[1760]時計から見るイスラーム思想史①

松村享 投稿日:2015/03/05 02:46

松村享(まつむらきょう)です。
今日は2015/03/05です。

私は現在、ルネサンス関連の論文を書いています。
ですが、いつのまにやら、イスラーム関連の記述が大きくなってきました。
イタリア・フィレンツェのルネサンスという現象は、イスラーム抜きには語れないのです。

それで今回から、イスラーム思想史を掲載していきたいと思います。
原稿の分量からして、10回の投稿、連載の予定です。
話は、みなさんの部屋にも置いてある『時計』から始まります。

○『時計から見るイスラーム思想史』序文

『時計の社会史』のp16(角山栄著 中公新書 1984年 )によると、我々が使っている時間は『定時法』と呼ばれる。
『定時法』は、1日を厳格に24で割る。現代人にとっては、あまりに当たり前の話である。

だが、この『当たり前』の中に、重要な事実が隠れているのだ。
かつて定時法は、当たり前ではなかった。
定時法の機械時計は、金融業の発達にともなって現れた。一秒一秒を明確に均一に区切るのは、利子のためである。

引用開始ーーーーー『時計の社会史』p17~p18(角山栄著 中公新書 1984年 )

新しい時間概念(※引用者より。『定時法』のこと)が新旧勢力の決定的対立をもたらしたのは、利子をめぐる問題である。

※中略

キリスト教の時間は神学的時間で、神とともに始まり神によって支配されている時間である。時間が神のものである以上、時間を売って利子をとる行為は神を冒涜するものである。

こうして徴利禁止法が十三世紀に神学者、教会法学者によって体系づけられた。

ーーーーー引用終わり

松村享です。
13世紀、ローマ・カトリックは『定時法=利子』を阻止しようとした。
だが定時法の勢いは止まらなかったのだ。
ヨーロッパ、とくにイタリアは高度成長期だったからである。

13世紀~14世紀のイタリアは、モンゴル・ネットワーク、そしてエジプト・ネットワークに従属する、金持ちの属国国家群だった。
このことは、私松村享が、こちら重たい掲示板1708・1709・1715にて『フィレンツェ・ルネサンスは、イスラーム覇者バイバルスから見なければならない』と題して、素描した。

さて、私がここから追いかけるのは、イスラーム思想史である。なぜならば、イスラームにおいて、定時法を可能とする数学、天文学は格段に進化したからだ。

舞台は、バグダードである。
9世紀バグダードに『神学の下女・数学』を創始したと観察される人物アル・フワーリズミー(780?~845?)がいる。

『失われた歴史 イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』p142(マイケル・ハミルトン・モーガン著 平凡社 2010年)によると 、
フワーリズミーは、数学を物質的なものから引き離し、純粋に抽象的なものへと移行させた。
彼のラテン名が、アル・ゴリトミで、現代でも『アルゴリズム』という、数学コードを表す単語として使用されている。
フワーリズミー出現後、数学、天文学は、格段に進化した。つまり、定時法は格段に進化した。

それから100年、10世紀バグダードは、大恐慌に陥る。
それはそのまま、世界史の誕生を実現したイスラーム・アッバース朝(750~1258)の墜落の過程と重なる。

ユーラシア大交易ネットワークを実現したイスラーム・アッバース朝(750~1258)という王朝があった。稀有の大帝国である。
宮崎正勝氏によれば、世界史の誕生を実現した王朝である。アッバース朝は、バグダードを拠点とする。

このアッバース朝の墜落の過程で、バグダードが、銀行街になっている。
ウォール街化したのだ。ここに、金融ユダヤ人が大いに絡んでくるのである。

バグダードから南方90km地点、ここがバビロンである。バビロンに、タルムード(ユダヤ教の聖典)を介して、ユダヤ人の中央政府をつくりあげた人物、サアディア・ベン・ヨーゼフ(882~942)がいた。

snsi研究員・鴨川光氏によると、サアディアは、近代(modern)の源流に位置する学者である。サアディアの時代に、世界の中心バグダードは、大恐慌に突入し、同時にウォール街化した。金融業の発達である。ここが『定時法覇権』の原点だ。

みなさん、我々の日常は10世紀バグダードの延長上にある。
なにも創価学会だとかキリスト教だけが『宗教religion』というわけではない。
いま、パソコン画面の端に現れている時間、数字の羅列がそのまま、我々の宗教である。(続)

松村享拝