[158]中国と新興諸国のジレンマ。金利か通貨か?

根尾知史 投稿日:2011/01/10 16:43

SNSI研究員の根尾知史です。現在、世界では、アメリカから中国への大きな「覇権(はけん、世界を支配・統率する世界帝国の権力)」の移動が起こっています。

時代を動かし、文明の発展させ、世界の経済成長を牽引する「世界覇権国(世界帝国)」が、私たちが住むアジアに新しく生まれつつあるという歴史的に重要な事実です。
その巨大な引力は、周りのアジア諸国を激しく巻き込んで、ものすごい勢いで増大を続けています。

これまでの「西洋(欧英米中心)の時代」は、アメリカという最後の白色人種の帝国が、120年と言われる覇権の寿命(盛衰の期間)が終焉を迎えることで、もうすぐ幕を閉じるのです。
今まさに、中国を中心とする新しい「アジアの時代」が始まりつつあります。

世界帝国(覇権国)の寿命は、「覇権サイクル(ヘジモニック・サイクル hegemonic cycle)」と呼ばれ、約100~120年が、その一周期であると言われます。
帝国の勃興と衰退や経済の成長には、必ずサイクル(周期、循環)があるという理論は、複数の学者によって提唱されています。

その基本にあるのは、景気の変動には循環(サイクル、波動)があり、その周期は50~60年で一巡りをするという「コンドラチェフの波」という経済理論です。「コンドラチェフ・サイクル」が二回りすると「覇権サイクル」になるということです。

この「コンドラチェフ」の景気循環は、技術革新や、鉱山(資源、エネルギー)の発見、農業(食料)生産量の変動、そして、戦争などによってもたらされると主張されています。
ニコライ・コンドラチェフ(1892-1938)という旧ソビエトの経済学者が、1920年代に発表しました。

世界の覇権(帝国)が西洋から東洋へ移るというと、とても大きな話で、どことなく掴みどころがない感じがします。
しかし、この「コンドラチェフの波(50~60年周期)」や「覇権サイクル(100~120年)」という視点から現在の経済・金融情勢の大変動や景気変動を見つめなおすと、世界を支配する力(覇権)の大移動しているという、歴史の流れに重なって、すべては引き起こされているのだという
事実を、実感で理解できるようになります。

数十年~百年の単位で起こるような、歴史的な変革から、私たちがここでテーマとしている、経済・金融の変動や、世界のお金の流れの一番大きなところを理解することができます。
19世紀末前後に始まったアメリカの「覇権サイクル」は、今、120年の時を経て、その最後を遂げようとしていることが分かります。

なお、副島隆彦先生は、世界で4つの帝国(ロマノフ王朝、オスマン・トルコ帝国、中国清王朝、オーストリア=ハンガリー帝国)がすべて滅亡した1917年が、歴史的に世界覇権がイギリスからアメリカに移った年であると主張されていたと思います。

アメリカの120年の「覇権サイクル」の下降時期にあたる、後半の60年間が、1940年から2000年までだと考えると、2000年からすでに、新しい中国の「覇権サイクル」が始まっていたのだ、と考えることができます。

そうすると、中国の現在の急激な高度成長は、中国の「覇権サイクル」始まってまだ10年目の、勃興期にあたるのだという位置付けで、見ることができます。
つまり、冷静に歴史の法則から考えると、あと50年は、中国という大国の世界覇権はさらに拡大し続けるということです。
さらに、残りの60年間、2060年から2120年までに中国は衰退して、また次の新しい覇権国に、その地位を譲るということになるのでしょう。

このたび紹介する英「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)」記事は、中国とアジアの新興諸国が、目下のインフレ(物価急騰)と戦うために、自国の「金利」と「通貨価格」をどうやってコントロールするべきか(これを「金融政策」といいます。その反対が「財政政策」)で苦渋の選択を迫られている、という現状を描いたものです。

欧米からの大量のダブついた投機資金(ホット・マネー=バッド・マネー)の流入が、その選択を難しくさせているのだということが、分析されてます。
この度も、日本語訳が見つからなかったので、また、私、根尾知史の速訳を併記いたします。多少の誤訳もあるかも知れません。

