同盟諸国とのネットワークを構築している唯一の大国である。また、領土的野心を持っていない。

更には、これまで長い間、世界の公益に貢献してきた歴史がある。私たちは、地域の同盟諸国と共に、地域の安全を守ってきた。アジアのシーレーンをパトロールし、安定を維持してきた。こうしたことが経済成長のための基盤づくりにも役立った。アメリカは、経済的な生産性の向上の促進、国家ではなく、市民団体など社会全体の強化、人々の繋がりの拡大を通じて、地域に住む数十億の人々が世界経済に参加することを手助けしてきた。

アメリカは、アジア・太平洋諸国にとって主要な通商、投資のパートナーである。また、アメリカは、太平洋両岸の国々の労働者や企業に利益をもたらす技術革新の中心地である。更には、毎年35万人のアジアからの留学生を受け入れている。アメリカは、開かれた市場と、世界共通の価値観である人権を擁護する。

アメリカは太平洋において他国が果たせない役割を果たすため、オバマ大統領はアメリカ政府全体で多面的な、そして継続的な努力を続けるよう、先頭に立って導いてきた。こうした努力はこれまで表に出ることはあまりなかった。私たちの達成してきた成果がマスコミで大々的に報道されることもなかった。

それは、長期にわたる投資は、目の前にある危機よりも人々を興奮させるような性質のものではないからだ。また、世界中で様々な事件や出来事が起きており、マスコミの目はどうしてもそっちに向かってしまう。

中国を訪問するクリントン国務長官

アメリカの国務長官として、私は、これまでの長い慣習を破り、私の最初の外遊の目的地にアジアを選んだ。それ以降、私はアジアを7回訪問してきた。私はアジアを訪問するたびに、急速な変化が起きていることを直接目にする機会に恵まれた。そして、アメリカの未来がアジア・太平洋地域の未来と密接にリンクしていることを実感した。

アジア・太平洋地域へ軸足を移すというアメリカの戦略的大転換(strategic turn to the region)は、アメリカの世界的なリーダーシップをこれからも維持していく点からも論理的に正しいことである。この戦略的大転換を成功させるには、アジア・太平洋地域はアメリカの国益にとって重要なのだという、党派を超えた(bipartisan)コンセンサスを形成し、維持することが必要だ。

アメリカの歴代大統領と国務長官は、所属政党に関係なく、世界に関与してきた。私たちはこの力強い伝統をこれからも追求していく。また、戦略的大転換には、アメリカの選択が世界に与える影響を考慮に入れた一貫性のある地域戦略を堅実に実行する必要がある。

アメリカのアジア・太平洋地域に対する戦略とはどのようなものか?この戦略には、私が「前方展開(forward-deployed)」外交と呼ぶ継続的なアメリカの関与がまず必要となる。前方展開外交とは、私たちが持つ外交上の全ての手段や資源を投入し続けるということだ。

この中には、政府高官、開発についての専門知識を持つ人々、省庁を超えて編成されるチーム、アメリカが持つ様々な資源や資産を、アジア各国や各地域に送り込み続けるということも含まれる。アメリカの戦略は、アジア全域で起きている急速で、劇的な変化を考慮し、対応するものでなければならない。

このことを踏まえて、私たちは6つの方針に沿って行動することになる。その6つの方針とは以下のとおりである。①二国間の安全保障同盟の強化、②中国などの新興大国との関係の深化、③地域的な多国間機関への関与、④貿易と投資の拡大、⑤アメリカ軍のプレゼンスの拡大、⑥民主政治体制と人権の拡散。

アメリカは地理的に特殊な場所に位置している。アメリカは大西洋と太平洋の両方に接している大国である。アメリカはヨーロッパ諸国のパートナーであることに誇りを持っている。また、彼らに様々な利益を提供してきたことも私たちの誇りだ。

私たちがこれから取り組むのは、大西洋の場合と同様に、アメリカの国益と価値観に一致した、太平洋全域を網羅するパートナーシップと様々な機関のネットワークを構築することである。太平洋でのネットワーク試みは、その他の全ての地域における試金石となる。

