[1514]安倍の靖国参拝問題が大きな火種に。日本は世界中を敵に回してはいけない。

副島隆彦 投稿日:2014/01/09 18:13

副島隆彦です。

 急いで書きます。 どうも、「安倍首相の靖国参拝で、日本は世界を敵に回しつつある。アメリカは本気で怒っている。危険な事態になりつつある」で書きます。

 年末の12月26日の安倍晋三首相の、靖国神社参拝は、相当に深刻な事態を生み出しつつあるようだ。以下の 時事通信の 1月3日の記事が重要だ。オバマ大統領は、今年4月のアジア諸国歴訪の旅から、日本だけを除外して訪日せず、安倍首相との首脳会談をしないと決断しそうである。

 私は、年末から不愉快なままであったが、自分の不快感の理由が、ようやく解けた気がする。私は、以下のような質問に対する、大きな反論、反撃の文章を現在、書きつつある。 どこまで読み手たちを説得できるだろうか、と考えながら。

 その質問とは、昨年の中ごろ、さる経営者から、面と向かって言われた。

「副島さん。どうして、靖国の英霊(えいれい)を参拝しに行ったらいけないわけ?  戦争で亡くなった軍人たちの霊に哀悼の意を捧げに行くのは私たち国民の義務だよ。 外国から、あれこれ言われなければいけないわけ? 」 

という 質問の形での議論のふっかけであった。 これに、私はそのうち、全力で反論して書いて、そしてこの経営者に代表される人々を説得する。穏やかに、コトバの力で、説得(パースウエイジョン persuasion )することだけが、人が 他の人にできることだ。それ以上はやってはいけない。

 ここで、端的(たんてき)に言うと、United Nations (ユナイテッド・ネイションズ=連合諸国、連合国側) の総意に、日本は従わなければいけないのだ、ということだ。世界を敵に回してはいけない。この 連合諸国=が第二次世界大戦の間にできて、それが、そのまま、戦後も、そして今も 世界体制( The U.N. ×「国際連合」は愚かな、意図的な訳語だ。正しくは United 連合 Nations 諸国 、連合諸国だ  )なのだ。現在のこの世界体制を敵に回して、安倍晋三たちは、勇ましい、頓馬(トンマ)な闘いをやっている。 世界とはどういうところか、が分かっていない。 世界の厳しさも分かっていない。 甘やかされた 坊や みたいな連中だ。

「ヤルタ=ポツダム体制の打破」、「東京裁判史観の克服」、「戦後レジームの打破」を掛け声にしている、愚か者の集団だ。 その甘えきった態度が、どれぐらい自分たちの愚かさを、今、世界中に、満天下に晒(さら)しているかを、分かっていない。 安倍晋三たちは、いいかと思って世界の舞台で裸踊りをしているのだ。

それでアメリカに楯突いてみせれば、それで、自分たちが英雄気取りだ。アメリカ(オバマ政権)が怒っているのは、今の日本の極右政権が、世界の戦後秩序=世界体制 を 、半ば無自覚に破壊しようとしている、甘ったれた連中だということを、日本側が分からないことだ。 安倍たちは、アメリカを敵に回しているのではない。世界を敵に回しているんだ。 世界を敵に回すと、本当に、恐ろしいことになるのだ (世界は、いったん決めたら、本当に国際的強制執行をする)。

 東条英機(とうじょうひでき)首相(大将)たち、7人戦争指導者を、死刑にして首を吊ったのは、アメリカの軍事法廷(ミリタリー・トリビューナル)というだけでなく、世界体制なのだ。その東条たちを、合祀(ごうし)して祀(まつ)っている(1978年から)靖国神社は、世界基準での The Tomb of Unknown Soldiers ザ・ツーム・オブ・アンノウン・ソルジャーズ 無名戦士の墓 ではない。東条たちは、戦争指導者たちであって無名戦士ではない。

 自分たち、世界体制が東条たちの首を吊ったのに、そこに、どうやって、外国の元首たちが、花輪を持って、哀悼の参詣をすることができるだろうか。世界中の国々の無名戦士の墓に、外国の元首(大統領、首相、国王)は、お参りするのだ。 このことを、日本人は、分かっていないのだ。誰も説明する者がいない。皆、愚かな日本国内の境域と、テレビ新聞の洗脳で、国民は、世界基準の知識、世界で通用している当たり前の思考、思想を、を全く教えられず、めくら(=盲目)にされたままだからだ。

 日本人の中では、私、副島隆彦だけが、それらのワールド・ヴァリューズ  world values ( 世界普遍価値観=せかいふへんかちかん= 、世界基準での考え方)を理解している。そして、それを日本国内に、本の形で広めている。

 昭和天皇が、東条たちの合祀問題があった、1978年以来、靖国への参拝をしなくなって、大きな怒りと共に、ストライキを始めた。昭和天皇は世界を知っている。日本の元首(げんしゅ、sovereign ソブリン、主権者、国王)だったから、世界を敵に回したらいけないのだ、と知っていた。