この記事で重要なのは、中国や東南アジアやトルコ、南米のブラジルやチリなどの新興諸国(emerging countries) が、「金融政策」として自国の「金利」を上昇させても、実際は、国内経済の「インフレ(物価上昇)率」を加味して計算しなおした「実質金利(real rate、リアル・レート)」で
考えると、実際の金利は高いどころか「マイナス金利」になってしまう国がほとんどであるという事実です。

これは、何を意味するのか。

インフレを抑えるために金利上げて、経済活動や投資(投機)を抑えているといっても、実際は物価の上昇(インフレ)の方が大きくて、そのスピードに追いついていないということです。

中国国内では、昨年一年間で2~3割の物価上昇が起こりました。食料品や燃料、衣類など日用品などの価格上昇は、経済成長に見合った、実の「効需要」がある「健全なインフレ」です。

いっぽう、上海、北京、深セン、広州などの沿岸部の大都市では、投機的なバブルによって、中心地の不動産価格などは数年の間に2~3倍にまでなっています。こちらが、中国政府が急いで押さえ込みたい、不動産の「ハイパー(バブル)インフレ」です。

それなのに、昨年の中国のように、金利を年間で0.5%程度、ちょっと上昇させただけの「金融政策」を行っても、実体経済に見合っていないということです。

だから、中国人が人民元を銀行に預けて、現在、金利が年率2.75%付きますといっても、それ以上の割合で、物の値段(物価)が日々上昇して行く訳ですから、誰も銀行預金が資産保全になるとは思っていないということです。
だから、中国人は、自分たちの将来のための蓄財、年金として、株式投資や、不動産投資を一生懸命やるのです。

現在、なぜこれほどの勢いで、インフレ(物価の上昇)が起きているのか。

「インフレ」とは、本当は「インフレーション(Inflation、膨張)」という言葉です。もとの意味は「価格」ではなく「通貨(お金)」の量が「インフレート(膨張)」するという意味です。
通貨の、市場に出回る流通量が膨らむとどうなるか。それだけ、通貨の価値が薄まって、通貨が安くなります。

価値の安く(低く)なった通貨で、おなじ商品やサービスを買おうとしても、おなじ値段では売ってもらえなくなるのです。

いま世界で、通貨を大量に刷り散らかして、その量を膨張(インフレート)させているのはアメリカです。だから、本当は、アメリカ国内でインフレが起きていなければなりません。

それが、中国やアジア、南米の諸国や、食品価格にインフレが移植されたようになっているのは、アメリカが増刷した大量の米ドルの余剰通貨が、米国内ではなく「新興諸国の株式市場」や「商品(コモディティ、実物資産)市場」にどんどんと流れ込んでいるからなのです。

「食糧危機だ!」とから「中国が買い占めているから」と言って、過剰に騒ぎ立てている論調には注意が必要です。
それは、「日本は財政危機だ!」と騒ぎ立てて、埋蔵金の掘り出しも終わっていないし、官僚の無駄をそぎ落とす本当の仕分けも終わっていないのに、「さあ大変だから増税を!」と主張する人々と同類です。

この海外からの投機資金は、一時的な取引(売買)利益を狙って流れ込んできているだけなので、いざと言うときには、さっと引き上げられて、アメリカ国内に戻ってしまいます。

だから今後もまだしばらくは、一時的な米ドルの買戻し(ドルキャリー・トレードの解除ということもある)で、ドル高=円安という反転は起こりうると考えられます。
同じ理由で、アメリカの株高も、あくまでも人工的にですがどこまでか続くのでしょう。ETF(上場投信、exchange traded fund)というアメリカの金融機関にダブついた、QE(quantitative easing、通貨量緩和)政策で銀行に注入されたの余剰資金を動かすための隠れ蓑となっている金融商品を通して、レバレッジを効かせた大量の短期資金で、HFT(high-frequency trading)などのロボット・トレーディングで、ニューヨークの株価操作をやっているから、なおさら、株価の不自然な上昇がまだあっても不思議ではありません。

