[1556]調査捕鯨の禁止と、国際社会の意思

楊航嘉 投稿日:2014/04/02 23:39

日本が行っている南極海での調査捕鯨(ちょうさほげい)は国際捕鯨取締条約に違反するとして、オーストラリアが国際司法裁判所(こくさいしほうさいばんしょ、ICJ)に提訴していた問題で、国際司法裁判所は日本の調査捕鯨を条約違反と認定した。ICJは日本に対して、今後、調査捕鯨を実施しないように命じた。

『エコロジーという洗脳』で書かれていたとおり、マッコウクジラの脳漿(のうしょう)は、潜水艦のソナー(音で他の船舶を探知する機械)や戦車などの不凍液として使われている。アメリカは、この戦略物資を十分な量ためこんでおり、捕鯨禁止運動の裏にあるのは戦略物資を他国に保有されたくないというアメリカの意思である。

以下の朝日新聞の記事によると、日本は万全の態勢で裁判に望んだが、結果は完敗であったという。

(引用貼り付けはじめ)

叱責の首相・釈明する担当者…調査捕鯨、日本完敗の訳は

編集委員・小山田研慈、菊地直己 シドニー=郷富佐子

2014年4月2日20時51分

 南極海における日本の調査捕鯨の中止を命じた国際司法裁判所(ICJ)の判決。事前の予想に反して、日本の完敗だった。捕鯨に対して国際社会から厳しい批判を浴び続けながら、なぜ日本政府は読み誤ったのか。そこには日本外交の見通しの甘さがあった。

南極海の調査捕鯨、中止命令 捕獲数「多すぎる」

 2日、オランダ・ハーグからの帰国後、ただちに官邸に駆けつけた日本側代理人で外務省出身の鶴岡公二・内閣審議官を待っていたのは安倍晋三首相の叱責(しっせき)だった。

 「判決結果は非常に残念で深く失望している」。鶴岡氏の説明を聞いた首相はそう告げたという。

 首相執務室を出た鶴岡氏は険しい表情を崩さず、足早に官邸を去った。

 自民党でも、政府の対応に批判が集まった。同日、党本部で開かれた捕鯨議連の総会では、武部新議員が「相当自信があった印象だが、どういうことか」と追及。外務省の石井正文国際法局長は「本当にわからなかった。裁判はふたをあけてみないとわからない」と、釈明に追われた。

 日本政府は準備段階から「日本として最良のチーム」(外務省幹部)という万全の態勢で裁判に臨んできたはずだった。代表団には著名な国際法学者のほか英、仏などの法律顧問も参加した。同じ捕鯨国のノルウェーなどからの科学者も加えた「最強」の布陣のはずだった。「最低でも数千万円単位の弁護報酬を支払い、世界的権威の弁護士を雇った。完敗はあり得ないとなめていた」(政府関係者)と打ち明ける。

 弁論内容にも強い自信を持っていた。昨年6月下旬から7月中旬にかけてハーグのICJで行われた日本側の口頭弁論でかなりの手応えを感じていたからだ。「日本の考えをよどみなく説明でき、論理的には豪州に勝っていた」と関係者は話す。

 日本は徹底的に法律論にこだわった。国際捕鯨取締条約(ICRW)の第8条には、調査捕鯨を認めることが明記されている。「どうみても法的には問題ない」と自信を深めた。

■捕獲頭数の多さに不安

 だが、不安のタネはあった。合計で1千頭を超える捕獲頭数だ。頭数の多さに無理があることはわかっていた。それでも、ICRWには調査捕鯨の捕獲頭数の上限は書いていないから、大丈夫だろう、と楽観視していた。

 実際に裁判官の多くがこの弱点を指摘した。第1期調査(1987年度~2004年度)から、第2期(05年度~)に切り替わる時に、捕獲頭数が倍増した。しかし、その理由や過程が不透明であることや、捕獲枠と実際の捕獲数がかけ離れているのに計画がそのまま維持されていること、などが批判の対象となった。日本側は「反捕鯨団体などの妨害で捕獲できない分がある」と反論したものの、裁判所の理解は得られなかった。

 また、裁判官の構成への不安もあった。外務省幹部は判決前、「反捕鯨国出身者の政治的思惑が働く可能性もある」と漏らしていた。水産庁によると、裁判官16人のうち、欧米など反捕鯨国出身の裁判官が10人。判決ではこのうち9人を含む12人が日本の調査捕鯨中止に賛成した。「ICJは捕鯨の善悪でなく、法的な議論をするところ。裁判官は法的な見地から判断してくれるはず」(外務省幹部)との希望的観測はもろくも崩れ去った。(編集委員・小山田研慈、菊地直己)

■欧米、日本に批判的

 「勝った」側のオーストラリアでは、「南極海に平和が訪れた」(公共放送ABCテレビ)や、「クジラが救われた」(シドニー・モーニング・ヘラルド紙)など、判決を大歓迎する報道ばかりだ。

 一方で、日本との経済連携協定(EPA)交渉が大詰めのため、「最悪のタイミング」(豪外務貿易省幹部)との懸念もある。訪日して7日に安倍晋三首相と会談する予定のアボット首相は1日、判決を歓迎しつつも「我々が絶対的に優先するのは日本とのEPAだ」と報道陣に述べた。

 裁判に参加しなかった欧米諸国でも、日本に批判的な記事が目立つ。

 フランスのフィガロ紙は1日付で「日本は(商業)捕鯨を継続できるよう調査捕鯨プログラムを『でっち上げた』」ために豪州から訴えられたと批判的に報じた。米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は「判決は南半球のみが対象。クジラを守る戦いは終わっていない。日本は国際的な非難を待たず、すべての捕鯨をやめるべきだ」と同日付の社説で論じた。オランダのトラウ紙は同日付の記事で「中国との尖閣諸島の問題で日本は『国際法のもとで解決を』と強く主張している。ICJ判決を無視すれば、日本の外交的信頼に大きくマイナスになるだろう」とした。(シドニー=郷富佐子)

(引用貼り付けおわり)

これは、国際社会の意向に反して暴走を続ける日本の安倍政権に対する警告であると考えていいだろう。だからこそ、上の記事にあるとおり安倍首相は激怒して担当者を叱責したのであろう。

日本は2010年に、海上自衛隊の保有する潜水艦を16隻から20隻以上に引き上げる決定をしている。あまりに急ピッチで増やしているので、潜水艦の勤務に適応できない(適性がない)乗組員が潜水艦に乗せられ、どんどん自殺している。これは、海上自衛隊で問題になっている。

今回の国際司法裁判所の決定は、「これ以上、潜水艦はふやさせないぞ」という国際社会の意志であると読み取れる。

先日は米国が研究用として日本に提供していた核物質(プルトニウム、高濃縮ウラン、核兵器の材料となる核物質)を返還させられることになった。

これも、日本が密かにおこなっているであろう核兵器の保有に向けた技術開発に対して「やめろ」というアメリカからの強いメッセージがあったためだろう。

危険な独走を続ける安倍政権=日本に対して、国際社会は「大人しくしろ」という強いメッセージを突きつけている。戦前の轍(てつ)を踏まぬよう、我々は冷静に国際社会の声を聞くべきだ。