 だから、広島、長崎に原爆が落とされた後、世界に向かって、日本人(日本国民全部)は、命乞いをして、これ以上もう、皆殺しにしないでくださいと、土下座して、ポツダム宣言を受諾したのだ。

 このことの意味を、今の日本人は、分からなくなっている。世界は、日本国内だけでしか通用しない、愚かな考えに、同意しない。そして、安倍晋三の自分勝手な靖国参拝を受けて、今、一番、怒り狂っているのは、アメリカだ。このことの意味を、愚か極まりない、バカ右翼と、安倍晋三を支えている自民党の中の右翼勢力は、反省した方がいい。 世界を敵に回して勝てると思っているのか。この事態では、ドイツでさえも日本の肩を持たないだろう。

 だから、私、副島隆彦が、2007年に、首相になった安倍晋三たちが、アメリカで、「ザ・カルト・オブ・靖国」 The Cult of Yasukuni と呼ばれているのだ、という評論文を書いたのだ。これを、もうすぐ 会員ページに復刻して載せるので、待っていてください。

 まだまだ、書きたいことはあるが、この問題の重要性については、急いで、一冊の本にする。反中国、嫌韓(けんかん)を言い続けて、中国人、韓国人を差別して、下卑(げび)た溜飲を下げていい気になっている、愚か者たちに、私は、「自分たちが、今、世界を敵に回していることに気づかないのか」と怒りの鉄槌(てっつい)を下す。待っていなさい。

以下は、私がこの一週間で、気づいた範囲で、一番、優れている文章だ。説得の疑問形を畳み掛けるように使っている名文である。浜矩子(はまのりこ)女史の文である。流石(さすが)である。

(転載貼り付け始め)

「 意図(いと)無ければ罪も無しか 」   浜 矩子(はまのりこ) 

 東京新聞   2013年12月29日

 
「もとより、中国あるいは韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」。
十二月二十六日、靖国神社参拝後に安倍晋三首相がこういった。

 この発言を含む首相談話の英語版が、首相官邸のホームページに掲載されている。上記の英語バージョンは次のとおりだ。
 It is not my intention at all to hurt the feelings of the Chinese and Korean people.

 日本語の「考えは毛頭ない」に相当する部分が It is not my intention at all の個所だ。 intention は「意志」あるいは「意図」の意味だ。

 「そんな意志は全くございません」「そのようなことは、全然意図しておりません」。こういう言い方を聞くと、たちどころに歯が浮いてかなわない。実に誠意がない。こんなふうにうそぶく人々は、およそ、何をたくらんでいるか分からない。実に腹立たしい。

 意図してさえいなければ、どんな結果を招いていてもいいというのか。許されるというのか。こちらに傷つける意図がなければ、相手は決して傷つかないとでも思うのか。あるいは、こっちが意図していないなら、傷つく方が悪いというのか。勝手に傷つくなら、致し方ない。知ったことか。そういうことなのか。

 この種の発言で突っ走って行く人は、やがて、つぎのようにいうようになる。「そんなつもりじゃなかったんです」。これが出た時は、もう手遅れだ。取り返しのつかないところまで、相手を傷つけてしまっているのである。

 意図が無ければ罪はない。意図が良ければ、悪くない。傷つける意図無き者は、決して相手を傷つけない。これが大人のいうことか。人の足を目いっぱい踏みつけても、意図がなければ、相手は痛がらないのか。相手がいくら痛がっていても、「だって知らなかったんだもん」と舌を出してそっぽを向くのか。その気が無ければ、人を車でひき殺しても、相手は死なないとでも言うのか。こちらにその気が無ければ、相手はひき殺されても仕方がないのか。

 かくも幼児的感覚で、政治が執り行われていいのか。政策が形成されていいのか。

 子どもと大人の最大の違いは、どこにあると考えるか。答えは明らかだ。それは、人の痛みが分かるか否かにある。新生児には、人の痛みが全く分からない。そこから出発して、人間は次第に人の思いに心を配るようになる。そして願わくば、人の痛みを自分の痛みとして受け止めることができるようになる。そのような魂の力こそ、大人の力だ。

 皆さんはアダム・スミスをご存じだろう。経済学の生みの親だ。大著「国富論」の著者だ。彼はまた、「道徳感情論」の著者でもある。

 「道徳感情論」あっての「国富論」だった。そのようにいわれる。経済活動は、道徳的感情に根差していなければならない。ざっくりいえば、そのような理念に基づく書だ。

 その中で、スミス先生は次のように言っている。「我々は、他者の悲しみを目の当たりにして、しばしば悲しみを感じる。…このような感情は、何も高潔で人間性あふれる人々に限ったものではない…。最大級の悪者で、最も平然と社会の秩序を踏みにじるヤカラでさえ、このような感情と無縁ではない」(翻訳筆者)。そのはずだと思う。そう思いたい。だが、今、そこがかなり心配になって来ている。

信仰厚きスミス先生、どうか、我らのために祈りたまえ。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。以下は、冒頭の、オバマが、安倍晋三の思慮の足りない、世界とは何か、を自覚しない、幼稚な行動に怒って、報復の行動に出ようとしている記事である。