こうした海外からの投機資金(ホット・マネー)で引き起こされたのが1997年の「アジア通貨危機」であり、それに続く1998年の「ロシア危機」、さらに、2001年の「アルゼンチンの財政破綻(デフォルト)」などです。

だからこそ、海外からの大量の投機資金が入り込んで、自国の株式市場や為替レートを荒らされないように、中国もブラジルもトルコも、他の新興諸国も必死で「金融政策(金利や通貨量を調整して景気や通貨価値をコントロールする)」をやっているのです。

中国は、日本の住宅バブル(狂乱地価高騰)を研究し尽くしているので、同じようなバブル崩壊を繰り返すことはしないのでしょう。
あるいは、経済成長のサイクルから見て、まだ勃興期に過ぎない中国は、成熟期を迎えていた、1980年代末の日本の経済状況とは、本質的に大きく異なっているのではないか、と考えることもできます。

ちなみに、アメリカも日本も、この「金融政策」をやり過ぎて、「ゼロ金利」になったままです。そして、景気も通貨価値もコントロールできないままの状態が長らく続いています。
つまり、経済成長が停滞して市場が成熟した、先進国の経済政策として、「金融政策」はほとんど効果がないのだ、という事実が露呈してしまっている、ということなのです。

これが、アメリカの経済学者ポール・クルーグマン(1953-)が、日本に対して自分が押し付けようとした経済政策は誤りだったと謝罪したことや、昨年、英「フィナンシャルタイムズ」紙が、実証実験ができない経済学の理論などは宗教に過ぎないという記事を、さらっと掲載してしまった、その根本にある真実なのでしょう。

いっぽうで、高度成長真っ盛りの新興諸国の経済の舵取りには、まだ、「金利」や「通貨量」を調整する「金融政策」が、ある程度の効き目を持っているということが分かります。

それでは、以下、記事をご参照ください。

(転載貼り付け始め)

●「中国の通貨政策のパズルが、新興市場を悩ませる」
“China currency puzzle irks emerging markets”
By James Mackintosh(ジェームス・マッキントッシュ筆)

「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)」
2011年1月8日

http://www.ft.com/cms/s/0/680e8a74-1ac0-11e0-b100-00144feab49a.html#axzz1APdB7Tb7

China is not making life easy for anyone. In just a week
the renminbi has given back 17 per cent of its rise since June, when Beijing loosened controls. It is now just 2.9 per cent stronger than in the summer and going in the wrong direction.

中国は、誰の生活も容易にはしてくれない。人民元は、北京政府が
昨年7月に緩和政策を行って上昇したところから、この1週間で17%
も下落してしまった。

いまや、人民元は昨年の夏から、2.9%高いだけであり、さらに
下落しそうな、望ましくない方向性にある。

A weakening Chinese currency is one of the few things that
could unite Republicans and Democrats in Washington. It is
also sure to worry those faced with the increasingly difficult task of managing other emerging economies, for whom China is the main competitor.

中国の通貨が安くなることは、米ワシントンで、共和党と民主党を
団結させることができる数少ないテーマのひとつである。

同時に、中国を一番のライバルとしている他の新興諸国で、経済の
舵取りをする為政者たちにとっても、確かに心配の種である。

Emerging markets are struggling with soaring food prices -
at record highs this week - and the resulting inflation.
At the same time, they are trying to stop enormous inflows
of hot money from developed markets.

新興市場は、今週、記録的に高騰している食料品の価格と、その
結果として引き起こされたインフレに苦しんでいる。

しかし同時に、彼らは、先進諸国市場からの巨大な投機資金
(ホットマネー)の流入を、抑えようともしている。

The dilemma is well known, but it has left politicians and
central bankers facing an impossible choice. Either they can keep their currencies stable by running low interest rates, deterring hot money, or they can control inflation by raising interest rates, slowing their economies.

この(二つの間の)ジレンマはよく知られている。

政治家と中央銀行の銀行家たちは、選びようのない選択肢を
突き付けられているのである。

つまり、金利を低く維持することで、自国の通貨を(安値で)
安定させ、海外からの投機資金(ホットマネー)の流入を抑える
という選択肢がまずある。

しかし(もう一方に)、 金利を上げるという政策によって、
経済活動を減速させ、自国内のインフレをコントロールする
という選択肢を選ぶこともできるのだ。

Unfortunately, the appropriate policies for a stable currency and for low inflation are directly contradictory - and require vastly different approaches from investors. Attempts are being made to try to escape this catch-22, controlling inflation without hitting exporters with a stronger currency. None are likely to work for long.