私たちアメリカは日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイと条約に基づいた同盟関係を結んでいる。これらの国々との同盟関係は、アメリカのアジア・太平洋地域に対しての戦略的大転換の支点となる。これらの国々との同盟関係は、半世紀以上にわたり、地域の平和と安全保障を実現してきた。

また、地域の著しい経済発展を促進する環境を作り上げてきた。同盟諸国は、アメリカのアジアにおけるプレゼンスを利用してきた。一方で、アメリカは。同盟を通じて、安全保障環境が複雑化していく状況下で、アジアにおけるリーダーシップを強化してきた。

アジア諸国との同盟関係は成功を収めている。しかし、私たちはそれらをこれからも維持するだけではいけない。私たちは変化する世界に対応するために、同盟関係を進化させねばならない。そのために、オバマ政権は3つの原則に沿って行動している。一つ目は、アメリカの同盟諸国が持っている重要な目標について政治的な合理を形成し、維持することである。

二つ目は、私たちの同盟関係が状況に素早く対応できるようにすることだ。それによって、私たちは、変化を把握し、新しいチャンスを捉えることができる。三つ目は、アメリカの同盟諸国の防衛能力と通信インフラが、国家や非国家アクターたちによる挑発を実践的に、また物量的に抑止できるだけのものとなることを、アメリカが保証することである。

アジア地域の平和と安定の要石(cornerstone)となるのは、日本との同盟関係である。アメリカと日本との同盟関係を見れば、オバマ政権が上に挙げた3つの原則をいかに守っているかは明らかだ。日米両国は、明確なルールに基づいた安定した地域内秩序、という価値観を共有している。その中には、船舶航行の自由や開かれた市場、公正な競争が含まれる。日米両国は、新たな取り組みを始めることにも合意している。

その中には、日本が50億ドル(約4000億円)以上の資金を新たに提供するということも含まれる。また、日米は、日本国内に引き続き米軍を駐留させることでも合意に達している。更には、地域の安全保障を脅かす脅威を抑止し、迅速に対応できるようにするために、情報交換、監視、偵察活動を合同して行うことや、サイバー攻撃に関しての情報共有を進めることも決定している。日米両国はオープンスカイ協定(航空協定)を締結した。

これにより、ビジネスへのアクセスや人と人とのつながりを増進されることになる。また、日米両国は、アジア・太平洋地域に関する戦略対話を開始した。更に、日米両国は、アフガニスタンに対する二大援助国として協力して行動している。

日本と同様、韓国との同盟もより強化され、作戦面での日韓の協力・統合も進んでいる。米韓両国は、北朝鮮からの挑発を抑止し、対応するための米韓共同での作戦遂行能力を、継続的に発展させている。米韓両国は、戦時作戦統制権(operational control during wartime)の円滑な移行を確実に進めるための計画の実行に関し合意に達している。

また、韓米自由貿易協定(Korea-U.S. Free Trade Agreement)の成立も間近に控えている。米韓同盟は活動の幅を世界規模にまで拡大している。G20、核安全保障サミット、ハイチやアフガニスタンでの協力といった幅広い活動に米韓両国で参加している。

アメリカとオーストラリアとの同盟関係も太平洋を対象とするパートナーシップという形から、インド洋と太平洋とを網羅する規模に拡大している。米豪同盟もまた世界規模にまで活動の範囲を拡大させることになる。サイバースペース上での安全保障、アフガニスタン問題、アラブの目覚め(アラブの春)、アジア・太平洋地域の枠組みの強化といった点で、オーストラリアの助言と関与は、何事にも代えがたいものであった。東南アジアにおいては、フィリピン、タイとの同盟関係を刷新し、強化している。

アメリカは、フィリピンに寄港する船の数を増やしたり、ミンダナオ島での共同作戦を通じてフィリピンの対テロ部隊のトレーニングを行ったりしている。タイは、私たちアメリカと、アジア地域において、最初に条約を締結し同盟関係を持った国である。米タイ両国は、協力して、アジア地域における人道支援や災害救助の拠点をタイ国内に構築しているところである。