 1月3日付の時事通信は、以下の記事の最後で、「オバマ大統領は今年4月にアジアを歴訪する。・・・地域の緊張がいつにも増して高まっている中、日本が中韓両国との関係改善策を打ち出せなければ、米政府内で訪日に否定的な声が高まる可能性がある」と書いている。この箇所が極めて大事である。 このままだと、オバマは日本には来ない、安倍には会わない、という重大な判断をしそうである。

(転載貼り付け始め)

「 安倍首相、靖国参拝  米国、対中韓関係改善への具体策を日本に要求の方針-大統領訪日に影響も 」
 
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014010300135

 時事通信 2014年1月3日

 安倍晋三首相の靖国神社参拝を受けて、オバマ米政権が今後日本に対し、中国や韓国との関係改善に向けた具体策を求める方針であることが、3日分かった。

 複数の米政府高官が明らかにした。米側は、日本の指導者の靖国参拝は地域の不安定化を招くとして、首相が参拝を継続する可能性についても見極めたい意向だ。

 米政府の方針は、現状のままでは同盟関係への悪影響を避けられないとの認識を反映している。 オバマ政権は首相の靖国参拝に対し、「disappointed(失望)」を表明した。 複数の日米外交筋は「特別に厳しい表現をしたのではなく、『がっかりした』という正直な気持ちを的確に表した」と説明。 同盟国である米国の反対の立場が聞き入れられなかったことへの不満があると述べた。

 米国の靖国参拝への反対姿勢に対しては、衛藤晟一首相補佐官が昨年11月に訪米した際、 ラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が「(参拝すれば)日米関係に悪影響が出る」と明確に伝えている。 衛藤氏はこのとき、首相の靖国参拝は選挙公約だなどと主張したという。

 安倍首相が靖国参拝をした昨年12月26日、米側に「首相の決断」が伝えられたのは、参拝の約1時間半前だった。

 オバマ政権が懸念しているのは、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定に対して中国を含む周辺国の反発が高まったり、アジア戦略の基礎となる日米韓の枠組みに亀裂が入ったりすることだ。現在の情勢は、域内の安定を最大の目標とするオバマ政権の「アジア重視」外交に水を差している。

 ハーフ国務省副報道官は2日の記者会見で、新藤義孝総務相が安倍首相に続いて靖国参拝したことを受けて 「われわれは日米関係の今後の方向性を注視している」と改めて強調した。

 オバマ大統領は今年4月にアジアを歴訪する。 約3年半ぶりの日本訪問が検討されているものの、地域の緊張がいつにも増して高まっている中、日本が中韓両国との関係改善策を打ち出せなければ、米政府内で訪日に否定的な声が高まる可能性がある。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。次に載せるのは、安倍晋三の靖国参拝のあった26日の直後の、その日のうちの、アメリカの大使館からの公式の抗議文である。アメリカは、あの、アーミテージや、マイケル・グリーンたちを使って、正式の政府特使として、日本の首相および大臣たちの、靖国参拝はしないように、とずっときつく仕事として、説得しに来ていた。それらを、安倍は振り切った。

 アーミテージは、このあと、 「あーあ、安倍はやっちゃったよ」 It’s over. 「もう、終わりだ。 これで俺のお役も御免( クビ)だな。あーあ」という感じになっている。 この正しい訳を、意図的に新聞記者たちは、改変している。

(転載貼り付け始め)

●「 靖国参拝、在日米国大使館の声明全文」 (日本語・英語)

2013年12月26日23時47分  朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312260575.html

 在日米国大使館は26日、安倍首相の靖国神社参拝を受けて声明を発表した。日本語訳は次の通り。

 日本は大切な同盟国であり、友好国である。しかしながら、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化 させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。

 米国は、日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、 地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する。

 米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する。

 Statement on Prime Minister Abe’s December 26 Visit to Yasukuni Shrine

 Japan is a valued ally and friend.Nevertheless,the United States is disappointed that Japan’s leadership has taken an action that will exacerbate tensions with Japan’s neighbors.

  The United States hopes that both Japan and its neighbors will find constructive ways to deal with sensitive issues from the past, to improve their relations, and to promote cooperation in advancing our shared goals of regional peace and stability.

  We take note of the Prime Minister’s expression of remorse for the past and his reaffirmation of Japan’s commitment to peace.

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 昭和天皇が、本当は、この靖国への東条英機、松岡洋佑(まつおかようすけ)らの合祀があったあとに、どういう歌を詠んだかを、最後に載せます。この(御製、ぎょせい)の和歌が持つ深ーい意味の解説は、今日はやりません。

 靖国の 名に背(そむ)き まつれる 神々を 思えば 
 うれひの 深くもあるか

である。 日本の右翼たちは、昭和天皇の意思に逆らってはいけないのだ。

日本は、何があっても世界を敵に回してはいけない。それが、日本国の最高責任者としての天皇の真意だ。

副島隆彦拝