残念ながら、「安定した通貨のための政策」と「インフレを低く抑える
ための政策」は、このように真っ向から対立するものであり、投資家に
も大きく異なるアプローチを要求する。

このジレンマから逃れるために、インフレを抑制しつつ、同時に、
自国通貨が上昇し過ぎて、輸出企業に打撃を与えないようにする
試みが行われてきた。しかしそのどれも、長く続くことはないのだ。

Brazil and Chile demonstrated two of these alternatives this week.
Chile went down the well-worn route of currency intervention, sterilised through local bond issues, to try to limit peso strength.
Brazil was more devious, hitting its local banks with new rules restricting their ability to short the dollar. Both had an immediate impact, weakening their currencies.

ブラジルとチリが、今週、上記の異なる二つのアプローチを
それぞれに実施した。

チリは、すっかり使い古された通貨介入政策(中央銀行が自国通貨を
売って、外貨(米ドル)を買う。根尾注) を行い、(大量に売られて
市中銀行にあふれた通貨を) 国内債券の発行によって(吸収し)
不胎化 (ふたいか、市中に売られた自国通貨が流通しないように
すること。根尾注) させて、ペソが高くなるのを制限しようとした。

ブラジルは、もっと回りくどいやり方で、国内銀行に、米ドルを
売ることを制限するという、新しい法律を押し付けた。

いずれも、すぐに効果があらわれ、それぞれの自国通貨を下落させた。

Yet neither is likely to stop hot money for long, as there is too much swilling around. For example, investments in emerging market equity mutual funds hit $3.4bn in the first week of the year, according to EPFR Global - double last year’s weekly average.

しかし、どちらも海外からの投機マネーの流入を長く食い止めることは
できないだろう。あまりにも大量の資金が、溢れかえっているからだ。

たとえば、ミューチュアル・ファンド(投資信託)は、今年、最初の
一週間だけで、34億ドル(約2800億円)を新興市場の株式に投資した。

EPFR Global によると、これは昨年の、一週間の平均投資額の2倍の
金額になるそうである。

Investors can see what policymakers see: interest rates are
too low, and when they rise currencies will rise with them,
bagging foreigners a profit.

投資家は、政策者と同じことを知ることができる。つまり、現在の
金利は低すぎるが、通貨を切り上げると金利も上がってしまうので、
海外からの投資家にあまりに都合よく利益を与えてしまうのだ。

The chart shows just how low real rates, adjusted for inflation, are. Only Brazil and South Africa among major emerging economies have significant real rates; many are negative. China, even after its Christmas day rate rise, still has a real rate of just 0.46 per cent, its lowest since June 2008.

(金利変動の)チャートは、インフレ率を織り込んで調整した、
実質金利(real rates)がいかに低いかを示している。

ブラジルと南アフリカだけが、実質金利も高いが、他の多くは
マイナス金利なのだ。中国は、昨年のクリスマスの日にも金利を
上げたのにもかかわらず、実質金利はたったの0.46%しかない。
2008年の6月以来、最低である。

There is no reason to expect emerging markets to accept sharply higher rates, and stronger currencies, any time soon.

しかし新興市場が、急激に高い金利やより高い自国通貨を、早々に
受け入れると期待する理由もない。

Many seem to be keeping their fingers crossed that high food prices will prove temporary, allowing inflation to fall back without big rate hikes. In the meantime, they are using alternative policies to try to slow their economies and foreign capital flows, with the occasional small rate rise.
One, Turkey, has even taken a punt on cutting rates, hoping that lower inflows of foreign cash will slow its booming economy.