私たちは、新しい事態に対応して、既存の同盟関係を刷新している。また、アメリカとアジア諸国が共に抱えている問題の解決の手助けとなる、新たなパートナーシップの構築も進めている。中国、インド、インドネシア、シンガポール、ニュージーランド、マレーシア、モンゴル、ベトナム、ブルネイ、太平洋の島嶼諸国に対して、アメリカはパートナーシップの構築を進めている。

この取り組みは、アジア・太平洋地域におけるアメリカの戦略と関与に関して、より包括的なアプローチをトルコができるようにするために行われている。これは、アジア・太平洋地域におけるアメリカの幅広い取り組みの一部である。アメリカは、新たなパートナー諸国に対し、ルールに基づいた地域秩序と世界秩序を構築すること、そして参加することを求めている。  (つづく)

http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/files/ronbun208.html

2013年12月06日
pivot(軸足移動)とrebalance(再配分)。 米国の対アジア政策、防空識別圏 きっかけに中国封じ込めに本腰。 米国のジョー・バイデン副大統領が今月2日から1週間かけて日中韓3国を訪問中だ。あらためてpivot(ピボット)とrebalance(リバランス)に注目が集まっている。

●「 北朝鮮「水爆実験」米国 政策見直し急務 」

毎日新聞  2016年 1月6日(水) 21時31分配信

米国の核専門家は、北朝鮮が4度目の核実験を実施したことで「米日韓の安全保障上の脅威が増す」と警戒しており、今回の実験を受け、オバマ政権が北朝鮮政策の見直しを迫られるのは必至だ。

北朝鮮が6日、「水爆実験」に初成功したと発表したことに関し、米国家安全保障会議(NSC)のプライス報道官は声明で事実関係の確認は避けつつ「いかなる国連安保理決議違反も非難する」と述べ、北朝鮮に対して非核化などの「国際的義務」を果たすよう改めて求めた。また、北朝鮮を核兵器保有国としては認めないとの立場を示しつつ、今後については「全ての挑発に適切に対応する」と述べるにとどめた。

しかし、米国の核不拡散専門家からは「従来の政策の繰り返しでは北朝鮮の脅威に対処できない」(キンボール米軍備管理協会事務局長)との批判が出ている。

オバマ政権は、「非核化に向けた具体的行動がない」(米政府高官)として、北朝鮮との直接交渉を避けてきた。しかし、北朝鮮が成功させたと主張する核実験はオバマ政権下で今回で3回目だ。実験を繰り返すことで核兵器の設計精度は上がり、弾道ミサイルに搭載できる小型核の取得にも道が開ける。北朝鮮は弾道ミサイルについても、射程の長距離化や、隠密性の高い移動型や潜水艦発射型の開発を進めるなど、事実上の野放し状態にあった。

北朝鮮の動向を注視しているジョンズ・ホプキンズ大学院のジョエル・ウィット上級研究員らの研究チームは「北朝鮮は2020年までに米国本土に到達するミサイルを開発する」と分析している。そうなれば、米国民自身も脅威にさらされることになる。小型核技術の向上につながる実験は、米国にとって「局面が変わる」時期が近づいたことを意味する。

また、米国の「核の傘」に守られている日本や韓国で、北朝鮮の脅威に対応できないという不信感が高まる恐れがある。それを防ぐため、米国は老朽化した核戦力の近代化などの手当てが必要となり、オバマ大統領が目指す「核なき世界」の実現はさらに遠のくことになる。

北朝鮮政策の見直しが急務となる一方で、これまで実施された制裁や交渉も、北朝鮮による核・ミサイル開発の抑え込みに成功しておらず、効果的選択肢に乏しいのも現状だ。【会川晴之、ワシントン和田浩明】

●「 北朝鮮「水爆実験」 中国、強い不満…事前に通告受けず 」

毎日新聞 2016年 1月6日(水)  21時25分配信

記者会見する中国外務省の華春瑩副報道局長=北京で2016年1月6日、AP
【北京・井出晋平】中国外務省の華春瑩副報道局長は6日の記者会見で「情勢を悪化させるいかなる行動も停止するよう求める」と北朝鮮に自制を求めた。また、在北京の北朝鮮大使を呼んで抗議する方針も明らかにし、強い不満を示した。だが、踏み込んだ制裁措置については明言せず、「(朝鮮半島の安定は)6カ国協議が唯一実現可能で有効な道筋だ」と従来の方針を繰り返した。

