[149]国際的情報統制社会へ向けて。

山口@福岡 投稿日:2010/12/22 23:37

こんばんわ、山口@福岡です。
日経新聞とJBpressの記事を見ると、事実上、国際的なインターネット上のコンテンツ規制への布石だろう。

日経新聞より転載
(転載開始)
【米、通信回線の従量課金容認 「ただ乗り」批判に配慮  連邦通信委がルール 大容量コンテンツの配信制限は禁止】 2010/12/22 11:40

【シリコンバレー=岡田信行】米連邦通信委員会(FCC)は21日、インターネット関連企業に公正な競争を促すルールを策定し、採用した。通信回線に負荷がかかるという理由で動画など大容量コンテンツ(情報の内容)の配信を制限することを禁止する一方、インフラの整備・維持の負担に配慮。利用企業への利用量に応じた課金を認めることにした。
新ルールは通信大手やコンテンツの配信会社などが対象(テキサス州のAT&T本社)=AP
 適用対象はコムキャストなどCATV大手やAT&Tをはじめとする通信大手で、ベライゾン・ワイヤレスなどの携帯電話大手は「まだ通信インフラの整備途上にあり、慎重に対応する」として事実上、適用除外した。新ルールは5人で構成するFCCが3対2の僅差で可決した。米国内では、議論を性急に進めた観もある政府の動きが今後、規制強化に向きかねないと懸念する声も出ている。

 競合する企業が配信するコンテンツやサービスなどを特定してデータ通信を制御したり、アクセス(接続)を遮断したりすることを禁じ、通信回線の混雑回避のために制御する場合は適正な情報公開を要求。同時に、技術革新やネットサービスの普及のための負担を一部企業に集中させない配慮として利用量に応じて利用者に課金する「従量制課金」を認める。

 新ルールが定めた一連の措置の背景には「ネットの中立性」と企業のインフラ負担の問題が絡みあった米国内の議論がある。

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 「ネットの中立性」は高速回線を使って誰でも自由に、制限や偏りのないサービスを提供できるシステムを目指す考え方。だが、ネットを使った無料電話やテレビ通話などが米国だけでなく世界的に普及する中、米通信大手の一部はこうしたサービスを「ただ乗り」と批判。CATV大手の中には利用者の大容量通信を制限するものもあり、利用者制限の動きが出ている。

 無料テレビ通話などでこうしたサービスを使う新興のIT(情報技術)企業は「中立性を侵す行為」だと反発。IT業界の新旧勢力が消費者も巻き込んで対立する構図となっている。

 事態を重視した通信大手のベライゾン・コミュニケーションズとネット検索最大手グーグルは今年8月、共同提案を発表。FCCはこれをたたき台に地ならしを進め、今回の新ルール可決にこぎつけた。

 「ネットの中立性」を大統領選でも公約したオバマ大統領は21日「ネットの自由を守りながら技術革新を促すもの」と評価する声明を発表。だが、共和党や通信大手は「企業の活動を規制すべきではない」と反発した。消費者団体からネット利用への制約拡大を恐れる声もある。

<FCCが策定したネット関連企業対象のルールのポイント>
・大容量コンテンツの配信を制限する行為を禁止
・インフラ整備や維持の負担にも配慮し、従量制課金を容認
・自社と競合するコンテンツなどを狙い撃ちにしたデータ通信の制御などを禁止
・通信回線の混雑を回避するために制御する場合は、適正な情報公開を要求
(転載終了)

JBpressより記事を転載

(転載開始)
【データ輸入大国にまっしぐら 太平洋を越えるネット動画】
 JBpress 2009.05.15(Fri)  貝田 尚重

贔屓の野球チームが勝った日は気分がいい。まして、負けを覚悟した試合が逆転サヨナラ勝利となれば喜びもひとしお。リモコン片手にスポーツニュースをハシゴするのはファンとして基本だが、それだけでは飽き足らず、夜中にニコニコ動画やユーチューブなどの動画共有サイトで決勝シーンを再生してニンマリ――というのは、私だけではないハズ。しかし、その動画がアメリカからやってきていることを知っている人は意外と少ないのではないだろうか。
 光回線の普及に伴い、インターネットの通信量(トラフィック)は、右肩上がりに上昇している。総務省の推計によれば、2008年11月のブロードバンド契約者の通信総量は988.4Gbpsで、4年前の2004年11月の319.7Gbpsと比べて3倍以上。1年前の2007年11月の812.9Gbpsと比べても2割強の増加が続いている。