多くの新興国は、現在の食料価格の高騰が一時的なものであって、
金利も大きく上昇することなく、インフレがもう一度下降してくれる
ことを、神に祈り続けているようだ。

新興国のひとつであるトルコなどは、(反対に) 金利を下げるという
「逆張り」で、海外の現金資金の流入を低くおさえて、加熱気味の
国内経済を減速させることを望んでいるようである。

As Jerome Booth at fund manager Ashmore points out, emerging market policymakers must realise their approach is not sustainable.
But none wants to be the first to take a hit by letting their currency rise a lot - giving other emerging markets a chance to take export market share.

アシュモアというファンドの運用担当者であるジェローム・ブース氏が
指摘するように、新興国市場の政策者たちは、そのアプローチが
持続可能ではないことに気付くべきだ。

しかし、彼らのうち誰も、自国の通貨を最初に高騰させることで、その
先頭を切ろうとする者はいない。自国通貨の高騰で、他の新興諸国の
輸出市場にシェアを与えたくないのだ。

China holds the solution. If the renminbi was allowed to strengthen, other emerging countries would be likely to follow, easing inflation pressures, enriching impoverished populations, easing global imbalances and helping troubled western exporters.

中国が解決策を握っているのである。もし人民元が上昇するのを
許されるのなら、他の新興国もそれに続く可能性が高い。

それによってインフレの圧力をやわらげ、貧困層の人々を豊かにする
ことで世界的な不均衡を改善し、さらに、西洋諸国の輸出企業を
助けることにもなるのだ。

There could be a surprise agreement to rebalance currencies at the Group of 20 this spring, although the failure of its November summit does not augur well. Some hope China could be persuaded to open its capital account to developing country central banks, diversifying their reserves away from the dollar and so easing the way to a co-ordinated strengthening of emerging market currencies.
But neither looks probable.

この春に開催される「20ヵ国・地域主要国会議」で、各国の通貨間の
バランスを改善するような驚くべき合意に達することも起こりうる。
しかし11月に開催したときには失敗しており、これは悪い兆候である。

ある人々は、中国が他の新興諸国の中央銀行に自国の資本勘定口座
(キャピタル・アカウント、capital account)を開設し、その外貨準備を
米ドルから離れて多様化させることによって、新興諸国の通貨を強くする
協力をしやすくする、という提案を受け入れることに期待している。

しかし、いずれも起こりそうにない。

The most likely outcome in the short term is the worst for investors: more capital controls, slow currency appreciation, inappropriately low interest rates and more asset price bubbles.

短期的に最も起こりそうな結果は、投資家にとっては最悪のものだ。

つまり、より強力な資本統制と、緩慢な通貨価値の上昇、不当に低い金利、
そして、さらなる資産価格の高騰バブルである。

Inflation is unpredictable, with much of the food price rise due to bad harvests; but there are many signs that core inflation is rising in the emerging world, too.

収穫の悪化による食料価格の上昇などもあって、インフレは予測不可能な
状況にある。しかし、新興諸国の世界では、本格的なインフレが起こって
いるという兆候も、たくさん見られるのである。

The policy dilemma will eventually trump these factors, unless policymaker errors - or a new western crisis - derail emerging economies’ growth.

この金融政策のジレンマは、次第にこれらの要素よりさらに大きな
問題になるだろう。為政者が間違ったり、欧米英の西側諸国で新たな
金融危機が起こらない限りは、新興諸国の経済成長を脱線させる
ことになるなるだろう。

Investors must decide whether the dilemma’s resolution will be a focus on controlling inflation or on stabilising currencies. The former means short-term local currency bonds or cash are the best bet, while the latter should lead to rising inflation and benefit emerging equities.

投資家は、この金融政策のジレンマを解決する方法が、インフレを
抑制することに重点を置かれるのか、あるいは、通貨価値を低く安定
させることに集中するものになるのか、その判断をしなければならない。

前者(インフレ抑制が中心)の場合は、短期の現地通貨建て債券か
現地通貨の現金に投資すること、後者(通貨価値の安値が中心)の
場合は、さらなるインフレを引き起こすので、新興市場の株式が
利益になるだろう。

Whichever they choose, emerging market investors need to keep both eyes on China’s policymakers.

彼らがいずれを選ぶにせよ、投資家は、中国の政策者たちの両方の
可能性を見ておく必要がある。

(転載貼り付け終わり)

根尾知史拝