中朝関係は北朝鮮の3回目の核実験(2013年2月)で急速に悪化したものの、昨年10月の朝鮮労働党創建70周年には中国共産党の劉雲山政治局常務委員(序列5位)が訪朝。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の初訪中に向けた調整が水面下で進むなど、関係改善の兆しが見えていた。習近平指導部は、弱まっていた北朝鮮への影響力を取り戻す思惑があったとみられるが、今回の核実験も中国側は事前に知らされておらず、メンツをつぶされた形だ。

中国は朝鮮半島の非核化に向けて、北朝鮮に6カ国協議への復帰を繰り返し呼びかけてきた。しかし、核実験と長距離弾道ミサイル発射を受けた13年の国連安保理の制裁強化決議に賛成するなど、核問題で米国とも連携する形で圧力を強めたことが北朝鮮の不信感を招いた。北朝鮮は次第に中国の呼びかけにも応じなくなっていた。

北京大学国際関係学院の牛軍教授は「核実験は、朝鮮半島非核化の努力に対する挑戦だ。最終的に中国も北朝鮮を抑えられなくなる」と指摘する。しかし、中国に北朝鮮を抑える有効な対策がないのも現実だ。

( 参考資料として )

●「 米国のアジア回帰は本当に続くのか 」

岡崎 久彦   2012.12.05   2012年11月24日 記 産経新聞社

日本にとって最大の関心事はオバマ政権のピボット政策、すなわちアジアへの軸足移動政策が続けられるかである。それについて私はまだ100%の自信を持っていない。

ご都合主義だった対中政策
ピボット政策は、ひとえにヒラリー・クリントン国務長官の努力のたまものと言って良い。
オバマ政権の初年、2009年の最初の10カ月は対中傾斜一辺倒と言って過言でなかった。オバマ就任後の初訪中は同年11月に予定され、その成功に障害となるような事案は全て先送りとなり、中国の気に入らないことは一切避けるのが方針だった。

台湾への武器供与はその年の夏には可能となっていたが、実施を見送った。また、ダライ・ラマは秋にワシントンに滞在したが、オバマは会おうとしなかった。ワシントンにまで赴いたダライ・ラマに米大統領が会わなかったのは初めてである。中国の人権問題に対する批判も一切差し控えた。

だが台湾向け武器供与もダライ・ラマとの面会もいつまでも引き延ばせる性質のものではなく、11月の訪中が終わると次々と実施された。

中国はこれに予想以上に激しく反発し、米中の軍事交流は停止され、米中関係は一挙に冷え込んだ。中国がこのような動きに出た理由はいまだに外部には不明であり、情勢分析の対象となっているが、一般的に言って2012年の中国共産党の指導部交代を前にすでに権力闘争が始まっており、強硬意見が通りやすい状況になっていたと判断される。確かにオバマ訪中までの米国の態度はいかにもご都合主義であり、米国くみしやすし、と強硬派の地位を固めさせた効果があったかもしれない。

クリントン国務長官による対中包囲網
ここで、それまで固く沈黙を守っていたクリントンが急に発言し始めた。
大統領就任後の1年間、オバマがアハマディネジャド・イラン大統領などの独裁者との直接対話を提案し、プラハでは核の全廃を訴え,カイロではアラブとの友好関係をうたい、対ロ関係の再構築を呼びかけても、それらが元来国務長官の所掌であるにもかかわらず、ヒラリー・クリントンは一切沈黙を守りコメントしなかった。

この間、私が覚えているヒラリー・クリントンの演説は国務省の機構改革と、国連の人権委員会での発言だけである。私は、クリントンという人は、外交演説などはしない人かと思ったくらいである。

ところが2010年1月のホノルルでの演説以降、ヒラリー・クリントンは決然と発言し始め、一貫してアジア復帰を唱えてきた。発言の内容は、「中国」と言う言葉を使うのは避けているが、その本質は中国包囲網形成政策と言って間違いない。麻生外相・首相の「自由と繁栄の弧」と同じ趣旨である。

