[1439]腰椎椎間板ヘルニアについて

谷澤克洋 投稿日:2013/11/07 09:00

会員番号6532の谷澤克洋と申します。初めて投稿させていただきます。
私は田舎の中規模病院で主に脊椎の手術を担当している医学部卒後21年の名もない46歳の整形外科医です。
今回の腰痛論議に対し、手術をする医者の立場から異論がありました。
副島先生にメールをさしあげましたところ、丁寧なご返事をいただき掲示板に載せるようとのこと
ですので、そのまま副島先生のご返事とわたしのメールを貼りつけます。

谷澤克洋 医師へ

副島隆彦から

私宛ての初めてのメールをありがとうございます。
谷澤医師が、現役の整形外科医としての 20年以上の経験の重みをを持って、
以下のことを、私に平易に、簡潔に書いてきてくださって、本当に有難うございます。

私は、この腰痛、頚痛問題での 、これから、新たに、学問道場を部隊にして
巻き起こるであろう、大きな国民的な議論を、大切に見守り、発展させてゆこうと思います。

どうぞ、谷澤医師は、以下でお書きのことを、このまま重たい掲示板に、ご自分でお載せください。
そして、議論の輪を専門医としての立場からも、作ってください。 

私は、患者としての立場、医師としての立場の両方を平等に冷酷に見つめたいと思います。
この腰痛、頚痛問題においては、それ以外の傍観者や、タダの冷やかし人間は、ナシです。
認めません。なぜなら私たち自身が、腰痛持ち、頚痛持ちとしての国民そのものだからです。

私は、精神病や、ガンや、感染症(伝染病)などのもっと難しい分野(私は、このようにはっきりと
言います)の医学や病気の問題については、素人である医学者以外が、あれこれ行っても、
鎧袖一触(がいしゅういっしょく)にされるだろうと、分かっています。 しかし、腰痛、頚痛に
関しては、そういう複雑問題は無い、素人国民でも、必ず、患者としての自分として、医師たちと
対等に渡り合える、と 考えています。   

 ですから、患者、医師の両方が、この土俵(リンク)では、
対等です。そのように、私、副島隆彦が 行司(ぎょうじ、レフリー)となって、仕切ろうと思います。
私の知識人、総合人間学(そうごうにんげんがく)の専門家としての自信と、まわりが私に対して持つ
信頼、信用を基(もと、元、もと)にしてこのように 言います。

ただし、私が、今、自説として、昨日、公表しました文に、書き加えるとしましたら、それは、
例えば、下肢(かし)の 膝(ひざ)の 半月板(はんげつばん?)が、摩耗(まもう)し、すり減って起こる 痛み
に対しては、トリガーポイント・注射は、無力だろうと、考えます。このような、主に高年齢婦人に現れる
膝の痛み のような 下肢の 疼痛(とうつう)などの派生する議論を、うまく、整理しなければいけないと、
素人考えながら、今の段階で、考えています。

谷澤医師。 貴兄のその誠実で真剣な、20数年の整形外科医としての人生を懸けて、どうぞ、重たい掲示板に
このまま、ご自身の主張を公表なさってください。  それが私たちの望むところです。

今、私が書いていますこの文も、一緒に乗せてください。 もし、掲示板への 掲載の操作の仕方が分からない
ということでありましたら、私が、行います。 共に、大きな国民的な議論を巻き起こしましょう。

今後とも「副島隆彦の学問道場」をよろしくお願いします。

副島隆彦拝

—–Original Message—–
From: tanizawa
Sent: Wednesday, November 06, 2013 9:17 PM
To: GZE03120@nifty.ne.jp
Subject: 腰椎椎間板ヘルニアについて

