[1732]コート・ダジュール

広島・西 投稿日:2014/12/11 08:58

副島先生が会員版ページにグレース・ケリーについて書かれていたちょうどその頃、コートダジュールを旅していました。
主な滞在先はエクサンプロバンス(Aix-en-Provence)、マントン(Menton)、ニース(Nice)の3箇所。この内のマントンとニースが地中海沿いで、いわゆるコート・ダジュールということになります。マントンはニースをふた回り位小ぶりにした位のイタリアとの国境に隣接する街で、かつてジャン・コクトーが住んだ街です。

マントン、ニースとも11月中下旬でも日中気温が18度程度はあり、さらに日差しが強く感じられ、日中はコート無しでも十分過ごせました。緯度が高いのになぜ日差しを強く感じるのか不思議ですが、地中海の反射ということもあるのでしょうか?その点私には不明でしたが、人々のサングラス着用率はかなり高かったです。夏は国中からバカンスを過ごすために人で溢れかえるでしょうが、11月はシーズンオフでホテルのいくつかは長期休暇という所もありますし、また町のあちこちでインフラの工事をやってました。でもシーズンオフだからこそホテル料金は格安です。副島先生が「1泊5万円はする」と書いておられましたが、マントンの駅から徒歩10分以内で海沿い、三星のホテルでオーシャンビューの部屋が2人部屋一室1泊98ユーロ(1€=148円として14504円)でした。部屋は広くはありませんが、バスタブ付きのバスルーム込みで大体30m²、それに加えて椅子とテーブルの置かれたベランダがついています。11月ですのであまり混み合ってはいませんでしたが、ホテル内で聞こえてくる言語はフランス語の他、ドイツ語、イタリア語で、オフシーズンでも避寒の為にそこそこ観光客はいるようです。もちろんハイシーズンの6月~9月は客室料金は2倍、3倍になるでしょうし、冬場は使っていない海が見えない側の部屋も満室になることでしょう。

マントンの街は年寄り、犬、美容院、不動産屋、薬局が多いというのが印象で、恐らく小金持ちの年寄りが引退後に引っ越してきたのではないかと、彼らの身なりや振る舞いから勝手に想像しました。年寄りと犬に関しては、フランスもかなりの長寿国ですし犬好きの国民性を考えると、マントンだけの特徴とは言えないかもしれません。外出できるお年寄りの皆さんで、日本の老女に人気の手押し車を押している人は皆無、恐らく彼女らの審美眼からは外れるということでしょうか。
不動産屋の広告をじっくり見てこなかったことを後悔しましたが、ニースから電車で東に約20分のアンティーブという街の不動産屋のウインドウを見たところ、庭付きの別荘風のものは130万€位(1億9240万円!)、広さが明記されていない2DKの集合住宅の一部屋でも35万€(5180万円)という、驚きの価格設定でした。
コートダジュールの不動産価格は高値安定しているのではないかと思われます。
アンティーブには広いヨットハーバーもあって、遠洋航海ができるようなレーダーを備えた大きなヨットやクルーザーがズラリと停泊してました。

物価は全般に高く、ホテルの人もマントンはレストランが高いと言ってました。が、それにも増してのこの円安、、、。アベノミクスではなくアヒェ~ノミクスという感じで、レストランの看板を見てはアヘェ~、洋服屋に入ってはアヘェ~と、ため息と驚きが混じりあった声をあげざるを得ませんでした。ランチでは一番安いセットメニューでも大体15€程度(2220円)、夕食では25€(3700円)が平均。ホテルで紹介された中華料理屋で25€支払って頼んだセットメニューで出されたアスパラガスのスープがインスタントの味で、しかも蟹ではなくカニカマが載っていた時には怒りで震えがくるほどでした。そもそもこの店は表に「寿司」と書かれた提灯がぶら下げられており、アジア料理(風)なら何でもあるような店、その店構えを見て嫌な予感がしたのに撤退しなかったことを悔やみました。
 円安で大企業が儲かって良きことのように言われていますが、海外に出てみるとよく判るのが自国通貨の価値が落ちていること。買い物の度に寂しさとも惨め(みじめ)さともつかない嫌な感じがします。このことが身銭を切って判ったのはひとつの収穫だったかもしれませんが、切り傷は痛かった、、、。「取り戻す」という標語は、一体何を「取り戻したい」と思っておられるのか?ひょっとして庶民が海外旅行などとてもできなかった、1ドル360円だった頃だったりして!?

実際にお金を使ってみての印象としては、1€が100€105円だと妥当という感覚です。観光地・別荘地として若干物価が高いとして、それくらいなら「まあ仕方がない」という程度でしょう。全般的に高めなのが既に述べた不動産、レストランでの外食の他、衣料品、スパ等のサービス産業。一方で割安感があるのがフランス国鉄、ローカルバス、美術館などの入館料、ワイン。市場やスーパーで売られている野菜等の食材は、ほぼ日本と同等という感じでした。

 別荘の規模を知る絶好スポットはマントンの東側の隣町、ロクブリュヌ・キャップ・マルタン(Roquebrune-Cap-Martin)の、マルタン岬の遊歩道をぐるりと一周するのがお奨めです。どこからどこまでが敷地かが分からないような豪邸が立ち並んでいます。もっとも敷地が広すぎるため、家が見えないという難点はありますが。岬の周辺だけでなく、海岸方面から山の中腹にある中世の村に向かう坂道にもかなりの豪邸が並んでいます。また岬からはモナコの景色を眺めることができ、狭い所にギッシリと高層ビルが立っているのが見えます。

 実際にモナコをしかとこの目で見たのが、マントンからニースにバスで移動した時でした(フランス国鉄がストライキ中で間引き運転をしていた為、バスで移動しました)。モナコだけ南仏でも異質な感じで、空気中にお金の臭いがプンプン漂う感じです。ビルもピカピカした金属的な光沢を放ち、建築基準が明らかにフランスとは違うのではないかと思います。この辺りのホテルは、それこそ一部屋5万円、10万円というものではないかと想像します。私は見るだけでお腹いっぱいになりましたので、通り過ぎるだけで十分でした。

 この円安のせいもあってか、全般的に日本人観光客(と思われる人達)は少なかったです(パリにはそれなりにいるでしょう)。そもそもマントンは人気のエリアではない為に少ないということはありますが、エクス、ニースでも同様です。逆に増えたのが中国人観光客でアンティーブでもその団体に遭遇しましたし、ニースのホテルでも若い中国人の団体が来てました。話しかけたら上海から来た学生さんで、服装や物腰も大変洗練され、英語もとても上手でした。日本では若い人達の「内向きさ」が話題になっている中、上海の学生さんから発せられる弾けるような躍動感から「こういう中国の若い人達が、これから世界に羽ばたくのだろうな」という印象を受けました。

 以上、思いつくままに書いてみました。
ともかく始終『日本は経済大国???』ということを強く感じた旅でした。