海外データセンターへの依存度が高まっている〔AFPBB News〕
 膨大な量の情報の通り道となり、一時保管場所ともなっているのがデータセンターと呼ばれる施設だ。通信量の増加に伴い、データセンターの増設が必用となるが、近年、日本のネットサービス事業者が、米国のデータセンターを利用するケースが増えている。その結果、甲子園で金本が打ったサヨナラホームランも、人気アイドルの結婚会見の映像も、かなりの確率で、太平洋の海底ケーブルを往復して私たちのPC画面に映し出されているというのだ。
 なぜ、日本で利用する情報が、わざわざ、海外のデータセンターを経由して日本に入ってくるのか。つきつめて言えば、日本のデータセンターの国際競争力の低さにその原因がある。
 地価や法人税の実効税率が高いことに加えて、地震の多い日本は諸外国に比べて建築基準が厳しい。ただでさえ建設コストがかさみがちなところに、消防法が大きな障壁となっている。
 サーバーの集中管理などを目的として設置されるようになったデータセンターは、企業のオフィススペースとは切り離されて郊外エリアに設置されることも多い。建物内には機器がぎっしりと並べられているだけで、常駐しているのは保守管理に伴う限られた要員のみ。事実上の倉庫にもかかわらず、日本では何百人もの人が働くオフィスビルと同じ基準で消防施設の設置が義務付けられている。
 大量の電力を消費するデータセンターにとって、省エネは至上命題。しかし、サーバーなどから放出される暖気を隔離して管理するために密閉度を高めようとすると、消防法で、より厳しい消火設備を求められる可能性がある。省エネするほどに防火コストが増大する矛盾に陥ってしまう。

米動画共有サイトは日本でも大人気〔AFPBB News〕
 電力自由化により電力会社の供給義務が緩和され、米国のような超大型の高効率データセンターが建設しづらくなったことも理由の1つ。さらには、スポーツ中継やテレビドラマを録画した動画が大量に出回るサイトでは、著作権上の問題を曖昧にするために、あえて、国内にデータセンターを置かない選択をする事業者もあるようだ。
 この結果、2002年以降、日本のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の海外データセンターの利用が徐々に増え、2004年頃から、海外から日本に流入する通信量が、日本から海外に流出する通信量を上回る「輸入超過」となっている。
 データの「貿易赤字」は拡大の一途をたどり、2004年には20%だった全通信量に占める海外からの流入シェアは、2006年に30%を超え、今や40%に迫る勢いだ。米国のデータセンターを利用していても、光通信では往復0.3秒しかかからないため、一般のユーザーが娯楽系コンテンツを楽しむ分には、何の支障もない。もちろん、映像が海の向こうからやってきていることに気づいてすらいないだろう。

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 しかし、海外サーバーへの依存が高まったことで、本来、日本の通信事業者が得られていたはずの年額1000億円の通信費が、海外の通信事業者に支払われている計算になるという。さらに、早稲田大学理工学部の後藤滋樹教授は、空洞化の弊害を指摘する。「ハブ空港があれば、物流や倉庫などの関連産業が発展し、雇用が生まれ、都市が発展する。情報通信でも、ハブとなる国では通信事業が活性化し、設備投資をする余力や新サービスが生まれ、新規雇用を産む好循環ができる。日本がその地位を確保していかなければ、通信事業者は疲弊し、末端のユーザーにもしっぺ返しがくるかもしれない」という。
 ところで、経済対策の目玉の定額給付金の支給が全国で始まっている。給付金は、麻生内閣に支持率底上げ効果を、支給を担う地方自治体には大きな事務負担をもたらした。自治体は、独自に管理ソフトを開発するなど工夫を凝らしているが、甲府市が、米系のソフトウエアサービス会社・セールスフォースが提供するシステムを利用したことが関係者の間で話題になっている。
 セールスフォースの提供するシステムは最新のクラウドコンピューティング技術を活用したもの。ネットで結ばれた仮想サーバーの中にあるソフトウエアを顧客が利用するイメージだ。顧客にとっては、ソフトウエアを購入したり、自前のサーバーにプログラムを組み込む必要もないため、低コスト・省時間のメリットがある。
 しかし、定額給付金の支給は、住民基本台帳の情報に基づいて行われている。自治体が管理する最高の個人情報が、外部の企業に預けられ、しかも、国外のデータセンターで処理された情報に基づいて、給付通知が送られてきたことを、甲府市の住民は知っていただろうか。
 もちろん、ソフトウエアサービス会社は、十分なセキュリティー管理を行っているであろうし、意図的に個人情報を流出させるようなことはないだろう。しかし、万が一、その企業が経営不振に陥り、破産法を申請したら? データセンターを譲り受けた支援企業は同じレベルのセキュリティーを保障してくれるだろうか?
 2001年9月11日の同時テロ後に米国で制定された反テロリズム法(愛国者法)は、捜査当局に個人情報収集のための強大な権力を与えており、米国のサーバー上にあるデータベースは、当局による一方的な閲覧の対象になり得る。どんなに慎重に、信頼できるデータセンター運営会社を選んでも、そして、その会社が経営危機に陥ることが無くとも、知らず知らずのうちにあなたの個人情報が米国政府によって閲覧され、管理されている可能性がある。
 データセンター内に保管されている情報は、データセンターが存在する国の法律に準じて扱われる。後藤教授は「安全や安心のための法整備やガイドラインを作っても、海外依存が高まれば、意味をなさなくなってしまう」と指摘する。

餃子事件の教訓は活かせるか?〔AFPBB News〕
 毒入り餃子事件が起こった時、多くの国民が日本の食料自給率が40%まで低下していることを認識し、食の安全・安心について考えた。しかし、一度、低下した自給率は簡単には回復しない。同じことが情報の世界で起こらないとは限らない。
 「米国経由でもタイムラグはないから」「娯楽コンテンツなど、誰にモニターされても困らないもん」――。油断は大敵だ。依存体質から抜け出せなくなる前に、情報の安全・安心について議論する必要がある。
(転載終了)
転載元:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1033