その年の7月、ヒラリー・クリントンは東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議で、中国の反発を顧みず、あえて南シナ海の領土問題を取り上げた。そして9月には、尖閣付近における中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件に際し、尖閣は日米安保条約の適用地域と明言した。

同年秋の横浜におけるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を前に、ヒラリー・クリントンはハワイ、グアム、オーストラリア、ニュージーランドなどを訪れ、オバマはインド、インドネシア、韓国、日本を歴訪するという対中包囲網を演出した。その間もクリントンは常にオバマの顔を立て、アジア重視はオバマ政権発足以来の基本方針と言いつつ、アメリカのアジア回帰を推し進めた。

オバマ大統領の心の揺れ
分らなかったのはオバマの真の意向だった。横浜でのAPEC首脳会議前のアジア歴訪に出発するにあたり、クリントンは再びホノルルで演説し、アジア復帰――実質は中国包囲網政策――を述べた。一方、オバマは新聞への寄稿で、インドネシアとインドが米国の有望な輸出市場であり、米国の雇用に寄与すると述べただけだった。このときは、大統領と国務長官の間に思想の齟齬(そご)があるのではと疑ったぐらいである。

この疑いを払拭したのは、2011年11月のオバマによるオーストラリア議会での演説である。クリントンが最初に声を上げてから、実に2年近くを要している。

この間、オバマに心理的抵抗があったことは想像に難くない。オバマが大統領選挙中から希求したのはブッシュ時代にグルジア情勢や東欧へのミサイル防衛(MD)配備などをめぐり悪化した対露関係のリセットであり、イラン、北朝鮮などの指導者との直接対話であり、核の全廃であり、中東諸国との信頼関係確立であり、すべてリベラル、理想主義路線であった。

アジア復帰は、基本的にはパワーポリティクスに基づく現実主義、保守主義路線であり、オバマのアジェンダにはもともと無いものだった。それがクリントン主導で2年かかって定着したのである。

現実路線が続く理由
クリントンは国務長官を一期での引退をすでに表明し、クリントンの下でアジア重視政策を遂行したカート・キャンベル国務次官補も引退が予想されている。彼らが去ったあと、オバマがアジア重視政策を推進するだろうか、と言うのが私の危惧である。希望的観測を許す種々の条件はある。一つは国際情勢の大勢である。

21世紀の国際情勢における最大の問題は中国の勃興であり、それに伴うパワーバランスの変化であることは誰の目にも明らかである。世紀の変わり目、2001年の海南島事件(※1)はその予兆であった。ところが同年9月11日の同時テロ事件以来、丸々10年間、米国の関心はアフガニスタンとイラクに向けられた。これは当然のことではあるが、9・11事件が米国民に与えた心理的ショックが異常に大きかったため国際情勢の大きな流れが見失われてしまった。

それがアフガニスタン、イラクからの米軍撤退と、瞠目(どうもく)すべき中国の経済・軍事力の成長により、中国が再び米国の外交の主たるアジェンダになった、という自然な流れがあるのでクリントン、キャンベルが去ったからといって政策が変わるような客観情勢ではない。

もう一つは第2期オバマ政権の新人事であり、まだ明らかではないがオバマの親友と言われるドニロン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は要職に就き、国防総省でアジア・太平洋地域を担当するリッパート次官補は留任が予想される。2人とも極めてシュルードな(鋭い、抜け目ない)政治意識はあるが、国際政治について特別なイデオロギーを持つ人ではないようである。

彼らは特に日本に友好的である保証は無いが、かつて満州事変から真珠湾まで極東を担当したホーンべック(※2)や、ブッシュ政権末期に親中政策を推進したゼーリック(※3)のような、イデオロギー的な親中派ではない。つまり、日本の外交次第で対処できる人々である。

問題は日本外交である。集団的自衛権の行使を可能にし、それに基づいて日米防衛協力のためのガイドラインを書きなおし、環太平洋パートナーシップ(TPP)に協力する形で日米関係を盤石にすることが、アメリカをアジアに、その前に日本に引き留める王道である。 ( 2012年11月24日 記 産経新聞社 )

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