副島先生、初めてメールさせていただきました。会員番号6532の谷澤克洋と申します。

学問道場では様々な知識を学ばせていただき大変ありがたく思っております。

私は田舎の中規模病院で主に脊椎の手術を担当している医学部卒後21年の名もない46
歳の整形外科医です。

今回は私の仕事である脊椎疾患治療に関する内容で少し異論がありましたのでメール
させていただきました。

臨床現場の意見として私の考えていることをかきました。参考になるようでしたら幸
いです。

脊柱管狭窄症まで含めてしまうと長くなるので、腰痛、主として腰椎椎間板ヘルニア
に限った内容にさせて下さい。

●腰椎椎間板ヘルニアについて(後の内容の理解のため)

腰椎椎間板ヘルニアは副島先生の理解で概ね正しいと思いますが、スポーツなどの高
エネルギーで椎間板が破断する場合と経年変化でそれ程大きな力がかからなくても破れて

中身(髄核)がはみ出す場合があります。またヘルニアが出た直後の急性の時期と
出たヘルニアがなかなか治らない慢性の時期があります。

腰椎椎間板ヘルニアの主な症状は椎間板破断による腰痛、ヘルニアが神経を圧迫する
ことによる神経支配部位の痛み並びに神経麻痺です。

腰椎では下肢を支配する神経が圧迫されますので下肢の痛みがでます(これは下肢の
筋肉の病気ではなく、腰の部分で神経が圧迫され支配領域に痛みを覚えるということです)。

脊椎の医者であれば患者さんの下肢の痛みを訴える部位から何番
目の椎間板に問題があるかMRIを見なくてもわかります。

例えば最も多い第4腰椎と第5腰椎での椎間板ヘルニアでは坐骨神経痛(臀部からふく
らはぎ外側後面)といわれる痛み、悪くする下腿~足に麻痺を生じます。

●まともな脊椎外科医の腰椎椎間板ヘルニアの診療

1) まず手術以外の治療を試みる

急性の腰椎椎間板ヘルニアでは脱出した髄核が生体反応で吸収縮小する可能性(早け
れば数週間で)があります。またヘルニアが出ていても炎症反応が

軽減し症状が無くなる場合があります。そのためまずは手術以外の治療(鎮痛)を
行って、簡単にいえば痛みをごまかしている間になんとか治まって

くれないかなというスタンスです。病院では投薬(痛み止め)、トリガーポイントブ
ロック、様々な神経ブロックを行っています。

副島先生のおっしゃるようにトリガーポイントブロックは大病院の立派な医者はしま
せん。私は痛み止めとしてある程度効果があると考え実行しています。

ただ効果は持続しません、もちろん根本的問題を解決することはできません。あくま
でごまかしているうちに…のスタンスです。

あと神経ブロックはそれ程危険ではありません。わたしはおそらく千回以上施行して
いると思いますが神経に問題を起こしたことはありません。

私見ですが腰痛だけであればトリガーポイントブロックでもよいと思いますが、下肢
神経の痛みには神経ブロックが効果的です。

2) 腰痛(腰部から臀部の痛み)だけでは手術はしない

腰痛には様々な原因がありますが、主として腰椎自体の変性及び変形、もしくは腰椎
と腰椎のつなぎ目(椎間関節や椎間板)の変性変形が原因と

私は考えています(それらにより不安定性や炎症が生じるため)。椎間板ヘルニアが
原因である腰痛は、特殊な例を除いて手術しなくても治ります。

筋筋膜性腰痛については私が医者になった頃は教科書的な知識でしたが、変形による
姿勢異常のための筋肉疲労以外私は原因が説明できないと考えています。

腰痛のメカニズムについては現代の医学でも完全な根拠はありません。経験上もしく
は間接的な所見上推察されるというだけです。

3) 腰椎椎間板ヘルニアで手術に至るケース(腰部脊柱管狭窄症では少し異なります)

統計はとったことはありませんが手術するのはヘルニアと診断した患者さんのうち20
人中1人位の割合ではないかと思います。

手術に至る患者さんには3パターンあると思います。

第一に、痛すぎてたまらない、手術でもなんでもいいから早く痛み(前述のように腰
痛だけでなく下肢痛)をとってもらいたい場合。

急性の場合歩けないほどの痛みがあることがあります。

第二に様々な治療をしたが治らない、これでは仕事ができない。手術をしてでも早く
治して仕事に復帰しなければならないといった社会的事情がある場合。

第三に神経麻痺が重度の場合。長く放置すると麻痺が永続的になり歩行に障害が残り
ます。この場合のみ脊椎外科医は積極的に手術を勧めます。

この三つにあてはまらない患者さんは、自身の判断で症状が許容内であれば手術はし
ません。

4) 腰椎椎間板ヘルニアの手術

細かいことはあえて書きません。診断さえ間違いなければ(これがポイント、すなわ
ち本当に患者さんの症状の大部分がそのヘルニアに由来するものであれば)

満足いく結果になるでしょう。現代のヘルニア手術は体にあたえるダメージも小さ
く、上記の条件を踏まえた上で手術を行えば良い治療であると断言できます。

●腰痛、腰椎椎間板ヘルニアに対する医療の問題点

1) 腰椎の経年変化による変形は治せない

大きくざっくりといえばやはり年寄りの変形は治らない。そのための腰痛は治らな
い、鎮痛などのごまかししかない。だから医者に行っても治らないと言われる。

2) 医者の問題

MRIなどの画像でヘルニアや狭窄症があるからといって、その部分が患者の現在の症
状(腰痛や下肢痛)を引き起こしているとは限らない。

症状と画像所見が一致して診断がつくのですが、その基本的なことができない整形外
科医は残念ながら多いです。他の医者でヘルニアや脊柱管狭窄と診断された

患者が私のところに来られて、どうしてそのような診断となるのか解らないケースは
よくあります。

医者が自分のエゴ(手術件数を増やしたい、研究のため等)により手術をしなくても
よい、もしくは手術をしても治らないケースであるのに手術をすることがある。

偉そうに書いている私も含めて、常にこのことは自戒していかななければいけませ
ん。

3) 鍼灸、整体師の問題

副島先生のおっしゃる通り、大部分の医者は鍼灸や整体師を蔑んでいると思います。
私は整形外科医では珍しく否定はしません。患者さんに行っていいですか?

と聞かれたらどうぞ行ってくださいと答えます。医者よりも患者さんを気持ちよくで
きる整体師さんはたくさんいると思います。学会で聞いてきた偉いと言われる先生

と製薬会社のきわめて疑わしい話の受け売りで効きもしない薬を出している医者より
はよっぽど患者さんの役に立っている場合もあると思います。

ただ鍼灸師や整体師は上で述べたような正確な診断は出来ません。施術ができるだけ
です。かれらがなまかじりの知識で診断らしいことを患者さんに説明すことは問題で
す。

4) 筋肉のこと

筋肉のことは確かにあまり分かっていません。わたしも推測すらできません。ただ腰
椎疾患の神経圧迫で生じる、経験上十分に確信を持って診断できる定型的な下肢痛は

神経が原因であって筋肉の痛みではないと思います。この根拠は、診断が正しくかつ
正確な手術で神経の圧迫を取り除けば、必ず下肢痛も治るからです。

ではなぜトリガーポイントブロックが効くのか?これも推測の域をでない根拠しかな
いはずです。

やはりまだまだ医学は経験則が中心、サイエンス出来るのは一部の領域だと思いま
す。

以上メールでは少し長くなってしまいましたが、思うところを書きました。医者は自
分の考えで患者さんの体にメスを入れるという独裁者にもなります。

政治と同じで善なる独裁者は最高のことをなしうるが、悪意の独裁者は罪人です。負
け犬の遠吠えですが、私は現在の無名の雇われ医者であることは良い医療を実践でき
る最高の環境だと考えています。無名有力を目指したいと思います。谷澤克洋 拝